さて本日は、当ブログの元になったサイト「有機化学美術館」の開設20周年に当たります。最近の更新状況では「続いている」とは言い難いものがあり、大変申し訳ないところでありますが、まあとにかく20年目です。

 1998年12月26日、つくば市にある製薬会社のしがない一研究員であった筆者が、趣味で立ち上げた個人サイトが始まりです。なんでこの日付であったかというと、ズルズル開始が遅れていたので、なんとか年内に始めようと駆け込みでアップロードしたからです。

 開始したきっかけは、友人が個人サイトなるものを次々に始めたので、あんなに簡単なら俺もなんかやってみるかな、という軽い気持ちでした。それがその後自分の運命さえ変えることになるとは、その時は知る由もありませんでした。開始した時は、この寮のひと部屋の小さなパソコン(Macintosh Performa5440でした)が世界につながっているんだなあ、と妙に感激したことを覚えています。

yuukibi
トップページのデザインも何度か変わっています。今見ると実に古めかしい(笑)。

 始めたときのサーバーは、地元のパソコンショップがやっているインティオネットという小さなプロバイダでした。その後、ACCSnetというプロバイダに移り、さらに現在のYahooジオシティーズへ引っ越しています。インティオ時代を知っている方はかなりの通です。

 1998年といえばまだブロードバンド(という言葉ももう死語ですが)の普及前なので、ピーガリガリなどといいながら電話回線をつなぎ、一枚の画像を読み込むために数分かかっていたような時代です。まだ2ちゃんねるもウィキペディアもツイッターもスマートフォンもない、ネットの石器時代でした。

 「有機化学美術館」は個人サイトの一コーナーという位置づけで、他にもまずいジュースのコレクションだのしょうもない豆知識だのといった、黒歴史という言葉でしか表現できないコーナーも作っていました。消すのも何なので、いまだにさらしっぱなしになっていますが。

 国道のコーナーも当初からあり、まあアホというものは当初から手のつけようもなくアホなのだなと自分で思います。全国の国道32万キロを走り回った挙げ句のアホコーナーが十数年後に著書「ふしぎな国道」として結実するわけですので、我ながらアホの底が知れません。

アホ趣味の結晶

 有機化学のコンテンツを始めようと思ったのは、当時Weblab Viewer(現DS Viewer Lite)というフリーソフトで分子の3Dモデルを描けることを知り、面白がって遊んでいたのがきっかけです。これを誰かに見せられないものかなということで、考えてみました。

thiacyclacene
DS Viewerで描いた分子。フリーとは思えない高機能です。

 有機化学美術館というタイトルですが、当初は展覧会のイメージで、分子の画像を1ページに1枚展示し、数行コメントをつける形式であったためです。いつしか文章ばかりがずらずらと長くなり、どこが美術館やねんという体裁になりましたが、まあ「分子は美しい」という思い込みは今も抱き続けております。

 よく聞かれるのが、なぜ会社員の身であったのに実名でサイトを運営していたかということです。実を言いますと、当時は優れた検索エンジンなどというものが普及していなかった(グーグル社の設立が98年9月)ころですので、まさか知り合いが自分のサイトを発見するなどという事態は想定もしていなかったのです。今となっては信じられませんが。

 やがて会社の同僚などにも発見されてしまいますが、一方で大学の先生方などからも激励のお言葉をいただくようになり、学生さんからも、「有機化学美術館を見て有機を選びました」などと連絡をいただいたりもするので、今さら引くに引けぬと開き直って続けていました。そのころの学生さんが今や准教授などになっていたりしますので、時が経つのは早いなあと思うと同時に、自分もちっとは化学の世界に貢献できたのかなと感じたりもします。

 長くなったので続きます。