KatayamaMeikyuu4  最初は《遅いもの》が主役だった
 片山杜秀の「続・クラシック迷宮図書館 片山杜秀の本(4)」(アルテスパブリッシング:2010年,電子版2017年)。


 そのなかの“「楽聖」はアダルト・チルドレン”の章では、福島章著「ベートーヴェンの精神分析 愛と音楽と幼児体験の心理」(河出書房新社:2007年4月)が取り上げられている。
 この章の初出は2007年7月。


 片山氏は、バロック時代は速い楽章よりも緩い楽章の方が上位にあったがそれが次第に逆転する現象を紹介し、こう続ける。


 その逆転劇でのいちばんの働き手は、もちろんハイドンだろう。彼はなぜそんな音楽を書いたか。生家が鍛冶屋だったせいともいう。ハイドンは幼少時代、父親の仕事の騒音にがまんならず、それを打ち消すべく音楽に走った。その音楽はとうぜん、無秩序なノイズのつけいる隙のないほど、速く秩序あるものでなくてはいけなかった。そういう心理的欲求が、ハイドンに主題労作にもとづくアレグロ楽章を確立させたというのだ。


 そして、ハイドンに続くのが楽聖・ベートーヴェンだ。


  ベートーヴェンが心に負った傷

 精神医学者の福島氏は、この本で“「楽聖」がアダルト・チルドレンだったと主張”しているのだそうだ。


 ……狭義のアダルト・チルドレンとは、アルコール依存症で情緒不安定でしょっちゅう暴力を振るう親に育てられ、その傷を心に刻んだまま大人になった者をいう。それなら、子供が容易には治癒不能なトラウマを背負うのもわかる。そして「楽聖」の父親はアル中で、息子に音楽の特訓をほどこすと称しては、いつも殴りつけていたというのだ。


 そして福島氏は、


 ・ベートーヴェンは交響曲第3番で父殺しの内的儀式を執りおこなった
 ・しかし、それでは一件落着とならず、内なる父親はすぐに蘇り、反撃してくる


と分析。

 その反撃とは?


BeethovenSym5-1Score  父親は4回1セットで殴ってくる


 著者は、その反撃が4つの音でおこなわれたと主張する。4つの音とは、交響曲第5番のいわゆる「運命動機」だ。-(中略)-著者はその4音を父親の反撃の響きと解する。そして、その4音は、運命が扉をたたく音ではなく、父が子を4発殴る音であったにちがいないとする。


 ベートーベンは幼少期の記憶に支配されている自らの運命を打破するために、この曲を書いたということになる。


 これを読むと、「運命動機」が執拗に繰り返される意味がわかったような気がした(掲載譜は全音スコア)。


 そのあとに「運命」を聴くと、運命に対峙する勇ましい闘いではなく、いじめにおびえ必死に耐える弱者の苦悩に聴こえてくるから不思議なものだ。


 さて、そのベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827 ドイツ)の交響曲第5番ハ短調Op.67(1805-08。通称「運命」)を、今日はラトル/ウィーン・フィルの演奏で。

 どんな演奏かというと、こんな魅惑的な演奏です。


 2002年録音。EMI。


Beethoven05Rattle

   このCDの詳しい情報 【タワレコ】 ポイント12倍キャンペーンは6/29 23:59まで

   Beethoven: Symphonies No.5 Op.67, No.6 Op.68 "Pastorale"


 で、じゃあスズメ目ホオジロ科のキアオジ鳴き声由来説はどうなった?

   紙の本 片山杜秀の本〈4〉続・クラシック迷宮図書館―音楽書月評2004‐2010

   全音スコア ベートーヴェン 交響曲 第5番 ハ短調 作品67 全音ポケット・スコア

    

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