救急・集中治療の勉強日記

救急・集中治療・総合診療の話が中心の備忘録です。

心筋梗塞の患者を救急で診療していく上で最大限警戒しなければならないものには何と言っても心筋梗塞があります。急性心筋梗塞における心室細動合併症例は短期的にも長期的に予後不良の因子であると考えられており、致死的で最大の合併症の一つです[1,2,3]。これまでの報告では急性心筋梗塞における心室細動の合併頻度は2-20%と報告されています[3,4]。急性心筋梗塞に伴う心室細動の責任血管に関しては右冠動脈とする報告[4,5,6]と左前下行枝とする報告[1,3,7,8,9]があります。Gheeraertらは来院前の心室細動合併症例の多くに、左冠動脈が関与していると報告しています[9]。


では実際にどの血管がリスクが高いのでしょうか。


NYで行われたAMIの後ろ向き研究では再灌流前にVT/VFとなった群では、責任血管がLADであった割合が66.9%、非VT/VF群では60.6%で有意に(p=0.006)LADの割合が高かったと報告されています[3]。その他にはCKDのある患者、心不全、症状発症から6時間以内の来院も有意にVF/VT群で割合が高かったと報告されています[3]。


他の研究でも院外にてVFとなった症例の割合はLADで多かったという報告があります[62.5% vs 37.5%, p=0.0005][8]。


一方で、AMIに対してPCI中にVF/VTとなった症例を解析した後ろ向き研究では、RCAである割合が有意にVF/VT群のほうが高かった(40.8% vs 57.9% p=0.0008)との研究結果があります。逆にこの研究ではLADの割合はnon VT/VF群のほうが高かったという結果となっています(37.8% vs 28.6% p=0.018)[10]。


救急外来においては心室性不整脈をきたすリスクの高い病変があらかじめ把握しておくことは、血管造影までの間に除細動器のパッドを装着した状態で診療を進めるなど、非常に重要と考えられます。これらの研究の結果からはカテ室まではLADが、カテ中はRCAが最もVFのリスクが高いと言えそうですが、さらなる研究が必要そうです。



(1)Circulation 1998;98:2567-2573

(2)Circulation 2002;106:309-312

(3)Am J Med 2008;121:797-804

(4)Am J Cardiol 1998;82:265-271

(5)Am Coll Cardiol 2004;43:1765-1772

(6)Clin Cardiol 2003;26:373-376

(7)Circulation 2005;112:IV35-IV46

(8)J Am Coll Cardiol 2000;35:144-150

(9)Int J Cardiol 2005;105:262-266

(10)J Am Coll Cardiol 2004;43(10):1765-72


発表されていたのは少し前ですがSCCMで紹介されていたNarrative reviewです。

The role of resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA) as an adjunt to ACLS in non-traumatic cardiac arrest: A review of key concepts, physiology, current evidence, and future directions.
Am J Emerg Med 2017 PMID: 28117180

REBOA(日本ではIABOとよく呼ばれます)は主に外傷による出血性ショックに対して用いられており、症例報告などでは消化管出血に対して用いられたものもあります。
REBOAは大動脈を遮断するため結果としてバルーン遮断部位よりも近位部の血流を増加させます。そのことが、脳血流や心血流を増加させ機能学的予後を改善するのではないかということが、この論文では論じられています。このことは1980年代より動物実験では検証されており、脳血流や心血流を増やし死亡率を改善するということ示唆されていますが、人間でのエビデンスはいくつかの小規模なケースシリーズがあるのみです。

RCTをというのは難しいでしょうが、理屈にはかなっています。
ECPRに慣れている施設ではVA-ECMOの導入も大して時間差はないかもしれませんが・・・
ECMOの導入の基準(各病院にプロトコールのようなものがあることが多いと思いますが)は満たさないが、予期せぬ心停止などの症例では用いることが可能なのかもしれません。

すぐにプラクティスを変える論文ではありませんが、非常に興味深い内容です。 

高酸素の弊害というのは指摘されて久しいですが、実際問題、SpO2が良いにもかかわらず酸素投与が過剰に行なわれている光景というのはよく目の当たりにします。

Hyperoxia and hypertonic saline in patients with septic shock (HYPERS2S): a two-by-two factorial, multicentre, randomised, clinical trial.
Lancet Respir Med 2017 Feb 14 PMID: 28219612

敗血症性ショック患者におけるFiO2の増量や高張食塩水の効果はあまり知られていないため、2X2の多施設RCTが行われています。最初の24時間FiO2 1.0群とSpO2を88-95%のターゲットにした群に分けられ、また高張食塩水投与群と生理食塩水群も分けられました。高酸素群は死亡率は有意差がなかったものの高い傾向にありほぼ2倍の発生率ICU-AW及び無気肺を生じたとの結果でした。
高張食塩水は生理食塩水と比べて特に死亡率や有害事象の有意差はありませんでした。

敗血症であっても(そうでなくても)ERにいる段階から高すぎる酸素濃度を避けて管理するのが重要です。Admissionしてすぐは、行うことも多い為、酸素を高めにしがちですが気をつけなければいけないことが示唆される論文でした。

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