2011年10月30日

オゾンは体にいいのか悪いのか?

筆者は毎日つくばエクスプレスに乗って通勤をしております。で、先日筑波山観光のこんな広告が車内に出ておりました。

O3
「からだいっぱい、オゾンを浴びて元気になる」


 えー、危ないですからぜひやめて下さい。

 どうもオゾンというのは「酸素の濃いやつ」的な、体によいものと思われているようですが、実際にはオゾンは猛毒の気体です。オゾンは酸素ガスに紫外線や放電を浴びせることによって発生し、酸素原子が3つつながった構造を持ちます。

ozone
オゾンの共鳴構造

 どうしてこれが猛毒かといえば、オゾンは不安定であり、余分な酸素原子ひとつを他の分子に押しつけ、安定な酸素分子(O2)に戻りたがる性質がある――すなわち、強い酸化力を持つからです。これにより、生体の大事な分子を破壊してしまうので、毒として働くのです。

 しかしオゾンは低濃度では殺菌効果があり、医療器具などの消毒に使われます。水道水の消毒にも、塩素などに比べて味の変化が起きにくいため、オゾンを使う国があるとのことです。猛毒も、さじ加減次第で有効な消毒になるというわけです。またオゾンは、アミン・硫黄化合物・不飽和炭化水素など悪臭を持つ化合物と反応・分解してしまいますので、脱臭剤としても有効です。

 が、実はオゾン自体にもにおいがあります。実は「オゾン」という名は、ギリシャ語で「におい」を意味する「ozo」からつけられたものです。筆者は学生時代オゾン酸化を研究テーマとしていたことがありますのでよく知っていますが、生臭いような独特の臭気を持ちます。古いコピー機などでは、紫外線によってオゾンが生成し、このにおいがすることがありました(今の機種ではこういうことはないそうです)。

 このオゾンが指に少しつくと独特のにおいがし、それがかなり長時間続きます。昔から不思議に思っていたのですが、これはおそらく皮脂の不飽和脂肪酸がオゾンで切断され、発生したアルデヒドやカルボン酸のにおいなのだと思われます。してみると我々がオゾンのにおいと思っているものは、本当にオゾン自身のにおいなのか?という疑問も出てきたりします。

 ところが最近、少量の血液を採取し、オゾンを吹き込んで血を「浄化」した上で体内に戻すという、「血液クレンジング」なる健康法が登場しているのだそうです。テレビでも紹介されていましたが、採取したどす黒い血液にオゾンを加えると健康的な赤色に変化するところが映し出されていました。老化防止や、ガン・糖尿病などの予防に効果があるということですが、正直言って極めてうさんくさく感じます。オゾンを吹き込んでも過酸化脂質やアルデヒド類などが増えるだけで、体に悪いことはあってもいいことがあるとは思えません。血が赤くなるのも、単に酸素を吹き込まれてヘモグロビンの色が変わっただけでしょう。

 まあ「インチキだ」と決めつけるほどにきっちりした証拠を持っているわけでもありませんが、筆者としては血液クレンジングなる療法には眉に唾を付けてかかることをお勧めしたい、というところです。雑誌やテレビでやっているから、話題になっているからいいものだと限りません。くれぐれもご用心のほど。

route408 at 22:39│Comments(16)TrackBack(2)

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「方言コスプレ」の時代――ニセ関西弁から龍馬語まで岩波書店 田中 ゆかり Amazonアソシエイト by 博士が「○○じゃ」という言葉遣いをフィクションの中でするようのは 「役割語」という専門的な呼び方をされているが その延長線上で、方言もまた「あえて使う」ようにな
2. [作ってみた]動脈血と静脈血  [ cloud9science ]   2011年11月03日 20:12
いつも面白い佐藤健太郎さんのブログ有機化学美術館・分館でオゾンは体にいいのか悪いのか?という記事を読みました。以下に少し引用します。<引用>ところが最近、少量の血液を採取し、オゾンを吹き込んで血を「浄化」した上で体内に戻すという、「血液クレンジング

この記事へのコメント

1. Posted by ぷに   2011年10月30日 23:22
実際に健康に影響出るほどの量ではない(100ml程?)のでほとんどプラシーボ効果ではないでしょうか?(^_^;)
マグロの刺身に一酸化炭素かけるのと同じような話ですが、体験してみたいとは思いませんね・・
2. Posted by さとう   2011年10月31日 00:50
プラシーボ効果程度で済むならいいですが、どのくらいの濃度をどのくらいの量吹き込んでいるやら、ちょっと恐ろしく思います。
3. Posted by どせい   2011年10月31日 03:22
オゾンが体に良い物という勘違いはよくありますよね…

>オゾンは酸素ガスに紫外線や放電を浴びせることによって発生し

成層圏や実験室で使うUVランプでは波長が十分短いですが、対流圏では酸素は光分解出来ないので、対流圏オゾンはNO2の光分解+O2から発生するのではないでしょうか?
4. Posted by なかた   2011年10月31日 04:47
古いコピー機で大量にコピーしてると気分悪くなったことを思い出しました。
森林といえばフィトンチッドとかいうのはどうなったのだろう。
磁気ブレスレットにゲルマニウムブレスレットときたからこんどはガリウム砒素ブレスレットが流行るぞなんて冗談を言っていたことを思い出します。
5. Posted by 亜留間次郎   2011年11月01日 11:09
血液クレンジングでぐぐってみたのですが、
赤血球が破壊されて溶血しているように見えるのですが。
瀉血療法の亜種みたいなものじゃないでしょうか?

恐ろしいことに、これやってるのは正規の医師免許もってる医者なんですね。
6. Posted by Ca   2011年11月01日 11:21
> さとうさま
「社内」は「車内」ですね。

この広告、私もTXで見かけて、ため息をつきました。世の中の人たちって、ほんとにアホなのねえと。・・・そんなにオゾンを吸い込みたかったら吸い込んでみい。喘息で死ぬぞ。・・・広告関係者/広報担当者の中に誰かその程度の知識を持っている人はいなかったんでしょうかね。

> どせいさま
対流圏オゾンの生成過程は非常に複雑ですから(一部は成層圏からも降りてきますし)、このブログでその詳細を語る必要はないのでは。重要なファクターは酸素分子と高エネルギーってとこなので。何事も(特に素人相手の文章の場合)、詳しければ良いというわけではないと私は思います。大切なのは本質です。
7. Posted by xeros   2011年11月01日 16:48
森林へ行ったらオゾンが多いという誤解も多いですよね。さらにひどいのになると滝がオゾンを発生なんてバージョンも見たことがあります。

オゾンは地表付近では都市部で主に生成されていて、その一部が森林地帯へも運ばれていって木を枯死させる原因になってるというのに……
8. Posted by 通りすがり   2011年11月01日 19:25
いつも楽しく拝見しております。
水道水のオゾン殺菌ですが、日本でも東京都や大阪市など大都市圏の水道では採用されている例があります。
主として臭い、色成分の分解が目的のようです。
各自治体の水道局のホームページなどにも説明がありました。
ご参考まで。
9. Posted by 肉じゃが   2011年11月01日 21:26
最近”高濃度水素水”なるものを目にしました。
水素って水に溶けたっけ??
水素イオンなら、ただの酸性水だよね??

いったい何者でしょうか??
だれか教えてください。
10. Posted by あがたし   2011年11月02日 07:06
中学生だか高校生だかの頃(25年ほど前),科学的に見ると間違っている宣伝というテーマの記事を何かで読んだことがあります.今から思えばえらく時代を先取りしていたような・・・それはそうと,その中にすでに「高原にはオゾンが一杯.たくさん吸って元気になろう」といった宣伝がネタとして取りあげられていたように記憶しています.

あと,水道水のオゾン殺菌は通りすがりさんのおっしゃるとおり,すでに日本でも「高度浄化処理」の一環として行われています.印象では,「まずい水」の代名詞だった浄水場から重点的に配備されたように思えます.
例:http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/water/w_info/s_kekka_topi13.html
11. Posted by どせい   2011年11月02日 10:05
>Caさま
そうですね、ごもっともです。以後気をつけます。
12. Posted by オゾニド   2011年11月02日 12:58
通りすがりですが、学生の頃、オゾン発生装置に誤ってゴム管をつなげてしまい、数分でゴム管がボロボロになったことがあるので間違っても吸い込みたいとは思いませんね!
13. Posted by 緑   2011年11月08日 22:44
素人には、「オゾンとは活性酸素の塊です」といえば、
一瞬で理解してくれると思います。
14. Posted by 緑   2011年11月09日 03:00
>このオゾンが指に少しつくと独特のにおいがし、それがかなり長時間続きます。

>してみると我々がオゾンのにおいと思っているものは、本当にオゾン自身のにおいなのか?という疑問も出てきたりします。

塩素系漂白剤も指につくと数時間ほど塩素臭がしますが、
これももしかして分解生成物の臭いなんですかね?
塩素はガスなのですぐ飛びそうなものですが、
塩素塩の形なので持続してるんでしょうか。
まあ、塩素ガスを直接指につけた経験がないのでなんともいえませんけど。
15. Posted by 緑   2011年11月09日 03:03
関係ないですが、血液クレンジングの血液を民族と言い換えると・・・
エスニック・クレンジング(民族浄化)となりますね。
英語だと、クレンジングには日本語の「浄化」のような美しいイメージはないのでしょうかね?
「血液クレンジング」は英語圏の人にとってどういう印象の言葉なのかが気になります。
16. Posted by たこ   2011年11月11日 00:40
「オゾンとは活性酸素の塊です」に対して「活性酸素って体にいいんだよね」って「いつの時代の人間だよ」的ボケをされると困るかも.

ちなみに「人間の皮膚の細胞は細菌やウイルスと違って丈夫な細胞壁で守られているので問題なし」としているサイトも存在する. いったいどこで何を間違ったのか.

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