ここ数日、あちこちから「佐藤さん、これどう思います?」というメールが入ってきます。それだけ話題なんでしょうね、これ。
genso
元素周期 萌えて覚える化学の基本 PHP研究所 1995円)

118ある元素を全部美少女キャラ化して、化学の基本を萌えて覚えようというコンセプトだそうです。ヒ素やポロニウムなんてものにまで強引に萌えるとは、恐ろしい力業という他ありません。かつては「日本人は剣でも花でも茶でも、何でも『道』にしてしまう」といわれていましたが、今や何でも萌え対象にしてしまう時代なのでしょうか。

個人的に驚いたのは、この本がPHP研究所から出ているという点です。PHPといえばかの松下幸之助翁が設立したシンクタンクで、”「PHP」とは、Peace and Happiness through Prosperity(繁栄によって平和と幸福を)の頭文字をとった語で、「物心両面の繁栄により、平和と幸福を実現していく”(Wikipediaより)という理想のもとに設立されているそうですが……。社名がパナソニックに変わったのと合わせ、「昭和は遠くなりにけり」という感慨を抱かざるを得ませんね、これは。

そしてこの本、あちこちの大きなブログに取り上げられたこともあり、どうやらずいぶん売れているようです(執筆時点でアマゾン総合10位)。まあ商売ですから売れれば勝ちです。

で、筆者が雑誌連載でお世話になっているオーム社なんかでも、こうしたシリーズを出していたりしますので、まかり間違うと筆者の元に「萌える有機化学」なんて本のオファーが来ないとも限らないわけです。

 まあ筆者もその方面にはさほど詳しくはないですが、需要があって商売になるならやりますよ。もちろん絵は描けませんけど、しっかり勉強してアイディアは出します。BINAPのスーツを着込んで水素化にいそしむロジウムたんですとか、他では手の付けられない暴れ者なのに炭素にはべったりくっついて離れないヤンデレキャラのフッ素たんですとか、Friedel-Crafts反応をBL的に解説とか、プライドをかなぐり捨てて何でもやりますけどね、売れるならば (いや、やっぱちょっときついか……)

とはいえやはりケミストたる者、美少女キャラなんぞにわざわざ転換するまでもなく、生の構造式を見て「燃え」られてこそ漢というものでしょう。複雑な天然物や、華麗な超分子錯体を見て抱く「よし、こいつは俺が仕留める!」という熱い思いこそが、化学を進展させてきたと筆者は思うのです。
cucurbituril
(ククルビットウリル。筆者はこの手の化合物に燃えます)

と、無理やりいい話っぽくまとめたところで、今回はこれにて。