こんにちは。
RUNARTの田中です。

怪我をしたら、アイシング。
常識ですよね。
aishingu

ひと昔前の。

そう、今回は、アイシングについての海外の最新の見解をご紹介しましょう。

勉強家のあなたは、ついつい、反論したくなることでしょう……
でもそれは、あなたが知らず知らずのうちに、

誰かが作った常識にとらわれている
という証拠にもなり得ます。

だって、僕らはアイシングについての研究なんてしてないのに、
「アイシングはしたほうがいい」と信じているわけですからね。

理由はだいたい、、、他のいろんなひとも言ってるしやってるし。
とかそんなんです。
まったくの思考停止野郎なわけですよ。

20年前は……ストレッチ?なにそれ?時間のムダやな!
10年前は……ストレッチちゃんとしたか?しろっていうたやろ!
今は……ストレッチ、運動前にはやめたほうがいいらしい、やめとけ!

ですね。(解説は割愛……笑)

常識は時代とともに常に変わります。


それでは、いってみましょう。


アイシングをすると、以下の障害の回復を妨げるリスクがあります。


・腸脛靭帯炎(ランナー膝、ランナーズニー)

・アキレス腱炎

・過労性骨膜炎(シンスプリント)

・足底筋膜炎(足底腱膜炎)


これらの漢字の最後を見てください。

「炎」

と書いてあるのが確認できると思います。


その通りです。

つまり「炎症」のことです。


海外ではこの炎症を巡って

激しい論争がなされています。

炎症を抑える方法としては、アイシングが一般的だと思います。

アイシングと一口にいっても、

アイスバス・アイスパック・アイスマッサージ・コールドパックなど

様々な方法があります。


また、海外ではNSAIDと呼ばれる

抗炎症剤をよく使用するようです。
NSAIDs-150w

日本では、ロキソニンやボルタレンが定番です。

000023374
100kmマラソンなどのウルトラマラソンにはもはや必需品ともなっているロキソニンですが、
その重要な副作用についてはほとんど語られていませんので、今度ご紹介します 。
(レース中、安易にロキソニンを使用しているあなた、危険です)
 

 

近年では、炎症を抑える理由として、

「筋肉痛や筋疲労の回復を促進する」など、

怪我以外にも些細なレベルの炎症までケアする動きがあります。


「果たしてこれらは本当に正しいんでしょうか?」


この炎症を抑えるということに関して、

ここ数年で数多くの反対論者が現れました。


彼らが懸念しているのはこういうことです。


従来の考え方は、炎症は回復を阻害するというものです。

そして、筋肉、腱やどんな些細なレベルの炎症であっても避けるべきものだと考えられてきました。
しかし、近年、その考え方は見直されつつあります。
損傷から生じる炎症は、ハードトレーニングの結果生じるだけのものではなく、それに対応するためのカラダ作りに必要なのではないかと考えられるようになりました。

(The Science Of Running - Inflammation- To stop or not to stop? What the current research says.)



【反対論者の意見】

・炎症は、怪我に対する抵抗力をつけるために必要な過程なんじゃないだろうか

・炎症を経るからこそ筋肉、腱や骨を強化する身体的な成長が見込めるんじゃなかろうか



それではなぜ炎症を抑える必要があるのか? 以前からある賛成論者の意見を復習しましょう。

スポーツの現場ではアイシングがさまざまな場面で用いられている。

その主となる用途は急性外傷への応急処置であるが、近年では運動中の筋温の調節や運動後の疲労の除去、筋へのダメージへの緩和などの用途でアイシングが行われている。
また、現在ではトップアスリートから学校での部活動のレベルまで、幅広い層で用いられている。

(トレーニング後のアイシングが筋肥大に及ぼす影響より)


【賛成論者の意見】

・炎症を抑えることで、筋肉のダメージを緩和し、回復を促進する(筋肉痛、筋疲労など)

・また、急性外傷(怪我)の応急処置になる(捻挫、骨折、脱臼)


どのように炎症を抑えるかと言うと、


・血管が収縮する

・腫れを抑える

・代謝を下げる


これらの3つの働きは、腫れによって損傷を受けた組織周辺の毛細血管が圧迫を抑え、

二次酸欠状態と呼ばれる組織の酸素欠乏状態を防ぎます。

※二次酸欠状態が起こると細胞の壊死を誘発し、
その壊死細胞から出る酵素がさらに細胞の壊死を招くという悪循環が生じます。


構図としては、


【賛成論者】          

二次酸欠状態を防いで回復促進  

VS  

【反対論者】

適応力をつける(腱・靭帯・筋肉を強くする)+回復促進


どちらの意見も理にかなっています。
表面だけを見ていてもどちらが正しいのかわかりません。 



それでは炎症のメカニズムを見てみましょう。
ここからは謎のカタカナが多数出現します。
なんとなくの感じで読み飛ばしてもらって大丈夫です笑

pain_06
 

重要なのはこのプロスタグランジンという炎症を起こすホルモン

そして、プロスタグランジンの働きを促進するCOXです。


炎症を抑える目的は、

プロスタグランジンとCOXの増加を抑えることなのです。

これが血流を増加させ、負傷箇所周辺の毛細血管を圧迫し、

二次酸欠状態を引き起こすからです


しかし、ここで問題が発生します。


このプロスタグランジンが信号を発生させることによって、

血流を促進し細胞の修復・成長材料を負傷箇所に集めると言われているからです。



アイシング反対論者の意見としては、


「コレ抑えたら逆に修復遅れるっぽくない?

 コレ抑えたら逆に筋力・腱・靭帯が成長しないんじゃね?」


ということです。


この論争は非常に複雑でめっちゃくちゃ説明しにくいんですが、


二次酸素不足(二次災害を防ぐ)ことで回復を促進する

修復・成長物質の放出を抑えないことで回復を促進する

(厳密には放ったらかしているだけ)


単純に言うとこういうことです。


それぞれの主張にうなずける理由があり、


「結局どっちのがええねん!!!???」


っていうのが論争の内容です。


それでは炎症を抑えると、

細胞にどのような変化が起こるのかを見ていきましょう。


「筋肉、腱、靭帯」

の回復という観点から見ていきましょう。


筋肉が回復すると、

「パフォーマンスの向上とランニング障害の予防」

が見込めますよね。


そして腱、靭帯については、

主なランニング障害をもう一度見てみましょう。


・腸脛靭帯炎(ランナー膝)

・アキレス腱炎

・過労性骨膜炎(シンスプリント)

・足底筋膜炎


これらは、

「靭帯、腱、骨膜、筋膜」

の怪我です。


そしてこれらを構成する主な成分とは

「コラーゲン」です。


それではまず筋肉から見ていきましょう。

Urso(2013)による実験
・タンパク質合成が減少→回復と修復が遅くなる

・筋衛生細胞の減少→筋繊維の再生が遅くなる

・ミトコンドリアの減少

(The Science Of Running - Inflammation nation- Is inflammation good or bad?)

・NSAIDを使用すると、運動によって起こる筋衛生細胞(筋繊維を再生させる細胞)の反応を阻害した。

・常用することで筋衛生細胞の反応を減少させた。

・成長因子であるIGF-1やVEGF、bFGFを減少させる可能性がある。

・動物実験ではCOX(炎症を促進させる酵素)阻害剤が筋肥大に悪影響を及ぼした。

(Inflammation- To stop or not to stop? What the current research says.

Does an NSAID a day keep satellite cells at bay? ) 


炎症を抑えることは、

明らかに筋肉の成長を阻害する働きがあるようです。

再生をつかさどる細胞や成長因子を減少させています。

つまり、筋肥大と回復に悪影響が出る可能性があるということです。


 それでは腱と靭帯、

そしてそれらを構成するコラーゲンについてはどうでしょう。


・周辺細胞に対する腱の付着を阻害しうる

・NSAIDは腱の血流を最大30%減少させた

(Inflammation- To stop or not to stop? What the current research saysより)
 

・NSAIDは靭帯の回復を遅らせることが証明された。

(NSAIDs | Why we don’t recommend chronic pain medicationsより)


・運動前にNSAIDを使用すると腱におけるコラーゲン合成を減少させた

(The effects of common anti-inflammatory drugs on the healing rat patellar tendonより)


・ NSAIDは過使用が原因の怪我の回復過程でのコラーゲン合成の量を減少させた

(An in vitro investigation into the effects of repetitive motion and nonsteroidal antiinflammatory medication on human tendon fibroblastsより)



炎症を抑えることでコラーゲンの形成が阻害されています。

そして、それは腱と靭帯の回復を遅らせていることからも明らかです。


これらの流れをまとめると


炎症を抑えると、


・筋肉の回復を阻害する→パフォーマンスの低下とランニング障害の予防

・腱、靭帯の回復を遅らせ、コラーゲンの形成を阻害する→腸脛靭帯炎(ランナー膝)、アキレス腱炎、過労性骨膜炎(シンスプリント)、足底筋膜炎の回復を遅らせる


となりますね。
 
 

しかし、事件が起こりました。



なんとこれらは人には当てはまらなかったのです。

 ・大人(50歳以上)にNSAIDsを常用させたところ、筋力と筋量の増加が見られた

(Effects of prostaglandins and COX-inhibiting drugs on skeletal muscle adaptations to exercise)
 

・高年者にNSAIDsを使用させたところ、腱の成長を阻害しなかった

(What is the impact of inflammation on the critical interplay between mechanical signaling and biochemical changes in tendon matrix?)


しかし、この実験について、以下のようなことが考えられます。


・対象が50歳以上であったため、そもそも炎症のレベルが高かった

・NSAIDsの常用によって抗炎症効果の効き目が低下していたのではないか


そして筋肥大については日本で行われた研究でも、

筋肥大を目的としたトレーニング後に、疲労の軽減や除去などのアフターケア、クーリングダウンを目的としたアイシングを行うことは、筋肥大の効果に対してマイナスの効果を及ぼすことがわかった。

(トレーニング後のアイシングが筋肥大に及ぼす影響より )

と結論づけています。



だけども、以下のような研究もされています。
(さーあ、今回は研究事例のオンパレードっすよー!!) 


whose results have just been published inMedicine & Science in Sports & Exercise

対象:代表クラスのサイクリスト 21名

期間:39日間(7日間 :ベース練習、21日間:ハード練習、11日間 :テーパー練習)

方法:アイスバス(氷を入れた水風呂)に入るグループと入らないグループにわける。

アイスバスに入るグループは週4回、水温15度で15分間首まで浸かることが条件。

アイスバス直後に温水を浴びることは禁止。


トレーニングはほぼ野外で行い、

1週間経過するごとにテストを行った。(計5回)

4分のタイムトライアルを2回行い。その間に42分間の休憩を入れた。 

アイスバス
アイスバスに入ったグループは1週目のテストで高いパフォーマンスを見せた。

2、3、4週目で、アイスバスに入ったグループと入らなかったグループに1週目以上の幅は見られないが、
全てのテストにおいてアイスバスに入ったグループが高いパフォーマンスをマークしている。

5週目のテストでは、アイスバスに入ったグループが入らなかったグループを再び引き離す結果となった。



しかーし、
Sweat Scienceの著者であるAlex Hutchinson氏は、

この研究に対して以下のような疑問を投げかけています。


・プラシーボ効果について考察したのか。

・追跡期間が短すぎるんじゃないか。

(炎症による筋成長等の効果は5週間以降に発揮されるんじゃないのか)



そう、研究にも、質があるわけです。
エビデンス(科学的根拠)となり得ない質の研究だってあるわけです。
 
ですが、上記の疑問点は残るものの、 

すべてのテストにおいて炎症(筋疲労)を抑えたグループがパフォーマンスの向上を見せたことは確かです。


短期的には、やはりアイシング(or炎症を抑える)をした方が筋肉のダメージを緩和し、回復を早める可能性は高いようです。
 

しかし、先程の考察のとおり、筋成長や免疫などの観点から、
長期的には、
炎症を抑えることがデメリットに働く可能性が多いにあります



かなり話が二転三転していますね笑



結論


・怪我をしたらアイシング(炎症を抑える)

・疲労回復にアイシング(炎症を抑える)


という考えは、すでに時代遅れになりつつある。



そして、

「アイシングを何分してください」

「怪我をした場合のアイシングはこうです」

「筋疲労の回復の場合のアイシングはこれです」

みたいなことをよく聞きますが、


「なんでアイシングが良いっていう前提になってんねん」


とツッコミを入れましょうということです。 


なぜなら、

長期的な回復と身体の成長という観点から、

アイシング(炎症を抑えること)が、本当に効果的かどうかの結論は出ていないからです。


そして、細胞単位で炎症を抑えることを考えた場合、

怪我の回復や筋、腱、靭帯の成長を阻害する可能性が十分にありえるからです。



そして、あなたに最後にお伝えしたいことが。

実は、ぜったいにアイシングをしてはいけないタイミングというものがあります。
 

それは、運動前と運動中です。


アイシング直後の強度(回転力と力強さ)について25個の研究のうちおよそ75%が減少したと報告しています。6個の研究が、スピードとパワーやランニングにおける俊敏性に逆効果であったと報告しています。上肢(太もも)の機敏性と正確性を妨げるという研究も少数有り、アイシング後(アイシングをしてから20分間)はパフォーマンスと下げるということを示唆しています。

(Should athletes return to sport after applying ice? A systematic review of the effect of local cooling on functional performance. - Abstractより)

 

アイシング直後の運動は、感覚を麻痺させるため、怪我のリスクを増加させる可能性があることを懸念する研究もあります。

(Why Ice May Be Bad for Sore Muscles - New York Times)


少し温度を下げる(さっと水を被る)程度であれば

熱調整の意味合いでパフォーマンスを上げるという記事もありました。


やはり、時と場合によって違うので、適切な判断が必要なようです。

ただ闇雲に信じていては、よかれと思ったことが逆効果になることがあります。 




最後の最後、The Running of ScienceのMagness氏によるこの論争についての見解を引用します。

(炎症を抑えるべきか、抑えないべきかに関して)

「コレがベストだ」と言い切るには証拠不足もはなはだしい状況である。


しかし、現段階で、研究によってどういう主張がなされているかを知ることは非常に重要であり、私たちの考察力を高める良い刺激になるだろう。

炎症について悪いという一方的な考えはやめた方が良い。

やみくもに極端な見解を支持するのではなく、バランスよく物事の本質を見極めることが重要である。




結論でてねー!笑


それじゃ困ると思うので、
この海外における最新の動向を踏まえての
RUNART代表であるトレーナー木村誠のオススメとしては……

・急性外傷(捻挫や打撲、脱臼など、腫れがヒドい場合)には、アイシング(R,I,C,E処置)をするべき

 an Injury - YouTube

であると明言したいと思います。

ここは、従来と変わらずです。今のところ。
ご参考までに。 


ランニング障害の本当の原因について、
詳しく解説しているRUNART公式ホームページはこちら

http://runart.jp