人間が苦しみ悩むとき、そこには身体感覚としての苦しみ、感情としての苦しみ、思考としての苦しみという3つの次元が共存しています。

 まずは、Physical Dimension(身体的な次元)。

 私たちが苦しいとき、そこには必ず身体的な不快感があります。胸が締め付けられる感じとか、ムカムカと火のように激しく燃えるような感じとか、暗く重たく落ち込む感じなどです。

 からだの実感としての苦しみというものが観察できます。

 次に、Emotional Dimension(感情的な次元)。

 これは、怒り、悲しみ、怖れ、自己嫌悪など、情としての質が認められるフィーリングです。

 傷ついた、絶望している、妬ましい、無力に感じるなどです。

 そして、Mental Dimension(思考やイメージの次元)です。

 ここには、「あいつは俺をバカにした」とか「私はこのままひとりぼっちに違いない」など、文章にできる信念、ストーリー、解釈、評価などが含まれます。

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  多くの人は、苦悩に向き合うとき Mental Dimension だけに頼って、「考えること」「分析すること」「理性を使うこと」によって解こうとして失敗します。

 というのは、頭はすでに見えている既知の世界でしか判断できませんので、潜在意識や無意識にあるものについては推測できても真実を知ることはできないのです。

 そこで、Emotional Dimension や Physical Dimension にも意識を等しく向けて、総合的に取り組むことが大事になってきます。

 からだの症状や反応には、潜在意識の声が反映されており、顕在意識が把握できていない重要な情報を示していることが多いので、頭で考えるより、むしろ体の感覚に焦点を当てるほうが苦悩が解きやすいことが少なくありません。 

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 ということで、3つの次元への気づきを深めるエクササイズをご用意しました。

 ご自分が悩んでいる事柄について意識したときに、どのような思考、感情、肉体感覚になるかをそれぞれ別々に観察してください。

 たとえば、職場の同僚との関係に悩んでいる人の場合だと、その同僚のことを考えたときに、3つの次元でどのような反応が起きているかを観察するのです。

 まず、「思考の次元」では、頭で考えることが何なのかを1つずつ紙に書き留めていきます。「あの人さえいなければ楽なのに」「あの人はいつも威張っている」「目障りだ」「私はどうしていつも職場に恵まれないのだろう」などなど。これらはすべて思考だということがお分かりですか。感情でも肉体感覚でもありませんね。

 次に、「感情の次元」を見ていきましょう。これは頭よりも深いですので、体に意識を向けないと自覚できません。頭からからだに意識を向けて、もっと内面に入る必要があります。

 あなたは「怒り」を感じていますか? それとも「悲しみ」ですか? それとも「怖れ」? あるいは「自己嫌悪」? 感情として何を感じているのか、からだの内部に注意を向けて、感情に名前をちゃんとつけてください。

 そして、私は「怖れ」を感じていると認めるのです。

 次に、「身体感覚の次元」に移ります。その同僚のことを考えたときに、どのような肉体感覚になりますか? お腹が緊張して締まりますか? 胸がムカムカと熱くなりますか? 暗くどんよりと落ち込んだ感覚がしますか? 頭が痛くなりますか? 肩の血流が悪くなりますか? 食欲がなくなりますか? 

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 実は、人間の意識は常に「思考」「感情」「身体感覚」が総合的にひとつとして機能しています。「思考」が苦しめば「身体感覚」は必ず心地悪くなりますし、「感情」が苦しめば「思考」もマイナスに傾きます。つまり、3つは密接に繋がって影響を与え合っているのです。

 そして、頭が全体像を把握できないときには、心の情とからだの感覚が何を掴んでいるのかに注意を向けることで、悩みについてより多くのデータを得ることができます。言い換えると、頭と心と体を全部見ていくことで、私たちは自分自身をより完全に知ることができるということです。

 頭が理解していない自分自身は、からだの「得体の知れない感覚」として表れることが多いです。なので、この「得体の知れない感覚」に注意を向けて対話をして、奥にあるものを探っていくと自己理解を深めることができます。 

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 先ほどの同僚との人間関係の悩みの場合ですと、次のように紙に書くと助けになるでしょう。

 「思考」(頭):「彼女は私をバカにしている」「彼女は偉そうだ」「私を理解しようとしていない」

 「感情」(心):「怖れ(この先この会社に居続けることについて不安)」「自己嫌悪(人に受け入れられることに自信がない)」

 「身体感覚」(体):「胸がギュッと締め付けられる」「下腹部が冷たくて堅い」「元気がなく弱い感じ」 

 これらの3つの次元すべてを把握すると、苦悩が解きやすくなります。

 頭の思考だけに意識を集中させると解きにくくなります。なので、特に心の情と体の感覚との連携において心理的問題を解くという姿勢をお忘れなく。

 心理的苦悩が解けるとは、身体感覚が軽く楽になることを意味しています。また、情的に平安や喜びや活力が戻ってくることが意味します。知的には自由で明るく開かれた考えになります。

 解決したときには、頭も心も体も総合的に良い状態になっています。

 そして、そのような解決を目指すには、3つの次元がそれぞれ必要なものを得られる必要があります。時には頭に取り組むのがベスト、時には心、時には肉体感覚ということです。