海堂尊
2012年03月24日
極北ラプソディ
ようやく借りることができた、海堂尊氏の医療ミステリー。
いや、もうミステリーではないな、と改めて思ったり。
『極北クレイマー』の続編ともいえる作品ですが、ほかにもジェネラルルージュの速水医師やブラックペアンの世良医師など、過去の作品の登場人物がいろいろ出てくるので、過去の作品を読んでいないと本来の楽しさが半減してしまうかも?
海堂尊非公式ファンサイトで作品の登場人物が確認できるので、これは大変助かりますね!
まさか、あの花房師長が・・・のどんでん返しは読んでからのお楽しみということで。
いや、もうミステリーではないな、と改めて思ったり。
極北ラプソディ 海堂 尊 朝日新聞出版 2011-12-07 売り上げランキング : 5091 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『極北クレイマー』の続編ともいえる作品ですが、ほかにもジェネラルルージュの速水医師やブラックペアンの世良医師など、過去の作品の登場人物がいろいろ出てくるので、過去の作品を読んでいないと本来の楽しさが半減してしまうかも?
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まさか、あの花房師長が・・・のどんでん返しは読んでからのお楽しみということで。
2012年02月18日
救命―東日本大震災、医師たちの奮闘
またまた海堂尊氏の本。
とはいっても、海堂氏は監修者で、海堂氏による文章は最後の章だけ。
それでも、読んでよかったと思える本でした。
震災からはや1年近く。おそらく、3月11日にはTVでは特集番組など放映されるのでしょうが、その前に読んでおいてよかったと思います。
読んでいてすごいと思うのが、医師の方々の強い使命感。
医師というのは、やはり特殊な人間と思いがちですが、実際には同じ人間。
この本には出てこなかった医師の方で、医師らしい行動がとれなかった人もいると思うし、その一方信念をもって目覚しい貢献をした人もいる。
それが実際の人間らしい、人の姿だと思う。
自分には決して真似はできないけれど、こういう人が実際にいるのだ、とわかるだけでもこの世界もまだ捨てたものじゃない、と思えるかもしれません。
とはいっても、海堂氏は監修者で、海堂氏による文章は最後の章だけ。
それでも、読んでよかったと思える本でした。
救命―東日本大震災、医師たちの奮闘 海堂 尊 新潮社 2011-08 売り上げランキング : 4701 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
震災からはや1年近く。おそらく、3月11日にはTVでは特集番組など放映されるのでしょうが、その前に読んでおいてよかったと思います。
読んでいてすごいと思うのが、医師の方々の強い使命感。
医師というのは、やはり特殊な人間と思いがちですが、実際には同じ人間。
この本には出てこなかった医師の方で、医師らしい行動がとれなかった人もいると思うし、その一方信念をもって目覚しい貢献をした人もいる。
それが実際の人間らしい、人の姿だと思う。
自分には決して真似はできないけれど、こういう人が実際にいるのだ、とわかるだけでもこの世界もまだ捨てたものじゃない、と思えるかもしれません。
2012年02月12日
ナニワ・モンスター
久しぶりにまた海堂尊氏の本を読みました。
レビューにありましたが、海堂氏の他の作品を読んでいれば、いろいろな登場人物が出てきても、「おっ、ここで登場したか!」と楽しめると思いますが、初めての人は登場人物が多すぎて混乱するかも?
面白いのは、実在の人物や話からネタを拾っていると思われるところ。
政治家が注目をあびてはまずい事件が発生した場合はめくらまし的に不祥事や芸能ネタをリークする話もよく聞く話。
今話題の大阪の中央からの独立などは、時代を先取りしているかもしれません。
読んでいて、「そんなに簡単な話じゃないでしょ」と思うところも多々あるのですが、政治的な駆け引きをくだらないと思う息子と、地域を守るために必要だと思う父との確執の例などは、両方の立場を経験していないと描けないのではないかと思ってしまいました。
欲を言えば医療の話と日本国内の話に偏りすぎているので、グローバルな視点を持った人物が登場したらもっとリアルになるのかも、と。
ナニワ・モンスター 海堂 尊 新潮社 2011-04-21 売り上げランキング : 22123 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
レビューにありましたが、海堂氏の他の作品を読んでいれば、いろいろな登場人物が出てきても、「おっ、ここで登場したか!」と楽しめると思いますが、初めての人は登場人物が多すぎて混乱するかも?
面白いのは、実在の人物や話からネタを拾っていると思われるところ。
政治家が注目をあびてはまずい事件が発生した場合はめくらまし的に不祥事や芸能ネタをリークする話もよく聞く話。
今話題の大阪の中央からの独立などは、時代を先取りしているかもしれません。
読んでいて、「そんなに簡単な話じゃないでしょ」と思うところも多々あるのですが、政治的な駆け引きをくだらないと思う息子と、地域を守るために必要だと思う父との確執の例などは、両方の立場を経験していないと描けないのではないかと思ってしまいました。
欲を言えば医療の話と日本国内の話に偏りすぎているので、グローバルな視点を持った人物が登場したらもっとリアルになるのかも、と。
2011年08月06日
モルフェウスの領域
これもずっと前に予約してようやく読めた、海堂尊氏の本。
Amazonサイトでは、海堂尊氏の紹介ムービーもみられます。
モルフェウスというのはギリシャ神話の神で、通常モーフィアス(Morpheus)という夢の神。
マトリックスでもモーフィアスって人物が出てましたよね。
なぜ夢の神さまがタイトルに出てくるかというと、今回は「コールドスリープ」つまり人工冬眠がテーマになっているから。
「医学のたまご」を読んだ方なら、あのアツシ君が眠るのか、とピンとくるかと。
思わず感情移入してしまうかも。
本書の中では医療のために開発されたはずのコールドスリープの技術が、例によって官僚の自己保身のために「癌患者は対象外」とされてしまいます。
厚生労働省の御用学者による見解は下記の通り。
「癌患者は未来のために医学を夢見て人工冬眠する。だが、5年後、仮に画期的な治療法が確立されていなければ、患者の希望はみたされない。(中略)医療行政としてはいたずらに法律適用者を増やすのではなく、厳正な話し合いの下、適用をコントロールし、将来のリスクを未然に回避することが医療資源の無駄遣いを省く最良の方策である。」
上記の見解はいかにも現実にありそうな話で、著者の見解としては「自己保身ばかり考え有効な技術を生かすことができない官僚のばかたれ」ってことになるのでしょうが、ある意味官僚のいうことは正しいと思ってしまいます。
本来、誰もが平等に受けられる医療行為、というのが建前としてありますが、現実的には先端医療を受けることができるのはお金持ちばかり。
そんな状態の中、高額のコールドスリープを一般的に認めてしまえばますます医療格差が大きくなるのは必然。
格差が広がれば広がるほど、より不満は大きくなる。
今も財源確保にやっきになっていますが、まずは最低限の医療を国民に保障することが先決、という話になってくるのかと。
政府は必要な金をなんとかしろ、って吠えているだけでは結局何の解決にもならないですし。
コールドスリープの主人公が子どもではなく、財界に必要な老人という設定だったら、どういう展開になるかしらん、と思ってしまいます。
モルフェウスの領域 海堂 尊 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-12-16 売り上げランキング : 39451 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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モルフェウスというのはギリシャ神話の神で、通常モーフィアス(Morpheus)という夢の神。
マトリックスでもモーフィアスって人物が出てましたよね。
なぜ夢の神さまがタイトルに出てくるかというと、今回は「コールドスリープ」つまり人工冬眠がテーマになっているから。
「医学のたまご」を読んだ方なら、あのアツシ君が眠るのか、とピンとくるかと。
思わず感情移入してしまうかも。
本書の中では医療のために開発されたはずのコールドスリープの技術が、例によって官僚の自己保身のために「癌患者は対象外」とされてしまいます。
厚生労働省の御用学者による見解は下記の通り。
「癌患者は未来のために医学を夢見て人工冬眠する。だが、5年後、仮に画期的な治療法が確立されていなければ、患者の希望はみたされない。(中略)医療行政としてはいたずらに法律適用者を増やすのではなく、厳正な話し合いの下、適用をコントロールし、将来のリスクを未然に回避することが医療資源の無駄遣いを省く最良の方策である。」
上記の見解はいかにも現実にありそうな話で、著者の見解としては「自己保身ばかり考え有効な技術を生かすことができない官僚のばかたれ」ってことになるのでしょうが、ある意味官僚のいうことは正しいと思ってしまいます。
本来、誰もが平等に受けられる医療行為、というのが建前としてありますが、現実的には先端医療を受けることができるのはお金持ちばかり。
そんな状態の中、高額のコールドスリープを一般的に認めてしまえばますます医療格差が大きくなるのは必然。
格差が広がれば広がるほど、より不満は大きくなる。
今も財源確保にやっきになっていますが、まずは最低限の医療を国民に保障することが先決、という話になってくるのかと。
政府は必要な金をなんとかしろ、って吠えているだけでは結局何の解決にもならないですし。
コールドスリープの主人公が子どもではなく、財界に必要な老人という設定だったら、どういう展開になるかしらん、と思ってしまいます。
2011年07月23日
外科医 須磨久善
ずっと前に予約してようやく読めた、海堂尊氏の本。
海堂氏としては珍しいノンフィクションの作品で、日本初の「バチスタ手術」に挑んだ人物「須磨久善」の活躍を、医師ならではの視点で紹介しています。
海堂尊氏の本を読んでいる方なら、あの医者のモデルやあの話はこの話をモデルにしていたのね、と思わずうなずいてしまうかと。
バチスタ手術の概要はこれまでの本でなんとなく理解できていましたが、単純に切って小さくするだけの手術だったのを、弱った部分をみつけて切るように改良して成功率を飛躍的に向上したのはこの須磨氏だったことなど、ルポルタージュとしても楽しめます。
医療の世界でも専門化が進み、胸部と腹部では分野が違うと互いに専門領域以外の手術をしたがらない。しごく当たり前と思える話ですが、その垣根を跳び越えて、腹部の動脈を胸部の手術に使うことを考え、実行に移し、成功させたのが須磨氏。
どの分野でも一緒ですが、専門化すればするほどどんどん他分野への垣根が高くなり、保守的にいまあるものを存続させる方向になってしまうもの。
専門分野で活躍した人ほど、知らない分野に手を出して失敗することを恐れてしまうもの。それでもチャレンジできる人種とそうでない人種に分かれてしまうものなのだな、と。
須磨氏が語った言葉がいくつか紹介されているのですが、個人的に印象的だった言葉をご紹介。
「人が自分をどう思っているとか、ひそひそ話の中身みたいな小さな問題よりもはるかに、自分が自分の行為をどう思うのかのほうが大切です。たどりついたゴールが、本当に最初に目指していたゴールかどうか。そうした問いに対する回答がイエスなら、あとは、まあそこそこ、どうでもいいのではないでしょうか。」
チームバチスタの映画撮影で、緊張で糸結びがうまくいかない主役の吉川にかけた言葉
「吉川さん、結紮がロックのビートになっている。ここはもっとリラックス、バラードを歌うようにやってください。」
一人前になるには
「一人前になるには地獄をみなければならない。だけどそれでは所詮二流です。一流になるには、地獄を知り、その上で地獄を忘れなくてはなりません。地獄に引きずられているようではまだまだ未熟ですね」
「音楽でも絵画でも、本物は出会った瞬間に感情を忘れさせ、その世界に連れ去っていく。だから本物と接することが何より大切なんです。本物は自分の心を救ってくれるのです。」
本物をみわける尺度について
「自分のこころが引き込まれたら、自分にとっての本物です。ふつうの人はそうした瞬間を見過ごしてしまう。本物と出会った瞬間、誰でも、ああ、これかもしれない、と思うはず。自分の感覚を大切にしようという気持ちさえあれば、本物が蓄積されていくはずです。」
既にTV映像化されていて、こちらで閲覧できます。
須磨氏役として登場している水谷豊さん。「手術」という台詞の度に、噛みそうでハラハラしてしまったのは自分だけ???
外科医 須磨久善 1-8 投稿者 yamutya1
外科医 須磨久善 (講談社文庫) | |
海堂 尊 講談社 2011-07-15 売り上げランキング : 1003 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
海堂氏としては珍しいノンフィクションの作品で、日本初の「バチスタ手術」に挑んだ人物「須磨久善」の活躍を、医師ならではの視点で紹介しています。
海堂尊氏の本を読んでいる方なら、あの医者のモデルやあの話はこの話をモデルにしていたのね、と思わずうなずいてしまうかと。
バチスタ手術の概要はこれまでの本でなんとなく理解できていましたが、単純に切って小さくするだけの手術だったのを、弱った部分をみつけて切るように改良して成功率を飛躍的に向上したのはこの須磨氏だったことなど、ルポルタージュとしても楽しめます。
医療の世界でも専門化が進み、胸部と腹部では分野が違うと互いに専門領域以外の手術をしたがらない。しごく当たり前と思える話ですが、その垣根を跳び越えて、腹部の動脈を胸部の手術に使うことを考え、実行に移し、成功させたのが須磨氏。
どの分野でも一緒ですが、専門化すればするほどどんどん他分野への垣根が高くなり、保守的にいまあるものを存続させる方向になってしまうもの。
専門分野で活躍した人ほど、知らない分野に手を出して失敗することを恐れてしまうもの。それでもチャレンジできる人種とそうでない人種に分かれてしまうものなのだな、と。
須磨氏が語った言葉がいくつか紹介されているのですが、個人的に印象的だった言葉をご紹介。
「人が自分をどう思っているとか、ひそひそ話の中身みたいな小さな問題よりもはるかに、自分が自分の行為をどう思うのかのほうが大切です。たどりついたゴールが、本当に最初に目指していたゴールかどうか。そうした問いに対する回答がイエスなら、あとは、まあそこそこ、どうでもいいのではないでしょうか。」
チームバチスタの映画撮影で、緊張で糸結びがうまくいかない主役の吉川にかけた言葉
「吉川さん、結紮がロックのビートになっている。ここはもっとリラックス、バラードを歌うようにやってください。」
一人前になるには
「一人前になるには地獄をみなければならない。だけどそれでは所詮二流です。一流になるには、地獄を知り、その上で地獄を忘れなくてはなりません。地獄に引きずられているようではまだまだ未熟ですね」
「音楽でも絵画でも、本物は出会った瞬間に感情を忘れさせ、その世界に連れ去っていく。だから本物と接することが何より大切なんです。本物は自分の心を救ってくれるのです。」
本物をみわける尺度について
「自分のこころが引き込まれたら、自分にとっての本物です。ふつうの人はそうした瞬間を見過ごしてしまう。本物と出会った瞬間、誰でも、ああ、これかもしれない、と思うはず。自分の感覚を大切にしようという気持ちさえあれば、本物が蓄積されていくはずです。」
既にTV映像化されていて、こちらで閲覧できます。
須磨氏役として登場している水谷豊さん。「手術」という台詞の度に、噛みそうでハラハラしてしまったのは自分だけ???
外科医 須磨久善 1-8 投稿者 yamutya1
2011年03月18日
ブレイズメス1990
震災で自宅待機になったこともあり、ようやく読めた本。
本書を読んで思ったのが、「やっぱり海堂氏は権力闘争が好きなのかも?」という点。
ご自身が好きで書いているのかどうかはわかりませんが、読んでいると権力闘争を楽しんでいるのかな、と思われる箇所がちらりほらり。
個人的には、自分の関係ないところでは「やったれ、やったれ〜」という」スタンスでも、いざ自分に降りかかるとしっぽをまいて逃げるタイプなので、読後感としてはちょっと微妙な感じ。
医療はお金で買うものではない、と建前上はいっていても、実際はお金(リソース)がないと医療がなりたたない、というのは今回の震災でも明らか。
長く生きさせることだけが医療はないし、安らかな死を迎えることも医療従事者に要求される世の中であっても、「最低限先立つお金」が必要、というのが現実。
この震災にあたって、海棠氏はどう考えているのか知りたいと思ったら、下記に若干ですが原発についてのコメントがありましたので抜粋します。
宝島社の「海堂ニュース」/ 2011.3.14 海堂ニュースより抜粋
震災雑感の最後に、原子炉溶融について一言。後にこの問題を声高に批判する人たちが必ず出てくることでしょう。しかし今回の件は、事前想定がほぼ不可能な事態でした。過去の対応のまずさを責めてもまったく意味がありません。現場対応が後手後手などという批判もありましたが、これほど現場の方たちの意欲を削ぐ発言はありません。少なくとも報道を見る限り、現場の方たちは最善をつくして対応されています。「やらないヤツが批判する」という日本社会の悪しき体質をそろそろここらで変える必要があるのでは、と思います。なぜならそうしている限り、社会に愛着を持つ、素晴らしい人材が育たなくなってしまうと思われるからです。「現場にいない、バックヤードが口先批判して、現場最前線の勇者を根絶やしにする」。そうした時に泣かされるのは市民なのですから。忘れてはならないのは、私たち日本国民は原子力発電がもたらした豊かな電力供給を享受してきた、ということです。
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本書を読んで思ったのが、「やっぱり海堂氏は権力闘争が好きなのかも?」という点。
ご自身が好きで書いているのかどうかはわかりませんが、読んでいると権力闘争を楽しんでいるのかな、と思われる箇所がちらりほらり。
個人的には、自分の関係ないところでは「やったれ、やったれ〜」という」スタンスでも、いざ自分に降りかかるとしっぽをまいて逃げるタイプなので、読後感としてはちょっと微妙な感じ。
医療はお金で買うものではない、と建前上はいっていても、実際はお金(リソース)がないと医療がなりたたない、というのは今回の震災でも明らか。
長く生きさせることだけが医療はないし、安らかな死を迎えることも医療従事者に要求される世の中であっても、「最低限先立つお金」が必要、というのが現実。
この震災にあたって、海棠氏はどう考えているのか知りたいと思ったら、下記に若干ですが原発についてのコメントがありましたので抜粋します。
宝島社の「海堂ニュース」/ 2011.3.14 海堂ニュースより抜粋
震災雑感の最後に、原子炉溶融について一言。後にこの問題を声高に批判する人たちが必ず出てくることでしょう。しかし今回の件は、事前想定がほぼ不可能な事態でした。過去の対応のまずさを責めてもまったく意味がありません。現場対応が後手後手などという批判もありましたが、これほど現場の方たちの意欲を削ぐ発言はありません。少なくとも報道を見る限り、現場の方たちは最善をつくして対応されています。「やらないヤツが批判する」という日本社会の悪しき体質をそろそろここらで変える必要があるのでは、と思います。なぜならそうしている限り、社会に愛着を持つ、素晴らしい人材が育たなくなってしまうと思われるからです。「現場にいない、バックヤードが口先批判して、現場最前線の勇者を根絶やしにする」。そうした時に泣かされるのは市民なのですから。忘れてはならないのは、私たち日本国民は原子力発電がもたらした豊かな電力供給を享受してきた、ということです。
2010年11月28日
死因不明社会
またまた海堂尊氏の本。
でもミステリーではなく、ブルーバックス。
ブルーバックスなのに、あのチームバチスタの架空人物、厚生労働省の白鳥と別宮記者が登場し、対談形式で進むので医療やシステムに関する複雑な話も、すんなり頭に入ってくるから不思議。
日本の死体の解剖率は2%。先進国中最低レベル。
そもそも、監督省庁によって解剖制度がわかれていて・・・なんていうことは一般の人はほとんど知らない。
1 病理解剖 厚生労働省 病院での異常死など
2 行政解剖 地方自治体 死因不明の場合
3 司法解剖 法務省・警察庁 事件性の疑いのある場合
4 系統解剖 文部科学省 医学部などで教育目的で実施
2の行政解剖の中には、監察医制度があるけれど、この制度があるのは東京、横浜、大阪、神戸、名古屋の5都市のみ。
→地域格差丸出し。しかも東京だけ突出して優遇されているというのは病院と同じ。
しかも、司法解剖されるのは年間5000体(予算分のみ)という枠組みがあるらしい。
著者は、こういう実情から単純に解剖をもっと増やすべきだ、といっているのではない。
解剖がいかに大変な作業かを明らかにした上で、Ai(オートプシー・イメージング)を導入すればよいのだ、と。
そして、解剖をやめてすべてAiにかえろ、といっているわけではなく、解剖の前にAiで判断し、必要に応じて解剖すればいい、といっているのも重要なポイント。
本書を執筆中(2007年8月)に千葉に「千葉大学Aiセンター」が出来たのだそうで、海堂氏によると、これは『「死亡時医学検索」の確立に向けての歴史的第一歩であり、同時に日本医療における革命でもある。』(本書 P261)なのだ。
・・・というわけで、本書は2007/11/21に出た本なので、その後がどうなっているか気になって検索しみると、その後はかなり苦戦している模様。
■宝島社の「海堂ニュース」
2010.11.10 「転戦、また転戦」
2010.04.16 「法医学会のAiは割れている。」
本書の海堂氏の最後の言葉。
「無知は罪なのである。そして無知とは、考えようとしない怠惰の中に棲息する」
でもミステリーではなく、ブルーバックス。
ブルーバックスなのに、あのチームバチスタの架空人物、厚生労働省の白鳥と別宮記者が登場し、対談形式で進むので医療やシステムに関する複雑な話も、すんなり頭に入ってくるから不思議。
死因不明社会 (ブルーバックス) 海堂 尊 講談社 2007-11-21 売り上げランキング : 4682 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本の死体の解剖率は2%。先進国中最低レベル。
そもそも、監督省庁によって解剖制度がわかれていて・・・なんていうことは一般の人はほとんど知らない。
1 病理解剖 厚生労働省 病院での異常死など
2 行政解剖 地方自治体 死因不明の場合
3 司法解剖 法務省・警察庁 事件性の疑いのある場合
4 系統解剖 文部科学省 医学部などで教育目的で実施
2の行政解剖の中には、監察医制度があるけれど、この制度があるのは東京、横浜、大阪、神戸、名古屋の5都市のみ。
→地域格差丸出し。しかも東京だけ突出して優遇されているというのは病院と同じ。
しかも、司法解剖されるのは年間5000体(予算分のみ)という枠組みがあるらしい。
著者は、こういう実情から単純に解剖をもっと増やすべきだ、といっているのではない。
解剖がいかに大変な作業かを明らかにした上で、Ai(オートプシー・イメージング)を導入すればよいのだ、と。
そして、解剖をやめてすべてAiにかえろ、といっているわけではなく、解剖の前にAiで判断し、必要に応じて解剖すればいい、といっているのも重要なポイント。
本書を執筆中(2007年8月)に千葉に「千葉大学Aiセンター」が出来たのだそうで、海堂氏によると、これは『「死亡時医学検索」の確立に向けての歴史的第一歩であり、同時に日本医療における革命でもある。』(本書 P261)なのだ。
・・・というわけで、本書は2007/11/21に出た本なので、その後がどうなっているか気になって検索しみると、その後はかなり苦戦している模様。
■宝島社の「海堂ニュース」
2010.11.10 「転戦、また転戦」
2010.04.16 「法医学会のAiは割れている。」
本書の海堂氏の最後の言葉。
「無知は罪なのである。そして無知とは、考えようとしない怠惰の中に棲息する」
2010年11月20日
ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて
エッセイだけかと思ってスルーしていたのですが、ベストセラー『チーム・バチスタの栄光』の、大人気「田口・白鳥」シリーズが収録。
エッセイや自作解説などを読んでわかったのが、海堂氏は最初にプロットなどを固めてから書き始めるのではなく、結構いきあたりばったりで書く部分があるということ(笑)。
なんとなく、きっちり決めてから書き進めるのだろうな、と思っていたので意外でした。
行き詰まった時には、キャラに助けてもらうみたいですが、それにしても執筆の早さには驚き。どこでも書けるというのもすごい。
筒井康隆氏のファンということで、うれしくもあり。
巻末には、「海堂尊ワールド」を徹底解剖した、登場人物一覧&関係図&年表&用語解説&医療事典付き。
特に登場人物相関図は、今後の楽しみに必須と考えてスキャンしちゃいました。(自分のためのメモなのでスキャンの精度はゆるゆるです。)
1998過去
2006〜2008現在
2010〜2022未来
しかーし!
私が読んだのは上のハードカバーだったのですが、もう文庫化されていたようで、しまった・・・(汗)
しかも、レビューをみると短編2作追加の他、加筆・修正が諸々あるようなのでこれから購入される方は文庫のほうがオススメかと。
【追記】
TV放送ブラックペアンに関する本の情報はこちらから。
ジェネラル・ルージュの伝説 海堂尊ワールドのすべて 海堂 尊 宝島社 2009-02-20 売り上げランキング : 20029 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
エッセイや自作解説などを読んでわかったのが、海堂氏は最初にプロットなどを固めてから書き始めるのではなく、結構いきあたりばったりで書く部分があるということ(笑)。
なんとなく、きっちり決めてから書き進めるのだろうな、と思っていたので意外でした。
行き詰まった時には、キャラに助けてもらうみたいですが、それにしても執筆の早さには驚き。どこでも書けるというのもすごい。
筒井康隆氏のファンということで、うれしくもあり。
巻末には、「海堂尊ワールド」を徹底解剖した、登場人物一覧&関係図&年表&用語解説&医療事典付き。
特に登場人物相関図は、今後の楽しみに必須と考えてスキャンしちゃいました。(自分のためのメモなのでスキャンの精度はゆるゆるです。)
1998過去
2006〜2008現在
2010〜2022未来
しかーし!
私が読んだのは上のハードカバーだったのですが、もう文庫化されていたようで、しまった・・・(汗)
しかも、レビューをみると短編2作追加の他、加筆・修正が諸々あるようなのでこれから購入される方は文庫のほうがオススメかと。
ジェネラル・ルージュの伝説 (宝島社文庫) (宝島社文庫 C か 1-9) 海堂 尊 宝島社 2010-06-04 売り上げランキング : 2412 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
【追記】
TV放送ブラックペアンに関する本の情報はこちらから。
rsketch at 18:24|Permalink│
2010年11月14日
医学のたまご
またまた海堂尊氏の本。
『ジーン・ワルツ』の理恵の子ども、曽根崎薫14歳が主人公。
本書のあとがきによると、中高生向きに書かれたとのことですが・・・中学生が電気泳動とか学会の裏表など知るはずもなく、むしろ大人向けだと思うんですけど・・・(汗)
確認すると、初出は『日経メディカル』2007年2月〜2008年1月に掲載されたということなので、やはり中高生向けではないですね〜。
本書の中では、あの白鳥圭輔の得意技だと思っていた、アクティヴ・フェーズとパッシヴ・フェーズの極意を父親の曾根崎伸一郎が息子の薫るに伝授。(同じ極意を共有する、白鳥と曾根崎の間になんの関連があるのかも気になります)
父の伸一郎によると、アクティヴ・フェーズとパッシヴ・フェーズはどちらも4教程あり、パッシヴで大切なのは第2、アクティブでは第3、第4。
息子にどちらのフェーズを選ぶかを選択させ、パッシヴを選ぶ確率が97%だと予想しているにもかかわらず、最後まで読んでみたら父が息子に教えたのはアクティヴとしか思えないんですけど・・・(笑)???
いやいや、パッシヴとして父が息子を通じて情報収集を怠らず十分な対策をたてていたから、最小限の被害ですんだということなのか??
もう一つの物語として、薫がアクティヴ・フェーズを選択した場合のストーリーをぜひ読んでみたいものだと思っちゃいました。
医学のたまご (ミステリーYA!) | |
海堂 尊 ヨシタケシンスケ おすすめ平均 文句なしに面白い! 子どもに読ませたい ジーン・ワルツ、マドンナ・ヴェルデの前段として とっつきやすいのに、深い。 本当に中高生向けですか!? Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『ジーン・ワルツ』の理恵の子ども、曽根崎薫14歳が主人公。
本書のあとがきによると、中高生向きに書かれたとのことですが・・・中学生が電気泳動とか学会の裏表など知るはずもなく、むしろ大人向けだと思うんですけど・・・(汗)
確認すると、初出は『日経メディカル』2007年2月〜2008年1月に掲載されたということなので、やはり中高生向けではないですね〜。
本書の中では、あの白鳥圭輔の得意技だと思っていた、アクティヴ・フェーズとパッシヴ・フェーズの極意を父親の曾根崎伸一郎が息子の薫るに伝授。(同じ極意を共有する、白鳥と曾根崎の間になんの関連があるのかも気になります)
父の伸一郎によると、アクティヴ・フェーズとパッシヴ・フェーズはどちらも4教程あり、パッシヴで大切なのは第2、アクティブでは第3、第4。
息子にどちらのフェーズを選ぶかを選択させ、パッシヴを選ぶ確率が97%だと予想しているにもかかわらず、最後まで読んでみたら父が息子に教えたのはアクティヴとしか思えないんですけど・・・(笑)???
いやいや、パッシヴとして父が息子を通じて情報収集を怠らず十分な対策をたてていたから、最小限の被害ですんだということなのか??
もう一つの物語として、薫がアクティヴ・フェーズを選択した場合のストーリーをぜひ読んでみたいものだと思っちゃいました。
2010年11月03日
マドンナ・ヴェルデ
久しぶりに海堂尊氏の本を読みました。
この本は、『ジーン・ワルツ』の主人公、理恵の母親を視点としたもう一つのストーリー。
なので、まだこちらの本を読んでいない方はまずこちらを読むのがオススメ。
ジーン・ワルツの過去記事はこちらから。
不妊に悩む人が増えた昨今、より身近になテーマになっているとはいえ、不倫相手の子かもしれない卵子の人工授精を行い、実の母親(みどり)にその代理出産を頼むという理恵の行動はどうしても小説ならではの行動だと思ってしまいます。
医療は進歩し、法律はその進歩に追いつかず旧態依然としたもの・・・という現実問題があるとしても、やはり行き過ぎだと感じるのは私だけではないはず。
母親のみどりが自分の娘に子どもは任せるのは危険、と感じるのも納得。
ちなみに、タイトルのヴェルデ(verde)とは、スペイン語で緑の意味で、今回の主人公である理恵の母親の名前が「みどり」。
聖母(マドンナ)が性交無しで子どもを宿したように、みどりも代理母としてマドンナになった、というわけですね。
表紙も緑を基調にデザインされていて、植物をモティーフにしています。
そういえば、以前は時々テレビで海堂尊氏を見たのですが、最近また見なくなったなぁ・・・(自分が知らないだけ?)
マドンナ・ヴェルデ | |
海堂 尊 おすすめ平均 生命へのメス、「ジーン・ワルツ」のB面。感情から代理母を考える 次回作にも期待大 コアな海堂ファン向けの一冊 母は強し 男性から見た、母性のどう猛さ。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この本は、『ジーン・ワルツ』の主人公、理恵の母親を視点としたもう一つのストーリー。
なので、まだこちらの本を読んでいない方はまずこちらを読むのがオススメ。
ジーン・ワルツの過去記事はこちらから。
ジーン・ワルツ (新潮文庫) 海堂 尊 新潮社 2010-06-29 売り上げランキング : 2591 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
不妊に悩む人が増えた昨今、より身近になテーマになっているとはいえ、不倫相手の子かもしれない卵子の人工授精を行い、実の母親(みどり)にその代理出産を頼むという理恵の行動はどうしても小説ならではの行動だと思ってしまいます。
医療は進歩し、法律はその進歩に追いつかず旧態依然としたもの・・・という現実問題があるとしても、やはり行き過ぎだと感じるのは私だけではないはず。
母親のみどりが自分の娘に子どもは任せるのは危険、と感じるのも納得。
ちなみに、タイトルのヴェルデ(verde)とは、スペイン語で緑の意味で、今回の主人公である理恵の母親の名前が「みどり」。
聖母(マドンナ)が性交無しで子どもを宿したように、みどりも代理母としてマドンナになった、というわけですね。
表紙も緑を基調にデザインされていて、植物をモティーフにしています。
そういえば、以前は時々テレビで海堂尊氏を見たのですが、最近また見なくなったなぁ・・・(自分が知らないだけ?)