「道路標識コンプリートを目指してみようと思う」と告げたところ、妻の表情が大幅に曇った。夫のマニア癖がしばらく鳴りを潜めていたと思ったのに、久々にわけのわからないことを言い出した、と顔に大書してある。

「何それ……?何をするの?」
「道路の交通標識があるでしょ。あれを全種類撮影してみようと思った」
「どのくらいかかるの?」
「さあ。レア物もあるから、何年かかかるかもね」
「何種類くらいあるの?」
「まあ主要なものでこのくらいだな」

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ため息をつきつつ、妻は部屋を出て行った。アホな夫で申し訳ないなとは思う。

で、なんでこんなことを思い立ったかというと、次は道路標識の本を書こうかなと思ったからである。道路標識が好きな子供は結構いるが、これをマニア的な視点から取り上げた本はあまりなさそうだ。ということは、これは結構売れるのではないか。我ながら、実に単純かつ不純な動機である。

本を書くくらいなら、全種類この目で見るくらいでないと話にはなるまい。また、こうしていろいろ経巡っているうち、気づくことや見えてくるものもあるだろう、と思ったのであった。実際、よく見ると道路標識には細かなバリエーションがいろいろある。

たとえば「横断歩道あり」「落石注意」などいくつかの標識には、左右両バージョンある。筆者も、30万キロ以上走ってきながら、こんなことはまるで気に留めていなかった。ただ「見る」のではなく、意識を込めて「観る」と、世界は全く別物に変貌するのである。
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横断歩道(407-B)の標識

全種コンプを目指すと言っても、話はそう単純ではない。都道府県道標識を全部集めるわけにはいくまいし、現在はもう使われていない標識も数多い。そこらへんをどこまで追求するか、まあ集めつつ考えていくことにする。

上の一覧表にある標識だけでも、レアなものはたくさんある。たとえば「軌道敷内通行可」の標識は、路面電車の走っているところにしか存在しない。たぶん「安全地帯」もそうだろう。このへんは、意識して撮りに行かないとなかなか手に入らない。下の写真は東京の王子駅付近でゲットしたが、都内ではこのあたりだけにしかないのではと思う。

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軌道敷内通行可(402)

「道路工事中」などのように、一時的にしか設置されないものもあるし、「停止線」のように基本的に雪国にしかないものもある(雪で路面に引かれた停止線が見えなくなるため)。しかしなぜか、茨城県つくば市の国道354号には、この標識が設置されているところがある。今度ゲットしてこなければならない。

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停止線(406の2)

「自転車以外の軽車両通行止め」、通称「単独大八車」もなかなかのレア物だ。何しろ今や大八車などそこらにあるものではない。ところが下の標識は、東京の銀座に設置されている。歩行者天国になる道なので、屋台が入ってこないようにという意味合いなのだろうか。

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レア標識の一つ、「自転車以外の軽車両通行止め」(308)

その他、下の標識など筆者は見た記憶がないのだが、どこかにあるのだろうか?気づいていないだけで、案外ゴロゴロしているのかもしれないが。

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駐車シリーズ(327の10~12)

標識には、法規制の変化などによって新設されるものもあれば、時の流れで消えていくものもある。このへん、今後ゲットのたびにここで書いていくこととしよう。ひとまず今回は、佐藤がまたしょうもないことを始めたという報告だけしつつ、これまでである。