昨年のベストセラーランキングは、血液型の本が上位を独占したそうです。根拠はない、日本だけでしか通じない(最近はアジア圏にも広がりつつあるそうですが)といわれ続ける血液型性格判断ですが、やはり根強いのですね。渾身の力を込めて書いた筆者の本(→)はこの100分の1しか売れていないと思うと、なかなか悲しいものがあります。

 科学的・統計的に血液型性格判断が当てにならないのは、昔からずいぶん言われていることではあります。最近では 大槻先生の本ですとか、アルファブロガー小飼弾氏のブログでもずいぶん力説されています。

 筆者自身はどうかといいますと、まあむきになって全面否定する気もないけれど、あまり信じる気にはなれないなというところです。理由の一つは、自分自身が最もよい反例だからです。こんなずぼらで面倒くさがりで片付け下手の男がA型であってたまるか、と自分で思うからです(笑)。B型・O型・AB型ならまだ重なるところはありますが、A型だけはどう間違ってもあてはまるところはなさそうです、我ながら。

 もうひとつの理由は、血液型の決まる仕組みを勉強してみると、あまりこれが性格に関与するとは思えなくなってくるからです。ABO式血液型という概念がこれだけ広まっていながら、あまりこの仕組みは知られていないように思いますが、実は単純な分子レベルで血液型は決まっているのです。赤血球の表面にたくさん突き出ている、「糖鎖」がその鍵です。その名の通り、グルコースなどの糖が、鎖状につながった分子です。

 ABO式血液型を決めるのは、下図のような「スフィンゴ糖脂質」と呼ばれる化合物です。
 血液型
ご覧の通り、O型の赤血球には5つの糖が連結しており、A型にはそこにN-アセチルガラクトサミン、B型にはガラクトースという糖がくっついているというだけの違いです(AB型は、A・B両方の糖鎖を持つ)。

 特にA型とB型は、オレンジ色の丸で囲んだ部分がAcNHかOHかだけの違いです。さらに言えば、赤血球表面の糖鎖のうち、ABO式血液型を表すものはたった0.8%だそうです。また他の細胞表面にあるタンパク質類も糖鎖を持っているものが多く、赤血球の糖鎖だけが特別視される理由はあまりないように思えます。その0.8%の分子のたった1ヶ所だけが変わっただけで、本当に性格が几帳面になったりずぼらになったりするか……といえば、あまりならないだろうなと筆者は思うわけです。もっと性格に関与しそうなファクターは、他にいくらでもありそうなものです。

 まあ血液型の本を買う人は、占いが理論的に正しいと信じているから買っているのではなく、占いが好きだから買っているのであって、これを科学的に否定してもあまり意味はないのだろうなと思います。残念ながら、これは筆者には理解しかねる心理ではあるのですけれど……。