消化器科の膵臓の担当医は、昨年と同じように世の中全体に対し不満を持っているに違いないというような顔つきをしていたが、やや痩せたように思えたし、顔色も全体的にレッドの成分が増したように感じた。

 もしこの人が白衣を着ておらず、さらにこれまでの人生でおそらくは自然に身についてしまったのであろう偉そうに見える態度がなかったなら、外来を訪れた五臓六腑のいずれかを患っている患者と思われるに違いない。さらに、もしパジャマでも着ていようものなら、外来患者ではなく、外来患者をひやかしにきた入院患者だと思われるだろう。

 五臓六腑の五臓というのは、肝臓、心臓、脾臓、肺(臓)、腎臓であり、残念ながら私が現在責められている膵臓は入っていない。

 医師に呼ばれて診察室に入る。
 「1年経過したわけか……」と、いきなり先制攻撃を仕掛けられた。
 焦って、「先日ドックを受けました。昨年同様膵管の拡張が見つかったそうですが、太さは変わっていません。経過観察でよいと言われました」

 急いでかばんからドックの結果表を出したが、慌てたせいで間違って最初に“前立腺検査・異常なし”というオプション検査の結果表を出してしまった(これだって、一応は褒められるべき結果なはずだ)。
 私はあらためてドック本体の結果表を取り出し、広げ、震える指で“膵管拡張 3mm”という箇所をさしたが、医師はちらっと見ただけで「ドックでは膵臓は検査してないからね。血液検査の項目も膵臓に関係するものはないから」と、日本人間ドック健診協会に恨みでもあるようなことを言った。
 “要経過観察”という決定打ではないが、私にとって唯一すがるべきか細いワラは、あっさりと切られてしまったのだ。

 「じゃあ、CTの検査をしたらいいですね。いつなら来れます?」
 もう有無を言わせない。
 私はこの医師の忠実なしもべのように、瞬時に手帳を取り出し、「〇日なら大丈夫です」と答えてしまった有様だ。やれやれ……。
 医師は院内用の携帯電話で検査室に電話をかける。すぐに予約を確定させ、「もう逃がさないわよ」という感じだ。
 電話を終え(電話で話してるときの態度も感じが良くない。でも、私に対してだけではないとわかり、ちょっと安心した)、「〇日は朝一番しか空いてないけど、8:30に来れますかねぇ?」
 「はい、喜んでっ!」
 「じゃあ、あとは採血してって」
 ということで、膵臓の診察の第1回目は終わった。
 私の完敗だ……

 次回の出頭日は7月の第1週。そこで私はCT検査を受け、さらに翌日に審判を言い渡される。 

 そんな私はこの日の朝、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番、ではなく2番を聴いた。
 
 ショスタコーヴィチ(Dmitry Shostakovich 1906-75 ソヴィエト)のピアノ協奏曲第2番ヘ長調Op.102(1957)については、作品そのものとバーンスタイン盤を前に紹介しているが、作曲当時モスクワ音楽院に在学していた息子のマキシム・ショスタコーヴィチのために書かれ、初演の独奏もマキシムが行なった。
 息子が小さいときのピアノ・レッスンの思い出を盛り込んだのか、第3楽章ではハノンの練習曲が引用されている。

0d10febd.jpg  今日はオルティスのピアノ、ベルグランド指揮ボーンマス交響楽団による演奏を。
 第1協奏曲と同様、トヨタの車のような奇をてらうような演奏ではないが、安心して聴いていられる。また、第2楽章のしっとり感は心にしみてくる。
 1975録音。ブリリアント・クラシックス(原盤EMI)。

  Shostakovich: Complete Concertos

 11時半前に血液検査の採血も終わり、すでに報告したように私は病院の地下のレストランに行き親子丼を食べた。
 そのあと1階ロビーの待合室でウォークマンを聴きながら1時間以上を費やした。
 途中何度か深い眠りに落ちそうになり、そのたびに今自分がどこにいるのか思い出すのに時間がかかった。

 午後になって今度は胃腸科の診察である。
 このあいだのドックでは胃内視鏡検査を受けることを前提にバリウム検査をパスさせてもらった。
 担当医師にその旨を伝えると、「そうですね。そのほうがいいです」と、とっても友好的に接してくれた。午前の医師とはえらい違う接客態度である。

 内視鏡検査を6月末に受けるよう予約し、さらにその結果の診察は膵臓の審判が下る日と同じにした。

 こうして私の消化器科ダブルヘッダーは終わった。
 2時過ぎに会社に戻ると、なぜかひどくおなかがすいた。

 それにしても、腑に落ちないのは膵臓のCT検査を行なうと、きっぱりと言われたことである。

 昨年、ドックの結果をもって新患として受診したとき、そのときの医師はCTに否定的で「確実なのは超音波内視鏡。CTではだいたいわかるだけ」と言った。
 CTを受け、そのあと現在の無愛想な医師にかかったのだが、そのとき「CTなんてあまり意味がない。内視鏡検査をしなくてはだめだ」と、超音波内視鏡検査を受けることになった。
 その彼が、今回CTを命じたというのはどうも矛盾している。
 それに、造影剤の副作用とは言い切れないものの、去年私はCT検査後にひどく体調がおかしくなったのだ。
 私は思わず「内視鏡検査じゃなくていいのでしょうか?」と言ってしまったほどだ。
 彼は「内視鏡じゃなくて、CT!」と、ちょっぴり怒ったように言った。

 CT検査をやったあと、「やっぱり正確を期すために超音波内視鏡検査をする」と言われたなら、私はきっとひざまずいて泣くだろう。

 昨日からオホーツク方面に来ている。
 昨日はどしゃ降りの歓迎を受けた。
 そのあたりの話は明日にでも……

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