2012年03月15日

Drive

Drive-Soundtrack


久し振りのblogにまたなってしまいました。旅行をちょくちょく最近していたり、
そもそも日本に帰ることになったのでかしこまって書いた方がいいのかと思いつつ、
いつも通り映画の話です。

ベトナム旅行の帰りの便、小川洋子の「猫を抱いて象と泳ぐ」の繊細な残酷さ漂う世界を
味わっていた時にランチ登場。さすがに本を読みながら食べるわけにもいかず、上映映画から
楽に見られそうなものを選ぼうと探したところこのDriveという映画が。どうせ楽に見られる
アクション映画だろう位の軽いノリで見始めたものの、冒頭のシーンを終えて
タイトルクレジットが入り、Kavinsly&Lovefoxxxの"Nightcall"が掛かってLAの空撮に
ピンクの文字で"Drive"と
乗った辺りからこの映画がただのアクション映画でないことを感じさせられた。

寡黙なスタントカードライバーを演じるライアン・ゴズリングと、最初は子持ちとは想像が付かない
いつもながらの可憐さで登場し、実を言うと旦那は刑務所にいるという何ともやるせない
幸薄く繊細そうながら芯の強い女性を演じるキャリー・マリガンがたまらない。「わたしを離さないで」
といい、まだ見てはいないけど非常に評判が良い「17歳の肖像」といい、本当に良い映画を選んで
キャラクターを作り上げているなあ、と感心。

ストーリーとしてはカースタントと整備工に加えて「運び屋」に手を染める主人公が、夫と離れ
子供と二人で自活する妻の可憐な姿に惹かれ、互いに心を寄せつつも夫が出所して話が
急転という、まあ、それなりに想像が付く話で目新しさはない。それなのだけれど、この寡黙な
オトコが醸し出す時間的な「間」に加えて、多くを写し取らずそれぞれのシーンで完璧な描写に
ある空間的な「間」とその「間」を埋めるようで埋めない音響的な音楽の調和が最高。
そしてそこに稲妻のように差し込まれる暴力がテンションを巧みに操り、「完璧」としか
言いようのない映画を作り出す。

後でこの映画で監督のニコラス・ウィンディング・レフンが2011年のカンヌで監督賞を取っていたと
知り納得。(最近こういうのに疎くなったな。。。)

ちなみに冒頭の"Nightcall"のみならず、LAの河川敷をゆったりと車で流し、自然の中で
男女と子供の笑みが漏れるという何とも穏やかなシーンで流れていた
College&Electric Youthの"A Real Hero"にやられてしまい、久し振りに映画の
サントラを購入。
おそらくフレンチエレクトロの流れと思われるアーティスト3組の曲の選び方とシーンへの
差し込み方が最高。

ということで、最近観た映画の中で著しく興奮したので忘れない内のblogに書き留めておきます。

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2011年09月03日

The Rain- Pontus Lidberg

Singapore Art Festival 2011のテーマは I want to remember ということで、
2009年から2011年に亡くなった3人の偉大なダンサー、 Pina Bausch,
Merce CunninghamそしてKazuo Ohnoに捧げる内容になっていて、彼らの
ダンスからinspirationを受けたダンス・カンパニーの公演や、その他映画館で
ダンスのShort Filmを流すといった、結構マニアックな感じの内容。

ダンス・カンパニーの公演としては、Pinaにinspireされた、les ballets C de la B (Belgium)の
公演、OUT OF CONTEXT – FOR PINA と Merce Cunningham から影響を受けた
Boris Charmatz/Musee de la danse (France) を観たけれど、前者は面白かったものの、
後者が何だか、結構残念で、シンガポールまで呼んだ割には、と思うところもあり・・・。



なぜかシンガポールはモダン・ダンスやバレエの公演が多く、10月も何と、ダンス・フェスティバル
1プログラムで、シルヴィ・ギエム登場。残念ながら日本に友人結婚式で
帰国するので観られないが、他の公演で面白そうなのは色々とチェックしたいところ。

話を戻すとそのフェスティバルで観た、Pontus Lidbergの The Rainというほんの30分もない
短編なのだけど、「雨の中で踊る」という場面設定の中、男女、そして濃密な男同士・・・に
過剰な「湿り気」を与えていて、かなり強烈な印象を受けた。そういえば、こういう映画も観たな、
ということで。









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2011年08月29日

最近観た映画・短評

旅行記から早速脇道に逸れますが、最近観た映画をまとめて短評。
このうち映画館で観たのは「トランスフォーマー」のみ。買ったDVDだとか飛行機の
ディスプレイだとか小さな画面専門になってきてしまったのは本当に悔やむばかり・・。
英語のリスニング能力をもっと高めなくてはと自省。

しかし、あまり感動できる映画を観てないなあ、とつくづく反省・・。

HANNA
監督:ジョー・ライト
出演:シアーシャ・ローナン/エリック・バナ/ケイト・ブランシェット

最近観た映画の中ではかなり出色。イアン・マキューアン原作の「つぐない」を基本端正に
描く中に所々無機質であったり偏執的であったり異質なものをうまく混ぜ合わせた監督が、
かなりその「異質さ」を盛り込んだ作り。16歳にして暗殺マシーンとして育てられた娘が
最初に放り込まれる米軍基地の無機質さと非現実的なライティング、兵士を軽々と撒いて
出た場所がモロッコの砂漠。それからロードムービー的に話が進むが、時折、追手との
格闘シーンが織り込まれる。分類的にはアクションなのかもしれないが、ストーリーという
ストーリーもなく、ただ彼女の心象描写に近い乾いた「外界」が映し出され、美しい。

やっぱりこの監督はタダものではないと思った作品。

Fast Five
監督:ジャスティン・リン
出演:ヴィン・ディーゼル/ポール・ウォーカー

「ワイルド・スピード」のオリジナルキャストに戻った最新作。結構この作品のカースタントが
好きなので、今回は当たり。飛行機の画面だと小さすぎるけど、それでも迫力はある。
ザ・ロック様がブチ切れた感じで登場、ヴィン・ディーゼルとのガチンコの肉弾戦も見もの。

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Midnight in Paris
監督:ウッディ・アレン
出演:オーウェン・ウィルソン/マリオン・コティヤール

ロンドンからの帰りに観た。行く前に観た方が盛り上がったかもしれないけど、
題名通り夜のシーンが多く、しかも飲み屋で古き良きパリ(ピカソやダリやヘミングウェイ、
フィッツジェラルドなどが集まっていた時代)を代表する人々と遭遇するという
信じられない話なので、まあ、あまり参考にならなかったかも。

ウッディ・アレンはアメリカ人的に欧州に憧憬を抱くので、ステレオタイプ的に良すぎると
思う一方、あの時代のパリが持つ場の意味ってあり得ないよなあ、と思う。
今でも世界中から人を寄せ付けて止まないけれど、お金のないアーティストには辛い街に
なったよね・・。物価高いし、そもそも・・・。

トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン
監督:マイケル・ベイ
出演:シャイア・ラブーフ/ロージー・ハンティントン=ホワイトレイ

そろそろ公開終了の頃に観に行ったので、既に3D対応の劇場での公開は終了・・・。
やっとこのシリーズを3Dで観られると思っていたのに、残念。
相変わらずVFXのすごさはずば抜けているので、かなり楽しめた。ストーリーが
そもそも破綻しているのは気にならないし、そもそも英語、特にラブーフが早口過ぎて
わからん・・。きわどいジョークも結構楽しめる作品だと思うのだけど、そこが残念。

ただ、脇役で出てきたジョン・マルコビッチの"Impress me!!" は笑えた。
今度スタッフに使ってみようかな・・・。

Limitless
監督:ニール・バーガー
出演:ブラッドリー・クーパー/ロバート・デ・ニーロ

兄から手に入れた謎の薬を服用すると異常に頭脳が活性化されて天才的な能力を発揮する
ようになったダメ男をブラッドリー・クーバーが演じるのがはまり役。2枚目だけど、本当に
ダメ男っぽい。頭が良くなれば投資家というのはありきたりだけれど、それで仕えた超大物を
演じるのがデ・ニーロ。何だかあまりこの人がこれを演じる理由が見えないけれど、やっぱり
しかめ面、顔全体で殺すのには存在感あり。

飛行機の小さい画面だとスピード感、昂揚感も薄れて、ふーん、な映画でした。

Source Code
監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:ジェイク・ジレンホール/ミシェル・モナハン

モナハン、可愛い。タイムトラベラーとして事件現場に何度も訪れるので、場面の繰り返しが
続くけれど、この人に会いに行くなら何度でもいいかも、と思う。
ただ、結果のところ多少の出来事の違いはあっても結局繰り返しなので、相当のイライラ感が
募るのは事実。小さい画面で入り込めずに客観的に見てしまうと飽きが来た・・。

エンディングの方で印象的だったシカゴのミレニアム・パーク、初めて知ったけれど、建築家の
F.O,ゲイリーやアーニッシュ・カプーアのモニュメントがあるのね。行ってみたい。

Scream 4
監督:ウェス・クレイヴン
出演:ネーヴ・キャンベル

飛行機の中でこれを流すSQの趣味に恐れいるけど、観てしまう私の神経もどうかしているかも。
結構最初の方は盛り上がって口を押さえて「絶叫」してみた。思えば、1か2の頃、映画館で
ケタケタ笑いながら観て、隣に座っていた友人を気味悪がらさせたので、今回は静かに観賞
しました。まあ、次から次へと出るわ出るわ。相変わらず飽きさせずに見せるところはさすが・・。

Sucker Punch (エンジェル・ウォーズ)
監督:ザック・スナイダー

「300」のVFXがかなりおもしろかったけれど、こっちもどこまで実写でどこまでアニメなのか
よくわからない、作りこまれた映像が良く出来ていたと思う。

以上、おそらく年末年始に帰った日本から戻ってきた後に観た映画はこんな感じだと
思います、忘れてなければ。


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2011年08月28日

Summer Vacation 2011

またかなりご無沙汰してしまいました。最近はfacebookの方で細々と書いていて、twitterも
お休み気味。況やblogをや。感じたことは文章にまとめて書くと整理されるので習慣として
位置づけたいところではありますが、どうも心と体の余裕が・・。まあ、ぼちぼちと。

8月の12日出発21日帰国でヨーロッパ旅行に行ってきました。シンガポールに住んでいるならば
近隣諸国を回ればいいものの、どうも、この辺りは一人身に辛い場所ばかり・・。
ヨーロッパは一緒の時期に訪ねる友人や在住の友人知人もいるし、ソフト的にも一人で楽しめる
ところが多いので、やっぱりそちらに足が向いてしまう・・。しかも、最近は史上稀に見る円高で、
ユーロ・ポンドもとても安い。この気を逃す手はないでしょう。
東京が拡張版お盆休みに入るタイミングを狙いサクッと1週間の休みを取りました。

訪ねた場所はパリ、ヴェネツィア、ロンドン。パリはこれで4度目、ヴェネツィアは3度目、ロンドンは
何と5度目。どこも大体の地理感覚があるので今回ガイドブックは特に持参せず、簡単な地図を
見つつ。それよりも、iPhoneを現地で安く使えるように工夫する方が相当役に立ちます。
レストラン情報とか地図とか。「サバイバル時代の海外旅行術 」で高城剛が書いていたSIMフリーの
iPhoneを買って現地でSIMを入れ替えるというのを実践してみましたが、ちょっと設定に手間取ったけど
特に問題なく使うことができました。頻繁に海外旅行する人だったら香港とかシンガポールで買うのも
ありだと思います。

パリは2泊。今回メトロを使ったのはほんの数回。後はvalibという街中至るところにある
レンタルサイクルスタンドを活用して、自転車で動きました。パリの中心部、特に川沿いに
あるポイントを周るのであればかなりお薦め。

送信者 Paris_1108


世界中で最も好きな10の場所に確実に入るオランジェリー美術館でモネの睡蓮を堪能したり、
ポンピドゥで企画展、常設展を半日掛けて観たり。昔なら1日に色々詰め込んで忙しく過ごしていた
街だけど自転車でもサイクリングも含めてかなりゆったり楽しめました。
自分の観たい場所がわかる街にやっとなってきたなあと感慨深く。今回はパリ在住の
元会社関係の人に食事を御一緒してもらったおかげで一人旅にありがちな寂しい夕食も
避けることができて満足。

送信者 Paris_1108


ヴェネツィアは3度も行くほど街が好きなわけではないのだけど、2年前に続いてヴェネツィア・
ビエンナーレを訪ねるために。同時期にヴェネツィアを訪ねる親友反中夫妻と食事を中心に一緒に
楽しみました。

送信者 Venezia(201108)


既に秋が到来しつつあったパリ・ロンドンに比べてこの街はとてつもなく暑く、毎日汗をかきながら
ビエンナーレの海上を巡る毎日。宿に戻ると足の裏が腫れあがっていて、歩く度に痛みを感じる
感じ・・。30歳を過ぎ怠惰な週末を過ごしたつけをこういうところで感じ、もしまた2年後に
ビエンナーレを訪ねたらこれ程に街を巡ることができるのかと不安が過りました。。。
ま、その時だけなんですけどね。(本当はすぐにでも運動すべき・・)

送信者 Venezia(201108)


ビエンナーレは初回に感じた強烈な印象と比較すると、今年もこんな感じか、と思うところも
ある一方で、特にアジア圏の展示に勢いを感じました。何だか村上や奈良のパクリじゃないかと
思うものが多い一方で、物量で明らかに日本勢を圧倒していて、そのうちどっちがオリジナルか
分らなくなってしまうのではないかという危惧もあり・・・。ここにも日本の衰えを感じるところでは
あります。

写真は今回一番見ごたえがあったAnish KapoorのAscension。蒸気が天井に用意された
ダクトに昇る姿を教会の中という場の意味も含めながら「昇天」とした作品。
シンプルながらも光の加減とか場の微妙な大気の流れとかではっとするタイミングが
偶発的に生み出されて面白いものでした。

送信者 Venezia Biennale 2011


ロンドンは元会社の上司宅を訪ね、あとは買い物買い物買い物。けれど、テート・モダンと
随分前に移転したサーチギャラリーを見て。テートのミロの企画展も良かったけれど、やっぱり
ここはロスコ・ルーム。5年位前に訪ねた時よりもテート・ブリテン(モダンが出来る前)に訪ねた際の
雰囲気にかなり似た感じで、静謐さ、荘厳さが一層増し、ロスコのシーグラムビルの連作を観るに
まさに適した場所となっていました。

送信者 London_1108


元上司とその奥様、大きくなった御子息とも再会を果たし、とても楽しい時間を過ごすことができ、
1週間の旅行を閉じました。

御蔭様で完全リフレッシュ。しかし、帰国後の1週間で完全に現実の世界へすぐに
戻されたのですが・・。

やっぱりヨーロッパはいいなあ。。。。また長い休みが取れたら行ってしまう気満開です・・・。

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2011年05月22日

BIUTIFUL(ビューティフル)

今週は異常に忙しかった・・・。業務量というか精神的にいっぱいいっぱい。
金曜日には「死にたい・・・」なんて縁起でもないことを言ってしまった。
土日で片づける前提で仕事をお持ち帰りしたものの、ストレス解消には美味しいご飯とお酒と文化。
文化なしには私は生きていけません、ということで、シンガポール滞在10ヶ月目にして初めての
映画館。

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BIUTIFUL
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
主演:ハビエル・バルデム

ハビエルがカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞した作品。東京ならミニシアターで観られそうな
作品が2割くらいしか上映されていない(と思う)シンガポールでもシネコンで公開されているのは、
受賞歴とノミネーション(アカデミー賞主演男優賞、外国語映画賞)に寄るものか。

仕事で英語を使っていても映画やドラマのヒアリングは大変・・。日本より公開時期が早くて
それなりに食指が動く作品が多かったものの映画館を訪ねるのは気が引けていて、これまた
早く発売されるDVD(今日は「わたしを離さないで」のDVDをHMVで購入)を買ったり、
日本に帰った時に観たり、飛行機の中で観たりが続いた最近だった。
Biutifulはスペイン語の映画なので英語字幕が付くから観られるだろうと踏んで伊勢丹が
入るビルの中にあるシネコンを訪問。SGD9.5と日本の1/3の価格に驚愕。
どおりでDVDが発売間際だとSGD30以下で販売されたりするわけだ・・・。(SGD=大体65円)

バルセロナが舞台なのは劇中半分位でやっと判別が付く位。冒頭から不法入国の中国人や
アフリカの黒人が顔を見せ、主人公も貧民窟のような場所で生活をしている。
一度バルセロナで夕闇迫る頃に誤って横道に逸れてしまい、「いかにも」な場所を彷徨った経験が
あるのでバルセロナが陽光溢れるスペインが誇る大都市に闇の部分があることは印象から
外れないものの、これだけ暗く、重く描かれたバルセロナを観たのは初めてかもしれない。
ハビエルが前作「それでも恋するバルセロナ」に出演していたのは皮肉としか思えない程の
コントラスト。

ハビエル演じる主人公はバルセロナに不法に入国したアフリカの黒人や中国人が広げる
ビジネスもを手助けして身銭を稼ぎ生計を立てているが、自分がガンに置かされて数カ月の
余命しかないことを知る。

躁鬱病も家事も含めて生活能力のない別れた妻との間に設けた2人の子供を思いやる一方で、
その妻と復縁するには心もとない。自分が斡旋する仕事で生計を立てるアフリカ人や中国人の
劣悪な労働環境を思いやり、手助けをしようとするものの、自分にとって本意ではない帰結を
生み出す・・。

死が迫る中に更に追い打ちを掛けたり、物語的には今までうまくいかなかったことを
うまくしてもいいものの当然うまくいかなかったりと、イニャリトゥはサディスティックに
主人公を追い詰めていく。
ハビエル演じる主人公のみならず、ハリウッドなら復縁を成就させてもいい妻も同様に、
より強くより深く汚されていく。

タイトルのBiutifulは劇中で主人公が娘に伝えた誤った綴りであるが、この映画を全て包括
しているように思える。

貧民窟の汚れた環境、ろくでなしの仕事とその帰結、犬のように死ぬことを宿命づけられた主人公。
ただ、その当たり前のことが当たり前に起きるハッピーエンドなんて予想ができない映画の中で
彼は懸命に生きていた。

「死」を迎える前に何を思い、何を恐れたか。

普遍とも言えるこの問いに答える主人公は汚れていて正しい綴りの「美しさ」ではないが、
それでも彼は「美しい」。

イニャリトゥの作品、「21g」も「バベル」も全て生きる人々の生きづらさを描く傑作であったが、
この中に更に傑作が加わったと思う。

作品が終わり、エンドロールが流れる中でこの余韻に浸ろうと思ったが、当然という素振りで
観客は去り、エンドロールの中盤で観客は私1人・・・。清掃員が入ってきて劇場を見渡し、
私がまだいることを知っていながらも点灯して清掃作業を始める・・・。
信じ難い光景に唖然として、印象を汚されないように立ち去る時に点灯した男とドアの前の通路で
出会う。「まだ上映中だろ?」と言うものの返答なし。思わずF***と呟いて立ち去ってしまった。

全くこの作品にしてこの後味の悪さ。シンガポールで観たことを呪わずにはいられない。
本当にこの国、嫌いだわ、と思う瞬間だった。


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2011年05月18日

久しぶりにblog更新。Singapore Zoo。



(上の写真はオラウータン。かなり繁殖に成功していて、この動物園の看板動物の一つ。
頭上を思いっきり綱渡りしていきます。)

またかなり放置してしまいました。そろそろ更新します・・。
今日はペサック・デイ(仏様の誕生日)でシンガポールは祝日。
動物園(Singapore Zoo)に行ってきました。噂には聞いていたけど、かなりいい。
檻はなく、堀とか草むらで距離を保ちながらもそれを意識させない臨場感。
動物園の臭いと檻が嫌いで子供の頃ほとんど行きたがらなかったのだけど、
今回はかなりそのイメージを覆してくれました。



(シマウマの白黒の縞、間近で見ると本当にコントラストがしっかりしていて美しい。)

ディズニーランドの「非日常感」の創出に近い、完成度の高いエンターテイメントパークだと
思います。

ただ、餌付けで$5とか「この動物のスポンサーはタイガービール!」とかいうのは
興ざめだけどね・・。
まあ、ディズニーランドのアトラクションのスポンサー表示も一緒か。。。



そろそろぼちぼち更新していきます。。。。
シンガポール・ビエンナーレ2011ももう閉会してしまいましたが、そういうのも含めて・・。


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2011年01月11日

最近観た映画短評(3)

またまた続き・・。予約機能を使って日曜日の夜中に書いてます。
そろそろ寝なきゃ・・。

・TRON Legacy

これは良かった。基本映像表現のネクストステージに進む映画はプロットに魅力を感じなくても
手放しで絶賛する最近。グリッドという通常は「平面」を想起させる概念の説明から始まるので
古臭いなあ、と思っていたら、ライト・サイクルのバトル・レースのシーンで平面かと思っていた
場所が重層化して立体になったりと、パタパタと展開していくのが楽しい。

昨年の頭にアバターを観て大興奮したけれど、1年もしないうちにまた新しい映像が見られ、
まさに映画業界もドッグイヤー。

・祈って、食べて、恋をして

ジュリア・ロバーツがキュートだし、ハビエル・バルデムもナイスだが、プロットに共感を
覚えないのだなあ。人生の転機と銘打ってイタリアへ行って人生を楽しむことを覚え、
インドで瞑想の中煩悩を捨て、バリ島でインドの教えを定着させ「安定」を得ようとする
って余りに自意識過剰な旅でそれこそ煩悩に塗れているような気が・・。
この手のステレオタイプ的「自分探し」には共感しないんですよねえ。

・瞳の奥の秘密

これは当たり!アカデミー外国語映画賞受賞作。本人の身内に起きた内容でもないのに
何故か過去の事件に取りつかれていて、それを小説に残そうとする元裁判官。
過去の記憶を丹念に回顧する中で物語は進む。未解決に終わった事件とその悲劇的顛末と
並行して彼が心の中にしまい込んだ恋慕が蘇るという構成。

サスペンスとしても面白いが彼の自省による苦悩、彼が想いを寄せる人とのやり取りなど
人間ドラマとしても非常に面白い。とても重厚なドラマだった。


以上、最近観た映画の短評でしたー。「ノルウェイの森」はそのうち書きます。

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2011年01月10日

最近観た映画短評(2)

さて、昨日の続き。

・人生万歳!

ウッディ・アレンの40作目にして恵比寿ガーデンシネマ閉館前の最後の
作品。何とも残念。
アレンのミューズがスカーレット・ヨハンソンからジェシー・アイゼンバーグに
変わっても(結局頭が少し足りない)、普段はアレンが自分で演じる偏屈な
老人がラリー・デヴィッドに変わっても、偶然がうまく作用してドラマチックに
物語が展開して、だけれどもその通りには終わらない、ということで
ほとんどいつものウッディ・アレンの映画と変わらない。もう変わらないことが
この人なのだというのは決して諦念ではない、が・・。

・クリスマス・ストーリー

監督アルノー・デプレシャンを語る際によく言われる「フランソワ・
トリュフォーの再来」という形容詞は「観念的」(つまりあまり観てない)
フランス映画好きには美しく響くが観てみると「僕はやっぱりフランス映画に
愛されていない」と思ってしまう、そんな紙一重の映画。
(やっぱりフランス映画はルコントとカラックスとクラピッシュだけで
いいかも??)

つまり難しいのだ。

だけれども、比較的長尺の割に長さを感じさせなかったし、ところどころ
台詞の妙で笑えるところもあったし、デプレシャンの旧作に比べるとわかり
やすかったかも。

マリュー・アマルリックがダメな次男坊を演じていたり、ドヌーブが
胆っ玉かーちゃんな感じではまり役だったり、やはりフランス映画を
代表する役者が揃っているだけに見ごたえがあったのは確か。

・ソルト

アンジェリーナ・ジョリーのファンとしては黒髪になった彼女を観るだけでも
いいと思ってDVDをシンガポールで買ったものの、内容的にはふーんな感じ。
幼少期の「秘密」が余りにもフラッシュバック過ぎてどれだけ彼女の人格
形成に影響しているのか説得力がない。まあ、「彼女は何者なのか」と
言えればいいのかもしれないが。。。

続編もありそうなのだけどね。

・クロッシング

「トレイニング・デイ」で監督アントワン・フークアと組んだ縁で
イーサン・ホーク出演し、その他リチャード・ギアやドン・チードルなど
豪華スターが登場したものの、内容があまりに救いようがなくて観終わった後の
印象があまりよろしくない。

救われない不条理さをここまでどす黒く描くことに必然性があるのか
わからなかった私は平和ボケしているのか?

・SP劇場版

金返せ、な1作。ハリウッド映画を意識して派手なアクションシーンを
盛り込んだのだろうけど、映画の3/4がそれだと頭を使わないバカ映画としか
思えない。しかし、続編は見ざるを得ないのだろうな・・。あの対決が
どう落ち着くのか知りたい・・。

・バイオハザードIV アフターライフ

なぜ最初渋谷から始まる必要があるのかだとかプロットのアラを指摘する
線も多いし、1作目から比較すると段々新鮮さが減ってきているけれど、
あり得ないアクションシーンが多く、この手のCG遣いに溢れた作品は嫌いじゃ
ない。続編も見え見えだし、これからも観ますよー。

・Heartbreaker(原題)

日本でも人気ありそうなロマン・デュリスと我がミューズバネッサ・パラディの
共演作で劇場公開されていてもおかしくないのになぜかまだされていない。
配給先がつかなかったか?SQのフライトの中で観賞。

雇われて女を魅惑し、彼女の既存の「ダメになり不幸になりそうな」関係を
壊すという妙な職業を持つデュリスが、近々結婚が決まった娘を持つ
父親から破談させるように雇われる。そして、その後は本当の恋に落ちていく
という良くありそうな話だが、デュリスのコミカルさとパラディのうまく
影がある華奢なキャラクターがあいまってなかなかいい感じだった。

(また長くなったので続きは今度へ・・)


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最近観た映画短評(1)

新年を迎えて早2回目の週末。先週は朝全く起きられずいつもより
1時間近く遅れて起きる有様・・。
来年度の事業計画もいよいよ佳境なので今週はしまっていきたいところ。

さて、週に1度はblogを更新したいので、一番手っ取り早いネタから。
最近観た映画についてまとめて短評で。

例年だとblogのログを見直してベスト10なんて書いていたのだけど、
twitterを始めてから見直すのが億劫になったり、はてまた忙しくなった
せいか書いていなかったり・・。とりあえず記憶を辿りまとめます。

・インセプション

日本からインドまでDVDをハンドキャリーしてもらったのについ昨晩観賞。
映画という一種の虚構装置の中に更に夢という「虚構」を描き、その虚構が
更に重層化されて、と複雑な構造。エレン・ペイジ演ずる学生、そして夢を
設計する構造士となるアリアドネに丁寧に説明する場面(この辺り、
マトリックスでモーフィアスがネオにマトリックスを説明する場面とだぶる)を
聞いても妙に難しい。こんな映画が良く売れたものだと感心してしまう。

とにかくノーラン節全開でメメントといい良くこんなプロットが思いつくものだと
感心。

一番感心したのはこれだけキャストが多くて散漫になりそうなところ
(もう少しサイトーのキャラクターを深堀りしてほしいところではあったが。
やっぱり日本の渡辺謙ですから)をディカプリオとコティヤールの夫婦関係を
観る者を困惑させる程に濃厚に描き観賞後にもまさに「植えつけられた」かの
ように記憶に残ったのが印象的だった。

(ここまで書いてちっとも短評じゃないことに気がつく)

・ノルウェイの森

これは一つのスレッドを立てます。意外に印象に残った。

・ソーシャル・ネットワーク

自覚的ではない嫌なヤツを嫌みなく演じたジェシー・アイゼンバーグに座布団
一枚。自覚的ではないところに「あなたは誤解されている」みたいなことを
言われてキョトンとしているところがまたナイス。

成功譚の裏にある裏切りや成金独特の背徳とかゴシップを早回しでテンポよく
見させられている感じ。内容だけに面白いがただそのまま時系列にそうと
冗長になりそうなところをうまくまとめた構成の妙か。

音楽はトレント・レズナー。ボストン大の彼女をバカにしまくって振られた後に
ハーバードの寮まで戻る妙に長いシーンに被せられていた不安定で鋭角的な
音楽にその端を感じたが全体としてあまり印象に残らなかったなあ。

・ウォール・ストリート(ウォール街続編)

残り30分で着陸のため見られず。酷評されていたがおそらくラストシーンが
あまりに予定調和で陳腐だったのだろうと勝手に解釈。

(あまりに長くなったのでここでいったん。続きは明日・・)


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2011年01月04日

2011年の抱負

元々抱負なんていうものは苦手でして、それなりの抽象度を持ちながらも
アクションが明確に定義される程度の具体性を持ったことをツラツラと書き連ねるのは
非常に難しいものです。

毎年は別にプライベートと仕事を分けて抱負を述べなくても、プライベートなんて
土日に動きまわれば勝手に充実するのだと思っていました。
しかし、シンガポールに来て急変。仕事が余りに忙しいのと、映画を全編字幕なしで
観るのはしんどいので映画は観に行かない(日本に帰って観る)と、美術館等アート系のソフトが
少ないことから休日はダラダラ寝るか仕事するかのどちらか。
「シンガポールには文化がねえ。最低だぁ。」と毒づいてばかりいても仕方がないので
シンガポールそして周辺国の魅力を発見すべく積極的に外に出ていく心構えが必要に
なりました。ということで、両者を分けて。

業務面
・ルーティンの確立(アウトプットの定型化/定期化)

->2010年の抱負と大して変わりはありません。まずは基礎固めから。

・SCM改善などのオペレーション改革による付加価値創出

->基礎固めと並行して。すぐに手を付けなくてはいけない内容はある程度クリアなので
要件定義をしっかりして、実現までのマイルストーンを設定しなくては。

・スタッフのキャリア・ビルディング

->これが一番ストレッチ。東京で部下を持った経験は微妙にあるものの、人のキャリアを
考えて適切にスキルアップやジョブ・ローテーションを組むなんて言うのは初めての
経験です。しかも、異文化で。日本はある程度長期雇用を前提にしていますが、
(と言っても同期の半分はもう会社にいない気が・・)、シンガポールは好況で
労働市場も活況を呈しているようなので、ジョブ・ホッピングも良く見られるようで。
そういう中では常にスタッフのモチベーション低下の兆候や不満に敏感にならざるを得ません・・。
中長期的キャリアの展望を共有してその目標に対して社内での経験を踏まえて
どうスキルアップしていくかそういったことを考えていかなくてはなりません。

プライベート面
・シンガポール主要観光地は巡る

->まだマーライオンもF1の時に後ろ側からしか見たことがありません・・。
気が付いたらシンガポール・ビエンナーレの一環で実際に泊まれるホテルとして
周りが覆われてしまったようでしばらくお預けかな・・。まだ行ったことがないのは、

-ブギス/アラブストリート周辺
-ホランド・ビレッジ
-カトン地区
-美術館・・(実を言うとまだ一つも行ってない。。展覧会も惹かれないし。。)
などなど

・本を読む
->月に5-6冊は読んでいたのも今は昔・・。日本に帰る度に積読だけが増える一方・・。
この事態を打開すべく週末はなるべく読書に当てたいなあ、と。カフェとか公園の
ベンチとかロケーションも変えつつ。

・運動する
->太りました・・。泳ぎます、って言ってどれだけ経つだろう。。
公園も多いのでウォーキングもいいかな、って思う今日この頃。

・近隣諸国に行く
->タイ、ベトナム、カンボジア(アンコールワット)は行きたい。インドネシアも
遺跡とバリ島は行きたい。

何だかプライベートの抱負がいくらでも書けそうな気がしてきましたがキリがないので
止めておきます・・。

今年も実り多き1年になるように。
昨年は猛烈に仕事で突進したので今年は本来持っていた公私のバランスをできる限り取り戻したいところです。。。



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2011年01月03日

2010年を振り返って

気が付いたら1年近くblogを放置してしまいました・・。

twitterで何となく呟いていたのと、7月からシンガポールへ赴任して
全く暇が見つからなかったのが大きな原因です。

このblogを読んでくださる人はみんなご存知かと思いますが、
7月1日付でシンガポールへ赴任しました。

西は中近東・アフリカ、東はオーストラリアまでアジア・環太平洋地域を
カバーする地域拠点のBusiness Planningのマネージャーとして着任。
今まではデジカメだけの管理担当だったところからデジタル一眼やカムコーダー、
アクセサリー等デジタル・イメージング関連商品全てに対象が広がったのと、
部下を3名持つようになったということなど、日本にいた時からは大きく環境が
変わりました。

労働時間も倍増、平日は9時2時で働いて、週末も大体両方何かやっている
という有様・・。東京にいた頃は土日両方とも映画観たり美術館行ったり
していたのに比べるとQOLなんて言うものは全く忘れちまいました。

ということで後半6ヶ月の記憶が濃厚過ぎて前半は忘れちまいまいたが、
総じて充実していた一年だと思います。

なぜか今日、自分の過去のblogのスレッドがRSSリーダーで更新されていたので
1年の抱負のところを読み返して見たところ、下記のようなことが書かれて
いました。

----
随分昔、「24時間働けますか」と時任三郎がリゲインのCMに出演していて
ジェットセッターとして軽やかに海外出張をこなす様に恥ずかしながら
憧れておりました。グローバルな企業に入ったからには海外出張とか簡単に
行けるようになると思っていたのは間違い、その大半を不況期に社会人生活を
過ごす私が30歳になるまで仕事で行ったことがあったのは中国の上海と無錫のみ。
ここにきてやっと、それらしい仕事ができるようになったと感無量であります。
----

また似たようなことを異動の挨拶で言っていたところを見ると、私は
相当このことが重要なようです・・・。
この半年でもインド2回、ドバイ2回、そして台湾、香港、マレーシア、
オーストラリア、イラン、サウジアラビアと計8カ国に出張していました。
最初は念願叶ったとウキウキ出張に赴いていましたが・・・。

一番ひどいのだとシドニーから土曜の夜に帰ってきて寝た後、日曜の夜に
ドバイに発つとか。本当に24時間戦えますかの世界で「戦えねえよ」と
ぼやきながらも意外に体は持ち、しかも日本にいる時に度々やってしまった
MTG中の居眠りもなく・・。何事も新鮮で集中力が続いているうちは
意外と何事もできるものです。

ところで、2010年の抱負として書かれていたことは下記でした。

----
・英語をブラッシュアップする
・よりルーティーンのオペレーションをブラッシュアップする
----

年初にはまだ異動を告げられていなかったので全くそれらしき抱負を
立てていませんでしたが、ともかくレビューしてみたいと思います。

まず英語。

こちらに来てビジネス英語以外のところ、例えば不動産のエージェントとの
会話だとか不具合の多いCATV業者へのクレームだと病院の先生とのやり取り
だとか、同僚との取り留めもない会話だとか、そういった点に自分の
経験不足を感じました。

ビジネス英語と言っても私の職種だとincrease/decrease, more/less than
とか大体使う言葉、言い回しが決まっていてこの辺りは赴任前でも結構
慣れていたので何とか業務上はやり過ごしています・・。
まあ、スタッフからすれば何言っているのかわからねえよ、ということを
不満として持っている可能性はあるかと思いますが・・。

仕事がもう少し落ち着いたら英会話学校に通ってブラッシュアップを
図ろうと思います。会社からのサポートもあるので・・。

さて、ルーティンのオペレーションのブラッシュアップについて。
これは日本にいて自分がその段階で持っている業務を前提にしていましたが、
シンガポールに行っても一緒。
着任時点でも意外にスタッフそれぞれのルーティーンが定型化されておらず、
アウトプットも目的/定型フォーム/発行タイミング等が曖昧なまま
進められていて・・。

この点の整理はまだまだできておらず、実際手を動かすスタッフ側も腹落ち
しないままになってしまっているのが問題点。ここがきっちりされると
それが土台になって、それ以上に何を付加価値業務としてしなくてはいけないか
という議論に移れるので早く片づけなくてはいけないところ・・。

働く舞台が変わっても結局基礎が何であるかを見極めそれを固めて、
望むべくはその後、しかし、実際のところ時間がないので並行して、
付加価値を生める業務を上乗せしていくというスタンスは変わりません。
ということで、この後者の点は今後も懸案であるわけです。

もちろん英語もだけどね・・。

長くなりましたが、次のスレッドで今年の抱負を。



rothko at 23:45|PermalinkComments(0)TrackBack(0) column 

2010年02月24日

抱擁のかけら

いつもはタイトルの部分に原題を書いていたのだけど、スペイン語だと
さっぱりわからない可能性が・・。

LOS ABRAZOS ROTOS/BROKEN EMBRACES

だそうで。後者は英題ですな。

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監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス

ペドロ・アルモドバル監督のは「オール・アバウト・マイ・マザー」以来
その世界観に感銘を受けてずっと見続けている。今作は前作「ボルベール <帰郷>」に
続いてぺネロぺ・クルス。

視力を失った元映画監督の脚本家ハリー・ケインのもとにライ・Xと
名乗る男が自分が監督する脚本を彼に依頼する。その筋書きはハリーに
過去を思い出させ、彼女が昔愛した女(ぺネロぺ)と彼が視力を失った
顛末を思い起こさせる。

父の治療を受けるためということで止む無く愛人となったぺネロぺ演じるレナが
監督と恋に落ち、その結果愛人として囲う実業家の偏執的な監視と突発的な
暴力に悩まされ、結果としては逃避に走る。だが、その逃避を待ち受けていたのは
悲劇的な出来事。こう書いてしまうと何だかソープドラマのようなありふれた
情熱と嫉妬と復讐に満ちた陳腐な話のように思えてしまうが、作品自体
としては劇的な話の筋書きのようで淡々と淡白に進むのが印象的。

この監督が描く物語は「衝撃的」な出来事が常に織り込まれているにも
関わらず、劇的な音楽による高まりや緊迫感溢れるカメラワークなど
これといったわざとらしさがなく、冷静を貫いているかのような客観的というか
傍観者的というか、そういった視線で観客が見つめるように作られているかの
ように思う。

どれだけ悲劇が起きても人生は続く。あまりおおげさに捉える必要はない。
そんな大らかさが感じられる作品だった。

にしても、カメラテスト用に様々な衣装を身に纏い変身する姿を演じる
ぺネロぺは異常に魅力的。
映画の中の監督が執拗にシャッターを切るのを映画として収めるアルモドバル
という二重構造がぺネロぺに対する愛着を増幅させていた。


rothko at 01:11|PermalinkComments(1)TrackBack(0) cinema 

2010年02月23日

「エレジー」と「ダイング・アニマル」

映画と原作、両方とも観賞したのでまとめて。

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エレジー
監督:イザベル・コイシェ
出演:ペネロペ・クルス/ベン・キングズレー

ダイング・アニマル
ダイング・アニマル
クチコミを見る

フィリップ・ロス

原作は現代アメリカ文学の重鎮と言われているフィリップ・ロスの作品。
原作はストーリーが流れるというよりかは、文化批評家で大学教授でも
あるデイヴィットの周囲にいる人々をきっかけに彼の心理描写に近い語りが
続く。聞き手がいる設定になっているが誰であるかは定かではなく、
関係性の明らかではない語りはもはや独白。嫉妬、執着心、その切実さが
密な情景描写と合わせて語られる。

軸となる話は教え子であるコンスエラに邪な思いを持ち、講義の終了と
同時にパーティーを自宅で計画的に催し、手を付けるという
エロジジイの顛末。コンスエラをいかに性的に従属させるかというポルノ
小説かと思わせる濃厚な描写もあり。

ただ実際はそんな浅薄で下世話なものではなく、自分勝手な男が
60年代の「自由さ」を現代においても信奉し、結婚を自己を縛る愚かな
行いとみなしながらも、老年となった自分の魅力がいずれかは彼女に対して
無力になり、若い男に奪われるという恐怖にいかに抗い、彼女を繋ぎ止める
べきか否かと切実なまでに葛藤する姿を克明に映し出す点が非常に印象深い。

男女の別れはやはり訪れそのまま物語の終焉を迎えてもよいはずだが、
彼が彼女に肉体的魅力をフェティッシュな程に感じた部位に「変化」が
訪れるという新たな展開を見せる。

この若く美しき肉体に対する執着こそが彼の中心であったはずなのに、
彼は違う行動を取り始める。もはや違う「欲求」が彼を支配し始める・・。

映画の展開もこれに沿っているが、もっと上品。監督がイザベル・
コイシェという女性であることも影響していると思うが、彼がいかに
肉体的な欲望で彼女に執心し始めたとしても、老年である彼の女性に
対する扱いは穏やかで慈しみ深い。

小説の中では付き合い始めた頃の観劇や食事をする機会はどんどん減って
いくかのように描かれていたが、映画の中では仲睦まじく肩を並べて
時間を共にする場面も多く、関係が既に精神的な部分までに到達して
いるかのように見える。しかし、彼は常に恐れている。老いている自分が
若き者に劣り奪い取られることを。

小説の中の切実さは自由の希求と女性との関係をコミットし束縛されることの
葛藤が中心だったが、映画の中では本当に失う可能性があることをただ怖れる
ことが中心となっている。
その怖れが彼女と絆を深めることへの抵抗となる。

ただ、彼女を結局失った後に、彼の友人の死(小説では彼よりだいぶ若いが、
映画ではほぼ同年齢でデニス・ホッパーが予想外に感じ良く演じている・・)を
機に喪失感が一層高まり、そして小説の中で描かれていた彼女の肉体への
変化、更にその行く末に控える更に大きな喪失の恐怖に耐えられなくなる。

結末としては小説も映画もほぼ似たような感じだったが、小説の主人公の
独善的な葛藤があまりに滑稽で感情移入できなかったのに対して、
同じく愚かだと人は言うであろうが映画の方が男の弱さを浮き上がらせて
描いているのに非常に好感をもった。

最近観た映画の中ではかなり印象的な作品。
まだ老齢の男の哀しみに共感する歳ではないし、そこまで経験豊かでは
ないけどね・・。


rothko at 00:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0) cinema | books

2010年02月16日

Jose James @ Billboard Live Tokyo

ご無沙汰してます。

仕事が忙しいのとtwitterで適当に呟くことが多くて、そのせいでblogから
少し遠のいていた今日この頃。
そろそろ懸案の事業計画も一段落つくはずなので、ボチボチその間も週末に
インプットしたことを出力していきたいところ。
しかーし、来月は8日からUSのサンディエゴに1週間、その後の1週間で初訪問の
メキシコ、そして3度目のブラジルという計2週間の出張も待っているので
色々と仕込みが必要。まだ仕事中心の時間からは離れられなそう。

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さて、昨日はビルボードライブ・東京でJose Jamesのライブを観賞。
18時からの1st Stageで新しいアルバムの曲のみ、14曲ある内の
7-8曲程度かな。Valentine Dayということもあって、MCはHappy Valentineの
連発、元々メローな曲調の多い中、更にメローに歌い上げる感じ。

だけど、このアルバムでよく見られた平板な音階でビートと一体化して
低空で歌うスリリングな曲がライブで歌いあげられると、もっとゾクゾク
する感じになったのが印象的。途中で突然オクターブが上げられたり、
歌いまわしが即興的だったり。ハッとする感じにかなり鳥肌。

ライブはピアノ/キーボードとベース、ドラムの三つ巴のインプロもかなり
多く、CDとは違う印象。ピアノ/キーボードのGrant Windsorはかなり自分の
世界に入り込んで弾けてた感じ。アンコール前の最後の曲ではドラムの
Richard Spavenは4heroとの共演もあったというのが頷けるかなり刻む感じの
インプロで会場もかなり熱狂。

終盤はかなりグルーブ感が出てきて思わず立ち上がってリズムを取りたく
なる感じ。会場がこんなこじゃれた感じじゃなくてクラブっぽいところだったら
良かったのに、とも思った。



rothko at 01:05|PermalinkComments(0)TrackBack(0) music 

2010年01月13日

The Hunting Party(ハンティング・パーティー)

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ハンティング・パーティー
監督:リチャード・シェパード
出演:テレンス・ハワード/リチャード・ギア

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の戦争犯罪人を追うアメリカ人ジャーナリストを
描いた話。2000年10月に出版された雑誌「エスクァイア」にスコット・
アンダーソンが書いた実録記事 What I Did on My Summer Vacation
(僕が夏休みにしたこと)を原案としていて、映画の中で描かれる戦犯
フォックスはセルビア人以外の虐殺を扇動して指名手配され、その後逮捕された
ラドヴァン・カラジッチをモデルにしている。(wikipediaを参照)

ちょっと工夫をしてインサイダーと接触すればどこに戦犯に匿われているか
わかるのになぜCIAも国連も逮捕できないのだ、ということが話の中心に
あるが、結局は「密約がありそうだ」ということがぼんやりとある感じ。
実際の話に忠実なのはわかるが、もう少しその点に絞って話を組み立てた方が
面白かったような気がする。

個人的に愛した人が虐殺されたことから「キレた」ジャーナリストの
復讐も兼ねた追跡劇というのは何となくセンチメンタルで腑に落ちなかった。
かといって戦争の非人道的な部分を克明に浮き上がらせたわけでもなく、
題名の「パーティー」と示すところから、結局は陽気な感じで締めようと
している。

この中途半端さが不甲斐ない印象に繋がった、そういう感じ。

rothko at 21:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0) cinema 

医学と芸術展 生命と愛の未来を探る

医学と芸術展 生命と愛の未来を探る
@森美術館

「科学(医学)と芸術が出会う場所としての身体」を中心となるテーマに
設定した美術展。3部構成で1部では「身体の発見」と題し、ダヴィンチの
貴重な解剖図3点を中心に、多くの古めかしくて少々滑稽な解剖図が並ぶ。

第2部では「病と死との戦い」をテーマに医療器具が並び、第3部では
「永遠の生と愛に向かって」と題して組織培養された皮などが並ぶ。

と書くと、科学技術展か、と思うが実際はそうではない。

そもそも、ダヴィンチは正確な人間表現のために解剖を行い人体の
構造を理解しようとし、芸術と科学の統合を体現した人間と言える。

ダヴィンチは世紀のマルチクリエイターとして名を馳せているため、
「彼は特殊」ということと思われるかもしれない。しかし、第1部で並ぶ解剖図は
ある種の意図を持って陳列されたことは否めないが、胎児を宿した母親の
解剖図であったり、どこかグロテスクでしかしある意味滑稽で見る者を
惹きつけるものであったり、「純粋に」科学的な観点で描かれた解剖図とは
異なり、芸術と科学が未分化であることが感じられる。

おそらくこれも意図を持って並べられたものであるが、「メメント・モリ」
(汝、死を忘れることなかれ)というある種宗教的なメッセージを
込められて一般人に対しても見学が開放されていたという「解剖ショー」を
描いた絵画もエンターテイメントと科学的で学術的な探求の場が未分化で
あった時代を象徴している。

今となっては、解剖図が一般の目に留まるとグロテスクでホラー、禁忌的な
ものという印象を持ち、それこそ解剖自体が見世物となることなんて
考えにくい。科学と芸術の分化、倫理感の発達により「死」を崇高せしめた、
そもそも医学の発達により「死」が隣に常にあるものではなく、稀なものに
化した、など、身体の内部を顕在化させる試みや「死」を露骨に表象する
ことが現代ではある意味「タブー」となってきてしまった。

しかし、そのタブーに立ち向かうアーティストは多くいて、この展覧会にも
いくらかの現代美術家の作品が並ぶ。松井冬子のおどろおどろしい
日本画や、やなぎみわのギリシア神話で運命の三女神を意味する「モイラ」
を題材にする作品、身体的に不具な要素を持つ男女のキスのシーンを
彫刻にしたマーク・クイン、そして「死」をテーマにして数々の波紋を
巻き起こすダミアン・ハーストなどコンカレントな作家ばかりで面白い。

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(森美術館の展示風景から抜粋)

科学と芸術を統合して行く試みもいくつかこの展覧会で見受けられたが、
普通に美術館で過ごしている分にはそういうことを常日頃感じられるものでは
ない。実際のところは分化してしまったのだろう。

しかし、過去において医学がそれ程に発達せず、「死」が隣り合わせであった
頃に感じられたであろう、「死」の手触りは、たとえ現代ではタブーと
なっていても、確実にそれを示すものを観る者の心をざわつかせ、刺す。
観る者を感化し、沸き立たせる。それが現代の作家の表現する作品にも
宿るのであれば、根元的な部分では、科学と医学がまだ分化する前の頃と
変わらないのではないかと感じさせる展覧会だった。

医学・薬学の研究に対し世界最大の助成を行っているウエルカム財団(英国)
のコレクション(解剖図や医療器具などを中心に様々なコレクションがある)と
現代美術や円山応挙《波上白骨座禅図》まで組み合わせて展示する、
非常に意欲的な展覧会だったと思う。


rothko at 21:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0) art/design 

2010年01月12日

No Man's Land 想像と破壊@フランス大使館−最初で最後の一般公開

最近は予約機能を使って観て放っていた映画感想を垂れ流しにしていますが、
久しぶりにリアルタイム更新。



天現寺橋近くにあるフランス大使館が敷地内に建設した新庁舎へ移ることから
旧館を取り壊すまでの間、建物の外壁から内部までをフランスおよび日本の
多くのアーティストの自由に使わせるという試み。
ちなみに旧庁舎の立て壊された後は野村不動産のPROUDシリーズのマンションとして
売り出されるようだ。

旧庁舎でも旧館と新館があり、主に旧館の方に展示が集中している。
外装もこんな感じである意味カオス。



大使館として使われていた施設だが、意外に小ぶりの部屋が多い。
10畳もない部屋が廊下に沿って並ぶ。これは大使館職員一人一人に個室が
与えられていたためだろう。この小ぶりの部屋1つ1つが単独もしくは複数の
アーティストに与えられ、ほぼ制約なしに扱われる。部屋だけでは足りず、
廊下全面にも作品は並び、階段にまで。あまりに衝撃的で子供が、「ねえ、
お母さん、鼻血だって!」と叫んでいて周囲の笑みを取っていた・・。



No Man's Landは同名の映画でも話題になったように「誰のものでもない土地」
を指し、映画の設定では軍事的にどちら(ボスニアとセルビア両勢力)にも
占領されていない場所を指すことがある。これからインスピレーションを
受けた韓国人のアーティストJ.Joは38度線の非武装地帯を収めた写真を
展示していた。これはかなり優等生的な発想。



一方で、No "Man's" Landという言葉からモニク・フリードマンは
"One Womans's Land"と読み替えて作品を展示していた。
ここは思わずニヤリとさせられるところ。






廃墟になりゆくものはなる前の歴史的文脈・記憶がある。それを尊重する
形では、大使館にあった各国の辞書をシュレッダーで粉砕して「墳墓」を
イメージして部屋を埋め尽くしたというセシル・アンドリュや、大使館の
敷地の土地を「剥ぎ取った」吉野祥太郎の作品が見受けられる。





しかし実際は、正直「好きにやっちゃいました〜」的な作品が多い感じ。
それはそれで面白いのだけど。フランス大使館だし、部屋中トリコロールで
染めてみました!みたいな。





廊下の壁も覆い尽くされてます、色々。





こじんまりとした部屋、くつろげるようにソファを置き、ビデオ作品を
流していたHIROMIX。結構久しぶりな方の気がする。ガーリーフォトの
先駆者は蜷川よりこの人だったかも?



大使館、おそらく大使の部屋だったと思われる場所。Audrey Fondecaveの
"Les Ambassdeurs"というタイトルで屏風のように油絵が鎮座している。


この絵はホルバインの「大使たち」という絵の構図に世界中で活躍する
アーティストを重ねているのだとか。大使館、大使という記号そのものを
素直に引き受けた洒落た作品だと思った。

ということで、期間限定、破壊されることが決まっているだけあって振り切れた
作品がの多い展覧会、非常に楽しめた。1/31までの期間限定イベントなので
まだ観に行っていない方は是非。

No Man’s Land 【ノーマンズ ランド】

木・日 午前10時〜午後6時
金・土 午前10時〜午後10時
という変則的な開館時間なので注意。


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THE INTERNATIONAL(ザ・バンク 堕ちた巨像)

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ザ・バンク 堕ちた巨像
監督:トム・ティクヴァ
出演:クライヴ・オーウェン/ナオミ・ワッツ

ルクセンブルクに本部を置く国際メガバンクのIBBC銀行が武器の不正取引に
手を染めているということを内部告発する関係者とインターポールの捜査官が
接触を試みるが、結果として暗殺される。
内情に通じるものは悉く暗殺され、捜査員も常に危険に晒される、という
ストーリー。

銀行というインテリジェントな組織と武器取引が意外にも関係し、紛争の助長、
それに伴う金融取引の活発化による銀行に対しての莫大的な利益をもたらす、
そんな筋書きが背景にあるわけだが(ネタバレ?)、結構リアリスティックな
設定で面白い。頻発する地域紛争で莫大な富を築く、そんな隠れた悪玉が
この世にいてもおかしくない。

硬質で切迫感のあるストーリー展開で、ナオミ・ワッツはイースタン・プロミスや
21gもそうだが、何でもっと陽光降り注ぐ明るい映画に出ないのだろうと
疑問ではあるが(まあ、この悲壮感が彼女の美を引き立たせるのかもしれない)、
雰囲気としては嫌いではない。

ラストに近いNYのグッゲンハイム美術館での銃撃戦は見物。傷がついても良い
展示物を置いて後片付けをして・・。相当大変だったと思われる。

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2010年01月11日

W.(ブッシュ)

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ブッシュ
監督:オリヴァー・ストーン
主演:ジョシュ・ブローリン

まだブッシュが現役の大統領であるにも関わらず、上のような写真と
共に公開されたものだから、常に反体制的であることを好むオリヴァー・
ストーンがまた波紋を巻き起こす問題作を作ったのかと気になっていた。
しかし、日本での公開劇場は数少なく、公開中は断念。DVDで観賞。

911後イラク戦争へと突き進むアメリカの指導者を糾弾することを主眼に
置いて作られていて、ある意味視点の定まった作品かと思ってみていた。

しかし、どちらかと言うと出来が悪くそれゆえに名門ブッシュ家の名を
汚す存在としてみなす父との確執など、一個人の人格形成に及ぶ出来事を
掻い摘みながら、若干の滑稽さを含んだ軽やかな「悪意」は感じるものの
比較的中立的にジョージ・W・ブッシュという存在を浮き上がらせている
のが印象的だった。

もちろん、イラク戦争に及ぶまでに周囲を囲むネオコンの意見を安易に
頼りにして性急に事を進め、結果として化学兵器を見つけることができず
大義を失った時には周囲に苛立ちの矛先を向けるなど稚拙で我々の
イメージ通りのブッシュ像を浮き上がらせることも怠らない。

しかし、「出来そこない」が大統領になるアメリカという国の政治システムを
糾弾するといった過激なことではなく、ブッシュの抱える個人的なトラウマ、
失敗に打ちひしがれる姿、その人間としての姿は決して彼を責めるものでは
なく、どちらかと言うと温かい視線のように感じたのは気のせいか?



rothko at 21:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0) cinema 

2010年01月10日

JULIE & JULIA(ジュリー&ジュリア)

こっちも飛行機の中で観た映画。ただし、上海から羽田に飛ぶ便は
安定飛行をしている時間が2時間にも満たないので最後まで見られず・・。
DVDで最後まで観るぞー。

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ジュリー&ジュリア
監督:ノーラ・エフロン
出演:メリル・ストリープ/エイミー・アダムス

911の遺族対応のコールセンターで変わり映えのしない毎日を送り
抑鬱されたエイミー・アダムス演じるジュリーが、変化を求めて
始めたのが、アメリカにフランス料理を紹介する料理本を書いて
旋風を起こしたジュリア・チャイルドのレシピ524個を1年で制覇し、
その内容をblogに記すというもの。

劇中ではそれと並行して外交官の妻としてフランスに渡り、男性に交じって
コルドン・ブルーでフランス料理を習得し、レシピ本を執筆すべく奮闘する
メリル・ストリープ演じるジュリアのストーリーも絡められる。
この両者を行ったり来たりしながら描かれる展開が秀逸。

しかし、この作品のポイントはやはり2人の主演。エイミー・アダムスは
ディズニーのコメディ映画「魔法にかけられて」で非常にチャーミングな
役柄を演じていたのが印象的だったけれど、この映画でもフラストレーションが
溜まると容赦なく凹む迷惑なタイプの女性をチャーミングに演じていた。

メリル・ストリープは完全に素じゃない演技。大体声からして甲高くて
演じるの大変だったんじゃないか、と思う。
素晴らしいのは美味しいものを食べた時に本当に幸福な顔をすること。
やっぱり料理を素直においしく食べられる人は素敵だ。

料理そのものの美しさや香りや味を伝えるように作られた作品ではないけれど、
料理に関わる人の幸福が伝わってくる気持ちの良い映画。


rothko at 21:00|PermalinkComments(2)TrackBack(0) cinema