社会保険の加入に関連し、顧問先様から非常勤役員を社会保険に加入させる必要があるかどうかという質問を頻繁に受けます。一般的には常勤役員は加入、非常勤役員は加入しないという意識があるようですが、本日のワンポイント講座では、この具体的な取扱いについて取り上げることとしましょう。

 狭義の社会保険とは、健康保険と厚生年金保険を併せたものをいいますが、まず健康保険の被保険者については、健康保険法第3条第1項に「この法律において被保険者とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない」と、同項各号の適用除外に該当する場合を除き健康保険の適用事業所に使用される者はすべて被保険者となると定義されています。また厚生年金保険についても、ほぼ同様に、厚生年金法第9条において「適用事業所に使用される70歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする」と包括的に被保険者となる旨が定義がされており、その例外として同法第12条において、適用除外となる者が列挙されています。

 それぞれの条文については文末に記載しておきますが、実はこの適用除外者が列挙されている中に役員は含まれていません。もっとも適用除外者に該当しない役員はすべて被保険者となるかというと必ずしもそうではなく、役員の地位にある者については、常勤、非常勤を問わず、そもそも適用事業所との使用関係があるかどうかで社会保険加入の可否が判断されます。

 使用関係があるかどうかの基準については、明確な基準が定められているわけではなく、その者の勤務実態によって個別に判断がなされます。したがって、単に名目上の地位にとどまり、他の法人の役員を兼務していたり、時間的、実質的に勤務実態がないようであれば、被保険者とはなりえません。また、勤務時間や勤務日数での判断としては、パートタイマーの加入基準(労働時間が一般社員の4分の3以上の人、労働日数が一般社員の4分の3以上の人の両基準を満たす場合に被保険者となる)が目安として用いられることが通常です。

 しかしながら、先ほども述べたとおり、使用関係があるかどうかの明確な基準は定められていないため、実際の取扱いについては管轄の社会保険事務所ごとに違いがあるというのが実態です。非常勤役員と言えども加入できないとは一概には言えませんので、加入の判断を迷われた際には管轄の社会保険事務所に具体的な実態をお伝えいただき、加入可否の判断を仰ぐとよいでしょう。なお、報酬については、社会保険の加入可否に関わるような規定がありませんので、役員報酬の金額の大小は社会保険の加入に関係ありません。すなわち、高額な報酬の非常勤役員であっても、勤務時間や勤務日数が少ない場合には、被保険者に該当せず、またその逆も然りです。

[関連法規]
健康保険法 第3条
 この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。
一 船員保険の被保険者(船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第二条第二項に規定する疾病任意継続被保険者を除く。)
二 臨時に使用される者であって、次に掲げるもの(イに掲げる者にあっては一月を超え、ロに掲げる者にあってはロに掲げる所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く。)
イ 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者
三 事業所又は事務所(第八十八条第一項及び第八十九条第一項を除き、以下単に「事業所」という。)で所在地が一定しないものに使用される者
四 季節的業務に使用される者(継続して四月を超えて使用されるべき場合を除く。)
五 臨時的事業の事業所に使用される者(継続して六月を超えて使用されるべき場合を除く。)
六 国民健康保険組合の事業所に使用される者
七 後期高齢者医療の被保険者(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第五十条の規定による被保険者をいう。)及び同条各号のいずれかに該当する者で同法第五十一条の規定により後期高齢者医療の被保険者とならないもの(以下「後期高齢者医療の被保険者等」という。)
八 厚生労働大臣、健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者(健康保険の被保険者でないことにより国民健康保険の被保険者であるべき期間に限る。)

厚生年金保険法 第9条
 適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。

厚生年金保険法 第12条
 次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
一 国、地方公共団体又は法人に使用される者であつて、次に掲げるもの
イ 恩給法(大正十二年法律第四十八号)第十九条に規定する公務員及び同条に規定する公務員とみなされる者
ロ 法律によつて組織された共済組合(以下単に「共済組合」という。)の組合員
ハ 私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)の規定による私立学校教職員共済制度の加入者(以下「私学教職員共済制度の加入者」という。)
二 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては一月を超え、ロに掲げる者にあつては所定の期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
イ 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者
三 所在地が一定しない事業所に使用される者
四 季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)。ただし、継続して四月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
五 臨時的事業の事業所に使用される者。ただし、継続して六月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。


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(佐藤和之)

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