内科・救急・集中治療の勉強日記

内科・救急・集中治療の話が中心の備忘録です。

その23はPPVについてです。

なぜか、近年の試験ではPPV(Pulse Pressure Variation)についての問題が頻出なので、まとめます。脈圧変動です。 これはAラインでの動脈圧測定より得られる情報ですが、(PPmax - PPmin) / PPmeanで得られます。したがって最大脈圧が血圧120/70の時で、最小脈圧が血圧110/80の時であるとすると、PPmax = 50, PPmin = 30となるためPPV = (50-30) / 45 = 0.44となります。脈圧はStroke Volume (SV)を反映しているとされているため陽圧換気中の吸気は胸腔内圧が陽圧となり前負荷が減少してSVが減少するためPPも減少します。逆も然りです。そのVariation (要は胸腔内圧にどれだけ影響を受けて変動するか)を見ているのがPPVです。前負荷が少ないと、陽圧によって受ける影響がどうしても大きくなるため、PPVは大きくなりがちです。 前提として自発呼吸がなく8ml/kg以上のtidal volumeで人工呼吸器管理されている患者さんでの測定である事、不整脈がない事が前提となります。

同じく動的指標であるSVVもまとめて復習したいと思います。 

SVVはStroke Volume Variationで、 (SVmax-SVmin) / SVmeanで求める事ができます。陽圧換気であることが前提なので人工呼吸がプラトー圧に達した際に前負荷が減少し、SVは減少します。一方で気道内圧が低下した際には前負荷が増加し、SVは増加します。Frank-Starlingの曲線で考えればわかりやすいのですが、前負荷の変化が一定だとしても前負荷の値が小さければSV変化は大きくなり、前負荷が大きければSV変化は小さくなります。したがってSVVが大きい場合は前負荷を増やしてもSV変化はあまり変化せず、SVVが小さい場合は前負荷を増やせばSVVが増えるという理屈です。

これらのことで、重要なことはPPVもSVVも今のボリュームの状態を表しているわけではなく、あくまでFrank-Starling curveのどこにいるかを示しているだけです。Frank-Starling curveがいつも一定の形状をしている状況において完全に自発呼吸がなく、条件を満たした満たしたセッティングにおいては輸液反応性を予測するかもしれませんが[1]、日常臨床においてこう言った状況は極めて稀です。ICUの患者さんの中でこの条件を満たすのはどれくらいの割合かを調べた研究がありますが、311例中6例(2%)のみであったいう研究もあります[2]。したがって、これを指標に輸液をすることが正しいかどうかとは別問題と言えるかと思います。 なので、個人的にはPPVやSVVは全く使わずに輸液管理することが多いです。

[1] Crit Care 2014;18:650
[2] Br J Anaesthe 2014;112(4):681-5

その22は重症頭部外傷についてです。

重症頭部外傷のマネジメントですが、

酸素投与ですが、PaO2<60mmHgまたはSpO2<90%は避けるべきであるとsevere TBIのガイドラインでは述べられています。また、アウトカムがハードアウトカムではありませんが高圧酸素療法及び通常圧酸素療法がTBIにおいて中枢神経系の嫌気性代謝を低下させたという研究もあります[1]。

重症頭部外傷では頭蓋内圧が上昇するわけですが、Up To Dateではギャッジアップ30度をキープし、輸液過多による静脈うっ滞を避けるように推奨しています。

薬剤ではステロイドやプロゲステロン、EPO、トラネキサム酸などが検討されています。ステロイドは高用量ステロイドの投与がRCTで死亡率が上昇したという結果に終わっており[2]、現時点では投与しないことが推奨されるどころか、投与してはいけないと考える方がいいかもしれません。プロゲステロンも効果がないという研究が2014年に出ており現時点で投与する理由はなさそうです(
http://blog.livedoor.jp/rs0514/archives/18520627.html)。重症頭部外傷に対してはトラネキサム酸はCRASH3 trialが現在行われていますが、現時点で出血性ショックの外傷では有効とされていますが(http://blog.livedoor.jp/rs0514/archives/8893727.html)、頭部外傷にいおいてはどうかというのはCRASH3 trialの結果を待ってから結論づけられるということになるかと思います。現時点では重症頭部外傷のみであっても早期に投与されている例が多いのではないかと思いますが、これが正しいかどうかは現時点で不明瞭というところでしょうか。EPOに関しても先日に言及したように未だ、コントロバーシャルかと思います(http://blog.livedoor.jp/rs0514/archives/72196540.html)。ただし最新のRCTメタ解析によれば死亡率や入院期間は改善すると結論付けていますが神経学的な予後改善には有意差は出なかったとしています[3]。また、低体温療法も検討されていますが、頭部外傷によるICP上昇に対する低体温療法は予後良好を減らし死亡を増やすことがRCTで示唆されています[4]。

また、多施設RCT(DECRA study)において、後半な脳浮腫を認めている患者で開頭減圧術は機能予後を改善しないどころか、有意に悪かったという結果となっています[5]。他の多施設RCT(RESCUEicp trial)では死亡率は低かったものの植物状態となる割合が高かったとしています[6]。これに関しては未だ、STITCH studyというRCTを残しているためコントロバーシャルです。ただ、現時点では外傷ではとっさの出来事で医療者も患者家族も救命を優先するのは自然な面もあり、有害であるということでない限りは現場では行われていくのではないかと思います。

ICPモニタリングに関してですが、生存期間・意識障害などにおいて予後を改善しなかったという報告があります[7]。モニタリング全般に言えることですが、モニタリングすることそのものよりもそれをどのように用いるかの方が重要です。

以上のことから現時点で、考慮されうる介入としては

・酸素投与
・EPO
・トラネキサム酸
・Craniectomy 

ですが、結論らしい結論はまだ出ていないようです。 

[1] 
J Neurosurg 2010;112:1080-94 
[2] 
Lancet 2005;365:1957-9 
[3] 
J Neurosurg 2017;127(1):8-15 
[4] 
N Eng J Med 2015;373:2403 
[5] 
N Engl J Med 2011;364:1493-502 
[6] 
N Engl J Med 2016;375(12):119-30 
[7] 
N Eng J Med 2012;367(26):2471-81 

その21はGuillain-Barre syndromeです。

 Guillain-Barre症候群(GBS)は若年者と高齢者に二縫性があるものの全ての年齢で発症しうる疾患です。
わずかに男性の方がなりやすいと言われており、小児例の方が 大人と比して軽症と言われています。
多くは呼吸器症状や消化器症状を呈してから1か月以内に発症します。
最もコモンな先行感染はCampylobacter jejuniですが、他にもEBV、Mycoplasma、CMVも原因と成りえます[1]。

欧米ではもともとAIDP(Acute Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy)として知られてきましたが、アジア圏ではむしろ脱髄型ではなくAMAN (Acute Motor Axonal Nueropathy)として知られていました。しかし臨床経過が同様であり、治療方針も同じことから、基本的には包括してGBSとして扱われることが多いようです。

何と言っても検査所見で有名なのは髄液検査で蛋白細胞乖離が見られることですが早期は目立たない上に、他の検査である抗ガングリオシド抗体も時間がかかり、半分程度の症例でしか上昇しないため疑った場合は臨床的に治療開始する必要があります。

治療では大量IVIGと血漿交換が知られていますが、現時点で主流は血漿交換と考えられているようです。発症から7日以内に行うことが効果を最大化するために重要であり、最近のコクランの解析でも血漿交換の有効性は示されています[2]。回数は4回以上行ってもあまり効果が見られなかったことから4回が効果が最大になる最小回数と考えられています[3]。IVIGはプラセボとの比較のRCTはありませんが、コクランのsystematic reviewによれば血漿交換と同等とされており[4]の代替として入られていますが、IVIGは血漿交換と同様の効果を持つ一方で合併症が少ないとする研究もあります[5,6]。
IVIGと血漿交換の併用は効果がないとされています[6]。また、ステロイドをIVIGと併用するのも回復を早める可能性はあるものの長期的アウトカムにおいて効果は示されていません[7]。多くの医師はIVIGから始めるようですが、IVIGは血漿交換の2倍のコストがかかることは考慮した方が良いでしょう[7]。現在はEculizmabの臨床試験が行われているようであり、そのうちの1つは日本で行われています[8]。

Miller-Fisher症候群はGBSの亜型であり、失調(ataxia)、反射低下(areflexia)、外眼筋麻痺(ophthalmoplegia)を生じ散瞳や顔面神経麻痺・球麻痺をきたしうるのも特徴です。 
また、これに脳炎症状を伴ったものでBickerstaff脳炎を呈する場合もあります。つまりMiller-Fisher症候群の特徴に加えて急性の意識障害も呈することが特徴です。

[1] Br J Anaesth CEPD Rev 2003;3(2):46-9
[2] Cochrane Database Syst Rev. 2012;(7):CD001798
[3] Lancet 1978;2(8099):1100
[4] Cochrane Database Syst Rev 2014;(9):CD002063
[5] N Engl J Med 1992;326(17):1123-9
[6] Lancet 1997;349(9047):225-30
[7] BMC Health Serv Res. 2011;11:101
[8] JMIR Res Protoc 2016;5(4):e210
 

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