過重労働解消キャンペーンによる監督署調査 厚生労働省は昨年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施し、労働基準監督署による重点監督など進めましたが、先日、この実施結果が発表されました。今回行われた重点監督は、長時間労働削減推進本部の指示の下、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施されたものになります。

 その結果を見てみると、対象となった 7,014事業場のうち4,711事業場(全体の67.2%)において労働基準関係法令違反があり、主な違反内容は以下のとおりとなっています。
違法な時間外労働があったもの: 2,773事業場(39.5%)
 うち、時間外労働※の実績が最も長い労働者の時間数が 月80時間を超えるもの:1,756事業場(63.3%)
 うち月100時間を超えるもの:1,196事業場(43.1%)
 うち月150時間を超えるもの:257事業場(9.3%)
 うち月200時間を超えるもの:52事業場(1.9%
 ※法定労働時間を超える労働のほか、法定休日における労働も含む。
賃金不払残業があったもの:459事業場(6.5%)
過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:728事業場(10.4%)

 この実施結果では、毎年、監督指導事例が掲載されていますが、今回、長時間労働削減のための自主的な取組事例についても紹介されています。今後、企業が取組みを行う上で参考になるでしょう。
[教育・研究業]
〈取組〉
●時間外労働削減に向けた取組
・トップの決意表明
 →分かりやすいスローガンの設定、朝礼などにおけるトップの強い意志の発信
・フレックスタイム制の導入
・業務の簡素化、システムの自動化
 →無駄と思われるものは止めてみる、各部門の責任者へ委譲する権限の見直し
●年次有給休暇の取得促進に向けた取組
・時間単位年休(時間休)の導入
●働きやすい環境づくりのための取組
・トップに対し、直接改善提案を行える制度の導入
・法定日数を超える介護休業の付与
・ベビーシッター費用補助
〈取組の結果〉
○フレックスタイム制の導入などにより、導入前に比べ時間外労働が約25%減少
○一人当たりの生産性が、4年前に比べて1.5倍に向上
○トップへの改善提案制度の導入により、職場環境が短期間で改善

[製造業]
〈取組〉
●時間外労働の削減に向けた取組
・月2回の「ノー残業デー」の実施(毎週1回とすることを検討中)
 →予定表(ホワイトボード)への表記や朝礼での周知徹底
・時間外労働を行う際の手続きの見直し
 →管理職が必要性を見極めた上で、時間外労働を命じることの徹底
・労働者の多能化によるワークシェアの実施
●年次有給休暇の取得促進に向けた取組
・年次有給休暇を活用した「バースデー休暇」制度の導入
●働きやすい環境づくりのための取組
・労働者から職場環境の改善に関する提案を受け付け(無記名可)、その全てに回答
〈取組の結果〉
○月の時間外労働時間が、多い月で前年比約15%減少
○年次有給休暇の取得率が、前年比約18%増加
○職場環境改善提案がしやすい、風通しのいい環境の形成


参考リンク
厚生労働省「平成28年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000154525.html


(福間みゆき)

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