ウィニコットの世界への誘い

①イギリスの児童分析家ウィニコット:Good enough mother(ほどよい母親)、マニュアル通りではなく、何となく母親をしているという。お母さんは子供を産んですぐに「母親」になる訳ではありません。徐々にお母さんになるのです。最初の数か月で、子供を好きになるかで決まるようです。

 

②児童分析家のウィニコットはgood enough mother 適度に良い母親になることを勧めています。人の両価性(人は誰でも男性性、女性性が共存しているということ)についても教えています。父親が子育てに関われば母性性が自然に育つということだと思います。父親から暴力性をとるには子育てが大きな役割を果たすと思います。従ってまた、実の父親であれ母親であれ、代母(男女にかかわらず)であれ、愛情を注げば子供はより良く育つ事がわかります。

 

③イギリスの児童分析家ウイニコットは人の道徳観がどんな風に生まれてくるのか、乳児・児童の観察から教えています。ほどよい母親(good enough mother)が子供に愛情を注ぐ中で自然と良いこと悪いことを学んでいきます。学校で道徳を教えて身に付くものではないのです。我が子を愛と思いやりのあるひとに育てるために乳幼児期に愛情をたっぷり注いでください。 乳幼児精神医学は乳幼児の情緒的環境が後年の神経症の発症に影響することを教えています。

たとえば前の病院で経験した症例

 3歳の女児、母親の心配事は1、偏食がひどく痩せている。2、おっぱいを離さない。3、コミュニケーションが悪いような                     
家族歴・病歴:3人家族・<1>生後6か月母乳が出なくなり仕方なく人工に変えるも、離乳食さえ摂取しなくなり体重が増えないと。<2>1歳半から父親が入院を繰り返すようになる、現在も,フロイト派の児童精神分析家ウイニコットは赤ちゃんは母親のおっぱいで絶対的な安心感を得、徐々に指しゃぶりや、ぬいぐるみや、あるいはタオルのようなものがその代理を果たして情緒的に成長していく様を描いています。さてこの女児は園に行っても泣き叫び、家では母親のおっぱいをねだる、周りの意見を取り入れて母親はおっぱいにマスタードを塗る・・前期の<1>でつまずき、<2>で母親が不安状態に置かれて女児も喪失感を味わったのかもしれません。そして赤ちゃんへの退行現象。指導はマスタードを塗るのはやめて、安心できるまで無期限におっぱいを与えるように、母と児の秘密でいいと.この母親には児への深い愛情がみられました。

 育児マニュアルは害をもたらすことがあります、予防接種や器質的な病気などはマニュアル通りにしてほしいけれども、心に関すことは慎重に。完璧な母親になるより、ほどよい母親に。