本日は筆者の住む関東も久々の雨でした。ということで雨と化学の話でも。

雨が降り出すと、独特の匂いがすることがあります。といっても雨そのものは基本的にただの水ですから、匂いは持っていません。また「雨の匂い」も、しばらく降り続くと消えてしまいます。ではあれは何の匂いなのでしょうか?

その正体は「ジオスミン」(geosmin、ゲオスミンとも)なのだそうです。「大地」(geo)+「匂い」(smell)から名づけられた化合物です。
geosmin

 ジオスミン

実はこの化合物は、地中に棲んでいる細菌類が作っている化合物で、雨が降ると土中から叩き出されて舞い上がり、あの匂いがするのだそうです。しばらく降るとジオスミンは洗い流され、匂いは消えます。

人間の鼻はこの化合物に対して極めて敏感であり、5ppt空気に含まれているだけでその存在を感じ取れる――のだそうです(Wikipediaより)。5pptといえば1兆分の5ですから、本当かと思うような数字ではありますが……。
水中にいる藍藻などもこの化合物を作っており、ときに水がまずくなる原因となります。腐った水を嗅ぎ分けるのは生命維持に重要だったでしょうから、そのためにこの化合物に対する感受性が高くなったのかもしれません。

ちなみにこの6員環ふたつがつながった骨格(デカヒドロナフタレン、略称デカリン)は香料に使われるものが多く存在します。グレープフルーツの香りのヌートカトン(黄色)、龍涎香の香りを持つ人工香料・アンブロキサン(水色)などがこの骨格を含みます。

nootcatone

ambrox

 ヌートカトンとアンブロキサン

土臭い匂いとはずいぶん縁遠いようですが、これらも香料としては「アーシー(earthy)」と表現されるものがあり、そう遠い匂いではないのかもしれません。

コンクリートに固められた都会では、この匂いを感じる機会も少ないのが現実です。秋が深まったら、ハイキングなどに出かけて大地の匂いに触れてくるのもたまにはよいのではないでしょうか。