2005年11月10日

新生モーニング娘。賛歌 〜11月3日札幌にて〜

biei☆平成17年11月3日 札幌1☆

早朝に東京を発ち、午前中には到着した札幌駅のカフェで仕事を片付けコンサート会場に向かった時には二時半を回っていました。曇天ではあるものの、雨上がりの新鮮さに満ちた町並みを秋を惜しむように未だ色彩を放つ木の葉を愛でながら歩いている内に、いつの間にか厚生年金会館に到着していました。

人工的に計画された都市のビジネス街の風景は、日本的な「風土」を感じさせない理知的な印象を振りまいているにも拘らず、開拓以来の年月の蓄積が日本という「風土」に立脚しない独特の重みと温かみとなって感じられ、ビジネスでも観光でもない、つまり札幌という街に目的を持っていない「招かれざる客」である私を心地よく迎えてくれました。

古きよき時代の建物である会場は「イベント」の為の施設というより寧ろ「芸術」という敷居を強調する装置として佇み、周囲の役所やシティホテルが立ち並ぶ環境と共に「モーニング娘。のコンサートの場」というカジュアルで楽しいといった雰囲気に相応しくは無いのですが、寧ろ、以前に比べ(部外者からの視点での見た目から来る敷居という意味で)大人しくなり過ぎたファン印象のファンが集う前庭がそれを助長している様な気がします。

良くも悪くも「部外者を遮断するお祭り」に近かった此れまでの彼女達のコンサートに比べ、会場の雰囲気が落ち着いてきた事はこの北の街でも確かめることが出来ました。


昼夜2公演、どちらにも参加して来ました。此れほど昼夜の印象が変わらないコンサートは彼女達のコンサートでは稀ではないのかと思いました。それは直接的には彼女達に原因があるのではなく、迎えるファンの姿勢に起因するものです。

モーニング娘。のコンサートであるなら、二公演では二公演、四公演では四公演、全てを「参戦」するのが当然であるとの姿勢から、結果的に流れで鑑賞してしまう「熱いファン」が過半数を占める彼女達のライブは、それ故に一回の公演のみでは、流れが掴めないという(これからのファンや将来のファン層にとっての)弊害がありましたが、今回はそれがありません。其々の公演でファンはその回の公演をその場限りの貴重な時間として楽しみ、そんな姿勢に彼女達も良く応えた「ライブらしいライブ」であり、その意味で本当に楽しいライブでした。



☆セットリストに沿って☆


全24曲。細かくて申し訳ありませんが楽曲それぞれについて感じた印象を記します。ライブに参加できない方にライブの気分が伝われば良いなと思います。ライブにこれから行く方にいつもとは別の視点でも彼女達に接して欲しいと思います。何よりモーニング娘。のライブに行ってみたいと思っていただければ幸いです。


オープニング映像

彼女達のいつもの形であるスクリーンでの映像でのメンバー紹介。それ自体の完成度について語る事に意味は無いでしょう。しかし、漫画的でコミカルに過ぎる画作りは結果的に今のモーニング娘。を語るものとしては相応しいとは思えません。その点については後々触れたいと思います。


色っぽい じれったい

何よりデコラティブな衣装が印象的。フィットしない衣装は身体の「キレ」を表現するのが難しいのですが、それぞれがそれぞれの身体表現が出来ている今の10人にとっては、寧ろ華やかさを際立たせる効果が勝っています。キラキラを輝くステージの豪華さはオープニングに相応しく、「ライブに来ないと実感できない」楽しさをイキナリ提示してくれます。


LOVEマシーン

今の10人が自分達がオンタイムで経験していない楽曲を提示するときに共通の感想でもあるのですが、楽曲自体のコンセプトが浮き彫りとなる様な表現です。コミカルですらある振りや歌詞を懸命にそして高いスキルで表現することにより結果として「格好良く」なってしまう醍醐味が味わえます。演じ手側でも勿論聴く側にとっても使い古されてしまっても良いこの楽曲が懐メロではなくこうして「ライブ」として生きている事は驚きです。


ラヴ&ピィ〜ス!HEROがやって来たっ。

此処最近のモーニング娘。のテーマソングと言っても良い曲。明るく元気、リズミカルでノリ易い曲。という意味では「ライブに参戦する」ファン向けの楽曲であることは確かです。オープニングからの3曲で徐々にテンポアップしていく構成もあって会場の雰囲気は最高潮になるのですが、強調しておきたいのはメンバーは単にノッて飛ばしているのではないということ。歌うことが盛り上げることに繋がることを忘れていません。一緒にジャンプしている人は当然、呆然と煌びやかなステージを眺めている人も楽しめます、ノレます。


恋は発想 Do The Hustle!

新曲(のカップリング)。敢えて言えば難解な曲です。モーニング娘。のファンで、彼女達のライブを楽しんできたファンにとっては新たなバリエーションとして受け容れ易い曲だと思います。でもそれは、つまり聴くものを選ぶという事でもあります。今回のライブの流れでは問題ない曲だと思いますが、いまの10人に相応しい楽曲かといえば疑問で結果的に新曲でなくて良かったなと思ったりもします。


ザ☆ピ〜ス!

この楽曲は前曲「恋は発想」の系譜、シングル曲でありながらライブピースとして効果を発揮する曲だと思います。個人のキャラクターがチームより勝っていたリリース当時のプレゼンテーションに比べ真逆な表現になっています。此処のフレーズがバラバラに輝くことがこの楽曲の魅力であると了解していましたが、この10人はメロディーラインの美しさを教えてくれました。


恋のダンスサイト(昼)

誤解を恐れずに言えば、少なくともライブにおいて、歌い手自身ではなく、この楽曲自体の魅力を素直に提示してくれたのはこのツアーにおける10人のモーニング娘。であると思います。勢いや迫力、またはその背景となる「想い」ではなく、表面的なコミカルさとその裏に見え隠れする狂気と狂喜とをそのままに表現してくれた事でこの楽曲の素晴らしさに改めて出会えた気がします。


恋愛レボリューション21(夜)

この曲も会場は盛り上がりますが、前提としてノルのではなく、出来ればメロディーがラインとして繋がることを大切に歌う彼女達の歌に呼応して盛り上がって欲しいと思います。それほどに上手いと思います。いまのモーニング娘。は。


恋の始発列車

当時(デビューからセカンドアルバムリリース位まで)のモーニング娘。の楽曲はソロでも歌える楽曲を多人数で敢えて歌い、声や歌う人数の変化で楽曲に彩を添えるというスタイルでした。でも実はこの様なスタイルが一番似合うのは今の10人(この楽曲では特にメンバーの中でも安定感のある6人に絞られているが故に)であると実感できます。個性のよさではなく楽曲のよさを1人で歌うのではなく多人数で歌うことのよさ、つまりモーニング娘。という存在のよさが表れています。


バイセコー大成功!

名演による名曲が続く中。残念と思う曲のひとつです。楽曲に魅力が無いという訳でも、歌っている3人が力不足ということでもなく、この曲で3人の「かわいらしさ」を表現しようとした演出意図に疑問を感じます。楽曲は難解で難しく、寧ろクールに完璧に歌いきって初めてコミカルさが表現出来るものであると思います。この流れでこの三人でかわいらしい楽しさを表現するのであれば選曲は例えば「友達(♀)が気に入っている男からの伝言」位がちょうど良いのでは。


ラストキッス

エースという言葉で表現することが似合っているのかは別として今のモーニング娘。で歌でも振りでもリードしている高橋さんと田中さん、その二人に近づきたいとの意志を明確にしている亀井さんの3人によって控えめな歌唱で提示されるこの楽曲はこのライブの一つの到達点です。楽曲のよさを大切にし、十分に届けながら、しかし同時にライブの動的な「揺れ」や緊張感を失わない醍醐味は他に代えがたい魅力となって聴く者に届きます。


男友達

本当は以外でもなんでもないのですが、リーダーたる吉澤さんのほのぼのとした人のよさが溢れる優しい曲になっています。吉澤さんの為の楽曲である誤解してしまう位に吉澤さんの世界が展開されます。ユニットにおいては基本的に脇を固めるポジションに居る彼女がソロでは個性的なシンガーとして音楽を届けることが出来る。ファンにとっては当たり前として受け止められてしまうのでしょうが、とても贅沢なことであると思わずには居られません。付け加えて、ためらわない潔さが適度なバラバラ感となって、プロのバックダンサーの様な脇役的な詰らなさとは正反対な活気溢れるフリを見せてくれる6期7期の4人にも注目です。


そっと口づけて ギュッと抱きしめて

吉澤さんに続いて、10人の歌手の集団であるモーニング娘。のソロとしての魅力の提示。現在は時としてセンター、時としてポイントでの効果的な歌声で縦横無尽にモーニング娘。を支える藤本さんの名曲は凄いの一言。シングルの中でも特に難曲であるこの曲を堂々と歌い、一人で会場全体をリードしてしまいます。面白いのはソロの時より表現の多様性を身に付け、より楽曲の雄大な世界観が表現できている事です。


涙が止まらない放課後

バイセコーから少人数の構成、或いはソロで楽曲に合わせた個性的な表現がハイレベルで次々と提示され全く飽きる事がありません。今の10人の中では歌手としては正直脇役としてのポジションが似合う紺野さんのソロによるこの楽曲も彼女のやさしくてのんびりとして、そして不安定な個性が徹底的に表現されていて印象的です。何より所謂モーニング娘。的な世界観とはまるで正反対である事がとても面白く、ライブの句読点として効果的です。


Memory 青春の光

正直言います。この曲がリリースされた時から、この曲自体の魅力をモーニング娘。から提示されるとは思っていませんでした。先輩達によるこの楽曲の表現が稚拙であるとか未熟であるという事ではないのですが、実力に対し不釣合いな楽曲に挑む姿がこの楽曲の魅力であると思い込んでいたのです。しかし、この楽曲の流れの中で自然と提示され、背伸びしているという感覚はゼロです。


シャボン玉

田中さんが居ることでヴォーカル合戦となるこの楽曲は、ライブで聴いてこその曲です。この曲に限ってはメンバーも観客を向いていないかもしれません。自分が歌うフレーズが明らかに前のメンバーの歌い方の影響を受けている。お互いがお互いを意識ながら張り合っている姿を目の当たりにして、観客の一人に過ぎない私はある意味孤独ですが、その孤独感もまたライブの楽しさではないでしょうか。


初めてのロックコンサート

「見せ場」という言葉を発してのイントロについては、首を捻りたい心境ですが、そんな蟠りは簡単に忘れてしまう位の魅力を放つ小品に仕上がっています。5期の4人はチームワークに優れたヴォーカリスト集団に生まれ変わったモーニング娘。の中核を支えています。今のモーニング娘。の個性は実は5期の個性と言っても良い位です。そんな4人が地味だけれど、しっかりと丁寧に歌うこの曲が私は好きです。


パパに似ている彼

「恋の始発列車」同様にソロでも歌える位にメロディーラインが大切となる楽曲は今のモーニング娘。にとっては最も得意とするところです。様々な場面で様々な人達によって歌われてきたこの曲ですが、原曲の魅力を素直に引き出すという意味においては今の10人は最適な10人であると思います。聴いている内に10人のことを忘れて楽曲を楽しんでいる。もちろんそれは彼女達に対する賛辞です。


AS FOR ONE DAY

この楽曲がリリースされた当時(それは実は最近のことですが)楽曲自体決して悪くないのに、CDの音源で聴く限りもっと浸透しても良い曲なのにという残念な気持ちが続いていました。ライブにおいて瞬間瞬間の輝きは見出せるものの、楽曲全体としての印象が散漫になってしまうという印象がありました。しかし、今回のライブではタイトに演じられ時に荒っぽい場面があっても一本のラインが通っている為、楽曲を素直に楽しめます。


Mr.Moonlight 〜愛のビッグバンド〜

今回のライブの中で最も注目すべき、そして最も楽しい、掛け値なしに楽しいステージを提供してくれるのがこの曲です。およそ歌謡曲、ポップミュージックに興味が無くても、例え、モーニング娘。という存在を知らなくても、極端に言えば日本語を理解していなくても、このステージを見れば思う存分に楽しむことが出来る。それは決してオーバーな表現ではなく、それだけの凄い説得力がこのステージには存在していると確信しています。街を行き交う人々に「騙されたと思って見てくれ」と懇願したくなるくらいです。此れだけ事が出来る彼女達に、その結果として未来は開かれるべきだと願いたいし、こんな楽しい時間を体験できたファンはその事に感謝し、そして広げる努力しても良いのではないかと思います。ちょっと説教もしたくなるような素晴らしいステージです。


直感2 〜逃した魚は大きいぞ!〜

一般に浸透したモーニング娘。らしさ、「明るく、元気、そしてパワフル、何より楽しいお祭り騒ぎ」が素直に表現された曲。であるからといって決して単純ではなく、転調を繰り返すメロディーは複雑きわまるフォーメーションチェンジなど彼女達のスキルの高さを如術に示してくれる楽曲です。ライブでは文句なしに楽しい曲ですが、シングルとなったとき幾ら年末を特番を意識したにせよ、歌番組での画面やPVの制約、音源だけで魅力が伝わるか不安ではあります。原曲を知り尽くしたファンを敢えて切ってでもモーニング娘。らしさを訴求しようとする姿勢には共感しますが。


女子かしまし物語2

本編ラストMC前。此処まで一気呵成に続けてきた訳で、メンバーとファンが一体となってそれぞれを称え合うかの様な雰囲気に包まれる楽しい曲。この楽曲がライブにおいてこの様な効果を発揮するとは思いもよりませんでした。良い意味で力が抜け、ラストに向けた小休止ともいえます。


THEマンパワー!!!

この楽曲にこれほど好印象を抱くことになるとは思いませんでした。発表当時はモーニング娘。の他のシングルの例に漏れず極めて丁寧に作られているとは思いましたが、音楽的には乏しい動機、或いは要素を徹底的に装飾し、肥大化させた作り物的な強引さを感じていましたし、フリなどの表現もいつの間にか定着してしまったモーニング娘。らしさばかりが強調されて押し付けられているような感じを抱いていました。今回のライブでは抑えた表現がなされ曲の骨格が明快に伝わり、アッサリした感じが逆にこの曲には合っていると思います。


ここにいるぜぇ!

本編ラストのこの曲も、前曲同様にあっさりと演じられます、ラストであるが故に、或いは極めて「仕掛け」の多い楽曲の特徴もあって、もっと粘っこい表現になってもよいのですが、これは今の10人の個性なのでしょうか。それとも意識しているのでしょうか、あえて逸脱することを拒みながら、適度な高揚感を伴い歌います。バランスがとにかく良いという印象で、爽やかに終了します。


ふるさと

これまで様々な形で歌い継がれてきたこの楽曲にも新たな光が与えられました。リリース当時から1人で歌うことが前提であり、歌う人が如何に解釈し表現し得るかがこの楽曲のスタイルであると勝手に承知していましたが、今回は基本的に全員で歌い、部分的にソロが挿入される何時ものモーニング娘。のスタイル。これは単に逆にしたのではなく、ソロで歌うに相応しい曲でも10人で歌えることを、そして10人で歌うことによってソロとは異なった魅力が表現できることを図らずも示しています。一人の女性の独白だった楽曲がファンを含めたその場全員のそれぞれのふるさとへの思いへと変化しました。リリース時の意図を尊重する意味でも、これからも歌い継ぐという意思の表れとしても、この意外に大きい変化は歓迎できるものです。


Go Girl 〜恋のヴィクトリー〜

本当の意味でのラストは、何よりも楽しかったという印象が残るライブに相応しい、この何よりも楽しい曲で締めくくりです。リリース当時はあまりに王道的に楽しさばかりが強調され、また何時の間にかモーニング娘。のセオリーとなってしまった各メンバーの「見せ場」に乏しいこの曲はモーニング娘。が歌う曲としての意味が問われがちな曲でしたが、今回のメンバーにより今回のライブの締めくくりとしてはピッタリです。メンバーそれぞれとではなくモーニング娘。と楽しんだライブであったこと実感しながら幕を閉じます。




☆10人のヴォーカリスト☆


今のモーニング娘。はチームとしてまとまっています。10人の固まりとして、つまりモーニング娘。として全体を俯瞰することが容易に出来るのです。勿論、個々人の魅力の乏しいという意味ではなく、個々人の魅力が個人の輝きに完結するのではなく、モーニング娘。というグループの魅力に還元されているという意味です。

その様な彼女達にライブ会場で接するとグループとしての素晴らしさに先ずは目を奪われます。それは彼女達が発するもの受け止める姿勢として正しいものだと思います。

しかし、その様な今のモーニング娘。であるからこそ、それを構成する個性溢れるモーニング娘。にとっての脇役であるメンバー個人個人の魅力を語ることが大切だと思います。


吉澤ひとみさん

リーダーと呼ぶ事が相応しい人として圧倒的な存在感を放っています。何よりも素晴らしいと思うのは、誰が見てもリーダーであると思わざるを得ないにも係わらず、一般的なリーダーらしさである威厳や支配、高圧といった親しみにくさが全く無く、彼女の個性である鷹揚さ、ほのぼのとした雰囲気、やさしさをもってリーダーとなっていることでしょう。その事が今のモーニング娘。の自然体な雰囲気を作っている大きなファクターだと思います。脇で支え、時に中心で個性的なヴォーカリストとして曲に華を添える存在。楽曲より自身の個性が前面に出るヴォーカルスタイルはモーニング娘。の中では少し以前のスタイルなのですが、彼女自身が強烈な個性を放つ存在ではないので、結果的に今のモーニング娘。にとても良く溶け込んでいます。これからも「新生モーニング娘。」を導いていって欲しいと思います。


高橋愛さん

今のモーニング娘。におけるセンターの一角を占める彼女は、歴代のモーニング娘。のセンターとは異なり、少なからず脇からサポートする役回りを担っています。しかも面白いのは脇に回った時点ですっかり脇役として周囲に溶け込んでしまうことです。私は、これは彼女の欠点であるとは思っていません。10人が縦横無尽に役回りを交代する今のモーニング娘。にとっては、とても「らしい」センターヴォーカリストだと思います。単に個性で輝くのではなく、歌唱にしても、フリにしても技術、基礎を大切にする彼女のプロらしさを私は物足りないとは感じません。むしろそのままに磨いて欲しいと願っています。


紺野あさ美さん

正直言えば今のメンバーの中では歌えていない人の1人でしょう。しかし、その事を自分自身でしっかりと受け止めていて、将来、もっともっと歌えるようになる事に対し諦めていない人でもあります。どんな曲でもセンターを張れるという訳ではありませんが、脇役としてフリに徹したときはスタイルの良さも寄与して意外にクールでシャープな動きがステージに締りを与えていてとても重要な役割を担っています。そして、センターで歌うとき彼女の個性的な声はモーニング娘。の一つの個性として十分に魅力的です。1人の歌手では此処まで幅広い世界観は提示できない訳で、モーニング娘。が10人のヴォーカリストであることを実感させてくれる人です。


小川麻琴さん

紺野さんとは間逆な人。しっかりと歌え、そして踊れる基礎、実力、素質がありながら、そこに依存するのではなく、自身の個性をもって10人のなかでもポジションを得ようと努力する人です。彼女が仮にソロの歌手であったならこれほどの努力をする事は無かったでしょう、でも一方でソロであったならこれほどまでに変身することが出来なかったでしょう。何かと中途半端な印象が付きまとう今の彼女ですが、特にダンスについては、フリにそって確り踊るという意味ではなく身体で何かを表現するという真の意味での実力においてメンバー随一だと思います。彼女自身このまま脇役で終わることに納得はしていないでしょうが、これほど歌え、そして踊れる人が脇役で居て、時に前面に出て場をさらう事の格好良さは今のモーニング娘。の大きな魅力だと思っています。


新垣里沙さん

モーニング娘。を名前だけしか知らない人、いや暫くモーニング娘。から遠ざかっていたファンすら今のモーニング娘。において新垣さんがセンターの一翼を担っていることは知らないと思います。嘗て無い位の安定度を誇る「新生モーニング娘。」においてもヴォーカルについてもフリについても、何よりステージ上での様々な表現においての安定度は随一です。いかなる環境、状況においてもプロらしい結果を提示してくれる彼女。既に与えられているパートによって十分に評価されている彼女ですが、チームのリーダーとしてではなく、プロの歌手としてのモーニング娘。をこれからも支えて、そして引っ張っていって欲しいと思います。印象やイメージではなく、行動によってファンに支持されるに至った彼女はこれからも信頼できる存在です。いや、信頼させていただきます。


藤本美貴さん

彼女が、プロのソロの歌手として相当な実力を備えている彼女がモーニング娘。のメンバーとして、それも決して突出した存在ではなく、10分の1として存在していてくれることに感謝しています。ソロとして前面に出たときは圧倒的な存在感を放つものの、脇に回った時には年上のメンバーとしてサポートに徹する姿勢は、チームとしてのモーニング娘。を壊す事無く、同時にチームとしてのモーニング娘。の多様性、奥深さに繋がっています。しかし、実は、精神的にも、フィジカル面でも好不調の波が激しい彼女にとっては、どんなときも他の9人が居てくれる今の環境が楽なのかも知れません。不調なときは他のメンバーに助けられ、しかし好調なときは大爆発してモーニング娘。の盛り上げる。そんな意外性は今のモーニング娘。のスパイスです。


亀井絵里さん

元来器用な彼女は、モーニング娘。の一面であるバラエティでの活躍が目立ちます。歌以外の場面に置いてはすでにメンバーをリードしているといっても良い位ですし、それが寄与し個人としての人気も高まっています。モーニング娘。のメンバーの中では珍しく、場を読み、その上で自分を演じることが出来る都会的な人です。今の状況に対し満足しても本来十分な筈なのに、彼女は歌に対し諦めていません。安定感に欠く面があるとはいえ嵌まれば歌唱の面に置いても実力を発揮する彼女はセンターの周囲で虎視眈々とセンターを狙い努力し、ライバル心をむき出しにして頑張っています。彼女のこのステージ上での姿勢がモーニング娘。に緊張感を与えています。このまま諦める事無く続けて欲しいと思います。それがモーニング娘。のためにも彼女自身のためにもなる事ですから。


道重さゆみさん

歌えていないモーニング娘。のメンバーの1人です。そしてその事を自分自身で理解し、その事に満足していない彼女です。彼女の個性は「かわいい」という事の様ですが、それは残念ながらモーニング娘。の中においては個性にはならないのです。いや、実はステージ上での戸惑いつつも常に真剣で全力投球の彼女は寧ろ迫力が在るし、時に信頼感すら感じるときがあります。乱暴かも知れませんが、このまま迷い続けて欲しいと思います。諦めたり、誤魔化したり、妥協したりしない彼女は、長身でスタイルの良い恵まれた身体もあって実はステージの上で、脇役であるにも係わらずそうとうに輝いています。モーニング娘。は10人です。誰もが「歌える」必要は無いのです。誰もがステージで輝いていることが大切なのです。


田中れいなさん

新生モーニング娘。のセンターは田中さんです。最初から約束されたセンターではありません。歌手としての才能や声質がセンターとして恵まれていた訳ではありません。努力と実力でいつの間にかその場所に彼女は立っていました。センターであるからといって常にステージの中心に立っている訳でも、他のメンバーと比べ突出したパートを与えられている訳ではありません。でも、ライブに足を運べば判ります。開始から終了まで一瞬たりとも隙を見せず、また、人の前で歌うということを常に意識し、同時に他のメンバーの動きを把握しつつ、浮き上がらない微妙なレベルでアドリブを入れライブ感を煽る姿。そんな彼女は一番輝いているし、そんな彼女を見て他のメンバーも明らかに影響されている。ステージの上で歌うこと以外、決して器用な人ではありません。でも良いと思います。モーニング娘。は歌手なのですから。彼女がモーニング娘。を歌手として呼び戻してくれたのですから。


久住小春さん

若しかしたら、作り手側はこんな筈ではなかったと思っているのではないでしょうか。期待されて加入した新人は、しかし、歌に真剣な先輩からは新人として扱われ、同時に10分の1の存在として機能することを求められました。ファンはスターとして受け容れるのではなく、新人がどんな実力、個性を備えているか期待しつつしかし、冷静に判断することを選択しました。メンバーもファンも彼女を特別扱いすることはありませんでした。しかし同時に、抵抗無く受け容れたことも事実です。ある意味不遇な彼女ですが、私は幸せだったと思います。期待に押しつぶされることもなく、不当に排除されるわけでもなく、豊富な活躍の場と目指すべき先輩達の姿とを与えられ、自分のペースで基礎を取得できたのですから。個性やキャラクターではなく先ずは歌うこと、踊ることが前提であると思い知らされた彼女は、今は未熟でも、大きく伸びる可能性を秘めていると思います。なにしろ、少なくとも現時点で既にステージに溶け込んでいるのですから。




☆新生モーニング娘。の誕生☆

私が、この10人の彼女たちを何故に「新生モーニング娘。」であると思うのか、その理由を記させて頂きます。

以前、私が彼女達の形容する言葉として「歌に挑むチーム」という表現を使った事があります。なぜ人の前で歌いとして踊るのか、なぜソロではなくチームなのか、なにより自分は歌手なのかと自己を見つめながら、レコーディングでもTV番組でもなく、ライブでファンと共に様々な思いを開放するのがモーニング娘。であると思っていました。それはある意味「歌手ではないが誰よりも歌手になりたい歌い手」という事であり、そうであるが故に「歌手よりも歌手らしい」魅力に溢れていたと思います。

その様な視点で支えられていたモーニング娘。は、いつの間に「歌手ではない女の子たち」と(特にファン意外の人達に)思われるようになってしまったのでしょうか。

新鮮さが伴うとき、人は先入観無く隅々まで見てくれます。その時点では「歌手に人一倍なりたい気持ちが夢を掴みつつある」という状態に気付き応援してくれます。しかし、一旦商業的な成功を収めたかの様に見え、居て当たり前の存在となってしまうと、視点は「レッテル」を貼られるという事になります。その時点で、残念ながらモーニング娘。は、歌手になりたい歌手らしい人達であったが故に、それが逆効果となって、結果的に「歌手ではない人達、或いは所謂アイドルというカテゴリーの一種」と認識されてしまった様です。そうなってしまうとそこからの脱却は極めて困難です。

膨大なファンを抱え、多数のライブを開催しても集客が可能なモーニング娘。はそれだけでも十分な存在であることは認めるべきですが、一方で、上記のような状況下、新たなファンの開拓が進まず、活動規模や範囲が頭打ち傾向にあることは事実です。望外な成功を収めた結果、袋小路に嵌ってしまったということでしょうか。

極めて厳しい表現を許されるならば、そのような状況下で彼女たちは敢えて「歌手でありたい」という意志の拘るのではなく、周囲が求める、或いは勝手に決めてしまったモーニング娘。という存在に応えるべく頑張ったが為に、より一層行き場を無くしてしまったと云えるのではないかと思います。

しかし、周囲の過大な期待に常に直面していた4期までのメンバーとは異なり、5期以降のメンバーはモーニング娘。としての活動においては先輩達に依存出来、またその活動範囲も縮小して来たが故に、確実にこなさなければならないライブ(歌でありフリであり)のスキルアップに集中できたこともあり、先輩達とは異なり比較的音楽に集中出来る環境にあったと思います。新たな環境でいつの間にか新たな才能が育まれていたのです。

デビュー以来突き進み、そして成功した拡大への流れが収束し、新たなスタンスでモーニング娘。に係わったメンバーが彼女達の個性を発揮し始めたということです。本来終わるはずのモーニング娘。がメンバーを常に入れ替えるというスタイルを選択した為にいつの間にか生まれ変わっていたのです。

先輩達が蓄積した楽曲という手段とライブ(或いはそれを経験して来たファン)という宝物と受け継ぎ、客観的にそれらを見つめ新たな音楽として紡ぎ直すことの出来る「新生モーニング娘。」の誕生です。



☆モーニング娘。を歌手として応援しませんか☆


モーニング娘。は生まれ変わったと思います。正に「新生モーニング娘。」であると思います。そんな彼女達は紛れもなく10人の歌手です。

いま彼女達が紡いでいる素晴らしいライブに、接するという機会を得た幸運なファンはそのことを是非広めて欲しいと思います。

卒業した先輩を応援するなと申し上げているのではありません。卒業した先輩より今のモーニング娘。の方が価値があると申し上げているのでもありません。

そうではなく、先輩達が築いたモーニング娘。という価値を確りと今も、そしてたぶん未来にも受け継ぎ、その上で、新たな価値観、音楽を楽しいときを過ごす空間として提示できる歌手としての価値を備えつつありながら、一方でモーニング娘。という価値によってその世界が広めにくい環境にある彼女達に、今以上に活躍の場を与えて欲しいのです。

それだけのチームになれる可能性を今の10人は間違いなく秘めています。彼女達は、楽曲が本来持っている魅力をそのままに再現できる技術を備え、その上でエンターテイメントとして観客を楽しませる意志と魅力にとんだ個性的なアーティストであることを恥ずかしがることなく、遠慮することなく、自信を持って薦めて欲しいのです。そうすることで、モーニング娘。というレッテルに縛られた未来のファンを覚まして欲しいのです。



☆平成17年11月3日 札幌2☆

楽しい、そして濃密なライブの余韻に浸りながら会場をあとにしました。ライブの感想を語り合う人たちの声が耳に入ります。その中から印象に残ったシーンを二つ。


小学生の女の子が「楽しかったね〜」と満面の笑みを湛えながらジャレつかれ歩けなくなってしまった母親の困惑しながらも発した笑顔。


そして、


二十歳前後の娘。に「モーニング娘。って凄い体力だね」と真顔で感想を言われ、「羨ましいね」と返しつつ苦笑するしかない初老の母親。


そんな、そんな素敵なライブでした


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
やはりここはお約束の・・・ れいにゃあぁぁぁぁ! 16歳の誕生日おめでとう! 今
れいな、誕生日おめでとう!&今の娘。の魅力【ハイ、とんとん!】at 2005年11月11日 22:34
新生モーニング娘。賛歌 〜11月3日札幌にて〜 http://blog.livedoor.jp/roukenchikuka/archives/50180738.html ([http://blog.livedoor.jp/roukenchikuka/:title=老建築家の書斎]さん) ホント久々に「良いレポ」を読んだ気分になったのでご紹介を ヲタ歴長くなると...
[musume。]賛歌【信じるものに救われる】at 2005年11月11日 23:40