美術書

2017年10月01日

美術ミステリ 松本清張

松本清張作、双葉文庫の『美術ミステリ』を読みました。


松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)
松本 清張

双葉社 2016-09-15
売り上げランキング : 390593

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


2016年9月15日に出版されたものですが、これは「松本清張ジャンル別作品集」の第3巻として「美術ミステリ」として出版されたもの。収録されているのは、以下4編。

真贋の森
青のある断層
美の巨像
与えられた生


あとがきによると、日本で最初にこの分野を手がけ、最も多くの美術ミステリを書いたのは清張だといいます。
学識だけではなく、みずから絵筆をとっても一流。朝日新聞関西支部本社の広告部意匠係をつとめ、一方で日本宣伝美術協会の九州地区委員として活躍しており、もし芥川賞を受賞することがなかったら、デザイナーとして一家を成していたかもしれないという。清張の推理小説の挿絵が画家の都合で間に合わなくなったとき、清張自身が急いで絵を描いて穴を埋めたというのだから、単なる逸話ではなく、相応の技量を持っていたと考えられます。

収録されている「真贋の森」は別冊文芸春秋に昭和33年(1958年)6月号に掲載されたものとのことですが、60年たった今でも十分面白く読めます。権威ある教授にたてつくことができない縦社会、政治家・財閥との切れない関係、アカデミズムによる弊害などは、社会派といわれる清張だからこそ描ける世界であったともいえるかもしれません。

清張が日本美術に造詣が深いのは以前読んだ本で知っていましたが、今回感じたのは日本美術だけなく、西洋美術や抽象絵画などそのカバー範囲の広さ。骨董の目利きとしてもそれなりの自信があったに違いない、と思えるのです。
読んで損はない作品です。






rsketch at 21:30|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2017年07月29日

遠近法がわかれば絵画がわかる





久しぶりに読んだ絵画関連の本。
著者は、布施英利氏。目次は下記の通り。

<目次>
I 四つの遠近法
(1)「重なり」の遠近法
(2)「陰影」の遠近法
(3)「色彩」の遠近法
(4)「縮小」の遠近法

II 三点遠近法
(1)一点遠近法I 「奥行き」の表現
(2)一点遠近法II 「線遠近法」は、こう描く
(3)三点遠近法 さらなる「広がり」への奥行き
(4)消失点とは何か?

III 二次元
(1)ヒトは「二つの目」で何を見ているのか
(2)「二次元」の絵画という謎
(3)アルヴァ・アールトへの旅

IV 一つ
(1)パノフスキーを読む
(2)セザンヌを見る
(3)ダ・ヴィンチを見る


Amazonのレビューにもありましたが、前半はよいのですが、後半は引用が多く、III章は私も読み飛ばしてしまいました。

II章の(3)「色彩」の遠近法では、以下記述を読んで、眼鏡を作るための目の検査で、赤と緑を並べてどちらが明るいか聞かれ、困ったことを思い出しました。

青→緑→黄→赤の順に「遠」から「近」へと見える。

IV章もパノフスキーの『象徴形式としての遠近法』の内容がわかりやすく紹介されていて、まだ読んだことのない人にはおススメです。




rsketch at 22:02|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2017年06月17日

芸術家の愛した家

昨年12月に発売された池上英洋先生の本。

芸術家の愛した家芸術家の愛した家
池上 英洋

エクスナレッジ 2016-12-24
売り上げランキング : 653953

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


芸術家の家にフォーカスした本は、恐らく初めてなのではないでしょうか。
ダリ、ミケランジェロ、モネなど文字通り大御所の過ごした家を垣間見ることができる一冊です。

こんな切り口の本があったのかと脱帽です。



rsketch at 21:27|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年11月13日

日本人にとって美しさとは何か


2015年に出た高階秀爾さんの本。

日本人にとって美しさとは何か (単行本)日本人にとって美しさとは何か (単行本)
高階 秀爾

筑摩書房 2015-09-24
売り上げランキング : 104033

Amazonで詳しく見る
by G-Tools




目次
1 言葉とイメージ―日本人の美意識(『古今和歌集』序文に見る日本人の美意識
勅撰和歌集の意義
図と文字が越境する ほか)

2 日本の美と西洋の美(東と西の出会い―日本および西洋の絵画における表現様式についての諸問題
和製油画論
感性と情念―「和製油画」に支えたもの ほか)

3 日本人の美意識はどこから来るか(絵と文字)
漢字と日本語
襲名の文化 ほか)



久しぶりに高階氏の本を読みましたが、やはり面白い!
自国の文化は外からみないとわからないといわれますが、英語はもちろんフランス語もあやつり、西洋美術だけではなく日本の絵画や文学、さらには音楽まで深く理解されている高階氏だからこそと思える数々の洞察がすごすぎます。

以下、個人的に気になった箇所を順次ご紹介。

■1章の「言葉とイメージ」は2014年4月に静岡県で幹部職員に行った講演の記録。
文字と絵で道具を使い分ける西洋と異なり、言葉も絵も筆で描いてきた日本では文字と絵画の境界がなく、与謝蕪村の手紙には一種の絵文字を使ったものがあったり、北斎や白隠にも絵の中に文字をとりいれた作品が数多くある。あの尾形光琳の蒔絵にさえも、そういった遊びが用いられていることを知るにつけ、日本人はなんとお茶目な人種なのだろう、と思ってしまいます。
漫画の例では、「シーン」や「ピタッ」という音のないものまで日本語では表現される、など普段意識しないことなのでなんとも思ってきませんでしたが、日本のオノマトペについて、海外の方はこんな風に反応しています。

日本語のオノマトペすごい!(動画)


■第2章の「東と西の出会い」は国際美術史学会東京会議の基調講演で発表したもの。

遠近法や明暗法といった西欧の技法は、写真のようにある特定の瞬間に固定した視点から対象をとらえることを前提としたのとは対象的に、日本では自由に移動する始点から眺められた対象を併置する手法をとってきた。
「西欧絵画が画面に対して垂直な奥行き性を強調するのに対し、日本絵画は画面に平行な平面性を特徴とするのです」
※これらの文章を読んで、ロベルト・カンピンは日本的な感性を持っていたのかしら、と思ってしまう私はかなりなマイナー派です・・・。

「切り捨ての美学とクローズアップ」は、まさに日本美術の特徴ですが、「影によって存在を、部分によって全体を暗示するその美学は、私の意にかなった」というモネの言葉も紹介され、「いわなくても分かってよ(今風にいうと、空気ヨメ)」というのは、まさしく日本的な感性なのでしょう。

「和製油画論」は美術雑誌『國華』代1328号に掲載されたもの。
和製油画は、日本国内で油絵技法の習得に努めた画家の作品で、黒田清輝を中心とする「新派」に対して「旧派」と呼ばれたた。最初の段階では、西洋絵画の特質を陰影法、明暗法で写実的に描くことと考え、奥行きをもった3次元の構築に目を向けるのは後になってから、というのが面白い。

「感性と情念」は大原美術館で開催された展覧会の図録掲載論文。

「竹内栖鳳芸術における西欧と日本」は、杜美術館で開催された竹内栖鳳展図録に掲載されたもの。

■第3章の「日本人の美意識はどこから来るか」は雑誌『アステイオン』や『文藝春秋』、その他図録などに掲載された論文。

本書の中で、「日本の絵葉書では、「雪の金閣寺」や「清水寺の春」のように周囲の自然と一体になった建造物をモティーフにしたものが圧倒的に多い」という文章を読み、自分の持っている絵葉書を確認したのですが、なぜか私は海外の絵葉書でも夕日や木々など、周囲の背景も含んだ絵葉書が多い。これは自然に日本人としての感性がそういう葉書を選択させたのかもしれません。。

「実体の美と状況の美」という章では、アメリカでは「一番美しい動物は」と聞かれて「馬」とか「ライオン」といった答えが返ってくるのに対し、日本では「夕焼けの空に小鳥たちがぱあっと飛び立っているところ」という答えが返ってくる、という紹介とともに、「日本人は、遠い昔から、何が美であるかということよりも、むしろどのような場合に美が生まれるかということにその感性を働かせて来たようである。」とのこと。
じゃあ、湯飲みや根付はどうなの?といろいろな声も聞こえてきそうですが、如何でしょうか。

「ロボットと日本文化」という章では、1970年代にイタリアで参加したシンポジウムの件が紹介される。
イタリアの参加者から、ロボットの導入を妨げる大きな要因の一つとして、労働者たちの心理的抵抗があるが、日本はどのように対処しているかという質問が発せられ、日本は当惑した、という。もちろん、職を奪われるという不安はあるが、機会が人間の代わりをすることへの嫌悪感や人間の領域が機会に侵されることに対する反発の感情はなかった。むしろ、ロボットに名前をつけて呼びかけるなど、日本では当初から人間と同じ仲間として受け入れられてきたという。
このような日本人のメンタリティの原因は、日常の道具にも心や生命を見てきた日本人の心性と無縁ではないらしい。



面白い論ばかりなので、「日本人の心理の源」的なタイトルで英語と日本語と併記して売り出せば、海外の方も含めてもっと多くの方に読んでもらえるのになぁ、と思います。




rsketch at 19:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年10月16日

「失われた名画」の展覧会


2016/3/24に発売となった池上先生の本。
「失われた名画」の展覧会「失われた名画」の展覧会
池上 英洋

大和書房 2016-03-24
売り上げランキング : 394480

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



目次
第1展示室 天災で失われた作品
第2展示室 焼失した作品
第3展示室 戦争とテロリズム
第4展示室 人為的な破壊1―改修と切断
第5展示室 人為的な破壊2―修復・加筆・塗りつぶし
第6展示室 盗難
第7展示室 消失―行方不明の作品


この本を読むと、現在名画として残っている作品は、本当に運がよかったのだと思わずにはいられません。
作品の価値は、時代の流れとともに変わるもの。今はあらゆるものがデジタル化されていますが、やはり本物が持つ力は本物にしかないもの。
いつかは、失われた名画がVRで限りなく本物に近い形で楽しむことができるようになるとよいな。。。




rsketch at 21:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年09月24日

あやしいルネサンス

今年3月に出た本をチェック。ひさしぶりの池上先生の本。



監修、ということで「はじめに」で池上先生のテキストは読めますが、正直ちょっと物足りない。。
池上先生のあつ〜い文章をまた読みたいなー、と改めて思ってしまうこの頃。
池上ロス。。。


rsketch at 20:47|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年08月20日

巨大アートビジネスの裏側


副題として「誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか 」とありますが、第1章で触れられているだけで、実際はオークションのビジネスの裏側や変遷が楽しめる内容となっています。
著者は、サザビーズジャパンの代表取締役社長を務めた石坂泰章氏。

巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書)巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書)
石坂 泰章

文藝春秋 2016-05-20
売り上げランキング : 71949

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


普通、作品数が少ないほど希少価値があり高くなるものと思いがちですが、少なすぎると市場が形成されず高値にならないことを、作品数が30数点のフェルメールと1万点以上あるウォーフォールの例をあげて解説しています。

また、評価される偉大な作家の条件としては、「技術、独創性ともに、その作家を抜きに後世の美術史を語れるか」という点をあげています。
海外の再評価で日本の具体美術協会の作品が高騰している、というのも美術史を語るのに必須だからかもしれません。

一番印象に残ったのは、オークショニアの存在。
長い時間をかけて準備をしたオークションがうまくいくかどうかは、最高のエンターテイナーとしてのオークショニアの腕が大きく影響すること、また、あのシャロン・ストーンが実は腕利きのオークショニアだったことがわかり、驚きです。
確かにあの笑顔を向けられたら、ついビットしてしまうかもしれません。

なお、資産としてアートを購入する場合、手数料が2割強もあるため、「長期投資や世代を超えた資産には適している」とのこと。逆に言うと、一般人には個人の楽しみとして購入するのはよいかもしれませんが、資産として購入するのはよく考えたほうが良さそうですね。





rsketch at 11:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年06月11日

美術検定 2016

久しぶりに美術検定のサイトをチェックしたら、新しい本がいろいろ出ていました。
今年は11月13日(日)が開催日とのこと。

新しい参考書は表紙にルノワールやクリムトの絵が使われていて、豪華ですね。


はじめて学ぶ美術の歴史 一問一答 美術検定4級練習問題はじめて学ぶ美術の歴史 一問一答 美術検定4級練習問題
「美術検定」実行委員会

美術出版社 2016-06-03
売り上げランキング : 83991

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


続  西洋・日本美術史の基本続 西洋・日本美術史の基本
「美術検定」実行委員会

美術出版社 2016-05-12
売り上げランキング : 62776

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


もっと深める美術の歴史 一問一答 美術検定2級練習問題もっと深める美術の歴史 一問一答 美術検定2級練習問題
「美術検定」実行委員会

美術出版社 2016-04-08
売り上げランキング : 98468

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト
美術検定実行委員会

美術出版社 2014-05-19
売り上げランキング : 19372

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門
佐藤晃子

美術出版社 2008-08-08
売り上げランキング : 60800

Amazonで詳しく見る
by G-Tools




rsketch at 21:32|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年05月15日

ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論

以前から読みたいと思っていた本ですが、ようやく読めました。

【カラー版】ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論 (集英社新書)【カラー版】ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論 (集英社新書)
ヤマザキマリ

集英社 2015-12-22
売り上げランキング : 4519

Amazonで詳しく見る
by G-Tools




ヤマザキマリさんといえば、なんといっても『テルマエ・ロマエ』が有名ですが、この本でなんと平成27年度(第66回)芸術選奨新人賞を受賞されたのだとか。

「変人」をキーワードにルネサンスを楽しく解読ということで、爆笑しながらあっという間に読んでしまいました。

今度はぜひ『プリニウス』を読んでみたいです。

プリニウス (1) (バンチコミックス45プレミアム)プリニウス (1) (バンチコミックス45プレミアム)
ヤマザキマリ とり・みき

新潮社 2014-07-09
売り上げランキング : 15109

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



rsketch at 23:58|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年04月24日

伊藤若冲画集 Kindle版

Kindleを持っている人に朗報!

伊藤若冲画集: 153絵図258頁+全解説付 (日本の名画シリーズ) Kindle版
「生誕300年記念若冲展」記念キャンペーン 300円→160円(4/24まで)

記念価格は本日までなので、お見逃しなく・・・!


伊藤若冲画集: 153絵図258頁+全解説付 (日本の名画シリーズ)
伊藤若冲画集: 153絵図258頁+全解説付 (日本の名画シリーズ)伊藤若冲 楽しく読む名作出版会

楽しく読む名作出版会 2016-04-06
売り上げランキング : 61


Amazonで詳しく見る
by G-Tools




また、2月に荒俣先生の新しい本が出ていました。

脳内異界美術誌 幻想と真相のはざま
脳内異界美術誌 幻想と真相のはざま荒俣 宏

KADOKAWA/角川書店 2016-02-27
売り上げランキング : 33198


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


残念ながら図書館には入っておらず。。
もう少し待ってみますか。



rsketch at 11:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加