アラマタ美術誌『ミクロコスモス』その後

2010年03月07日

没後四〇〇年 特別展「長谷川等伯」

東京国立博物館で開催中の特別展「長谷川等伯」、会期も短いので後半になると混みそう、と小雨の降る中本日行って参りました。

お昼時を狙って行ったこともあり、入り口では並ばず入ることができましたが、会場内は予想以上の混雑。
いつもの「人の頭が邪魔して見えない」のはもちろん、遠くから見ないと全容が確認できない大きな作品でも、人の列に乗って少しずつ進まなければならない状態で、イライラ。
毎回人気の展示会で感じる事ですが、なんとかならないものなのですかね……。
裏をかえせば、それだけ成功した展示会だったともいえるのかもしれませんが。

最後にカタログを購入したので、全体図は帰ってから再度確認。

個人的に気になった作品は以下の通り。

No. 作品名称 作者 員数 制作年代 所蔵 
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 
21 達磨図 長谷川等伯(信春)筆 1幅 ー 石川・龍門寺蔵
→曽我派の影響を受けていたという解説に納得してしまう、力強い作品。

41 国宝 楓図壁貼付 長谷川等伯筆 4面 文禄元年(1592)頃 京都・智積院蔵
→「壁貼付(かべはりつけ)」って、変な名称ですよね〜。
解説によると、左端の1面には引手あとがあり襖であったことはわかるけど、他の3面には引手あとがないので、壁貼付だったのではないか、とのこと。
素人からすると、「そんな理由で壁貼付って聞き慣れない名前になっちゃうの??」とちょっと残念に思ってしまいます。
さらに驚く事に、当初は下に50cm長かったようで、楓樹の根は若干奥から立ち上がっていただろう、ということ。今みているのは当時の状態とはかなり違うのですね〜。
それでも、個人的に一番見栄えがしてもらった人はうれしいと感じてくれそうなので、この絵はがきを購入。

43 重美 柳橋水車図屏風 長谷川等伯筆 6曲1双 兵庫・香雪美術館蔵
→画面いっぱいに端を架け渡した珍しい作品。左端の水車が遠近法的に違和感を感じないのは等伯の腕??

45 柳に柴垣図屏風 長谷川等伯落款 6曲1双 福岡・梅林寺蔵
→この作品の柴垣をみて、等伯はいろいろな手法に挑戦したのだな〜と思ったのですが、解説をみると「柴垣は、胡粉を盛り上げて金彩を施す装飾性豊かなものであったが、現在は、ほとんと胡粉が剥落していまい、下に引かれた墨線があらわれている」とのことで、故意ではなかったようで・・・(汗)

48 重文 仏涅槃図 長谷川等伯筆 1幅 慶長4年(1599) 京都・本法寺蔵
→ともかく、でかい!! 展示会場で思わずのけぞってしまいました。
高さ10メートル、横6メートルということで、会場では下部の一部が床を這う事態に。
解説によると、上部に配されるはずの釈迦の聖母が描かれていないのは、画面の下で祈願する信徒たちには光が届かず上部が見えない事が考慮されているのではないか、とのこと。
うーん、もしそうなら、今回の展示会場でも作品の最下部を床にそろえて上部は上の壁を這うように配置したほうがよかったのではないかと……??(あるいは作品保護のため?)

51 重文 等伯画説 日通筆 1冊 京都・本法寺蔵
→等伯自身の手によるものではなく、等伯が語った画談を日通が意見を付け加えながら記録した冊子。ルネサンス画人伝を思わず連想しちゃいましたが、会場ではちょうど等伯の画系についてふれているところが開かれていました。
雪舟から等春へ、等春から等伯へ、と等伯が自らの系譜をどのように考えていたのかがわかって面白いです。さらに、近年この系譜に記載のある「無文」という絵師が等伯の養祖父法淳のことである、という意見が出されたということで、ついつい興味津々に。

71 重文 枯木猿猴図 長谷川等伯筆 2幅 京都・龍泉庵蔵
→ 牧谿の『観音猿鶴図』を基にしているとのことですが、やはりオリジナルには勝てない感が……。牧谿のふわふわのお猿さん、最高ですものね〜

76 国宝 松林図屏風 長谷川等伯筆 6曲1双 東京国立博物館蔵
→言わずと知れた最高傑作ですが、今回はなんだか今ひとつ感動が薄い。閲覧順に、「77 月夜松林図屏風」を見てしまったせいなのか。むしろ、「78 檜原図屏風」が新鮮で、ふと東山魁夷の世界を思い起こしてしまった。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

正直、前半の1〜2章は傷みが多い作品が多くて、ずっとこの調子だったらどうしよう、と思ってしまいました。全体がヤケて暗いため、やたら作品中の「白」が目につき、気になる事しばしば。今の修復ポリシーは現状維持で、当時の状態に戻すような修復は御法度とは思いますが、油絵のように洗浄ができれば……とついつい思ってしまいます。
第3章の肖像画は、ふりかえってみるとほとんど興味が持てず、第4章の金碧画からぐぐっと気分もハイテンション。
第6章からの水墨画は、4章の印象が強すぎておまけのように感じてしまいました。

雪舟の系譜を名乗る等伯ですが、今回の展示会ではピカソ並の変容っぷりをたっぶりと楽しめました。
カタログも2500円とは思えない立派なもので、等伯のさまざまな落款・印章も写真入りで丁寧に紹介されています。今後の研究・調査の参考資料として、このカタログは重宝されていくのでしょうね。
個人的には、京都に新たな活躍の場を夢見て上洛した後の30-40代の作品が今後見つかって欲しいな〜と思います。


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