zu 現在、高年齢者雇用安定法では、定年を定めるときには60歳以上とすることと、60歳以降については原則本人が希望すれば65歳までは雇用を継続することを義務付けています。このような法令の定めと、昨今の人手不足に伴い、定年を60歳から65歳などに引上げる企業が増えています。

 定年を引上げるときには、引上げに伴う人件費の負担増加への対応等について検討することが求められ、検討事項の一つに退職金の取扱いが出てきます。どのような制度にするかは会社ごとに異なりますが、退職金については60歳以降は加味しないという企業も出てくるでしょう。


 これに関連し、平成30年3月6日に国税庁のホームページで、「定年を延長した場合にその延長前の定年に達した従業員に支払った退職一時金の所得区分について」という照会の文書回答事例(高松国税局)が公開されました。

この回答事例では、前提を確認した上で、以下のとおり、定年を65歳に延長した場合であって、旧定年である60歳で退職金を支給したときでも退職所得として取扱うことが相当であると回答を示しています。当然、前提が事案ごとに異なるため、最終的には顧問税理士の方に確認する必要はありますが、一事例としてあることは知っておきたいものです。


 所得税法第30条第1項《退職手当》は、退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」といいます。)に係る所得をいう旨規定し、所得税基本通達30-1《退職手当等の範囲》は、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいう旨定めています。

 また、所得税基本通達30-2(5)は、引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合において、その旧定年に達した使用人に対し、旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与であり、その支払をすることにつき相当の理由があると認められるもので、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、同通達30-1にかかわらず、退職手当等とする旨定められています。

 以上のような退職所得に関する法令等を前提とすると、本件退職一時金は、次の理由から所得税基本通達30-2(5)に定める給与に該当し、退職所得として取り扱うのが相当であると考えます。

当社は、就業規則及び退職金規程を改正して定年を65歳に延長したものの、平成30年3月31日以前に入社した従業員に対しては、旧定年である満60歳の月末に達したときに本件退職一時金を支給することとしており、また、本件退職一時金を支給した後は、定年を延長した期間に対する退職金の支給はしませんので、本件退職一時金は、いわゆる打切支給の退職手当等であると認められます。

本件退職一時金の金額は、旧定年である満60歳に達した日までを基礎として計算することとしていますので、本件退職一時金は「旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与」であると認められます。

定年延長前に入社した従業員に対して、旧定年のときに本件退職一時金を支給することとしたのは、当該従業員は、旧定年のときに本件退職一時金が支給されることを前提に生活設計をしており、定年延長に伴い本件退職一時金の支給が65歳になると不都合が生じるため、定年を延長する場合においても旧定年のときに本件退職一時金を支給するように要求していること、また、定年延長に伴い改正された退職金規程の改正前及び改正後においても本件退職一時金の金額は変わらないことは、本件退職一時金の支給が65歳に延長された場合には従業員にとって不利益な変更となるため、このような不都合及び不利益は、雇用主として配慮する必要がありますので、定年延長前に入社した従業員に対し、旧定年のときに本件退職一時金を支給することについて「相当な理由」があると認められます。


関連blog記事
2017年12月7日「定年引上げを行ったときにも提出が必要な無期転換の二種計画申請書」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52141617.html

参考リンク
国税庁「定年を延長した場合にその延長前の定年に達した従業員に支払った退職一時金の所得区分について(照会)」
http://www.nta.go.jp/about/organization/takamatsu/bunshokaito/gensen/180306/index.htm


(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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