8a4656ba.jpg  土日は雪が降らないように願っていたが、だいたいにして私は、天をはじめとするあらゆるものに意地悪をされる運命にあるのか、はい、吹雪始めました。

 ところが情報によると、札幌でも中心部から南側の方は晴天だったようで(西側のことは知らないけど)、不公平にも私が住んでいる北東方面が朝のうちはけっこうな吹雪だったわけだ。一時的に止むことはあったが、基本的には涙がにじんでくるような悲しい天気だった。

 この日私は10時に近所の床屋に予約を入れていたのだが、床屋へ向かうこのときばかりは自然も私にほほ笑んでくれたようで雪が止んでくれた。が、帰りにはまた降っていて、床屋でおめかししてきたんだか、嫌がらせを受けてきたんだかわからないような頭で帰宅した。
 ほら、ラトルさんだって私に憐みの視線を投げかけてくれているかのようじゃないか!

 昼からは重い腰を上げ、ベランダにたまった雪を地面へと投げ落とし(今年3回目にもなる)、地面にたまったその雪を裏の空き地に運んだのだが、2階から投げ落とされた雪は地面に叩きつけられてけっこう硬くなっていて、スノークーペですくいあげるのも難儀。なんで私はこんな目にあわなきゃならないんだろうと心で嘆きながら黙々と作業を続けた。
 村上春樹のある小説に出てくる“ぼく”は“文化的雪かき”を仕事しているが、私は“リアル雪かき”を本業ではないのもかかわらず、強いられているわけだ。

a12eda61.jpg  しかも裏の空き地は、写真では分かりにくいだろうが、スロープを延ばすと空き地の隣の家に迷惑をかけそうな状態になっていて、もうこれ以上はだめだわいということになってしまった。この雪山の高さだって、私の身長以上の高さになっているのだ。いや、私の身長が76cmとかいう話ではない。私だって174cmはあるのだ。

 昨年の春、雪解けとともに庭のアーチが無残にも崩壊したことは報告したし、その写真を見た多くの人が心を痛めたと思うが、新たに購入したアーチも今や、かなりの部分が雪に埋まってしまった。壊れることはないと思うが、それでも日々私は不安な気持ちになる。

45d98f87.jpg  さらにコニファー。株元の枝の付け根に雪がはさまって悪さをしているのか、地際から伸びている枝が主幹から離れて広がってきている。しかも枯れた葉が目立つ。枯れてしまったらどうしようと思うが、自然に逆らうことができない(って、実はもうだいぶ大きくなったので、今年はコニファーの冬囲いを怠ったのだ)。

 こういう縁起でもないものを目にしながら雪かきをするのだ。
 明るい気持ちになれるわけがない。

 そこで今回の雪かきのときはけっこう自虐的に、ベートーヴェンの「運命」と「田園」を聴きながら作業した。

 雪かきをしなければならない運命……
 そして一面冬景色なのにに田園……

 演奏は、この間タワレコのピヴォ店で買ったラトル指揮ウィーン・フィルのもの。このシリーズ590円とバカみたく安い。

 考えてみれば私はあまりベートーヴェンのCDって買わないほうだ。
 モーツァルトなんかだったら一応棚は必ずチェックするんだけど、ベートーヴェンって積極的に買うことが少ない。きっと「いま持っているCDでもういいや」って気持ちがどこかにあるのと、そもそもすっごく好きな作曲家ではないのかもしれない。

5be92cac.jpg  で、ラトルによるベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827 ドイツ)の交響曲第5番ハ短調Op.67(1807-08)(「運命(Schicksal)」は通称)と第6番ヘ長調Op.68「田園(Pastorale)」(1808)。安かったから買ってみたのだ。

 第5番といえば、私はC.クライバーの演奏があれば他はなくてもいいんじゃないかと思っているのだが、あの演奏は男くさいというか非常に暑苦しい名演で、何年かに1度聴けば十分って感じ。つまり、第5番そのものも何年かに1回でいいやってことになる(とはいえ、他のも聴くけど)。

 今回ラトルのを聴いて思ったのは、男くさくない、重くないってこと。でも、軽いのではない。スケール感は十分。これなら、「ちょいと今日は『運命』でもきいてみましょうかね」と、気負わないで聴ける。
 なんというか、ベートーヴェンの交響曲そのものを純粋に味わえる感じだ。

 ベートーヴェンはこの曲で交響曲史上初めてピッコロを用いたが(ほかにトロンボーンとコントラファゴットも)、この演奏ではピッコロの効果が実によくわかる。たぶん、使っている楽譜は今や主流のベーレンライターのもの。ベーレンライター版による演奏は他にも聴いたことがあcd58abad.jpgるが、こんなにピッコロが効果的に感じたことはなかった。
 また第3楽章の、ベルリオーズが「象のダンス」と形容したあの非常に速い低弦のトリオも実に軽快に聴こえる。

 第6番の演奏も名演。非常に水準が高い。
 が、第5番が良すぎる。
 2002録音。EMI。


 
 夕方になって青空になった。
 どうして私が作業しているときに限って雪が横殴りで降ってくるのだろう。
 誰かリモコンで操作してないか?

 今朝の“怒帝王”は、夜のうちにさらに花茎を伸ばしておりました。