20180905b
  9月4日。台風直撃の当日
 昨日から関西空港連絡橋で鉄道の運行が再開された。
 台風21号が大阪を直撃したのは9月4日のこと。
 2週間前の台風襲来日のことを振り返ってみよう。

 大阪での暴風雨のピークは午後1時半ころから3時半ころまで。
 すでに報告したように、この間、私はベランダの窓のシャッターを下ろしていたため、そしてほかの部屋の窓はすべて曇りガラスだったため外の様子はわからず、ウーとかボーとかゴーといった風の音や、何かがぶつかり合うような多彩なひどい衝撃音を耳にしながら、世の中は今いったいどんなことになっているのかただただ想像するしかなかった。
 いや、そのシャッターさえあおられてメリメリメリとはがれ吹き飛んでしまうんじゃないかと、生まれたての子猫のように心臓をドキドキさせながら、ゆっくりとコーヒーを飲んだりした。

 瞬間的な停電が何度も起こったため、ルーターやNAS、オーディオ、TVの電源を落とし、そのため部屋の中は無音。それでさらに暴風が奏でる凶暴な偶然性音楽がいやおうなしに耳に飛び込んできた。

20180905f 私の心の奥底に潜む野次馬根性のせいで、音が少し治まった3時半ころにシャッターを上げてみた。
 向かいの家の窓が割れているとかいうこともなく、けど斜め向かいのアンテナが折れていたぐらいの変化しかわからなかった。

 そのあとである。私の住むマンションから徒歩4分くらいのマンションに住む氷山係長から-この日は支社の社員全員が自宅待機だったのだ-停電になっているというメールが届いた。

 わが住居の電気はすでに安定しており、台風のニュースを見ながら「峠は越したわい」と甘酒をすすっていた私は、すぐ復旧するんじゃない?と、返信した。実際、すぐに停電なんて治ると思っていたのだ。

 17時近くになって、またメールが来た。

 停電は私の住む地区のみでしょうか?お湯も沸かせず真っ暗で参りました。暑くて早めの回復に期待します。

 私は「知らん!」と冷たく返事をするようなことはせず、関電に連絡してみたら?とアドバイスした。

 返事が来た。

 電線がものすごい状態でスパークしたあと、かれこれ3時間ほど停電です。蒸してて参りました。

 蒸しててというのは、たまたまシューマイを蒸しているところだということではなく、蒸し暑いという意味だ。

20180905e 暑くて大変でしょう。私のところへ来てシャワーを浴びて、なんなら今日は泊ってもいいですよ、と返そうか?いや、いけない。私に変な趣味があると疑われてはこれまでの信頼関係が台風後のわらの家のように吹き飛んで跡形もなくなってしまう。私は心を鬼にして、へんな親切心を出さないことにした。

  9月5日。台風直撃の翌日
 朝、通勤で駅に向かう道すがら。
 なんでも克服しそうなライザップなのに看板が落ちていた。

 駅に行くには氷山係長が住むマンションの前を通らなければならない。そのマンションのエントランスは真っ暗。オートロックも使えないため管理会社の人が処置したのだろう。入り口のドアは開放されていた。
 近くの信号も活きの悪いイワシの目のようになっていた。

20180905g レストランの貼り紙の一部が台風による職場放棄のストライキ中で、低い牛丼となっていた。

 このあたりは停電しているのに、なぜか東急リバブルの文字だけが煌々と輝いていた。

 ここから別方角で歩いて15分ほどのところにある社宅も停電したままであることが分かった。

 氷山係長は私より20分ほど後に出社してきた。
 疲れ果てた顔をしていた。でも、ゆでタコのようにはなっていなかった。

 彼は今日明日は市内のホテルに泊まると言っていた。

 マンションに帰るときに見た氷山係長のマンションのエントランスは洞窟のように暗かった。

 山田耕筰(Yamada,Kosaku 1886-1965 東京)の交響詩「暗い扉(The Dark Gate)」(1913)。

 三木露風(1889-1964)の詩集「廃園」の「暗い扉」による。

YamadaNaxos 真っ暗な部屋に暗い扉が閉ざされている。なかにいる人々はみんなで「開けてくれ」と割れるほど扉を叩く。だが扉は動かない。「死ぬんじゃないか?」と皆泣き出す。でも扉は閉じたまま。

 このような内容の詩である。

 湯浅卓夫/アルスター管弦楽団の演奏で。

 2000年録音。ナクソス。

   このCDの詳しい情報 【タワレコ】
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   山田耕筰管弦楽作品集 / 湯浅卓雄指揮, アルスター管弦楽団, ニュージーランド交響楽団

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  9月6日。台風直撃の翌々日
 この日の早朝、午前4時に社宅の停電が復旧(停電のため給水ポンプも働かず断水もしていた)した。社宅に住む社員の1人から、出勤前の私にメールが来たのである。

 氷山係長はホテルで今日の朝を迎えている。
 社宅が通電したということは、それよりも駅に近い氷山係長のマンションの停電も復旧しているに違いない。彼はこの朗報をまだ知らないはずだ。

 しかし私がそのマンションの前を通りかかると、エントランスは……やっぱり洞窟状態のままだった。

 この日も彼はホテル住まい。
 しかし、帰宅途中に私が目にしたのは、洞窟が明るいエントランスに変わっている姿だった。

IMGP2340 私はまだ支社で涼んで、いや、仕事をしている係長に「ピカピカ光る!」と電話した。

 私の報せを受け、彼はホテルをキャンセルし-当日キャンセルだから満額支払い?-、自宅マンションに戻った。

 帰宅しました。こんなにも電気の有難みを感じたこと日はないです。……

 でも、このとき北海道の多くの地域では停電が続いていた。

 なぜ、氷山係長のところだけ復旧が遅かったのか?

 前の週にスイカ店長のところで飲んでいたときに、彼は私のストーンブレスレットを間違えて「数珠」と言ってしまった。ラブラトライトのストブレである。確かに数珠っぽいといえば数珠っぽい色合いだ。

 だが、ラブラドライトの怒りを買ったせいではないか?
 そんな気がしないでもない。
 邪気払いの効果があるラブラドライトだが、係長が邪気とみなされてしまった可能性もある。
 
 だとすれば、彼は自分だけでなく周りの住人も巻き添えにしたってことになる。