2012年05月15日

タランドゥスとレギウスについて。

少しそんな話をしたので記事にしてみます。
ええい、D.hopeiはまだか!という声が聞こえてきそうですがネタがないんだってば!!
書いてほしけりゃネタをくれ!

でも今回は黒虫なので許してください。
え?タランドゥスも黒いでしょ?(笑)
どうでもいいですが、一般に黒虫って言うとDorcusを指し、色虫はLamprimaやCyclommatusあたりを指す感じがしますね。

さてさて今日の話題はタランドゥスとレギウスについてです。
文字だけではなく多少画像も交えてみていきます。

私はMesotopus regiusという表記は間違いではないかと考えてます。
レギウス型は、Mesotopus tarandus f.regiusとするべきだと思います。
その根拠についてむいみなこさんに質問を受けましたので、こちらに書かせて頂きます。
先に書いておくと、私個人はタランドゥスとレギウスが同一だとは思ってません。
長くなりそうなので続きにさせて頂きますね。




私が根拠としているのはBE-KUWA14号 タランドゥスとオウゴンオニ大特集!!にある馬場氏が書かれた
「オオツヤクワガタ属(Mesotopus)について」(p.8) という記述の中の「オオツヤクワガタ属に属するクワガタムシと地位の変遷」という場所です。
紹介しますと

・オオツヤクワガタ属が出来る前はLucanus tarandus Swederus,1787としてアフリカ西部のSiera Leoneで得られた♂に基づき新種記載され、その後HopeとWestwoodによって1845年、オオツヤクワガタ属(Mesotopus)が新設され、そちらに移された。
・その後Moellenkampによって、アフリカ西部のGuineaから得られた♂に基づきMesotopus regius Moellenkamp,1896が記載された。
・その後の研究により、Mesotopus regiusはMesotopus tarandusと同一個体群の♂の大型個体であることが判明した。
・理由は
1.アフリカ西部のMesotopus tarandusは♂の大型個体になるとMesotopus regiusの特徴を示す。
2.M. tarandusとM. regiusの基準産地(Type locality)は極めて接近しており、これら両者が記載された地域で得られる♂の小型個体や♀に大きな変異はなく、同一の個体群とみなされることによる。
・よって、現在ではM.regiusはM.taradusのシノニム、また大型個体に発現する大あごの湾曲が弱くなる型(form)の名称と位置付けられている。

と書いてあります。
これで100%納得することはできませんが、命名規約によってシノニムと位置づけられてる以上、Mesotopus regiusと呼称することはできません。

亜種、あるいは別種として分けられない理由の大きな1つとして分布境界がはっきりしない点があるようです。
この雑誌でも、タランドゥスオオツヤクワガタの紹介の中にそのような記述があります。
全部を書くのは大変なので読みたければ探して買ってください。
以下引用
中部の大あごが強く曲がるタイプのものは、もしその特徴が安定している場合は、別の個体群を形成している可能性もある。しかし、大あごの湾曲の強い個体群と弱い個体群の分布境界については、アフリカ中部のデータが付されている標本にレギウス型が見られる例も稀にあり(例えば「世界のクワガタムシ大図鑑」(1994)、両個体群の分布境界は今一つ定かではない。
引用終わり
 
この本が書かれたのは2005年でして、「よくわからないけどはっきりしないから種分けはできない」という立場のまま放置されている(あるいは、放置するしかない)問題のようです。
Mesotopus regiusとして記載された時期から考えると、100年以上経ってる話です。
現地の治安が悪いことや、採集等には特別な許可が必要なこと(同誌p.18)があり進まないのかもしれませんね。

決まりでは、今のところタランドゥスとレギウスは同一とみなされ、レギウス型はフォームにすぎません。
よって、学名を記載するのであれば、Mesotopus tarandus f.regiusと書くべきです。
Mesotopus tarandus regiusと、レギウスを亜種かのように書いてる方も見かけますが、このように記載された事実は一切ありませんので、これは間違いです。

以上が学術的なタランドゥスとレギウスの立場です。
では飼育者の立場からはどうでしょうか。
現実問題、飼育者から見れば(ある程度以上のサイズの♂を比べれば)明らかにタランドゥスとレギウスは違うものですし、累代飼育個体の形質は安定して発現します。
顎の湾曲の強い弱いは言うまでもなく、さらに頭楯の形状にも差異が出ます。
比較してみましょう。
対象となっていただくのは我が家にいる2個体で、両方共飼育品です。
野外品を持ってないので飼育品での検証となるのは申し訳ないですが、飼育者としての比較ですのでお許しを。

1.Mesotopus tarandus
tarandus

このように、頭楯は大きく飛び出した後2つに分かれています。
顎も強く湾曲しています。

2.Mesotopus tarandus f.regius
regius

こちらの頭楯は大きく飛び出さず2つに分かれています。
顎も直線的です。

私のところでのたった2個体の比較ですが、これらは個体変異の範疇というわけではなく多くの飼育者のところで確認されているようです。
検索してみていくらか個体を見比べましたが、明らかにこの差は確認できました。
また、同じくBE-KUWA14号にあるレギウス型の標本とタランドゥスの標本を比べても、この差異は確認できますので飼育品特有ということもないようです。
また、飼育者のブログ等を読んでると、レギウス型の♀のほうがタランドゥス型の♀より大型になりにくいと感じている方もいるようです。
交雑種がどのような形状を示すのか、直接交雑種を見たことがないため分かりません。
現状の扱いは地域変異程度ですが、今後の研究次第ではレギウスが復活する可能性もあります。

私の結論としましては、学術的にはタランドゥスとレギウスは同種で、フォーム扱いですのでMesotopus tarandus f.regiusと表記するべきだが、f.regiusは顎以外の形状にも差異が認められるため、全く同一種といえるかは疑問である。
となります。
ちょっと曖昧な結論ですが、レギウス型がシノニム扱いとなってるのは事実ですので、表記はこちらを採用したほうが良いかと思います。 

以上、こんな感じでいかがでしょうか?
私自身学者ではありませんので、ご意見や間違い等がありましたら指摘お願いします。

rui_kuma at 22:51コメント(10)トラックバック(0) 

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コメント一覧

1. Posted by KSL-Live!   2012年05月15日 23:33
今晩は。
学名に関しては総てを把握するのは困難ですね。
大事なことは論拠を示して指摘された場合に、好意的に受け止める心構えだと思います。
学術的な実証よりも、商業的な縄張り争いで日本独自の分布・亜種分けをする風潮が問題を深刻化させていますね。
2. Posted by むいみなこ   2012年05月15日 23:46
大変参考になりました。長文感謝です〜

自分でも文献を当たって確認してみたいと思います。
3. Posted by RUI   2012年05月16日 00:00
>KSL-Live!さん
こんばんは。
全部を、その歴史から理解するのは到底不可能です。
私はせめて自分が飼育する種、興味ある種に関してはなるべく知識を持っておきたいと考えてるので調べてみたりしてます。
一人で全部知るのは不可能ですが、こうして得た知識によって正しいことを広められたら良いと思います。

商業的理由による亜種分け(いくつかのショップに見られる新産地にssp.などをつける行為)は好ましくないですね。
以前、とあるショップになぜ亜種扱いしてるのか、この亜種との違いはどういった違いを根拠にしたのか?などと質問したことがありますが無視されました。
非常に残念なことです。

>むいみなこさん
気合入れて書いてみました。
後から見るとびっくりするぐらい長いですので読むのが大変だったかと思います。
飼育者に細かい理解は必要ないと思いますが、M.regiusの表記が現状では間違い、ということだけでも読んだ人に伝わればいいな。
4. Posted by にゃ号   2012年05月16日 16:57
メソトプス・レギウスと呼ばれているのを
初めて知りました。(;´∀`)
興味がなかったのでご勘弁。m(__)m

しかし、仰る通り、これはおかしい。
確か、レギウスが出はじめの頃、僕が読んだのは
レギウス型とかタランドゥス亜種みたいな書き方だった
と思いますが。

ですから、Mesotopus tarandus f.regiusが正しい
学名だとずっと思っておりました。(;´∀`)

なるほどなるほど。
5. Posted by RUI   2012年05月16日 19:05
>にゃ号さん
今ビッダーズでレギウスを検索してみてください。
全てMesotopus regiusと書いてあります。
Mesotopus Regiusって書いてあるのもあります(笑)
当然全て間違いで、現状では全てMesotopus tarandusです。
レギウス型であることを強調したければMesotopus tarandus f.regiusです。

レギが出まわりはじめたころはやたらとレギのほうが希少で高いという感じだったのを覚えています。
今では値段に大差はないですし、飼育者の人気ならタランドゥスのほうが人気あるかもしれませんね。

正しく認識していたのならば何も問題はありません!
にゃ号さんが書く機会があるかわかりませんがそれを使い続けてください(笑)
6. Posted by にゃ号   2012年05月16日 20:19
そうでしたかあ。

レギウスは赤レギとか言って、体に赤みのあるのが
高値で取引されたりもしましたね。
でも、タランドゥス種自体興味が無いので買ったこと
すらありませんです。(;´∀`)

まあ、何度言ってもクルビデンス・ホペイとか
クルビデンス・ビノデュロスとか書く連中が
結構いますし、この業界全体としてはあまり
知能が高いわけではありませんので、仕方ない
かもしれませんね。(;´∀`) こうやって、馬鹿が
多いとはっきり書くと昔はかなり批判されましたけれども。 でもおかしいことはおかしいって書くことは
別に変わってることでもなんでもなくて至極当然のことだと思うんですがね。
7. Posted by RUI   2012年05月16日 20:52
>にゃ号さん
赤レギはいまでもオクでたまに見かけますね。
面白いものだとは思いますが、タラレギに求めてるのはあの黒いてかてかなので私自身はあまり興味がありません。
白目も同様です。
飼育も簡単ですのでなかなか面白い種ですよ。

はっきり申し上げれば、この業界は頭が良くないというか稚拙です。
言いたいことはたくさんあります。
記事ネタが無い時にちょこちょこ書いて行こうとは思ってます。
このブログに書いたところで大して何も起きはしませんが、私の好きなことを書く場所ですので思ったことを書いていきます。
8. Posted by トモ   2012年05月16日 21:56
学名しかり、分類しかり、クワガタ飼育者のレベルの話題は度々出てきますね。
私も偉そうなことを言えた口ではありませんが、こういったことは業者・ショップが率先して正しい情報を広める努力をしてほしいと感じます。
現実は・・・残念な感じですね。

それにしてもいつまでクルビデンスssp.が使われるんでしょうね(;^ω^)
9. Posted by KSL-Live!   2012年05月16日 23:24
植物防疫所データベースがレギウスをタランドス亜種としてるのは、輸入ルートと縄張りの影響でしょうね。
俺様が入れたのが本物「レギ」だぜ!ってな申請をする人がいるからおかしな事になる。
属小名をregiusとしながらタランドス亜種という余計な注意書きとかは学術無視の商業的な都合でしょう。

>にゃ号さん
数年前なら匿名の圧力電話とかよくかかってきてました。
人ずてに遠回しに「ヤクザが云々」とかは日常茶飯事。
しかし、掲示板ではなく「記事」として書くようになってからはパタリと止まりました。
理論には滅法弱いことを露呈してますね。

>トモさん
私は有識者って訳じゃないけど、根拠と解釈の問題は拘ってます。
ショップに期待しても難しいでしょう。
根本的に標本屋と生き虫屋は価値観が違いすぎますからね。
野外品については通関書類と同じ内容で流通するのは守って欲しいですね。
10. Posted by RUI   2012年05月17日 19:33
>トモさん
学名や分類のみならず、様々なオカルトが平然とまかり通ってる現在ですからねえ・・・。
少しずつでも飼育者側から改善されるように努力して行くしかないかもしれません。

>KSL-Live!さん
商業的都合で学術的根拠を無視するのは本当にやめていただきたいことです。
自ら採ってきて輸入して、なんてことが非常に難しい以上業者を信頼するしかありません。
ゆえに、業者はもっと信頼出来る存在になっていただかねば・・・。

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