贋作

2007年12月24日

銀座の怪人

イラン人画商、イライ・サカイの贋作事件の全貌を追ったルポルタージュです。

銀座の怪人 (講談社BIZ)
銀座の怪人 (講談社BIZ)七尾 和晃

講談社 2006-05-30
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贋作に関する本はこれまでに何冊か読みましたが、なんとも読後感が良くない本です……。
といっても、この本が決して面白くないというわけではなくて、人にはそれぞれ事情があることや、時代の流れには逆らえず「世の中どうにもならないことがありすぎる」ことをまざまざと見せつけられるからかもしれません。
日本人の妻を持つイラン人画商であるイライ・サカイが、20年以上も「通貨」代わりに偽の美術品を日本に持ち込んでいた、この事実に腹は立ちますが、それよりも「被害者」にも「加害者」にもなるのを避ける日本の一流画廊や関係者たちの小賢しさ……。

「贋作ではないと信じていて売買したのか」
「贋作かもしれないけど、鑑定書もついているし、まあいいかと思って売買したのか」
「怪しいけれど、買えるものは買い、売れるものは売ってしまえ。」

著者も書いていますが、実際のところどれに当たるかは当事者本人にしかわかりようがない、というのが事実なのですよね……。

この本には、天才贋作画家、レアル・ルサールも登場します。「贋作には悪意が感じられる」と美術評論家の瀬木慎一氏は語ったといいますが、このレアル・ルサールの作品には悪意は感じられず、なんと真似をされた画家がレアルの作品を過去の自分の作品としてサインをしたといいます……。

イライ・サカイが持ち込んだ作品の画集に「価値あるコレクション」として巻頭言を寄せている第一人者たちとして、以下のような実名もあげられています。

「東京芸術大学学長、文化財赤十字構想理事長 平山郁夫」
「総合美術研究所所長 瀬木慎一」
「美術史家・絵画修復家 黒江光彦」
「東北大学教授 田中英道」

権威に弱い日本人なら、もうこれでイチコロですよね……。それ以外にも、東京大学名誉教授の故・江上浪夫氏、松本清張の名前なども登場します。もちろん、あげられているすべての人物に悪意があったとは決して言えませんが、「決してなかった」と言い切れないのも事実……。

いったい何が真実なのかは、永遠に謎のまま……そう感じてしまうところが、読後感の悪さにもつながっているのかもしれません。


レアル・ルサールの本はこちら
贋作への情熱―ルグロ事件の真相
贋作への情熱―ルグロ事件の真相レアル ルサール R´eal Lessard 鎌田 真由美

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rsketch at 00:14|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2007年10月07日

もっと知りたいフェルメール

今日は、隣駅の文教堂書店が移転改装したというので見に行きました。
欲しいな〜と思っていた、フェルメールの本をゲット。
もっと知りたいフェルメール―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
もっと知りたいフェルメール―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)小林 頼子

東京美術 2007-09
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10月4日発行の下記もあったので迷いましたが、こちらは読み物なので図版が少なく、今読みかけの本を読んだ後にしようと思います。

「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―
「牛乳を注ぐ女」 ―画家フェルメールの誕生―小林頼子

ランダムハウス講談社 2007-10-04
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アート・ビギナーズ・コレクションは、お値段の割に図版が豊富、解説も読みやすくて好きです。11月には、ゴッホとルネ・ラリックのシリーズも出るようです。



余談ですが、今日SUICAをPASMOに変更したのでみどりの窓口で SUICAを解約しようとしたら、「SUICAのチャージした金額が残っているので、このまま解約すると手数料が210円かかりますよ」と教えられました。そこで、チャージした金額は文教堂書店で使い切りました。これで大丈夫、と再度みどりの窓口へ向かうと、今度は「解約するには、身分を証明するものが必要です」とのこと。窓口の人が同じ人だったので「さっきはそんなことは一言もなかったので持ってきていない」と粘って、ようやく解約に成功。なんだかな〜。


rsketch at 00:05|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2007年10月02日

私はフェルメール

9月5日に発売され、日曜日に図書館で借りた読んだ本ですが、面白くてあっという間に読めました。

私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件
私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件フランク・ウイン 小林頼子/池田 みゆき

ランダムハウス講談社 2007-09-06
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翻訳は、フェルメール研究で著名なあの小林頼子氏と池田 みゆき氏。
池田氏は、オランダで初等・中等教育を受け、現在は外資系コンサルティング会社に勤務されているとのこと。ちなみに、池田氏が冒頭から4章まで、小林氏が5章以下を訳出し、その上で小林氏が全体の用語・文体の統一等をはかったとのこと。

本書は、フェルメールの贋作で名高いハン・ファン・メーヘレン(Han van Meegeren 1889-1947)の生涯を追ったもの。
ここまで贋作の手口を公表しちゃあ、真似する人がいて困るんじゃないのかしらん、なんて余計な心配をするまで細かく贋作の手口が紹介されています。
ファン・メーヘレンの凄いところは、単に絵を描く技術だけじゃなく、顔料まで17世紀に使われたものを使用し、当時出たばかりだったプラスチック(ベークライト)を媒剤として使用する方法を何年もかかって研究する、など本当に「勉強」熱心なところ。それだけではありません。
当時フェルメール研究の第一人者は、フェルメールの初期作品と盛期作品の間には断絶があるので、その中間を埋める作品(カラウ゛ァッジオの影響を受けた宗教的な作品)があるはずだという論文を出していたのですが、その論文をヒントにまさにズバリの作品を作り上げ、第一人者に「本物」の太鼓判を押させたところ。
自分が予言した通りの作品が出てきたら、研究者は心理的にも本物だと思いたくなっちゃいますよね……。
それが、この《エマオの食事》です。

エマオの食事

※クリックで拡大します

個人的には、あまり作品は好きな作品ではないしフェルメールらしさは感じられませんが、こちらの《楽譜を読む女》の秀逸さといったらどうでしょう!! 知らずに見たら、間違いなくフェルメールの作品だと信じちゃいます……。

楽譜を読む女

※クリックで拡大します

ここから先は、ちょっとネタバレなので要注意。
ファン・メーヘレンは、厳格な父親の大反対を押し切ってまで画家になる事を志したのですが、自信過剰なところもあったようで、当時の批評家とのトラブルが原因で作品が酷評されてまったく売れなくなってしまいます。見る目のない批評家たち、理解のない周囲の人々を見返してやりたい、自分の実力を思い知らせてやりたい……ふとしたきっかけで贋作に手を染めて大金を手にし、次から次へと贋作を作り続ける事になる……。大金を得て豪華な暮らしをしていたようですが、果たして彼の生涯は幸せだったのでしょうか。
逮捕されてから、英雄と讃えられる事もあったようですが、そんなことは望んでいなかったように思えます。
生まれる時代がもう少し早かったら、彼の人生は全く違ったものになっていただろうと思わずにはいられません。


ファン・メーヘレンが描いた贋作はこちらで見る事ができます。本書で作品名だけが紹介されて図版がないものも掲載されています。

小林頼子氏、池田 みゆき氏のお二人が共同で出された本としては下記もあります。

西洋職人図集―17世紀オランダの日常生活
西洋職人図集―17世紀オランダの日常生活ヤン ライケン 小林 頼子 池田 みゆき

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その他、贋作関連の本はこちらもご参考まで(最近アップデートしてませんが・・・)。


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