副業 国として副業・兼業の普及を図ろうとしていますが、それを妨げているとされるのが、労働基準法38条の労働時間の通算ルールです。これは事業場が異なる場合であっても、労働時間を通算するというもので、これによって36協定や時間外割増賃金、過重労働対策などの問題が発生することから、企業としては副業・兼業を認めにくい大きな理由となっています。

 この制度の見直しが厚生労働省の「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」で行われておりますが、2019年7月9日に開催された第8回会議において、その報告書(案)が示されました。その中で重要論点の対応の方向性として以下のような選択肢が示されています。
健康管理について
(1)事業者は、副業・兼業をしている労働者について、自己申告により把握した通算労働時間などを勘案し、当該労働者との面談、労働時間の短縮その他の健康を確保するための措置を講ずるように配慮しなければならないこととすること(公法上の責務)
(2)事業者は、副業・兼業をしている労働者の自己申告により把握した通算労働時間について、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えている時間が1月当たり80時間を超えている場合は、労働時間の短縮措置等を講ずるほか、自らの事業場における措置のみで対応が困難な場合は、当該労働者に対して、副業・兼業先との相談その他の適切な措置を求めることを義務付けること。また、当該労働者の申出を前提に医師の面接指導その他の適切な措置も講ずること。
上限規制について
(1)労働者の自己申告を前提に、通算して管理することが容易となる方法を設けること(例:日々ではなく、月単位などの長い期間で、副業・兼業の上限時間を設定し、各事業主の下での労働時間をあらかじめ設定した時間内で収めること。)
(2)事業主ごとに上限規制を適用することとするが、通算した労働時間の状況を前提に適切な健康確保措置を講ずることとすること
割増賃金について
(1)労働者の自己申告を前提に、通算して割増賃金を支払いやすく、かつ時間外労働の抑制効果も期待できる方法を設けること(例:使用者の予見可能性のある他の事業主の下での週や月単位などの所定労働時間のみ通算して、割増賃金の支払いを義務付けること)
(2)各事業主の下で法定労働時間を超えた場合のみ割増賃金の支払いを義務付けること

 現状ではあくまでも選択肢として示すに止まっていますが、現実的には通算ルールの廃止を意図したものと考えられます。この改正については今後、最終的な報告書がとりまとめられ、労働政策審議会での審議となりますので、来年の通常国会で可決・成立する可能性が出てきたと言えるのではないでしょうか。

[参考条文]
労働基準法38条
 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

参考リンク
厚生労働省「第8回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05690.html

(大津章敬)

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