HPの移転の話、現在準備を進めておりますので、もう少ししたら詳細を発表できると思います。と思わせぶりにいうほどのことでもないですが。
ブログの方もだいぶ放りっぱなしにしてますが、せっかく作ったわけですので今後はなんとか週1回、せめて10日に一度くらいは更新しようと思います。
というわけで今回は結晶形の話を。このあたりは本館の「結晶にまつわるエトセトラ」でも一度書きましたが、書籍の査読にも協力していただいた亜留間次郎氏に面白い話を教えていただきましたので、今回はこれで一席。
結晶というものは同じ化合物が規則的に積み重なってできたものですが、場合によりいくつか違う積み重なり方が存在することがあります。例えばひし形のタイルを平面に敷き詰める場合には下図のように何通りもの敷き詰め方が考えられますが、いってみれば結晶形の違いというのはこの3次元版であると思っていただければいいでしょう。
結晶形が違うとどうなるかというと、例えば溶媒への溶解度が変わります。密に詰まってほぐれにくい結晶と、ふんわり詰まって崩れやすい結晶では当然後者が溶けやすくなるわけです。特に医薬品などでは、この結晶形が変わると溶解・吸収のされ方が全く変わってしまいますから、結晶形の制御はきわめて重要な問題です。しかし目に見えないほど小さな分子が相手ですから、「こうすればこういう結晶が得られる」という一般的な方法はありません。結局温度や湿度、撹拌速度などの条件などを変えて試行錯誤するしかないのですが、どうやっても望んだ結晶ができないこともありなかなか一筋縄ではいきません。
医薬品以外で結晶形が重要になるケースに、爆薬の場合があります。爆薬は基本的に密度が高いほど爆発力も高まるので、場合によっては圧搾処理などによって破壊力を上げるようなことも行われます。またあまりに敏感でも取り扱いに困りますから、ちょうど都合のよい結晶を得ることが実用化に向けて大きな課題となります。
現在最新鋭の爆薬として用いられている、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン(HNIW)という化合物があります。ご覧の通りひずんだ骨格に6つのニトロ基が結合した、いかにも爆発力の高そうな構造です。この化合物にはα・β・γ・εの4種類の結晶形(δはどうしたのかって?筆者も知りません)が存在しますが、α・β・γ型はあまりに敏感すぎるため、爆薬として使い物になるのは最後のε型だけです。しかしこのε型を安定して作り出す方法がなかなか見つからなかったため、爆薬としては優秀であることがわかっていながら、HNIWの実用化は見送られる寸前となっていました。
この状況をみごと打ち破ったのは、旭化成工業の研究員・川邊秀史氏でした。なんと氏はα・β・γ型の3種の結晶をまとめてメタノールに溶解し、溶媒を蒸発させるという方法で安定にε型が得られることを発見したのです。3つを混ぜて煮るとただ1種が得られるというなんとも不思議な方法ですが、とにかくこの手段によってε型の量産が可能となり、HNIWは晴れて爆薬として実用化の道を歩み出すことができたのです。なんだかやけっぱちになってやったとしか思えないような方法ですが(失礼)、実際にはどうやって思いついた手段であったのでしょうか。
結晶というのはこのように人為的な制御の難しい部分が多く、それでいて実用的な応用には欠かせない分野でもあります。どんな化合物でも思うままに結晶化させる方法を見つけられればノーベル賞も間違いないと思うのですが、どなたかよい方法を考えていただけないでしょうか?
ブログの方もだいぶ放りっぱなしにしてますが、せっかく作ったわけですので今後はなんとか週1回、せめて10日に一度くらいは更新しようと思います。
というわけで今回は結晶形の話を。このあたりは本館の「結晶にまつわるエトセトラ」でも一度書きましたが、書籍の査読にも協力していただいた亜留間次郎氏に面白い話を教えていただきましたので、今回はこれで一席。
結晶というものは同じ化合物が規則的に積み重なってできたものですが、場合によりいくつか違う積み重なり方が存在することがあります。例えばひし形のタイルを平面に敷き詰める場合には下図のように何通りもの敷き詰め方が考えられますが、いってみれば結晶形の違いというのはこの3次元版であると思っていただければいいでしょう。
結晶形が違うとどうなるかというと、例えば溶媒への溶解度が変わります。密に詰まってほぐれにくい結晶と、ふんわり詰まって崩れやすい結晶では当然後者が溶けやすくなるわけです。特に医薬品などでは、この結晶形が変わると溶解・吸収のされ方が全く変わってしまいますから、結晶形の制御はきわめて重要な問題です。しかし目に見えないほど小さな分子が相手ですから、「こうすればこういう結晶が得られる」という一般的な方法はありません。結局温度や湿度、撹拌速度などの条件などを変えて試行錯誤するしかないのですが、どうやっても望んだ結晶ができないこともありなかなか一筋縄ではいきません。
医薬品以外で結晶形が重要になるケースに、爆薬の場合があります。爆薬は基本的に密度が高いほど爆発力も高まるので、場合によっては圧搾処理などによって破壊力を上げるようなことも行われます。またあまりに敏感でも取り扱いに困りますから、ちょうど都合のよい結晶を得ることが実用化に向けて大きな課題となります。
現在最新鋭の爆薬として用いられている、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン(HNIW)という化合物があります。ご覧の通りひずんだ骨格に6つのニトロ基が結合した、いかにも爆発力の高そうな構造です。この化合物にはα・β・γ・εの4種類の結晶形(δはどうしたのかって?筆者も知りません)が存在しますが、α・β・γ型はあまりに敏感すぎるため、爆薬として使い物になるのは最後のε型だけです。しかしこのε型を安定して作り出す方法がなかなか見つからなかったため、爆薬としては優秀であることがわかっていながら、HNIWの実用化は見送られる寸前となっていました。
この状況をみごと打ち破ったのは、旭化成工業の研究員・川邊秀史氏でした。なんと氏はα・β・γ型の3種の結晶をまとめてメタノールに溶解し、溶媒を蒸発させるという方法で安定にε型が得られることを発見したのです。3つを混ぜて煮るとただ1種が得られるというなんとも不思議な方法ですが、とにかくこの手段によってε型の量産が可能となり、HNIWは晴れて爆薬として実用化の道を歩み出すことができたのです。なんだかやけっぱちになってやったとしか思えないような方法ですが(失礼)、実際にはどうやって思いついた手段であったのでしょうか。
結晶というのはこのように人為的な制御の難しい部分が多く、それでいて実用的な応用には欠かせない分野でもあります。どんな化合物でも思うままに結晶化させる方法を見つけられればノーベル賞も間違いないと思うのですが、どなたかよい方法を考えていただけないでしょうか?
理論上の存在→架空の存在になってます。
元々、この物質は最初にスーパーコンピューターによる電子軌道計算で理想的な爆薬の構造を研究したところから始まっています。
まず、理論計算ありきで完成品の形を決めてから作り始めたと言う特殊事情があります。
いざ、できてみると結晶の形がうまくなくて
理想の結晶状態もコンピューターで計算して
この結晶を作れと七転八倒の結果、
計算理論に間違いが発覚、
δ型は実在できないことが判明
結局、欠番になってます。
ε型結晶も存在は川邊秀史氏以前から知られていたのですが
大量に作ると微量が混ざってる程度でした。
収率90%以上でε型だけができるようになったのは川邊秀史氏の発明です。
ちゃんと、特許も取られています。
δ型は愛を育むビタミンIが実在しないのと同じ運命になったのです。