2018年12月6日のテレフォン人生相談は、多くの人の参考になるような智慧で溢れていました。

 その全文をご紹介いたしましょう。およそ14分の内容です。

 パーソナリティー:今井通子
 回答者:マドモアゼル愛
 相談者:18歳女性(ADHD、高校中退、フリーター、父は大企業しか認めないので絶望している)

今井:もしもし、テレフォン人生相談です。

相談者:ちょっとあの、人生が八方塞がりになっていて。

今井:はい。

相談者:精神的な、生きる目標が欲しいんです。

今井:あなた、おいくつ?

相談者:18歳です。

今井:お父様、お母様は?


相談者:母が46で、父が52です。


今井:ご兄弟っていらっしゃる?


相談者:中3の妹がいますね。 

今井:お父さん、お母さん、妹さんとはいろいろ喋る?

相談者:あんまりよろしくなくって。

今井:あらら。何がよろしくないの?

相談者:仲ですねえ。

今井:うん。

相談者:母から父の愚痴とかをさんざん聞かされてきましたし、妹は家族みんなが嫌いなので、反抗期ですかねえ。ま、「うぜえんだよ」とか。まともに話ができないし。父は教育熱心だけど、ちょっと発達障害気味で。で、私は ADHD なんです。

今井:お父さん、発達障害気味で、教育熱心なんだけど・・・

相談者:アスペルガーっぽくって。

今井:うん。

相談者:私の気持ちとかを考えずに効率だけを考えた教育をするわけで。あの、立派な大学に行って立派な企業に就職してっていうのが夢だったみたいなんですけど。

今井:うん。

相談者:あの、私は中高一貫の学校、高1の冬に中退して。
 
今井:はい。

相談者:中退するときに鬱と統合失調症になっちゃって。入院とかしたりして、あの、その後、全寮制フリースクールに入れられて、そこでそこの精神科医に診られながら断薬して、ま、完治したわけなんですけど。で、そこのところも2年の秋に退学して、その次の年の1月に通信制入ったんですけど。

今井:はい。

相談者:そこも中退して。

今井:うん。っということはまだ高校を卒業してないわけね?

相談者:フリースクールも・・・

今井:うん。

相談者:通信制も・・・
 
今井:うん。

相談者:高1の勉強をしてる途中で辞めて。

今井:あ、そういうこと?

相談者:はい。

今井:ADHD だって誰が診断したの?

相談者:2回目の入院をさせられて、あの、精神病ではなく ADHD でしたということで。

今井:それは、あの、入院先の病院からの診断?

相談者:そうです。でも、あの、「ADHD の扱いが分かんないから無理」って言われて、いま一人暮らししてて、家なしの女性と、ふた・・・同居・・・あの、居候させてるんですけど。
 
今井:お家も出ちゃってんの?

相談者:あ、そうなんです。

今井:ふーん、ふんふん。

相談者:あの、それで、あの二十歳になったら・・・

今井:うん。

相談者:その、金銭的援助を切るって言われてるんですけど、今は仕送りと、あとアルバイトで・・・

今井:うん、うん、うん。

相談者:暮らしてます。地元は田舎なんですけど・・・
 
今井:うん。

相談者:はい、都会に出てきてます。

今井:宿なしの女性を同居させてる?

相談者:あの、風俗で働いてたんですけど。

今井:うん。

相談者:ま、鬱になって辞めたんですけど。

今井:うん。

相談者:あの、そこで「家がないから助けて」っていう女性がいて、「じゃあ、来ていいよ」って言って・・・
 
今井:うん。

相談者:こっそり一緒に暮らしてます。

今井:その、さ、方とは、普通に喋れんの?

相談者:はい、その方以外、喋んないですね。

今井:風俗の、なんか、職場が同じだったわけ?

相談者:あ、そうです。今はちょっともう無理だなと思って、辞めました、私は。今は普通の品出しのアルバイトしてます。

今井:あの、ADHD ってどういう症状だか知ってる?

相談者:あ、私は多動とか・・・
 
今井:うん。

相談者:あと、注意散漫で・・・

今井:うん。

相談者:話が聞けなかったりとか。

今井:うん。注意散漫なことと・・・

相談者:はい。

今井:その多動は繋がっていて。

相談者:はあ。
 
今井:うん、要するに注意のしどころが分からないので・・・

相談者:ああ、ああ、ああ。

今井:相手から何かをされたとき、どういう意図なのかが分からないから・・・

相談者:うんうん。

今井:全部、攻撃されたと思って、ちょっと肩に手を置かれたりすると、攻撃されたと思って、手を払ってしまうみたいな、そういう多動を起こすわけよ。

相談者:ああああ、分かります、分かります。

今井:うん。だけど、ADHD の子は・・・

相談者:はい。
 
今井:すごく頭いいのよね。

相談者:はい。

今井:ちゃんとした環境にじっとしていて・・・

相談者:はい。

今井:勉強させたりすれば・・・

相談者:はい。

今井:すごい頭がいいので、あなたも成績は悪くなかったんじゃない?

相談者:それが、不登校で、独学で勉強してた時は良かったんですけど・・・

今井:うん。

相談者:学校行くとダメで、ちょっと勉強無理かなと思って・・・

今井:うん。

相談者:大学は行きたかったんですけど、勉強机に座ると思い出しちゃって、できなくなっちゃう。
 
今井:実際には、だから、通信教育かなんかで、自分の家の中だったら安心じゃない?

相談者:はい。
 
今井:なので、しっかり勉強すれば、できるはずなんだけど。

相談者:ああああ。
 
今井:親御さんからは、二十歳までは仕送りしますよ、だけどその先は自分で自活して行きなさいって言われてんの?

相談者:そうです。
 
今井:まず、経済的なことを言うと・・・

相談者:はい。
  
今井:親の仕送りと・・・

相談者:はい。

今井:そのアルバイトで、食べていけてるのね?

相談者:はい。
 
今井:何が八方塞がりなの?

相談者:私はずっとフリーターでいいかなと思ったんですけど・・・
 
今井:はい。

相談者:その大企業とかに勤めてる親とかは許せないみたいで・・・

今井:うん。

相談者:「ダメダメ」って言われてるうちに、なんか絶望しかなくて、自分がこの後どう行動したらいいのか分からなくて。中卒だし、あの、スキルも何もないし。
 
今井:うん。

相談者:私はどうしたらいいんでしょうか?
 
今井:っていう絶望?

相談者:はい。

今井:それでも、自分で自立して生きようとしてるんだよね?

相談者:はい。
 
今井:うん、分かりました。今日はですね・・・

相談者:はい。
 
今井:心についてのエッセイストとしてお馴染みのマドモアゼル愛先生がいらしてますので伺ってみようと思います。 


相談者:こんにちは。

マドモアゼル愛(以下「マド愛」):はい。あの、お話を聞いていてね・・・

相談者:はい。

マド愛:僕は全然なんか違和感ないし、話もすべて分かったし、あなたの考え方の・・・

相談者:はい。


マド愛:狭さ、間違いは、悪いけど気づいたのね。


相談者:う〜ん。


マド愛:人ってやっぱりいろんな個性があって・・・


相談者:はい。


マド愛:まあ、あの、精神的な性質とか病気まで含めてね・・・


相談者:はい。

マド愛:ま、僕なんか基本的に個性で捉えちゃった方がいいっていう風に、ま、考えるものなんですね。

相談者:はい。

マド愛:あなたの言ったこと、何も疑問点もないし。話もよく分かるし。

相談者:はい。

マド愛:ただ、僕は分かるけれども・・・

相談者:はい。

マド愛:あなたがこのまま社会に出て生きていくときに・・・

相談者:はい。

マド愛:実はやっぱりものすごいハンデを背負っていることも分かるわけ。

相談者:そうなんです。そうなんです。

マド愛:というのは・・・

相談者:はい。

マド愛:社会は・・・

相談者:はい。

マド愛:「普通の人」が好きなのよ。

相談者:はい。

マド愛:あの、普通に生きていれば、ほら、とりあえず生きていけるじゃない?

相談者:はい。

マド愛:「普通の人」は。

相談者:そうなんです。

マド愛:ね。

相談者:はい。

マド愛:でも、本当はそれは、普通でいないと生きていけないかもしれないという恐怖心が「普通の人」にあるのよ。なので・・・

相談者:そうなんですか?

マド愛:そうなんです。大企業でなくちゃイヤだとかダメだとか・・・

相談者:はい。

マド愛:そんなもんは恐怖心そのものじゃない?

相談者:ああああ。

マド愛:だから人の生き方が気になるんです、「普通の人」は。

相談者:はああ。

マド愛:そいで自分の不安を・・・

相談者:はい。

マド愛:隠すために・・・

相談者:うん。

マド愛:「普通でない人」を攻撃して安心しようとするんです。

相談者:ああああ。

マド愛:だから、個性があったり、変わり者とか、「普通でない人」を別に心理的抵抗なく受け入れられる人っていうのは・・・

相談者:はい。

マド愛:実は自信のある人なんです。

相談者:ああああ。

マド愛:うん。

相談者:あ、じゃあ、私すごい自信もって、アハハ・・・

マド愛:うん。

相談者:はい。

マド愛:ただ、よく分かっておかなくちゃいけないのは、社会はどうだってことをあなたはよく知っておかなくちゃいけないのよ。

相談者:ああ。

マド愛:いい?

相談者:はい。

マド愛:中卒である。

相談者:そうです。

マド愛:高校も出ていなくって、風俗なんかでも働いたり。しょうがないよね、生きていくために、あったりとか。

相談者:はい。

マド愛:そういうことが分かったら、あなたは「普通でない人」になるの。

相談者:はい。

マド愛:そいで周りはそうやって受け止めんのよ、あなたのことを。

相談者:あ、はい。

マド愛:ね?

相談者:はい。

マド愛:それはよく分かってた方がいい。だから変に意地張って「私は風俗で働いてた」・・・言わない方がいいのよ、そんなことは。

相談者:はい。

マド愛:それから、ADHD なんかも、喋んなくちゃいけないときには、喋らなくちゃいけないけれど・・・

相談者:はい。

マド愛:そんなもん、おくびにも出す必要ないのよ。

相談者:はああ。

マド愛:要するに、世の中は偏見だらけなんだから。

相談者:はああ。

マド愛:人間を見ようとしないんだもん。

相談者:うん。

マド愛:その人の背景とか、具体的にどこの大学であったとか、最終学歴がどうだとか、そういうことでしか判断しようとしない人が多いってことは知っといた方がいいのよ。

相談者:はい。

マド愛:でも、あなたも、そうしないと自分はダメだと思っちゃ、それは不要なのよ。

相談者:はあああ。

マド愛:あなた、そういう特別な個性もっちゃってるんだから、自分の人生なんか、私にしかできないように作っていくしかないじゃない、やっぱり? 弱い「普通の人」は味方にはなってくれないよ。

相談者:そうですよね。

マド愛:うん。変わり者の、人間的な優しい強い人を探しなよ。

相談者:そう、先生が欲しいんです。

マド愛:そういう先生っていうよりも、友達だよね。

相談者:友達?

マド愛:うん、友達でもいいし。本当に心を持っている、優しくて強い人・・・

相談者:はい。

マド愛:・・・を信用して、信頼して生きていきなよ。

相談者:はい。

マド愛:ね?

相談者:どこにいるんですか?

マド愛:あ、いるんですよ、そういう人って。変わり者がやっぱり。あなたを受け入れてくれる人と・・・

相談者:はい。

マド愛:受け入れてくれない人は、はっきり分かるから、これから。

相談者:はあああ。

マド愛:この「普通の社会」に受け入れられようと思ったら、僕は八方塞がりになると思う。

相談者:そうなんです。

マド愛:うん、でも、こういう自分でしか生きていけないってことを認めて「仕方ないよね、これでやるしかないんだから」と思ったら・・・

相談者:はい。

マド愛:前途洋々だと思う。

相談者:って何ですか?

マド愛:「前途洋々」って知らない?

相談者:知らない。(笑)

マド愛:要するに、目の前は洋々とした海原のように無制限に広いっていう意味よ。

相談者:はあああ。

マド愛:前途洋々っていうのはいい言葉なのよ。

相談者:ふんふん。

マド愛:うん。「僕の前に道はない、僕の後に道ができる」って言った人がいるのよ。高村光太郎かな? それどういう意味かって言うと、「僕の前に道はない」、でも僕がそん中から生きていって、後ろを見ると、自分が踏んできた道が見えんのよ。

相談者:ああああ。

マド愛:ね? あなたの生き方はそれでないとやっていけないと思う。評価してくれる人だって世の中にいるんだよ、本当に。

相談者:はあ。

マド愛:そこに最初は甘えてもいいかもしれないし・・・

相談者:はい。

マド愛:とにかく、人を見分けていきなよ、そうやって。

相談者:人と関わっていくことが大事なんですね?

マド愛:だって、人と関わらないと人生広がんないもん。

相談者:はい。

マド愛:あなた一人じゃ生きていけないもん、だって。二十歳までに、だから、いろんな人、どんどん怖がらずに人間関係広げていく。その中から何かが見つかっていくのよ。毛嫌いしないでいろいろな世界・・・今何が好きなの? 趣味とか、何か・・・

相談者:趣味、聞香(もんこう)です。

マド愛:うん?

相談者:お香を焚いて嗅ぐのが好きです。

マド愛:お香ね?

相談者:香木使ってます。

マド愛:あれえ、凄いねえ。だって高いでしょう、あんなの?

相談者:高い・・・ふふふ。

マド愛:ねえ。

相談者:はい。

マド愛:でも、香木一個であなたの ADHD は生きるねえ、そうしたら。そういう「変わった人」「特殊な人」しかさあ・・・

相談者:うん。

マド愛:香木の世界なんて入っていけないじゃない、やっぱり?

相談者:ああああ。

マド愛:文化人、趣味人、天才、そういう道しかないんだよ、もう。

相談者:あはははは。

マド愛:逆に言うと・・・(笑)

相談者:ははは。

マド愛:面白くてしょうがないじゃない、そうなってったら?

相談者:ああ。

マド愛:だから、そういう趣味の世界には、どんどん足を踏み入れて、そうした方が早く道は見つかりやすいよね?

相談者:なるほど。

マド愛:これから2年、その好きな道であがいてみれば・・・

相談者:う〜ん。

マド愛:何か生き方は、僕、見つかっていくと思うよ。

相談者:う〜ん。

マド愛:うん。


今井:何か見えてきましたか?

相談者:優しい心に触れて頑張ろうと思いました。


今井:とりあえず二十歳までの間に親の仕送りがなくても生きられるぐらいのアルバイト、きちっと探しといた方がいいと思う。で、それができたら、自分が頭がいいんだっていうことを、もう一回頭に入れて、知識に関する教育っていうのは、いろんなところにいろんなものが、まあ、あるわけで・・・


相談者: はい。

今井:知的な好奇心を膨らまして・・・

相談者:はい。

今井:もったいないからね、頭が。

相談者:(笑)

今井:うん、だから知識を身につける。

相談者:自分で小説書いたりもしてるんです。

今井:おお、すごいすごい!

相談者:はい。

今井:うん、じゃあ、そういうのはどんどん投稿した方がいいよ、どっかに。

相談者:はい。

今井:うん。どっかのなんかのきっかけで世の中で認められる。まあ、ベース、自分が食べて生きていければ、あとは落ち着いて好きなことできるじゃないですか?

相談者:はい。

今井:そっちを狙いましょうよ。

相談者:はい。とりあえず、この場に留まってるだけじゃなくて、行動して・・・あとは、まあ、少しずつ貯金をしながら、人に頼りながら検討していく。

今井:やってみる気になりました?

相談者:なりました。

今井:ああよかった。

相談者:ありがとうございます。

今井:は〜い、じゃあそういうことで。

相談者:はい。

今井:はい、失礼しま〜す。

相談者:失礼しま〜す。

☆   ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

 「普通」という型にハマらない人は、「普通」になろうとしている限り行き詰まります。

 多くの弱い人は「普通の人」として生きることで不安を避けていて、「普通でない人」を受け入れる度量がありません。本当の優しさや自信を持っていないのです。

 「普通でない人」がこの社会で生きていくには、自分を受け入れてくれる人を見分けて、その人たちとの付き合いを中心にしていく必要があります。

 「変わり者」で人間的に優しくて強い人、そういう人たちを信用し、信頼して生きていく。素晴らしいアドバイスだと思います。

 社会は偏見だらけの場所である。多くの人は人間を見ない。表面的なところで人を評価する。そういうものだと心得ていなくてはならない。そして「普通の社会」から受け入れられることを断念する。

 その反面、社会には「普通でない人」もたくさん生きている。人間を見てくれる人もいる。そういう人を見分けられるようにならねばならない。

 そして、自分にしか生きられない道を行くだけです。