心理カウンセリングには全く関係のないテーマですが、今日は私が考える英語習得法についてお話したいと思います。

 野球やテニスが上手になりたいと思ったら、体育の授業以外に練習するのが普通だと思います。英語も自分のことばにしたいなら、学校の授業以外に練習する必要があります。

1.とにかく音を真似る
 まず第1にCDでもラジオでもテレビでもいいのですが、英語を母語とする人の話す英語をよく聞いて、細かく発音を真似ることが大事です。英語は日本語とは違う音の体系があります。それぞれの母音や子音を自分なりに区別できるようになることや、英語の強弱アクセントやイントネーション(抑揚)をまずよく感じて、自分のものになるまで真似ることが大事です。できれば遊び心をもってエンジョイしながらできたらベストです。音で遊びながら親しむ感覚があると一番いいです。発音記号を全部理解できるようにしておくと、とても役立ちます。

2.音と意味を脳に同時体験させる
 第2のポイントは、英語の音を出しながら、意味を直接感じる練習をするということです。日本語に直して理解するところで合格とされる学校英語とは、ここで一線を画します。dog とか yes とか snow ぐらいでしたら、日本語に直さなくても、そのまま意味を感じられるのではないでしょうか。習得したいすべての単語に、意識的にこの状態を作っていきます。
 例えば、candidate (候補者)という単語を覚えたければ、まず正確に楽にすらっと発音できるまで音真似をします。次に、「候補者」という和訳の助けを最初は借りて、「候補者」という意味をイメージします。意味のイメージという言い方が分かり難ければ、自分が「候補者」という言葉を使う具体的状況を思い描いてみます。例えば自分が中学時代に学級委員に立候補して候補者となった時を思い描いてもよし、最近の選挙での候補者を思い描いてもいいでしょう。そして、頭に意味や状況が思い浮かんだ時点で、「候補者」という日本語の音や文字を横にどけて、意味を純粋に感じる状態で何度も何度も英語の単語を発音するのです。
 人間の意識は同時に体験したことを連想します。例えば、失恋した時に聞いた曲を聞くたびに、その時のことを思い出したりしませんか。失恋した時の感情とその曲が同時に体験されたので、しかも強い感情があればなおさらですが、2つの事柄が強く結び付いて記憶されているのです。言語を習得するというのは、音と意味の連想なのです。私たちは小さい頃、ごはんを食べさせてもらいながら、「おいしい」という音を聞いて何度も真似ているうちに、食べ物を口に入れて快感を感じることが「おいしい」という音で表されるのだということを学びます。具体的な状況から意味を感じ取りながら、音の体験が同時に起こっているからこそ、意識の中に深く記憶されます。英米人は英語の音と意味を同時体験することで、その2つの間に深い連想体験をもっていると言えます。ですから、外国語として英語を習得したい私たちは、その疑似体験をすればよいのです。そうすれば、英米人と同じ脳の使い方で、英語の音と意味を強く結びつけることが可能です。
 日本語の音や文字を介さずに、意味の感覚とでもいうものと英語の音を同時にからだで体験することを繰り返すことが大事だというポイントをここで繰り返しておきます。

3.文法を感覚化する
 単語レベルで音と意味を結び付けられたら、それを単語と単語の関係にも応用します。例えば on the table, in the park, under the seat のような「前置詞」の使い方を習得する時には、まずすらすら音を出せるようにしてから、意味を英語の語順で感じる練習をします。日本語では「テーブルの上」「公園の中」「座席の下」というように、「上」「中」「下」という言葉は名詞の後にきます。英語では語順が逆なので、この逆の順序でも日本語に直さなくても意味を感じられるところまで音と意味の合体を進めます。何かがテーブルの上にあるのをイメージして、on the table と何度も言えばよいのです。その時 on と言いながら、「上」という言葉でなく「上」という感覚を感じていることが大事です。
 このように、現在形の肯定・否定・疑問や、過去形、未来形、現在完了、and, but,
because などの接続詞などの文法項目1つ1つについて、英米人と同じ脳の使い方になるまで、音と意味の結合を練習していきます。

4.英語独特の概念に慣れる
 日本語にはない形態として、簡単なところでは「単数・複数の差」「定冠詞・不定冠詞(the と a(n))」などがあります。「英米人はこれらの意味をどのようにして感じているんだろうか?」と問うて、その感覚を身につけることが大事です。最初から100%分からなくてもいいから、英米人の発音と伝えようとしている意味に注意を向け続けていると、だんだん「こういう感じかな?」というのが掴めてきます。それには、とにかく英米人のコミュニケーションに多く触れて、体験していくことです。実際に英米人と会う機会が多くなくても、CDやDVD、ラジオ、テレビなどで疑似体験として触れることは大いに役立ちます。
 日本語で「犬」という時、英語では a dog, dogs, the dog, the dogs という4種類の意味に分かれ、それぞれ異なる状況で使われます。単数・複数の差に定・不定の差が掛け合わされ4つということです。誰でも単数は1つ、複数は2つ以上と「頭では分かっている」と思いますが、聞いた時に単数・複数の差が即座に感じられ、また自分が話す時には単数・複数を感じながら発話できる感覚を養っていくためには、まず1匹の犬を思い描いて a dog と言ってみる。そして複数の犬を思い描いて、dogs と言ってみるということを無意識にできるまで繰り返すことが大事です。a dog と the dog の差も同じです。

5.ユーザーの意識を常にもつ
 従来の日本の英語教育は、外国から文化を取り入れる受け手としての教育だったため、翻訳中心でした。自分の言葉として英語を習得したいならば、単語であれ文法項目であれ、最初からそれを自分の思考と感情と結びつけて、自分を表現し、相手の表現を理解するという生きたコミュニケーションの道具として練習することが大事です。

6.どのレベルにおいても音読を続ける
 今勉強しているレベルの文章を、声を出して読む。何度も読む。すらすらと英語らしい発音で読めているかチェックする。次に、どのぐらい読みながらにして意味を感じているか、訳さなくても英語の音から直接意味を感じているかをチェックします。私の生徒には「今読んだ文章の何%意味を感じていましたか?」と聞きます。そう聞かれた人は、これまで全員答えられました。自分でどれだけ棒読みしていて、どれだけ意味を感じているか、分かるものです。同じ文章を何度も音読し、読みながら100%意味を感じられるまで続けます。これはとても優れた練習法です。このようにして読めるようになった文章は、自分が話したり書く時に使えるだけでなく、相手から話されたら分かるようになっていきます。音読は話す・聞くの訓練にもなっている、多目的な練習として非常に価値の高いものです。