歌になった国道(1)

前回、「夜霧の第二国道」という曲を取り上げたつながりで、今回は国道の歌の話題を。

 道路は人々の生活に密着し、多くのモノや人、感情や想い出までが運ばれていくものであるから、道路を歌った歌というのも当然数多く存在する。中でも最も有名な曲は、やはり松任谷由実の「中央フリーウェイ」(1976年)だろうか。中央道から見える美しい風景を歌い込んだ一曲で、時代の空気を感じさせる名曲だ。「フリーウェイ」というのは「高速道路」とはちょっと違う概念なのだけど、この言葉を持ってくることで一気に爽やかな垢抜けたイメージに生まれ変わっているのは、さすが彼女ならではのセンスというべきか。ユーミンには「カンナ8号線」という曲もあるが、これは単なる思いつきでつけたタイトルで、国道8号や環八をイメージしたものではないらしい。

 なんだ、中央道は高速であって国道じゃねえだろ、という意見もあろう。そんなあなたには、そのものズバリ「国道」という曲もある。シンガーソングライター・天野月子(現・天野月)の作品で、なかなか切ない響きの一曲。

 インターネットの楽曲検索で調べると、アメリカではルート66をテーマとした曲が非常に多い。中でもナット・キング・コールの「ルート66」は、ジャズのスタンダードナンバーとして長く愛されている一曲だ。1946年の曲だが、数年前にもアニメ映画「カーズ」のエンディングテーマに採用された。 シカゴからカリフォルニアのサンタモニカまで、アメリカを横断するこの道路は「マザーロード」「メインストリート・オブ・アメリカ」とも呼ばれ、長く人々に親しまれた。音楽以外にも、小説・映画・スポーツチームに至るまで、ルート66の名を冠するものは数多い。アメリカ人にとって、それだけ思い入れの深い道なのだろう。

Route66・ストーンズのバージョン。

 一本で国土を縦断してしまう道路がない日本には、ルート66に匹敵する「国民的」な路線はちょっと見当たらない。しかし沖縄県民にとっては、国道58号はまさに「マザーロード」というべき道だ。鹿児島市に端を発し、奄美大島・種子島などを経て沖縄本島を縦断し、那覇市中心部へと至る。米国占領時代には「琉球政府道1号」であり、返還後に日本の国道網に組み込まれて58号のナンバーを名乗ったが、今でも年配の人には「1号線」の名で呼ぶ人もいると聞く。若い世代にとってもその存在感は絶対的で、例えば人気バンド「かりゆし58」もこの国道から名前を取っているし、やはり沖縄出身のバンド・ビギンも、「ビギンの一五一会・58ドライブ」なるアルバムを出している。筆者の見るところ、おそらく全国でも最も思い入れを持たれている国道だ。

国道58号車載動画。最近こういう動画の投稿は非常に多くなってます。

 生まれ育った街の国道というのはやはり強い印象を残すもののようで、神戸出身のパンクバンド・ガガガSPには「國道二号線」、広島出身の奥田民生には「ルート2」という曲がある。後者は車好きとしても知られる奥田民生の思い入れがよく出た歌で、オンボロの愛車で深夜の街から街を走り抜ける、情景が浮かんでくるような佳曲だ。

Char・山崎まさよしとの共演による「ルート2」。名演です。

 メンバー2人が千葉出身であるサムシングエルスは「国道16」、広島出身である吉川晃司は「Route31」、福岡生まれのKANは「青春国道202」なる曲をリリースしている。氣志團の「國道一二七號線の白き稲妻」なんぞは、木更津出身という彼らのコンセプトを最も強く表現した一曲ともいえよう。ただマニアとしてひとこと言わせていただくなら、国道の呼び方としては「国道○○号」が正しく、「国道16」「国道127号線」はいずれも正しくない言い回しである。まあどうでもいいけど。

KANの「青春国道202」。こんなに切れ味よく踊る人とは知らなかった。

 国道を歌った歌はまだたくさんある。続きは次回に。

第一国道、第二国道

この間国道1号(東京都中央区~大阪市)と15号(東京都中央区~横浜市)の話を書いたので、その関連で書いてみよう。

 横浜市鶴見区に、その名も「国道駅」という駅がある。大胆不敵なネーミングであるが、これは文字通り国道15号に面していることから付けられた。

 だからって何も国道なんて名前じゃなくてもと思うが、この駅ができた1930(昭和5)年、実はこの道は日本を代表する道、国道1号だったのである。もともと江戸時代からの東海道を踏襲した道であり、本家本元というべきルートだったのだ。その西側を並走する現在の国道1号は、1949(昭和24)年の開通である。

 ところで、フランク永井の「夜霧の第二国道」という曲をご存知だろうか。まあ1956(昭和31)年の曲だから筆者も知らないけど、氏の代表作の一つといっていいくらいヒットしたものらしい。

 第二国道というくらいだから、てっきり国道2号(大阪市~北九州市)のことなのかと思いきや、何とこの曲の舞台は国道1号であったりする。この曲が出た当時、国道1号は元の京浜国道(15号)に並走する道ということで、第二国道と呼ばれていたのだ。

 ちなみにこの「第二国道」は、当時としては画期的に幅も広く、世界有数の規格の道路として建設された。まあヒット曲になってしまうくらいであるから、今でいえば首都高湾岸線のような、大変にナウい道路だったのだろう。ということで1952(昭和27)年の国道指定の際にはこちらが1号となり、旧来のルートは15号となったが、「第一」「第二」の名は残ってしまった。今では東京~横浜間の国道15号は「第一京浜」、国道1号は「第二京浜」と呼ばれる。何だかややこしい話だが、まあ歴史的なことであるので仕方ない。

R015
現在の15号。夜露の第一国道である。

 同じようなケースは、関西でも起こっている。大阪~神戸を結ぶ道のうち、国道2号が「第一阪神国道」(略称いちこく)、43号が「第二阪神国道」(略称にこく)と呼ばれているのだ。静岡あたりの人は国道1号を「いちこく」と呼ぶから、両者が話をすると何だかわからずちんぷんかんぷんなんてこともありうる。面倒くさいことであるが、こういう不合理さ加減こそが、国道者にとっては面白いところであったりする。

国道ブログ始めました。

ということで、国道のことを書くブログを始めてみることにした。理由は、筆者が国道好きだから。何でそんなもんに興味を持ったんだとよくいわれるが、残念ながら筆者にもわからない。何であなたは興味を持ってないんだと問い返したいくらいのもんである。カレーが好きな人間に、なんでカレーが好きなんだと聞いても答えようがないのと一緒だ。まあぼちぼち筆者もこうして雑文をしたためつつ、何で自分は国道走行を好むのか、ぼちぼちと考えてみたいと思う。
246guitar
渋谷駅付近にある、筆者にとって大変好感の持てるギターショップ。

 さて記念すべき第1回には何を書くか迷ったが、ここはやはり国道の始まりがふさわしいだろう。日本を走る459本の国道たちは、みなそれぞれ起点と終点というものを持つ。当たり前のことだけど、あまり意識しないことではある。で、その国道起点の中でも最も重要な、起点の中の起点にして起点の絶対王者といえば、東京は日本橋にある「日本国道路元標」ということになる。地図でいうとこのあたり、東京駅にほど近い都心ど真ん中にある。

大きな地図で見る

 ここは国道1・4・6・14・15・17・20号の起点であり、日本のあらゆる道路の総元締めでもある「道路元標」が存在する。国道者にとってはまさに聖地であり、訪れるだけで肩凝りや腰痛が治り、元標に触れると3年寿命が延びるというくらいのもんである。
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日本国道路元標(のレプリカ)

 日本橋というくらいであるから現場には橋が架かっており、下に流れるのは日本橋川。普通川があって橋が架けられるもんだが、ここに限っては橋のために川があるかのような名前である。まあこの橋は重要文化財に指定されているくらいで、彫刻なんぞもあって美しく飾られている。映画化もされた東野圭吾の小説「麒麟の翼 」もこの日本橋が舞台で、橋の中央に飾られた麒麟の彫刻がタイトルの由来らしい。筆者はまだ読んでないのだけど。
kirin
標柱の根元に佇む翼ある麒麟。

 この地点からは、北へ向けて国道4号、南へ向けて国道1号が出発している。アメリカで最も有名な道であるルート66(シカゴからサンタモニカまで、アメリカを横断する道路、マザーロードと呼ばれる)の最初の標識は、しょっちゅう盗まれたので何度も取り替えられたと聞く。しかし日本にはそういう人はいないらしく、国道1号最初の標識はずっと健在なままだ。まあ東京のど真ん中、デパートや高級ブランド店が建ち並ぶこの道で、わざわざ柱によじ登って標識を引っぱがそうとする馬鹿者は、まずいないとしたものだろうけど。
first
記念すべき国道1号最初の標識。

 このように国道標識が2枚以上並んで掲示されているものを、業界では「だんご」と称する。だんご標識ではたいてい番号の若い方が上に表示されるが、これはなぜか15号の標識に下克上を許している。貴重な標識でありながら、えらく扱いが悪いのはどうしてなのだろう。

 この先の交差点で1号と15号は分岐するが、並行して南下し、横浜市で再度合流する。15号はそこで終わりになるが、1号ははるか西へ走り、遠く大阪市まで到達する。全長543kmの長旅だ。日本橋から反対方向へ延びる4号は青森市、6号は仙台市、14号は千葉市、17号は新潟市、20号は塩尻市へと伸びてゆく。都心から野を越え山を越え、遠い街へつながっているのだなあと思う。

 この標識をたどってゆけば、全国あらゆる街に行くことができる。見たことのない景色、会ったことのない人たちがそこには待っている。そんなことを思うと、愛車に好きなものだけを積み込み、全てのしがらみを捨ててフラフラと走り出したくなる。自由に、心の赴くままにハンドルを切り、どこまでも延びる道を何も考えずに走って行けたらどんなにか幸せだろうなあ、と思う。

 真っ青な逆三角形の標識を眺めていると、筆者はいつもそんな気持ちになってしまう。我ながらこの心理は何なのだろうと、いつも不思議になる。
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