救急・集中治療の勉強日記

救急・集中治療・総合診療の話が中心の備忘録です。

発表されていたのは少し前ですがSCCMで紹介されていたNarrative reviewです。

The role of resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA) as an adjunt to ACLS in non-traumatic cardiac arrest: A review of key concepts, physiology, current evidence, and future directions.
Am J Emerg Med 2017 PMID: 28117180

REBOA(日本ではIABOとよく呼ばれます)は主に外傷による出血性ショックに対して用いられており、症例報告などでは消化管出血に対して用いられたものもあります。
REBOAは大動脈を遮断するため結果としてバルーン遮断部位よりも近位部の血流を増加させます。そのことが、脳血流や心血流を増加させ機能学的予後を改善するのではないかということが、この論文では論じられています。このことは1980年代より動物実験では検証されており、脳血流や心血流を増やし死亡率を改善するということ示唆されていますが、人間でのエビデンスはいくつかの小規模なケースシリーズがあるのみです。

RCTをというのは難しいでしょうが、理屈にはかなっています。
ECPRに慣れている施設ではVA-ECMOの導入も大して時間差はないかもしれませんが・・・
ECMOの導入の基準(各病院にプロトコールのようなものがあることが多いと思いますが)は満たさないが、予期せぬ心停止などの症例では用いることが可能なのかもしれません。

すぐにプラクティスを変える論文ではありませんが、非常に興味深い内容です。 

高酸素の弊害というのは指摘されて久しいですが、実際問題、SpO2が良いにもかかわらず酸素投与が過剰に行なわれている光景というのはよく目の当たりにします。

Hyperoxia and hypertonic saline in patients with septic shock (HYPERS2S): a two-by-two factorial, multicentre, randomised, clinical trial.
Lancet Respir Med 2017 Feb 14 PMID: 28219612

敗血症性ショック患者におけるFiO2の増量や高張食塩水の効果はあまり知られていないため、2X2の多施設RCTが行われています。最初の24時間FiO2 1.0群とSpO2を88-95%のターゲットにした群に分けられ、また高張食塩水投与群と生理食塩水群も分けられました。高酸素群は死亡率は有意差がなかったものの高い傾向にありほぼ2倍の発生率ICU-AW及び無気肺を生じたとの結果でした。
高張食塩水は生理食塩水と比べて特に死亡率や有害事象の有意差はありませんでした。

敗血症であっても(そうでなくても)ERにいる段階から高すぎる酸素濃度を避けて管理するのが重要です。Admissionしてすぐは、行うことも多い為、酸素を高めにしがちですが気をつけなければいけないことが示唆される論文でした。

この季節はインフルエンザの罹患者が激増します。
個人的には健常な若年者では強い希望がない限りは検査は特にせず診断することが多いです。
その理由としては待ち時間が減る(待合等での感染の機会を減らせる)、 感度が不十分であり陰性と出た場合医療者も患者さんも油断しやすい、などです。

その中で、高齢者では入院を要することもありますし、重症となる患者さんもおられます。

Increased incidenc of co-infection in critically ill patients with influenza
Intesive Care Med 2017;43(1):48-58

ではICUに入室した2901名のインフルエンザ患者のうち16.6%にインフルエンザ+αで共感染が見られたとしています。最も多い共感染は肺炎球菌、次いで緑膿菌でした。共感染のリスクとしては年齢、HIVなどの免疫不全が挙げられ、共感染は死亡の独立した危険因子でした。

前向き観察研究ですが、この結果から考えられることとしてインフルエンザに罹患してICU入室するような患者さんの場合、特に高齢者及び免疫抑制状態にあれば少なくとも肺炎球菌をカバーする抗菌薬、できれば緑膿菌までカバーした方が良いと考えられます。具体的にはピペラシリン・タゾバクタム又はセフェピムあたりでしょう。MRSAは共感染というよりインフルエンザ罹患後の肺炎で有名ですが、これをカバーすべきかどうかはどうかはcase by caseとなりそうです。

個人的にはインフルエンザと確定した患者さんで敢えて抗菌薬を用いることは少なかったので、今後は使用を考慮しようと思います。



 

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