エロ坊主だの、なまくら和尚といった言葉があるが、現代はともかく、昔は坊主というのはけっこうロクなもんじゃなかったらしい。
 間宮芳生(Mamiya Michio 1929- )の「合唱のためのコンポジション第5番『鳥獣戯画』」(1966)の第3楽章には、僧侶をからかう歌が歌われる。

 この作品について、作曲者は楽譜にこう書いている。

 《ここでの鳥獣戯画とは、いうまでもなく、日本の中世がわれわれに残してくれたすばらしい美術作品である絵巻『鳥獣戯画巻』第一巻のことである。
 合唱作品〔鳥獣戯画〕は、最初、7人の記録映画作家の同人グループ“映像社”が1966年春に製作した映画「鳥獣戯画」のための音楽として作曲された。約25分の映画で、もちろん絵巻『鳥獣戯画巻』第一巻を素材としている。演出は松川八洲雄である。この映画は、その年イタリアのベルガモ映画祭に出品、金賞を獲得した。イタリアの新聞はこの映画を「日本の古い絵巻を素材とした“オペラ映画”」と呼んで紹介した。
 映画完成後ただちに、演奏会用作品への改作に着手、同じ1966年の8月に完成、9月に東京放送合唱団の演奏でNHKより放送初演、10月には、東京混声合唱団の演奏で、ステージ初演された。
968dc6d6.jpg  絵巻『鳥獣戯画』から、ぼくは、そこに描かれているものたち(動物たちの姿をした、しかし実は、作者が見ていた、日本の中世に生きていた日本人たちに違いない)のさまざまな声をきく思いがする。それがどんな声に聞こえるかは、見る人によっていろいろであり得るだろう。
 合唱のためのコンポジション〔鳥獣戯画〕の中の各部分に、ぼくはぼくの視覚的イメージを持っているが、それは絵巻の各部分と必ずしも対応しない。曲を書き進むうちに、それは、絵巻『鳥獣戯画』そのものから、少しずつ離れていったようである。そして、うたい、または聞く人が、この曲の中からなにか視覚的イメージをよび起こされるとして、それがどんなものであろうと、これまた人ひとの自由なのである》

 そっか、じゃあ歌詞の内容はよくわからないけど、第3楽章はエロ和尚をからかっていると考えても、それは自由ってことなのね。

 作曲者はCDの解説に次のようにも書いている。

 《曲の中に基本的に重要なエレメントとして民俗音楽または仏教音楽からの引用がいくつかある。第1楽章には、華厳宗の声明(しょうみょう)、つまり東大寺二月堂のお水取りの法要のうた、第2楽章に愛媛の田の草取り唄、そして第4楽章に新潟の綾子舞のうた》

 あらら、第3楽章には触れてくれないのね。

 その第3楽章の歌詞は次のようなもの。

 チョ、チョ、ヨカノカイナ、ヤーハリソーリョ……

fdc3fc30.jpg  よくわかんない。でもエロ坊主って歌ってはいないようだ。掲載した楽譜の写真に写っている歌詞も見ていただければ、と思う(楽譜は全音楽譜出版社より出版されている)。

 編成は混声合唱とコントラバスと打楽器各種(奏者2名)というもの。

 まあ、この曲、好きか嫌いかけっこう分かれるところかもしれない。

 CDはフォンテックから「間宮芳生作品集」として出ている(FOCD2519)。「鳥獣戯画」の演奏は、作曲者自身の指揮、東京混声合唱団、小島光と加藤訓子のパーカッション、吉田秀のコントラバス。1995年10月に静岡音楽館AOIで行われた演奏会のライヴである。

 ⇒ 間宮芳生作品集 コンポジション5番「鳥獣戯画」 / 間宮芳生指揮、東京混声合唱団

 ちなみに、私は間宮の「合唱のためのコンポジション」シリーズの中では、やはり何といっても以前紹介した第4番「子供の領分」がいちばん好きである。とぉ~っても!

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