暑い日が続いています。こんな日の友といえばアイスクリーム、そしてアイスに欠かせないのはバニラということで、今回はバニラの話を。
バニラは中米原産の植物で、香り成分であるバニリンはその種から得られます。といっても種に含まれるのは香りのない配糖体で、醗酵・乾燥を繰り返して熟成させることで糖が外れ、甘い香りのバニリンが得られてきます。

(バニラの木。画像はWikipediaより)
とはいえ天然から得られるバニラは量が少なく、大変に高価です。そこでこれを人工合成する努力は、化学工業の初期から続けられていました。これを実現したのはKarl Ludwig Reimer, Karl Ludwig Reimer, Frederick Tiemannらのチームで、1876年のことです。彼らはグアヤコールとクロロホルムをアルカリで加熱することによって、史上初めてのバニリン人工合成に成功しました。消毒の匂いがするグアヤコールと、刺激臭のあるクロロホルムからあの甘い香りができるのだから不思議なものです。

(バニリン合成)
ちなみに上にKarl Ludwig Reimerの名前がダブっているのは、筆者のコピペミスではありません。ウソのような話ですが、この反応の研究には、2人の同姓同名のKarl Ludwig Reimerが関わっているのです。現在この反応はReimer-Tiemann反応と呼ばれていますが、より正確を期するならReimer-Reimer-Tiemann反応とすべきかもしれません。ちなみに当時ドイツに留学していた日本薬学の祖・長井長義も、この仕事に参加していたといわれます。
合成されたバニリンは多くの香水に配合されて引っ張りだことなったため、Reimerらが設立したハーマン&ライマー社は大変な利益を上げたようです。純粋なバニリンは香りが清潔すぎるため、多少グアヤコールの猥雑な香りが混じっている方がよいとして、不純な合成バニリンが高値で取引されたといいますから、何が幸いするかわかったものではありません。
その後もバニリンのさらに安価な供給法の研究は続けられ、いくつかの方法が発表されています。現在では、木材の成分である高分子・リグニンからの合成が市場を独占しているようです。木材は主にセルロースとリグニンから成っており、前者を紙パルプとして取り出した後の廃液から得られたリグニンを元にバニリンは製造されているのです。あのロマンティックな甘い香りが、紙を絞り取った後の残りカスからできていると思うと少々イメージが崩れないでもありません。
が、もっと夢を壊す話が昨年にありました。国立国際医療センター研究所の研究員・山本麻由氏は、牛糞からバニリンを取り出すことに成功した「功績」を讃えられ、2007年のイグノーベル化学賞を受賞したのです。
といっても同氏は何もバニラを安く生産する方法を探していたわけではなく、牛糞に未消化のリグニンが残っていることを実証するため、これを分解してバニリンを検出することで証拠としたというのが実際のところのようです。しかしイグノーベル賞の審査委員会は、よくぞこんな研究を探し出してくるものだと思います。
牛糞から取り出されたバニラはアイスクリームに配合され、授賞式の場でノーベル賞受賞者を含む審査員が表情を歪めながらこれを食べるシーンは全世界に配信されました。山本氏はまさか自分の研究がこんな風に取り上げられるとは夢にも思っていなかったことでしょうが、化学にこうした一面があることを示した彼女の功績は誠に大きかったのではないでしょうか。
バニラは中米原産の植物で、香り成分であるバニリンはその種から得られます。といっても種に含まれるのは香りのない配糖体で、醗酵・乾燥を繰り返して熟成させることで糖が外れ、甘い香りのバニリンが得られてきます。

(バニラの木。画像はWikipediaより)
とはいえ天然から得られるバニラは量が少なく、大変に高価です。そこでこれを人工合成する努力は、化学工業の初期から続けられていました。これを実現したのはKarl Ludwig Reimer, Karl Ludwig Reimer, Frederick Tiemannらのチームで、1876年のことです。彼らはグアヤコールとクロロホルムをアルカリで加熱することによって、史上初めてのバニリン人工合成に成功しました。消毒の匂いがするグアヤコールと、刺激臭のあるクロロホルムからあの甘い香りができるのだから不思議なものです。

(バニリン合成)
ちなみに上にKarl Ludwig Reimerの名前がダブっているのは、筆者のコピペミスではありません。ウソのような話ですが、この反応の研究には、2人の同姓同名のKarl Ludwig Reimerが関わっているのです。現在この反応はReimer-Tiemann反応と呼ばれていますが、より正確を期するならReimer-Reimer-Tiemann反応とすべきかもしれません。ちなみに当時ドイツに留学していた日本薬学の祖・長井長義も、この仕事に参加していたといわれます。
合成されたバニリンは多くの香水に配合されて引っ張りだことなったため、Reimerらが設立したハーマン&ライマー社は大変な利益を上げたようです。純粋なバニリンは香りが清潔すぎるため、多少グアヤコールの猥雑な香りが混じっている方がよいとして、不純な合成バニリンが高値で取引されたといいますから、何が幸いするかわかったものではありません。
その後もバニリンのさらに安価な供給法の研究は続けられ、いくつかの方法が発表されています。現在では、木材の成分である高分子・リグニンからの合成が市場を独占しているようです。木材は主にセルロースとリグニンから成っており、前者を紙パルプとして取り出した後の廃液から得られたリグニンを元にバニリンは製造されているのです。あのロマンティックな甘い香りが、紙を絞り取った後の残りカスからできていると思うと少々イメージが崩れないでもありません。
が、もっと夢を壊す話が昨年にありました。国立国際医療センター研究所の研究員・山本麻由氏は、牛糞からバニリンを取り出すことに成功した「功績」を讃えられ、2007年のイグノーベル化学賞を受賞したのです。
といっても同氏は何もバニラを安く生産する方法を探していたわけではなく、牛糞に未消化のリグニンが残っていることを実証するため、これを分解してバニリンを検出することで証拠としたというのが実際のところのようです。しかしイグノーベル賞の審査委員会は、よくぞこんな研究を探し出してくるものだと思います。
牛糞から取り出されたバニラはアイスクリームに配合され、授賞式の場でノーベル賞受賞者を含む審査員が表情を歪めながらこれを食べるシーンは全世界に配信されました。山本氏はまさか自分の研究がこんな風に取り上げられるとは夢にも思っていなかったことでしょうが、化学にこうした一面があることを示した彼女の功績は誠に大きかったのではないでしょうか。


それによると候補となる論文は「集める」のではなく、応募されてくるそうで
選考方法もおふざけなどではなく、かなり真面目に新規性や内容を吟味して
行われているようです。
その番組放映時の賞を取った論文の一つに「ビールの泡の消え方の数学的考察」
とか何とかってのが有ったんですが、その数式と宇宙大規模構造の「ボイド」の
出来方の式とが似通っていたとかで、最後にビール泡の博士とボイドの式で
ノーベル賞を受賞した両博士がパブでビールを乾杯しながら談笑していたのを
今でも良く憶えています。