さて最近の論文から3題。

タミフルの供給不足が懸念される中、その合成に関して現在多くの化学者が取り組んでいます。だいぶ以前に本館でも取り上げましたし、現在発売中の現代化学1月号でも最近の成果の紹介記事を書かせていただいております。

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(タミフル)

これまでの合成では最短でも8段階、総収率は40%台がベストでしたが、このほど東京理科大の林雄二郎教授のグループが、総収率57%という素晴らしいルートを報告しました(こちら)。
反応工程数としては9段階ですが、ワンポットで3段階ずつの反応を行っているため、実質3段階(!)といってもいいでしょう。林研究室が長年取り組んできたプロリン誘導体による触媒反応が有効に生かされた、素晴らしい合成です。すでに多くのブログでも取り上げられていますので、そちらも参照下さい。

 さて次はデンドリマーの話題。フラクタル的に分岐して巨大な球状分子になるデンドリマーですが、このたび37個の枝を持つ超巨大分子の合成が報告されました(こちら)。末端には19683個のフェロセンがぶら下がっており、分子式はC934893H1495830O49203Si49203Fe19683、分子量は1600万という怪物分子です。筆者の知る限り、これまで化学合成された最大の分子は分子量38万ほどだったので、いかにこれが桁外れであるかおわかりいただけると思います。

 そして3題目は、ベルギーのグループから報告された、その名もなんと「切腹分子(Seppuku molecule)」。DNA鎖の端にルテニウム錯体がぶら下がった構造をしており、光反応によってルテニウムがDNAの「腹」に突き刺さり、その機能を停止するというものです。まあ切腹といえば切腹ですが、これが論文の題名になっているのが驚きです。

「切腹」なんて言葉が通じるのかなと思っていたら、各国語のWikipediaに記事があるのですね。Tsunamiなんかと同じく、国際語になっているようです。ある意味、これは日本人のセンスからは出てこないネーミングですね。

というわけでとりあえず3題。今年もどうやら化学の話題には事欠かないようです。