フェルメール

2011年02月27日

フェルメールのカメラ

昨年10月に出版された本ですが、ようやく読みました。

フェルメールのカメラ―光と空間の謎を解くフェルメールのカメラ―光と空間の謎を解く
フィリップ ステッドマン Philip Steadman

新曜社 2010-10
売り上げランキング : 181634

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


著者は、建築学が専門のフィリップ・ステッドマン氏。1970年代末からフェルメールの絵の空間について研究をはじめたとのことで、本書は20年以上にわたる研究の成果。
翻訳者の鈴木光太郎氏は、実験心理学が専門の新潟大学人文学部教授。ヨハネス・ケプラーがどの程度カメラ・オブスクラを研究しているかを調べている過程で本書に出会ったとのこと。お名前に見覚えがあるなーと思ったら、『脳は絵をどのように理解するか』を翻訳された方!



目次
1章 カメラ・オブスクラ
2章 カメラ・オブスクラを用いたという発見
3章 カメラ・オブスクラを教えたのはだれか?
4章 描かれた部屋はどこにあったか?
5章 フェルメールの絵の空間を再現する
6章 謎に迫る
7章 フェルメールのアトリエを再現する
8章 反論に反論する
9章 フェルメールの絵の様式への影響



フェルメールがカメラ・オブスクラを用いたことは今では一般的に認められているかと思いますが、本書の面白いところは、「カメラ・オブスクラ」を使ったと考えなければ説明できない作品がある、と建築学を駆使して2次元(作品)から3次元空間(アトリエ)を再現する、そのプロセス。
単純化すると、以下のステップ。

1)同じ部屋で描いていると思われる作品中の、理論上の視点を確定し「視覚ピラミッド」を構成。
2)タイルやレンガ、実物として残っている地図などから、実際のサイズ(スケール)で部屋を再現。
3)ピラミッドの線を視点からさらに延長し、画家の背後にある壁にできあがる投影像のサイズを計測。
4)映像のサイズが、実際の「絵」のサイズとほぼ一緒!

ステッドマンによると、フェルメールは視点の位置にカメラ・オブスクラを配置して投影像をトレースしたのであり、この幾何学的な一致は、伝統的な遠近法や鏡に映った像をトレースする方法では説明できないというのです。

以下は本書のメモと、ステッドマン氏のサイトへのリンクなど。

1)視覚ピラミッドの構成について
6枚の絵の部屋の平面図。丸は視点。

(a)《2人の紳士と女》
(b)《紳士とワインを飲む女》
(c)《手紙を書く婦人と召使》
(d)《ヴァージナルの前に立つ女》
(e)《音楽のレッスン》
(f)《合奏》

《音楽のレッスン》を上・横から再現した場合

2)実際のサイズ(スケール)で部屋を再現する様子
grand-illusions.comでも紹介されていました。

3)カメラ・オブスクラを配置した位置の想像図と投影図

http://www.vermeerscamera.co.uk/chapter6.htm
Vermeer’s Camera: afterthoughts, and a reply to critics.

※過去の研究の中で、ステッドマンが重きをおいたのは、ローレンス・ガウイングの研究(Lawrence Gowing, Vermeer)で、カメラ・オブスクラを使いながらも、フェルメールならではの「修正」を加えながら、自分の様式を作り上げた、というもの。
ガウイングの研究では推測の域を出なかった「具体的にどのような装置で、どのような方法をとったか」を、ステッドマンの本では実験的なプロセスを経て、その可能性を明示してくれたのだと思います。

■誰がフェルメールにカメラ・オブスクラをもたらしたのか?
可能性のある人物は・・・ 
・アントニー・ファン・レーウェンフック(顕微鏡を最初に解剖学や生理学の研究に用いた一人)
 1632年10月にデルフトに生まれ、人生の大半をデルフトですごした。
 →《天文学者》と《地理学者》のモデルだとE・V・ルーカスが指摘。
・コンスタンティン・ホイヘンス 
 →上記の2人が有力候補。
・カレル・ファブリティウス
・バルタザール・モンコニー
・サミュエル・ホーホストラーテン

P31 ・・・ホイヘンスがトレンティウスに見せた時、トレンテイゥスは無知を装い、驚いたようだったが、ホイヘンスは、それがわざとで偽りだという強い印象をもった。
→この記述は妙にひっかかります。当時も今と同じく、絵画を映像をトレースして作成したとわかったら、価値が下がる(画家の評判がおちる)可能性があったのかもしれない、と・・。

■《音楽のレッスン》の鏡の中に、カメラ・オブスクラかもしれないものが描かれている?
The Mystery in the Mirror
→詳しくは本書のP116を。

■《信仰の寓意》の鏡の中に、カメラ・オブスクラかもしれないものが描かれている?
The Allegory of Faith (detail)
→詳しくは本書のP145を

《ヴァージナルの前に立つ女》《ヴァージナルの前に座る女》のヴァージナルの蓋に描かれた絵はアナモルフォーズ?
→どちらの絵もかなり斜めから蓋をみているため、2つの風景画が正面から見るとどうなるかを再現した図がP156に掲載。
フェルメールがアナモルフォーシスとしてこの2つを描いた、といっているわけではありません。
どちらの場合も見た目におかしくない構図となるよう、変更を加えたのではないかとステッドマンはみています。

■フェルメールのアトリエ
P89.フェルメールとカタリーナは1653年に結婚したが、その後しばらくしてカタリーナの母、マーリア・ティンスの持ち家へと引っ越した。1660年にはすでにそこに住んでいたことがわかっている。・・・(中略)遺産目録からわかるのは、フェルメールが生涯の終わりには義母のマーリア・ティンスの家の「表側の部屋」にアトリエをもっていたということである。目録の記載から、その部屋は2階にあったこともわかる。
P90.・・・モンティアスは、最新の広範囲にわたる公文書の研究にもどついて、スウィンレスの主張に対して、マーリア・ティンスの家は25番地ではなく、モーレンポールト通りをはさんでその反対側にあったと主張している。
→フェルメールのアトリエがどこにあったのか、またその広さはどの程度だったかという問題は、カメラ・オブスクラでできた投影像をトレースすることが可能だったか、という問題を明らかにするためにも、今後引き続き調査してほしいですね。

Vermeer’s Camera: afterthoughts, and a reply to critics.27.3.2002

■フェルメールのカンヴァス
P62 (《真珠の耳飾の少女》の)X線によって明らかになったのは、最初の段階では、「くっきりした明暗のコントラストのパターン」が描かれたようだということであった。ガウイングは、あらかじめ濃い色で塗られたカンヴァスに白い絵の具を縫ったと示唆した。実際のところ、X線写真と詳細な目視の両方を用いた最近の科学的分析によると、地は明るい色(黄色がかった白)だが、絵の具の最初の層が茶色がかった黒であることを示している。
→《絵画芸術》ではまさに茶色がかったカンヴァスに手を加える画家の姿が。ただし、画家が描いているのは明暗のコントラストのパターンではなく、クリオの羽飾り。下書きなどはまったくみあたりませんが、少なくとも面でとらえる描き方をしていたことが垣間見えて興味深いです。

■写真のような絵
P212 ・・・「写真」のようだと言う時、具体的には何を指しているのだろうか。それは、正確な遠近法と、ペネルが最初に指摘したような、接写や広角で写真を撮ったときに生じる遠近法のゆがみである。・・・実際には、フェルメールの絵は、「写真のような」結果を生み出しながら、他方ではピンボケの部分があったり、色の領域が単純化され平べったく描かれていたり、肌理が省力されていたりというように、局所的に不正確である。
・・・フェルメールは、色調、ぼけて見える対象からの光、そしてあたかも目を細めて見たような光景を忠実に再現したのであって、必ずしも細部を忠実に再現しているわけではない。・・・彼が作り出しているのは、「近さではなく遠さの」錯覚である。


■《絵画芸術》と《信仰の寓意》の謎
→それぞれ、120×100センチ、114×89センチと他の室内画より明らかに大きい。
ステッドマンは、トレース後に格子を大きくしてスケッチ(拡大)したのかもしれない、といいます。
個人的には、この2つの作品の水平線の位置が他の作品より下にあること、天井がみえること(この2つ以外に天井がみえるのは《音楽のレッスン》だけ)ことから、カメラ・オブスクラの位置を下げたあるいは角度を変えた画像をつなげたのではないかと想像。(左側のカーテンは、画像をつなげる上で都合の悪かった窓を隠す役割も果たしたのではないかと・・・?)


☆絵画芸術(画室の画家、絵画の勝利)について
これだけフェルメールの描き方について議論が活発なのに、「実際に画家が絵を描いている姿」であるこの作品への言及が少ないのは不思議。
画家の右手には、腕鎮(モールスティック)という細部を描き込むための手首の支持用具が描かれていますが、まだ細部を描く段階でないことは明らか。
おそらく左手にはパレットを持っているのでしょうが、カメラ・オブスクラはまったく見あたりません。
画家の一般的なイメージを視覚化したのでしょうが、当時もそこに「カメラ・オブスクラ」はあってはならないものだったのではないか、と推測することはできないでしょうか・・・?



vermeerscamera.co.ukサイト




rsketch at 20:49|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2008年08月09日

フェルメール展 

北京オリンピックが始まったので、土曜日でも少しは空いているかも?と、サイトの待ち時間情報では混雑という予想であるにもかかわらず、本日フェルメール展に行ってきました。
お昼時を狙っていったのが幸いしたのか、予想したほどの混雑ではありませんでした。

今回の展示会では、フェルメールの作品をはさむ形でデルフトの画家の作品が並ぶサンドイッチ構成。
一階はフェルメール以外の作品で、二階にあがるとフェルメールの作品が飛び込んできます。

マルタとマリアの家のキリストまず、《マルタとマリアの家のキリスト》の作品の大きさにびっくり。繊細な筆遣いというイメージのフェルメールですが、初期はこんなに大胆だったのね、と驚かずに入られません。

《ディアナとニンフたち》は、画面右上の青空の部分は後に加えられた修正だったことがわかり、現在は元の状態になっていますが、「青空があったほうがいい」と思ってしまうのは私だけ・・・?

小路《小路》は、これぞフェルメールと感じる小ぶりの愛らしい作品。レンガの質感、小さく描かれた人物、明るい日差しが感じられる青い空……。今回の展示されている作品の中では、私はこれが一番好きですね!(絵はがきを購入しちゃいました)

ワイングラスを持つ娘《ワイングラスを持つ娘》は、パンフレットにもなっている作品ですが、この娘の表情が私はどうも好きになれません。

リュートを調弦する女《リュートを調弦する女》は、手前の暗い部分に椅子があるのですが、置かれている布がどういう位置関係にあるのかよくわからず眼を凝らしてみましたが、よくわからず……。


ヴァージナルの前に座る若い女《ヴァージナルの前に座る若い女》は、11年がかりでフェルメール作品かどうかが調査された作品。朝日新聞の別刷り特集が展示会場に置いてあり、フェルメール作品であると判断されるにいたった理由が記載されています。

・高価なラピスラズリが壁などの目だたない場所に使われていること(フェルメールは、他の作品でも光の効果を上げるために壁にラピスラズリを使用したことがある)
X線写真でみると、《レースを編む女》(ルーブル美術館)のカンバス地の粗密の状態、縦糸横糸のムラがほぼ一致したこと
・修復でフェルメールではと思える光と空間が現れたこと

ただし、ショールの一部がぎこちなく、フェルメールが完成しないまま死去し、後に誰かが加筆したという推測も残っていて、今後も議論が続きそうな作品です。



手紙を書く婦人と召使い今回の展示会で一番の収穫が、どたんばで《絵画芸術》と入れ替わりで追加となった、《手紙を書く婦人と召使い》。サイトや図版ではわからなかったのですが、緻密な構成といい完成度の高さといい、予想以上の作品で、実際に目にすることができて本当に良かったです。(絵はがきを購入したいと思ったのですが、ぎりぎりの追加となったためなのか、残念ながらありませんでした。)


その他、会場にはフェルメール作品の実物の大きさが比較できるコーナーがあって、「お、この作品はこっちより大きかったのか」など、発見があって楽しかったです。

他にフェルメール以外の作品で良かったのは、だまし絵を得意としたカレル・ファブリティウスの《歩哨》、《楽器商のいるデルフトの眺望》(見せ方が工夫されてます!)。
歩哨カレル・ファブリティウスの《歩哨》

楽器商のいるデルフトの眺望カレル・ファブリティウスの《楽器商のいるデルフトの眺望》



それから、1Fにあったヘンドリック・コルネリスゾーン・ファン・フリート(舌をかみそう)やヘラルト・ハウクヘーストの教会内部の作品が印象的でした。
ヘンドリック・コルネリスゾーン・ファン・フリート



そうそう、大事な事を忘れていました。以前、「展覧会では、展示されるフェルメールの作品に合わせて、同時代にオランダで演奏されていた音楽が聴ける」と記載しましたが、これは私の完全な勘違いだったようです。展覧会のために作成されたとあったので、てっきり会場で聴けるものと思い込んでいたのですが、BGMはありませんでした。残念。



rsketch at 22:53|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2008年08月03日

フェルメール展 《絵画芸術》出品中止

「フェルメール展」で出品が懸念されていた《絵画芸術》は、やはり出品中止となったとのことで、とても残念です。

ウィーン美術史美術館より出品が許諾されたものの、オーストリア教育文化省から通知があったとのこと。
<オーストリア教育文化省の通知内容>
 オーストリア文化財保護局より5月13日に《絵画芸術》の一時的輸出(貸し出し)を見合わせるとの決定が下された。ウィーン美術史美術館は、当該作品に関する貸し出しについて再度、許諾申請を行った。修復家による専門的な調査の結果、輸送による影響、特に温湿度の変化に伴い、保存状態の悪化が懸念されるという事由により、オーストリア教育文化省では、7月31日(現地時間)オーストリアにとって極めて重要な文化遺産である当該作品保護のため、この決定を下した。


昨日は、フェルメール展の初日。サイトで検索してみると、かなりの人気で混雑している様子。
一番の人は朝6時半に来て、9時の開館前に並んだ人はなんと380人もいるとのこと。
開場待ち時間がモバイルで確認できるようなので、待ち時間をチェックして行った方がよさそうですね。(あまりの混雑ぶりに、わたしもいつ行こうか迷ってます)

仕方がないのでサイトを見たら、ようやく作品紹介ページが7/31に公開されていました。
私のMacではなぜかSafariでは閲覧できず、Firefox でようやく見る事ができたのですが、とにかく重い!! 
どうしてこんなに重いのかと思ったら、Flashメインに加えて、音楽まで聞けるようになっています。

展覧会では、展示されるフェルメールの作品に合わせて、同時代にオランダで演奏されていた音楽が聴けるとの事。
しかもこの音楽は、この展覧会のために新たに録音されたもの。
せっかくなのでサイトでも聴けるようにしましょう、という粋なはからいなのでしょう。
けれども、こんなにサイトが重いと、逆効果にならないか心配です……。

フェルメール展



rsketch at 14:46|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2008年07月27日

フェルメール展 《絵画芸術》は非来日!?

今日は、8月2日から東京都美術館で開催されるフェルメール展の前売りチケットをコンビニで購入しました。

ふと思いついて、フェルメール展のサイトを見てみたら、

「この度、展示を予定しておりました、ヨハネス・フェルメール≪絵画芸術≫(ウィーン美術史美術館所蔵)について、当面出展を見合わせるという所蔵館からの通知がありましたのでお知らせいたします。」

とあるではありませんか!!

≪絵画芸術≫は2004年に同じ東京都美術館で一度みているとはいえ、一番好きで楽しみにしていた作品。かなりショックです……。

東京都美術館のサイトによると、見送りの理由は以下の通りで保存状態の懸念。

事由:
≪絵画芸術≫については、当初、所蔵館のウィーン美術史美術館が出品に合意していたものの、オーストリア文化財保護局の調査の際に 輸送による保存状態の悪化が懸念され、オーストリア連邦教育科学文化省による最終的な出品可否の結論が出るのが7月末に延期されたため。


[現在も引き続き関係機関との交渉を続けており、出品可否の結論は、改めてお知らせいたします。]とのことなので、まだ可能性が残っていないわけではありませんが、可能性は低いのかと……(泣)。

とはいえ、よいニュースもあります。
出品作品として、≪手紙を書く婦人と召使い≫(アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵)が追加されました。
この作品、確か洗浄で床上の赤い封蝋が見つかった事で、新たな解釈がうまれたのですよね。
他にもその後新しい発見があったのか、展示会が楽しみです。


そうそう、1998年に出ていた小林 頼子氏の本の新装版が7月に出ていました。旧版は定価 8,295円だったので、若干購入しやすくなっています(とはいっても、なかなかよいお値段)。
展示会に向けてという意味もあったのか、タイムリーな出版ですね。

フェルメール論 増補新装版―神話解体の試み
フェルメール論 増補新装版―神話解体の試み小林 頼子

八坂書房 2008-07
売り上げランキング : 96559

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



こちらはお気に入りの本。お手軽な値段です。
もっと知りたいフェルメール―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
もっと知りたいフェルメール―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)小林 頼子

東京美術 2007-09
売り上げランキング : 19752

Amazonで詳しく見る
by G-Tools




rsketch at 22:22|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2007年10月28日

「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―

小林頼子氏の本、ようやく図書館で借りて読み終えました。

「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―
「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―小林頼子

ランダムハウス講談社 2007-10-04
売り上げランキング : 21154

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


フェルメールのカラー図版を既に持っている人なら、オススメです。特に《牛乳を注ぐ女》の遠近法についての解説は読み応えがあります。
でも、1冊目として購入するにはオススメできないです。というのは、カラー図版が最初に数枚ありますが、文中で言及される作品がモノクロ図版で、しかもあちこちに掲載されているので、ちょっと読みにくいです。
私は、先日購入した『もっと知りたいフェルメール―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)』を手元に置いて読んだのですが、コレ1冊しかないと読み進めるのにストレスを感じるかもしれません。
まぁ、フェルメールファンなら既に画集の1つや2つ、持っているでしょうが……(笑)

ちなみに、『もっと知りたいフェルメール』はフェルメールの全作品が掲載されている&図版がとても奇麗でお値段も手頃なので、まだ図版を持っていない人にはオススメだと思います。
お恥ずかしながら、フェルメールの《信仰の寓意》をいう作品を初めてこの本で知ったのですが、私は《絵画芸術》の次にこの作品が好きですね〜。

《信仰の寓意》
《信仰の寓意》


専門家などからは、結構いろいろ叩かれている作品のようなのですが、フェルメールが目指した物語画家への想いがこの作品にも溢れていると思います。まぁ、私は《絵画芸術》が好きなぐらいですから、単純に寓意画が好きなのかもしれません……。


そういえば、今日が美術検定の試験日でした。今年はどうだったんでしょうかね・・・???


rsketch at 20:51|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2007年10月13日

「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展 &記念講演会

「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展を観に行ってきました!

ホームページに14時から記念講演会があるとあったので、国立新美術館には13時に到着。
講演会が始まるまで時間があったので、先に展示会を半分ほど観てから講演会会場に向かいました。

講演会の講師は、京都大学文学研究科教授の中村俊春氏で 、『オランダ風俗画に描かれた女性のイメージ』と題する講演会。
正直、講演会を聴くまでは、《牛乳を注ぐ女》がメインだから他は流して観ようと思っていました。
でも、講演会を聴いた後はすっかり考えが変わり、つくづく今回の講演会に参加して良かったなぁ〜と思えました。
記念講演会で配布された資料はこれです。

オランダ風俗画に描かれた女性のイメージ 記念講演会

※クリックで拡大します (残念ながら、講演会の面白さはこれでは伝わらないです……)

中村氏は冒頭で、資料にもあるように自分の専門は北方バロック美術やテキストからイメージ化された絵画で、フェルメールは専門としていないのでフェルメールについては小林頼子氏の講演を是非聴いてくださいね、と話されていました(小林氏の講演会は、11月24日(土)の予定)。

講演会の内容を平たくいうと、牛乳を注ぐこの女性はいったい何者なのかを当時の社会的文脈の中に置いて考えてみよう、というもの。
(ちなみに、通常この作品はミルクメイドと呼ばれているけれども、日本では今違うメイドさんが流行しているので(笑)、解説では使用人という言葉を使用するようにしたそうです)

また、講演会で初めって知ったのですが、中村氏は今回の展示会の監修者ということで、「牛乳を注ぐ女」を中心にどのような展示会の構成にするか苦労されたようです。当初は、アムステルダムの美術館からは台所の絵画だけという話もあったようですが、さすがにそれでは・・・と今の構成になったそう。
確かに今回の展示会は《牛乳を注ぐ女》が中心ですが、みせる方としては他の作品も楽しんでほしいですよね。
説明してくださる方がいて、ある程度知識が入った後だと他の作品も楽しめるのですが、展示室にある解説だけではなかなか伝わらなくて勿体ないですね……難しい!

以下は、講演会のメモ
・《牛乳を注ぐ女》のミルクは、微妙に螺旋をえがいている!
・《牛乳を注ぐ女》は風俗画だが、単に身の回りの世界を描いたのではなく理想化されている
 (家庭画報に出てくる写真のように、ちょっと上流階級の理想的な生活を演出)
・牛乳を注いでいる使用人の姿勢は、本来なら前屈みになるものなのに、レストランのウェイターのように背筋が伸びている。片足に体重をかける優雅な姿勢
・使用人は、当時のオランダではたくさん描かれている
・1650年代からは快適な住まいを描いた絵が流行
・裕福な市民には、広い玄関部分に豪華なものを飾る風習があった(当時の家の建築図で縦長の家であることが明確にわかる)
・中国の陶器や日本の漆製品、燭台、楽器などは富裕さを示すものだった
・音楽は男女の社交の場、手段でもあった。楽器は調和を象徴するものだった。
・17世紀前半の風俗画は貧しい者が愚かであることを示す絵画が主流(ヤン・ステーンなど)だったが、17世紀後半には快適な住まいを描いた作品が流行(フェルメールの初期作品も流行を反映している)
・当時は、男性が外で稼ぎ女性は家を保つという役割分担があり、女性は様々な役割を期待されていた(家の掃除、料理、子供のしつけ、財産管理など)
・ほうきはきれいにするものであり、精神を浄化する、罪を清めて良きキリスト教徒になる、という暗示も考えられる。
・作品No.10 《子供の髪を梳く母のいる室内》について。当時は毎日髪を梳らないとけじらみがついたり、梳りにくくなったりするので、髪を梳ることは清潔を保つのに必要だった。人は油断していったん道をはずすとなかなか元に戻らない、という日常的信仰を示唆している。
・作品No.3ヤン・ステーンの《金物を磨く女》の鍋は内側をしっかり洗うべきものなのに、外側を磨いているのは見せかけだけの繕いを暗示している。うでまくりも、当時としては性的なものを暗示する
・つけぼくろは、肌を白くみせるためのもの

身の回りを描いた風俗画と思われた《牛乳を注ぐ女》は、社会的文脈をふまえてみると、清らかな生活を送るようにと宗教的な教えを伝える、理想化された絵画ととらえることもできる。


講演会の最後で中村氏は、今回の展示会にはいろいろな仕掛けがしてある、と述べられていました。
古い楽器を展示した奥の部屋が、《牛乳を注ぐ女》の部屋と光までそっくりにしていたのは気がついたのですが、他の仕掛けは見つけられませんでした。他には何があったのか、気になります・・・。

そうそう、以前、ブログで当時可愛いネコが描かれる事は少なかったと記載しましたが、今回の展示会では可愛らしいネコが少なくも4匹は発見しました。ヤン・ステーンの16《酔っ払った男と女》のネコは特に可愛かったです。犬の数も多くて、猫や犬を絵の中に描くことは、「ペットを飼えるぐらい裕福なのよ」という主張もあったのでしょうかね?

ヤン・ステーン 16《酔っ払った男と女》

No.16 ヤン・ハーフィクスゾーン・ステーン 《酔っ払った男と女》


結局、展示会を見終わったのは17時をすっかり過ぎていました。最後に出てきたところで、国立新美術館の正面からぱちり。
黒川氏に合掌です。
国立新美術館


rsketch at 23:58|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2007年10月07日

もっと知りたいフェルメール

今日は、隣駅の文教堂書店が移転改装したというので見に行きました。
欲しいな〜と思っていた、フェルメールの本をゲット。
もっと知りたいフェルメール―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
もっと知りたいフェルメール―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)小林 頼子

東京美術 2007-09
売り上げランキング : 11871

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


10月4日発行の下記もあったので迷いましたが、こちらは読み物なので図版が少なく、今読みかけの本を読んだ後にしようと思います。

「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―
「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―小林頼子

ランダムハウス講談社 2007-10-04
売り上げランキング : 233617

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



アート・ビギナーズ・コレクションは、お値段の割に図版が豊富、解説も読みやすくて好きです。11月には、ゴッホとルネ・ラリックのシリーズも出るようです。



余談ですが、今日SUICAをPASMOに変更したのでみどりの窓口で SUICAを解約しようとしたら、「SUICAのチャージした金額が残っているので、このまま解約すると手数料が210円かかりますよ」と教えられました。そこで、チャージした金額は文教堂書店で使い切りました。これで大丈夫、と再度みどりの窓口へ向かうと、今度は「解約するには、身分を証明するものが必要です」とのこと。窓口の人が同じ人だったので「さっきはそんなことは一言もなかったので持ってきていない」と粘って、ようやく解約に成功。なんだかな〜。


rsketch at 00:05|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2007年10月02日

私はフェルメール

9月5日に発売され、日曜日に図書館で借りた読んだ本ですが、面白くてあっという間に読めました。

私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件
私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件フランク・ウイン 小林頼子/池田 みゆき

ランダムハウス講談社 2007-09-06
売り上げランキング : 46594

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


翻訳は、フェルメール研究で著名なあの小林頼子氏と池田 みゆき氏。
池田氏は、オランダで初等・中等教育を受け、現在は外資系コンサルティング会社に勤務されているとのこと。ちなみに、池田氏が冒頭から4章まで、小林氏が5章以下を訳出し、その上で小林氏が全体の用語・文体の統一等をはかったとのこと。

本書は、フェルメールの贋作で名高いハン・ファン・メーヘレン(Han van Meegeren 1889-1947)の生涯を追ったもの。
ここまで贋作の手口を公表しちゃあ、真似する人がいて困るんじゃないのかしらん、なんて余計な心配をするまで細かく贋作の手口が紹介されています。
ファン・メーヘレンの凄いところは、単に絵を描く技術だけじゃなく、顔料まで17世紀に使われたものを使用し、当時出たばかりだったプラスチック(ベークライト)を媒剤として使用する方法を何年もかかって研究する、など本当に「勉強」熱心なところ。それだけではありません。
当時フェルメール研究の第一人者は、フェルメールの初期作品と盛期作品の間には断絶があるので、その中間を埋める作品(カラウ゛ァッジオの影響を受けた宗教的な作品)があるはずだという論文を出していたのですが、その論文をヒントにまさにズバリの作品を作り上げ、第一人者に「本物」の太鼓判を押させたところ。
自分が予言した通りの作品が出てきたら、研究者は心理的にも本物だと思いたくなっちゃいますよね……。
それが、この《エマオの食事》です。

エマオの食事

※クリックで拡大します

個人的には、あまり作品は好きな作品ではないしフェルメールらしさは感じられませんが、こちらの《楽譜を読む女》の秀逸さといったらどうでしょう!! 知らずに見たら、間違いなくフェルメールの作品だと信じちゃいます……。

楽譜を読む女

※クリックで拡大します

ここから先は、ちょっとネタバレなので要注意。
ファン・メーヘレンは、厳格な父親の大反対を押し切ってまで画家になる事を志したのですが、自信過剰なところもあったようで、当時の批評家とのトラブルが原因で作品が酷評されてまったく売れなくなってしまいます。見る目のない批評家たち、理解のない周囲の人々を見返してやりたい、自分の実力を思い知らせてやりたい……ふとしたきっかけで贋作に手を染めて大金を手にし、次から次へと贋作を作り続ける事になる……。大金を得て豪華な暮らしをしていたようですが、果たして彼の生涯は幸せだったのでしょうか。
逮捕されてから、英雄と讃えられる事もあったようですが、そんなことは望んでいなかったように思えます。
生まれる時代がもう少し早かったら、彼の人生は全く違ったものになっていただろうと思わずにはいられません。


ファン・メーヘレンが描いた贋作はこちらで見る事ができます。本書で作品名だけが紹介されて図版がないものも掲載されています。

小林頼子氏、池田 みゆき氏のお二人が共同で出された本としては下記もあります。

西洋職人図集―17世紀オランダの日常生活
西洋職人図集―17世紀オランダの日常生活ヤン ライケン 小林 頼子 池田 みゆき

八坂書房 2001-08
売り上げランキング : 129461
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools



その他、贋作関連の本はこちらもご参考まで(最近アップデートしてませんが・・・)。


rsketch at 22:13|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加