有機化学美術館・分館

HP有機化学美術館のブログ版。タイムリーな話題,短いテーマをこちらで取り上げます。

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折り紙分子模型その2

 前回の記事で、ベンゼン環などsp2炭素を基礎とした折り紙分子模型を紹介しました。しかし有機化合物全般を作るとなると、正四面体構造の炭素、つまりsp3炭素を作れなければ話になりません。ということで、今回はその折り方を考えてみました。

 今までにもこうした折り紙はもちろんあったのですが、結合角などに制限があり、ダイヤモンドなど特定の構造しか作れないという難点がありました。今回の作品は、そうした問題を解消したもので、今までにないものになったんではと思っております。



 基本的な発想は、これも以前考案したダイヤモンド結晶構造モデルから来ています。中心角が109.5°のV字型を2枚組み合わせれば、正四面体構造になるというアイディアです。

tetrahdral

 用紙としては、正方形2枚から原子パーツ1個、1:2の長方形から結合のパーツを作っています。

youshi

 原子になるパーツは、正方形2枚から作ります。4枚のフラップを持ち、4ヶ所差し込み口のあるパーツとなり、これらが炭素原子の4本の結合に対応します。また結合の棒は、1:2の長方形を3等分に折って使います。

atomasem
正方形2枚から1原子を作る

 結合の棒を差し込む際、図のように角度を170°ほどにして下さい。これにより、正四面体構造の109.5°の角度が再現できます。

bond1
この隙間に差し込む

170
この角度がポイント

 また、この角度を調整することで、3員環や4員環などひずんだ構造も作り出すことができます。環構造は少々作るのに迷うかもしれませんが、動画を参考に落ち着いて組んでみて下さい。

 また、前回紹介したsp2炭素(二重結合や芳香環の炭素)のパーツと組み合わせることもできます。これにより、ほとんどの有機化合物を作り出すことが可能になっています。

caffeine
カフェイン

tetrodo
テトロドトキシン

 強度は十分ありますので、慣れればいろいろな化合物が作れると思います。カラーリングなども工夫して、いろいろな化合物にトライしてみて下さい。

折り紙分子模型

さとうです。みなさまあけましておめでとうございます。
今年もいろいろ活動していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さて去年から、こちらのブログではいくつか分子模型のペーパークラフトなどを公開しております。で、筆者の趣味でもある折り紙でも何かできないかなとは以前から考えておりました。もちろん過去にもいくつか折り紙の分子モデルは発表されており、単行本もすでに存在します。

 ただしこれらは、折るのにかなり手間がかかったり、角度などに制約があるものがほとんどでした。たとえば藤本修三氏のダイヤモンド結晶は素晴らしい作品ですが、炭素同士の角度が固定されており、ねじれたもの、ひずんだものは全く作れないという難点があります。

diamond

 ということで、ある程度柔軟にいろいろな角度の結合を作り出せるものを、できるだけ簡単な折り方で……ということを考えていたのですが、ある程度これでいけるかなというものができたので、まずはsp2炭素バージョンのモデルを公開いたします。

 下の写真のように、原子のパーツと結合のパーツ(単結合と二重結合)、C-H結合のパーツを組み合わせ、平面的な分子を作るものです。強度もまずまずありますので、根性さえあればかなり大きなものも製作可能です。

benzenePBIC60
ベンゼン、ペリレンビスイミド、フラーレン

 また、結合パーツの折り角度を調整すれば、5員環や7員環も作れます(ちょっと慣れが必要かもしれませんが)。
azulenenorcorrole
アズレン、ノルコロール


 折り方について、図を作ろうかと思ったのですが、今どきはやっぱり動画なのかな、動画編集スキルなんかも身につけといた方がいいんかなということで、一本作ってみました。初めてなものでいろいろ行き届かない点もあろうかと思いますが、大目に見て下さい。


 折り方そのものはシンプルですが、組むところがちょっと難しいかもしれません。焦らずにチャレンジしていただければと思います。

 また、sp3炭素のモデルもすでにできていますので、こちらも撮影したら折り方をアップしたいと思います(追記:アップしました)。まあ何しろ動画は不慣れなので、気長にお待ち下さい。

tetrodotoxinGaN
テトロドトキシン、窒化ガリウム結晶構造

 ということで、ウェブサイト開始から23年にしてついにYouTuberデビューを果たした筆者を、みなさまよろしくお願いいたします。


 (追記2)
 正直、この折り紙は組むのがなかなか難しいと思いますし、裏から見るとダサいという難点もあります。細長く切ったケント紙などを、丸いシールで表裏から貼り合わせるようなことでも、手軽に似たようなものが作れます。
caffeine
カフェイン分子

 シールはいろいろなサイズ・色のものが100円ショップなどで手に入りますし、ハート型や星型などのものも売っていますので、アレンジしてみていただければと思います。

「#今日の構造式」インデックス(3)

「#今日の構造式」のインデックスその3です。
また、こちらのTogetterに、ツイートをまとめていただいております。

101. ペリレン
102. テトラゾール
103. フタロシアニン
104. カルベン
105. ラジカル
106. コレステロール
107. 二酸化塩素
108. ビナフトール
109. イブプロフェン
110. プロリン
111. アスコルビン酸(ビタミンC)
112. ポリプロピレン
113. アセトアルデヒド
114. ポリビニルアルコール
115. N-アセチルノイラミン酸
116. アドレナリン
117. ドーパミン
118. ニトログリセリン
119. アンジオテンシン
120. フェロセン
121. 星型分子
122. ヘリセン
123. タクロリムス
124. シリコーン
125. シリコーンゴム
126. アセチレン
127. クルクミン
128. テアニン
129. ポリ乳酸
130. ケブラー
131. サリン
132. プラリドキシムヨウ化メチル(PAM)
133. リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)
134. ショウノウ
135. メバロン酸
136. アラニン
137. アフラトキシン
138. ペニシリン
139. ポリ塩化ビニル
140. 過酸化水素
141. ラグドゥネーム
142. クロロホルム
143. 自己組織化分子
144. アガロース
145. ラパマイシン
146. ロンズデーライト
147. シクロカーボン
148. イソプロピルアルコール
149. 花形化合物
150. エポキシド

「#今日の構造式」インデックス(2)

 前回に引き続き、「#今日の構造式」のインデックスです。筆者の環境だと少しずれて表示されてしまうようですが、まあないよりいいと思いますのでご利用ください。

51. ドデカヘドラン
52. RNA
53. アデノシン
54. メントール
55. メタクリル酸メチル
56. ラクトン
57. エリスロマイシン
58. イベルメクチン
59. DMSO
60. チロシン
61. アスパルテーム
62. グルタチオン
63. システイン
64. モノフルオロ酢酸
65. テトロドトキシン
66. ストリキニーネ
67. モルヒネ
68. クラウンエーテル
69. カリックスアレーン
70. メタノール
71. フェノール
72. アミロース(デンプン)
73. セルロース
74. キチン
75. 尿素
76. ウレタン
77. 砂糖(スクロース)
78. 麦芽糖(マルトース)
79. アリイン
80. カプサイシン
81. ホスゲン
82. アジ化水素
83. アラキドン酸
84. プロスタグランジン
85. アダマンタン
86. ドデカホウ酸カリウム
87. テトラヒドロフラン
88. シガトキシン・マイトトキシン
89. エチレングリコール
90. 酪酸
91. メチレンブルー
92. フェノールフタレイン
93. シクロデキストリン
94. アニリン
95. ハウサン
96. シスプラチン
97. シアン化水素
98. 一酸化炭素
99. シクロブタジエン
100. アズレン

「#今日の構造式」インデックス(1)

 筆者は昨年11月以来、ツイッターにて「#今日の構造式」と題して、一日一つずつ化合物の構造式と簡単な解説を流すことをやっております。おかげさまで好評を得てぼちぼちと続けていますが、120回を超えたので読み返すのも不便になってきました。

 ということで、こちらでインデックスを作って置いておくといたします。ツイートが増えたら、またぼちぼち追加していくことにしたいと思います。とりあえず第1回から50回まで。

1. エタノール
2. 酢酸
3. メタン
4. バニリン (バニラの香り成分)
5. グルコース (ブドウ糖)
6. エチレン
7. ヒスタミン
8. リモネン (柑橘類の香り)
9. エーテル (ジエチルエーテル)
10. ポリエチレン

11. カフェイン
12. ナノプシャン (人間型分子)
13. 乳酸
14. カロテン (人参などの色素、ビタミンAのもと)
15. アンモニア
16. デキサメタゾン
17. アセトン
18. グリシン
19. グルタミン酸ナトリウム
20. クエン酸

21. シュウ酸
22. ベンゼン
23. ナフタレン
24. アスピリン
25. ピリジン
26. サリチル酸メチル
27. ポリエチレンテレフタレート (PET)
28. アクリロニトリル
29. ベルガモチン
30. グリセリン

31. 硫化水素
32. ゲラニオール (バラの香り成分)
33. トリプトファン
34. インディゴ (藍の色素)
35. シクロアルカン
36. キュバン (立方体型炭化水素)
37. テトラへドラン (正四面体型炭化水素)
38. 白リン
39. 脂肪酸
40. エライジン酸 (トランス脂肪酸の一種)

41. [5]ラダラン酸
42. FR900848
43. ポルフィリン
44. 雪の結晶型分子
45. γ-アミノ酪酸 (GABA)
46. ダイヤモンド
47. グラファイト
48. グラフェン
49. フラーレン
50. レムデシビル (新型コロナ治療薬)

構造式の見方・描き方講座その3

 第3回、今回は立体化学という面倒なやつの話を。

 有機化学という分野を奥深く、一面では面倒にしてくれているのがキラリティというやつです。炭素原子は4本の結合の腕を持っていますが、この腕たちは正四面体型の配置をとっています。問題なのは、その4本の腕についているパーツが全て違う時です。

chiralitychirality2

 上図左右の分子は、向きをどう変えても重なり合いません。これらは、鏡に映した時だけ重なり合う関係にあり、「鏡像異性体」と呼びます。そしてこうした分子を「キラリティがある」と表現します。ちょっと複雑な有機分子になると、キラリティを持っていない方が珍しいくらいになります。

 鏡像関係にある2種の分子は、融点・沸点などの性質は同じですが、厄介なことに生体にとっては全く別物です。味やにおいが違うこともありますし、鏡像異性体の一方は毒だが、もう一方は全く無害といったことも多くあります。これは、生体の方にもキラリティがあるからです。対称的な作りのバットは、左右どちらの利き手の選手が使っても同じですが、非対称なグローブはそうは行かないというのと同じで、キラルなもの同士では「相性」が生じるわけです。

 というわけで、キラリティのある分子は、はっきりとその立体構造を表示する必要性があります。例として、乳酸分子を考えてみます。下図の中央の炭素(黄色で示した)には、-H、-OH、-CH3、-CO2Hと4種類の異なる原子団が結合しています。つまり、乳酸にはキラリティがあるということになります。

lactate3D

 平面の構造式でこれを表すには、通常の結合を示す実線の代わりに、くさび型と点線を用います。くさび型は紙面より手前に、点線は紙面の奥へ向かって結合の腕が伸びていることを示します。上の乳酸の場合、構造式では以下のように描きます。

lactate

 このような、キラリティの源になる炭素を「不斉炭素」「不斉点」などと呼びます(読み方は「ふさい」ではなく「ふせい」)。不斉炭素には、不斉であることを明示するため、「C*」とアスタリスクをつけて示すことがあります。

 点線とくさび型は必ずしも両方を併用せずとも、どちらか一方だけ描けば構造が一つに指定できますので、一方だけを描くこともあります。たとえば下図の乳酸は、いずれも上に描いた乳酸と同じものですが、わかるでしょうか?頭の中で分子を動かして立体構造を想像できるようになれば、構造式上級者です(そんなものがあるかどうか知りませんが)。

lacticacid

 分子内に不斉炭素が2つ以上あると「ジアステレオマー」というものが生じて、さらにややこしくなりますが、このあたりは専門書に任せるとしましょう。ということで、今回はこれまで。

構造式の見方・描き方講座その2

 さて前回に続き、構造式の見方・描き方講座のパート2です。

 構造式を見ていて難しいのは、同じ分子でも違う描き方ができてしまうところです。同じ分子でも、向きを変えて描くだけで別物に見えてしまうことがしばしばあります。

 また、分子は常に一定の形をとっているわけではありません。原子間の結合には単結合・二重結合・三重結合……がありますが、このうち単結合は自由に回転することができます。このため多くの分子はお行儀よくじっとしてはおらず、常にうにょうにょと変形しています。たとえば下図の化合物(1, 2-ジクロロエタン)の真ん中の結合は、高速で回転しています。なので、下図の左右の構造は実際上同じものであり、両者を区別する意味はありません。

DCE1

 というわけで1, 2-ジクロロエタンの構造式は下図のどちらでも正解であり、両者は全く同じ化合物を示しているということになります。

DCE2

 また下の図に描いた化合物は、全てn-オクタン(C8H18)を示しており、意味はどれでも同じです。まあ何か特別な事情があるのでない限りは、左上のような波型の構造で書き表しますが。

octane


 ただし単結合と異なり、二重結合は回転することができません。2つのだんごを串に刺した時、串が一本ならだんごの玉はくるくる回転できますが、串を二本刺したら回転できなくなる――というイメージで捉えていただければ結構です。というわけで、下図の左右の化合物は、異なる性質を示す別物の化合物です。

DCethene

 また、原子がいくつかつながって環になることもあり、角度の関係で、6原子から成る環が一番多く存在します(専門用語で6員環といいます)。この6員環を作る結合が全て単結合の場合、腕の角度の関係で平面の正六角形にはならず、でこぼこの環になります。この環を横から見るとソファのような形に見えるため(やや強引ですが)、「いす型」と呼びます。

chex3D

 ということで、6員環を持った化合物の構造式も、下右のように描くことがあります。これだけ見ると両者が同じものという気がしませんが、慣れてくると当たり前のように脳内変換ができるようになります。

chex


 ということで今回はここまで。次回は立体化学というやつに踏み込みます。

構造式の見方・描き方講座その1

 さて先日、筆者はこういうツイートをしました。


 一般に、化学構造式というのはあまり好かれておりません。たぶん、学生時代に難しいことをいっぱい丸暗記させられたなあ、という記憶がよみがえるのかなと思います。ただ、化学に関わる商売をしている身としては、この状況はやりにくいし、悲しいことでもあります。

 てことで上記のツイートをしてみたわけですが、驚くべきことが起こりました。一夜にして3000人ほどフォロワーが増えたのです。まさかこんなに反響があるとは思っていませんでした。いろいろと質問もありましたので、ここで構造式の見方・描き方講座をやってみたいと思います。

 さて、そもそも構造式とは何かといえば、分子内での原子と原子のつながり方を、模式図として表したものです。炭素は4本、窒素は3本、酸素やイオウは2本、水素やハロゲン元素は1本の結合の腕を持っており、これらが過不足なく結びつくことで分子が出来上がります。たとえば酢酸の分子構造(CH3CO2H)は、次のように表されます。

AcOH1

 ただしこの図は、実際の分子の形を忠実に表しているわけではありません。たとえば上図の左側の炭素のまわりには、4本の結合の腕が正方形に伸びていますが、実際には下図のような正四面体型の構造をとっています。

AcOH3D


 ただし、こうして全ての原子の記号を書いていると煩雑で見にくいので、骨格を作る炭素のCは省いて、線だけで描くことがほとんどです。また、水素も省略することが普通です。炭素の結合の腕が余っているように見えるところには、実際には水素がついているということになります。ですので、たとえばアセトアミノフェン(解熱剤)の構造は、ふつう下右のように描き表されます。左側よりだいぶ見やすいと思います。

acetoaminophen

 ただし、炭素以外の元素(NやOなど)についた水素は、省略せずに書くことがほとんどです。O-HでもOHでも意味は同じです。

 また、構造式の結合の角度は、基本的に120°で描きます。これは、炭素と炭素の実際の結合角に近いためです。なので長い炭素の鎖は、下右のようにニョロニョロと描くことになります。

pentane

 末端の炭素には、「CH₃」とつける流儀(上図右上)と、つけないでただの棒にしてしまう流儀(上図右下)があります。また、右側の末端は「-CH₃」、左側の末端は「H₃C-」と書いたりと細かい決まりもあったりしますが、このへんは専門家以外はあまり気にしないでいただければと思います。

 というわけで次回に続きます。 

化学の「番号は謎」

 先日紹介いたしました、近刊の「番号は謎」は売れ行きも好調のようで、みなさまありがとうございます。身の回りのあらゆる番号の謎を探った本ですが、このマニアな本がそれなりに売れているのは、日本の読書文化というのも大したものだなと改めて思う次第です。

 この本では、化学分野で取り上げたのは原子番号の話だけです。しかし、化学の分野では、番号は他にもあらゆる形で活用されています。たとえば分子の中での置換位置を示す、「位置番号」は有機化学の基本ですが、一筋縄では行かないものもあります。たとえば下図はよく見る骨格ですが、正式なIUPAC名は「2-フェニル-1, 3, 2-ジオキサボロラン」と、ちょっとトリッキーな番号の付け方になります。苦手な方はこちらなどでしっかり練習しましょう。

132

 化合物ひとつひとつにつけられた番号として、CAS番号があります。有機・無機化合物、金属、核酸やタンパク質、高分子、同位体などあらゆる物質が対象となっており、たとえば立体異性体には別々の番号が振られるなど、厳密に個々の化合物を特定できるようになっています。

 CAS番号はたとえば7732-18-5というように、ハイフンで3つの数字をつなげた形式になっています。一番右側の1桁はチェックディジットと呼ばれるもので、他の桁の数字に一定の操作を加えると算出できます。これは、番号の入力ミスなどを検出するためにつけられるものです。

 一番左の数字は2〜7桁、真ん中は2桁で固定されており、登録順に機械的につけられていきます。ですので、構造情報などをCAS番号の数字から読み取ることはできません。また、類似した分子(異性体や水和物など)でも全く別の番号がついていることもありえます。番号が統合されたり変更されたりもするので、欠番も存在しているようです。

 CAS番号の一番最初は何なのかな、とマニアなことを思ってちょっと調べてみたのですが、50-00-0のホルムアルデヒドが、どうも一番最初のようです。49以下は、何かの時に備えて空けてあるとかでしょうか。
formal
ホルムアルデヒド [50-00-0]


 分子構造を番号で表しているケースとして、フロン類があります。通常3桁以下の数字で「フロン12」「フロン113」などのように表されます。規則は以下の通り。

・百の位の数 : 炭素の原子-1。ただし0(炭素1個)の場合は表示しない。
・十の位の数 : 水素の原子数+1
・一の位の数 : フッ素の原子数

 つまり、フロン12だと炭素数は1、水素数は0、フッ素数は2で、残りは塩素原子ですから、CF2Cl2だと特定できるわけです。慣れると分子式より早くてわかりやすいのでしょう。

Flon113
フロン113

 天然物の類縁体の区別には、マンザミンAなどのようにアルファベットが使われるケースが多く、数字の番号はあまり使われません。使われるとしても、ビタミンB1やプロスタグランジンFのように、添字として使われることがほとんどです。

 カエル毒として知られるプミリオトキシン類や、抗がん剤として用いられるエクテナサイジン743のように数字を使っているケースもありますが、これは例外的でしょう。天然・合成とも非常に多くの類縁体があるため、こうしたことになったと思われます。
pumillio
プミリオトキシン251d

 製薬企業で発見・合成された化合物には、たいていアルファベットと数字を組み合わせた化合物番号がつけられます。膨大な化合物を扱う企業においては、全てに固有名などつけていられませんから、番号が便利に使われます。アルファベット部分は、武田ならTAK、第一三共ならDSなどのように、会社名に由来したものがほとんどです。

 たとえば最近新型コロナ治療薬として注目を浴びたアビガンは、かつてはT-705の番号で知られていました(Tは富山化学の頭文字と思われます)。臨床試験が進み、医薬として承認される中で固有名・商品名がつけられますが、研究者にとっては番号の方がなじみ深い化合物も少なくありません。

Favipiravir
開発コードネームT-705、商品名アビガン、化合物名ファビピラビル。

 とはいうものの、アルファベットと数字では覚えにくいというのも事実です。拙著「番号は謎」でも、ベートーヴェン自身は交響曲第5番とだけ名づけた曲に「運命」という通称がつけられ、こちらが有名になったという話を書きました。

 化学の世界でも少し似た話はあり、ファイザー社の研究陣が発見したCP-225,917及びCP-263,114という化合物は、そのユニークな構造と生理活性から注目を受け、多くの研究者が全合成に挑むことになりました。しかし6桁もある番号×2ですから、えらく覚えにくいのも事実です。

 しかしある時から、これら化合物にフォモイドライドA及びBという固有名がつけられました。聞くところによればこの名前、番号を覚えられず業を煮やした某大御所化学者が勝手につけてしまったのだそうで、そんなことやっていいんかなあと思いますが(笑)。

phomoidride
フォモイドライドBことCP-263,114

 番号というもの、ふだんはスルーしていますが、大変に奥の深いものでもあります。身の回りで使われている番号、ちょっと調べてみてはいかがでしょうか。

折り紙分子模型講座のお知らせ

 最近ではパソコンのみならずスマホでも、美しい分子のグラフィックを描くことが可能になっています。専門家でなくとも、簡単にいろいろな分子の姿に触れられるようになったのは喜ばしいことです。

 とはいえ、やはり分子の姿について理解を深めるには、自分の手で立体の分子モデルを組んでみるのが一番と思います。とはいえ、本格的な分子模型はかなり高価で、そうそう手が出るものではありません。

 ということで、これまでいくつか折り紙やペーパークラフトによる分子模型を考え、こちらで紹介してきました。今回、リクエストをいただきましたので、Zoomでの配信で折り紙分子模型講座をやってみたいと思います。

 日程は、8月27日(木)19時30分からで考えております。時間はZoomの制限で40分以内の予定です。100名まで接続できるということなので人数的には問題ないと思いますが、一応早いもの勝ちです。

 題材はこちらを考えております。正四面体を連結させ、ここではエタノール分子を作ってみます。

20200815_123043


 用意するものは、折り紙用紙(15cmのものでOK)、のり、はさみまたはカッターです。もし手元にありましたら、封筒や付箋紙(1:3程度のサイズ)もご用意いただければと思います。

 この折り方を発展させると、東京書籍の高校化学の教科書用に作った、窒化ガリウム結晶構造なども作れます(下の写真)。それなりの根性と技術は必要ですが。

GaN

 参加ご希望の方は、佐藤までメール(sato☆org-chem.org)までご連絡いただければ幸いです。お子さんが視聴希望という場合には、その旨記していただければと思います。質問したいことなどありましたら受け付けますので、お気軽にどうぞ。

 ということで、当方も初めてのことで勝手がわかりませんが、よろしくお願いいたします。
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サイエンスライター佐藤健太郎が執筆・管理しております。仕事などご連絡はsato-at-org-chem.orgまで。
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共著、1章を担当。
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