さて筆者もちまたで話題のこの一冊をゲットして参りました。史上初の有機化学ラブコメ、ケミカル胸キュンストーリーこと「ラブ・ケミストリー」であります。
Lovechem
ラブ・ケミストリー(喜多喜久・著)


 何しろ主人公が東大の大学院生、研究テーマがグアニジンアルカロイドの全合成というのだから、これはもう手に入れないわけに行きません。著者の喜多氏が東大大学院卒、現在製薬メーカー勤務ということですので、まあ筆者の同業者といってよいでありましょう。それだけに内容の方もしっかりこってり有機化学テイスト全開、研究室の描写などアセトンの匂いが漂ってきそうなほどのリアリティです。表紙もエバポやナスフラスコなど化学者におなじみの器具がきちんと描き込まれているあたり、なかなかポイントが高いところです。

 まだ読みかけではありますが、驚くほど手慣れた文章で、いまどき感もありつつスピーディな展開で飽きさせず読ませる、非常な才能の主と拝見しました。いやいや、いるものですねこういう人が。

 主人公は恋愛に奥手な草食系男子とのことで、草食系どころか草系を自認する筆者には共感せざるを得ない展開続出。また筆者にとっては毎日通っている場所が舞台ですので、情景描写などいちいち手に取るようですし、「ノシル基をチオフェノールで外す」なんて表現を小説で読むなんて経験をするとは思いませんでしたから、ストーリー以外でもいちいち面白い。合成屋さんなら必見でしょう。

 よい小説の条件として、読んだら自分も小説を書きたくなる本、というのがあるそうですが、その意味では筆者にとっては最高の小説ということになろうかと思います。まあ筆者がやると、だいぶダークになりそうですけど。

 で、もう読み終えたみなさん……

神崎先生のモデルって、あの人ですよね?


 まあその他、いろいろ読んでみてのお楽しみということで。