某所で、味のある有機化合物の話を書いておりました。味があるといっても、目立たないがいいところで渋い働きをしてくれる化合物とかではなく、甘いとか酸っぱいとかの話です。
甘い化合物の話は、今までにも何度か書いております(こちらなど)。アミノ酸2つがつながったアスパルテームがその代表選手ですが、グリシンやセリンも甘いし、D-6-クロロトリプトファンなどは砂糖の約1300倍という驚くほどの甘さを示します。

アスパルテーム。砂糖の180倍ほどの甘さ。
これらが注目されるのは、やはり甘味という味が特別だからです。他の味はとめどなく食うということはありませんが、甘味だけは誰もが好む味です。しかし砂糖の摂り過ぎは、肥満や糖尿病など恐ろしい病気の原因となりますから、これに代わりうる化合物を創れば、大いに商売になるのです。このへん、「炭素文明論
」というとても面白い本に詳しく書いてありますので、一読されると物すごくよいと思います。
とはいえ、例えば塩味も人間に必要な味であり、かつ過剰摂取は高血圧などの症状につながります。ならこれに代わる化合物があれば、生活習慣病の防止につながるのではないか(そして儲かるのではないか?)、なんて着想が脳裏をよぎるわけです。
食塩の味はナトリウムイオンによるもので、これが舌の細胞のチャネルを通ることによって味を感じさせます。で、これの代わりになるものには、一応リチウムがあります。ナトリウムと似たような作用で味を感じさせるわけですが、残念ながら毒性があるため、食塩の代替にはなりえません。また、カリウム・マグネシウム・カルシウムなどは不快な味があり、これも食塩の代わりは務まりません。ただし、塩化ナトリウムの半量を塩化カリウムに置き換えた、「減塩塩」というものが市販されているそうです。
有機化合物には何かないのかと調べてみたら、ちゃんとありました。アスパルテーム同様、2つのアミノ酸をつないだジペプチドで、塩味を示すものがあるのだそうです。オルニチンとβアラニンをつないだもの、あるいはオルニチンとタウリンをつないだものが、最もよい塩味を示すとのことです。


オルニチル-βアラニン(上)、オルニチルタウリン(下)
こんな化合物がナトリウムイオンの代わりを果たすというのは不思議に見えますが、ナトリウムイオンの刺激が脳に伝わる過程のどこかに作用しているのでしょう。
この他、うま味ペプチドとしてVal-Glu-Val、苦味ペプチドとしてArg-Arg-Pro-Pro-Pro-Phe-Phe-Phe、酸味ペプチドとしてGlu-Gly-Serなどが知られているようです。ペプチドだけで、基本の五味を表現できるわけで、実に奥が深いです。まあ20種のアミノ酸の組み合わせだけであれだけ多彩な生理作用を演出するくらいですから、これくらいのことは当たり前なのかもしれません。こういうことも頭に入れつつ仕事をしていると、思わぬセレンディピティにぶつかるかも、なんてことを思ったりします。
参考:「食品・医薬品の味覚修飾技術」
甘い化合物の話は、今までにも何度か書いております(こちらなど)。アミノ酸2つがつながったアスパルテームがその代表選手ですが、グリシンやセリンも甘いし、D-6-クロロトリプトファンなどは砂糖の約1300倍という驚くほどの甘さを示します。

アスパルテーム。砂糖の180倍ほどの甘さ。
これらが注目されるのは、やはり甘味という味が特別だからです。他の味はとめどなく食うということはありませんが、甘味だけは誰もが好む味です。しかし砂糖の摂り過ぎは、肥満や糖尿病など恐ろしい病気の原因となりますから、これに代わりうる化合物を創れば、大いに商売になるのです。このへん、「炭素文明論
とはいえ、例えば塩味も人間に必要な味であり、かつ過剰摂取は高血圧などの症状につながります。ならこれに代わる化合物があれば、生活習慣病の防止につながるのではないか(そして儲かるのではないか?)、なんて着想が脳裏をよぎるわけです。
食塩の味はナトリウムイオンによるもので、これが舌の細胞のチャネルを通ることによって味を感じさせます。で、これの代わりになるものには、一応リチウムがあります。ナトリウムと似たような作用で味を感じさせるわけですが、残念ながら毒性があるため、食塩の代替にはなりえません。また、カリウム・マグネシウム・カルシウムなどは不快な味があり、これも食塩の代わりは務まりません。ただし、塩化ナトリウムの半量を塩化カリウムに置き換えた、「減塩塩」というものが市販されているそうです。
有機化合物には何かないのかと調べてみたら、ちゃんとありました。アスパルテーム同様、2つのアミノ酸をつないだジペプチドで、塩味を示すものがあるのだそうです。オルニチンとβアラニンをつないだもの、あるいはオルニチンとタウリンをつないだものが、最もよい塩味を示すとのことです。


オルニチル-βアラニン(上)、オルニチルタウリン(下)
こんな化合物がナトリウムイオンの代わりを果たすというのは不思議に見えますが、ナトリウムイオンの刺激が脳に伝わる過程のどこかに作用しているのでしょう。
この他、うま味ペプチドとしてVal-Glu-Val、苦味ペプチドとしてArg-Arg-Pro-Pro-Pro-Phe-Phe-Phe、酸味ペプチドとしてGlu-Gly-Serなどが知られているようです。ペプチドだけで、基本の五味を表現できるわけで、実に奥が深いです。まあ20種のアミノ酸の組み合わせだけであれだけ多彩な生理作用を演出するくらいですから、これくらいのことは当たり前なのかもしれません。こういうことも頭に入れつつ仕事をしていると、思わぬセレンディピティにぶつかるかも、なんてことを思ったりします。
参考:「食品・医薬品の味覚修飾技術」

