内科・救急・集中治療の勉強日記

内科・救急・集中治療の話が中心の個人の備忘録です。情報を参照する場合は、必ずご自身での確認を行ってください。

ARDS急性期にステロイド?

ARDSの急性期におけるステロイドの使用に関して、2017年9月22日に発表されたSCCMとESICMの合同のガイドライン驚きの内容がありました。


Guidelines for the diagnosis and management of critical illness-related corticosteroid insufficiency (CIRCI) in critically ill patients (Part 1): Society of Critical Care Medicine (SCCM) and European Society of Intensive Care Medicine (ESICM) 2017


このCIRCIですが重症疾患における視床下部ー下垂体系におけるストレス応答の障害と認識されており、重症病態においてGlucocorticoidによる抗炎症活性がうまく機能せず炎症が制御不能においちる状態を指します。


まず、CICRIの診断に関する推奨ですが、

1.CICRIの診断において、ACTH負荷後の総コルチゾール値がランダムな総コルチゾール値に比べて有用か?→ このガイドラインではこのどちらを使うべきかに関して推奨なしとしています。


2.CICRIの診断において、遊離コルチゾール値の測定は総コルチゾール値の測定に比べて有用か?→ very low quality evidenceに基づくとしながらも総コルチゾール値の測定を推奨しています。


3.CIRCIの診断において唾液の遊離コルチゾール値の測定は血清総コルチゾール値よりも優れているか?→ very low quality evidenceに基づくとしながらも唾液よりも血清総コルチゾール値の測定を推奨しています。


4.CIRCIの診断において、1-μg ACTH刺激試験は250-μgACTH刺激試験と比べて有用か?→ low quality evidenceですが、high-doseである250-μgACTH刺激試験の方を推奨しています。


5.ハイドロコルチゾン50-300mgを投与してその反応を見る方がACTH負荷試験より有用か?→ very low quality evidenceに基づくとしながらもCIRCIの診断においてハイドロコルチゾンへの反応を見るよりも、250-μgACTH刺激試験を行うことを推奨しています。


6.CIRCIの診断において、コルチコトロピン値を測定する方が250-μgACTH刺激試験よりも有用か?→ 250-μgACTH刺激試験の方を推奨しています。


次に敗血症ですが、


A.ショックでない敗血症の成人患者にステロイドを用いるべきか?→ ショックがない場合、推奨されない。


B.敗血症性ショックの成人患者でステロイドは投与されるべきか?→ 輸液療法及び、中等量から高用量昇圧剤を用いていも反応しない敗血症性ショックでのステロイド投与を推奨する。


C.敗血症性ショックに投与するステロイドの種類と投与量はどうすべきか?→ ハイドロコルチゾンを400mg/day未満の投与量で3日間以上用いることを推奨する。


次にARDSですが、これが最も驚きの推奨でした・・・


I.ARDSの成人患者においてステロイドを用いるべきか?→ P/F ratio <200で発症14日以内の中等症から重症のARDSにおいてステロイドの投与を推奨する。文献中では発症7日以内であれば1mg/kg/dayのメチルプレドニゾロンを、それ以降の発症であれば2mg/kg/dayで13日以上かけてテーパリングすることを推奨しています。


外傷について

a.多発外傷の成人患者でステロイドを用いるべきか?→ 用いないことを推奨する。


ざっと内容をまとめましたが驚いたのが発症早期のARDSに対するステロイド投与です。知らないうちに大きな研究でも出たのかと思い調べてみましたが、これに関する新しい大きな研究はなさそうです。主に根拠にしているのはIntensive Care Med 2016;41(3):517-20のようです。

発症早期はdoseが少なめなことの根拠はJAMA 1998;280:159-65やN Engl J Med 2006;354(16):1671-84を挙げています。これらの参考文献の大半はMeduri GUらによって書かれたものであり、ちょっとこれだけで推奨とまでなるのはどうかなあと思いました。


しかしSCCMとESICMの合同のガイドラインとなると影響力がかなり大きそう、世の中の治療が一気に変わりうるのかと思います。しかし、この発症早期のステロイドに関しては、やはりRCTでの評価がいるような気がします。また1mg/kg/dayという非常に少ないメチルプレドニゾロン量が役に立つのはピンとこないような気もします。

Auto PEEPについての基本

Auto PEEPについての基本


気管支喘息やCOPDの急性増悪では基本的に肺が過膨張になる傾向があり、Auto PEEPは発生してしまうことがあります。この予防のために深めの鎮静や、low tidal volume、呼吸数を抑えてARDS同様にhypercapniaをある程度許容するといった戦略をとることが多いかと思います。また大前提としてSABA+SAMA+ステロイドといった、これらの原疾患の治療が最大限にできていることも前提となります。


Auto PEEPが存在すると呼気終末に吸気に転じる際にAuto PEEP以上の吸気努力を行わないと吸気努力が口元まで伝わらないためにトリガーができなかったりあるいは遅れたりします。そこで理屈としてはAuto PEEPと同じだけの圧をカウンターPEEPとしてかければ吸気を開始することができます。このカウンターPEEPはAuto PEEPの80%以下に抑えておくことが推奨されています[1]。しかしながら問題点として、自発呼吸がなければVCVで呼気ポーズをとればauto PEEPの測定ができるわけですが、自発呼吸では臨床的にAuto PEEPの測定は難しいためカウンターPEEPの至適値を算出するのは困難なことが多いと思われます。なので個人的には少しずつ5cmH2Oくらいから始めて上限が8-10cmH2OくらいまでカウンターPEEPを増やしながら反応を見る感じになるかなあと思います。結局、意識があれば本人が最も楽という値にセットすることが多い気がします。
 

トリガー不良の場合は人工呼吸器期間が長く予後不良であることが指摘されているため[2]、やはり喘息発作やCOPDでAuto PEEPのハイリスク患者では人工呼吸器のグラフィックのスケールを拡大し、目ざとく呼気のflowがきちんと0に戻っているかを確認し、怪しい場合は深めの鎮静で呼吸回数を抑えておいた方が無難かもしれません。


[1] Ann Emerg Med 1997;29:275-81

[2] Crit Care Med 2009;37:2740-5

ABIMの勉強日記 その26(肝細胞腺腫)

その26は肝細胞腺腫(hepatocellular adenoma)についてです。

これは妊娠可能な年齢の女性にできやすいとされる肝臓の良性腫瘍ですが、注意点があります。
肝細胞癌に発展する可能性のものが含まれており、それを認識することが重要となります。

欧米でも稀ですが、日本ではさらに稀なようです。経口避妊薬やアナボリックステロイドのしようがこの疾患の発症と関係しているようです。

一般に肝細胞腺腫は5cm以上である、男性、出血を伴うまたはβカテニン/グルタミン合成酵素抗体が陽性であれば肝細胞癌に発展しやすいため切除した方が良いとされています。

 若い女性に生じた5cm未満の肝細胞腺腫、経口避妊薬内服中、HFN-1α不活化変異などあれば肝細胞癌への発展のリスクは低いためCTでのフォローを6-12か月ごとに行うことが推奨されています。

Reference
Clin Gastroenterol Hepatol 2011;9(7):547-62.e1-4 
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