雪燐置き場(R系)

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誘惑5

  • April 14, 2012
雪男は燐を見つめ穏やかな表情をしていた。
「ごめん。上手くいくよう考えるって言っておいて、何も力になろうとしなかった。本当はその人の事はこのまま諦めてくれれば良いと思ってたんだ。」
「あ・・・好きな奴はもういいって言っただろう?」
燐の顔中が強張る。急な話に頭がついて行かない。
「その、愛が欲しいんだろう?」
「!そんなのどうでもいいだろ!」
「良くないよ。僕とその人で交代する事にしよう。兄さんが頼みづらいならフェレス卿に頼んで任務にしてしまえばいい。」
「雪男、これ辞めるのかっ!?」
「大丈夫だ。一度身体を繋いでしまえばどんな男だって兄さんの虜になるよ。僕が保障する!」
雪男は燐の両肩を掴むと顔を正面から合わせて言った。笑顔で強く宣言する雪男の姿に燐の心は恐怖を感じて騒ぎたった。
「・・・嫌だぁ!もういいって、もういいって言っただろうっ?!」
燐は首を大きく振って言い張った。バランスを崩す身体を雪男がそれとなく支える。
掴まれた両肩が熱い。心臓が大きく動いている。胸が痛い。
「駄目だ!ちゃんと好きになった人に抱かれて来い!僕なんかに抱かれてちゃ兄さんの為にならない。」
「おっ・・・俺は!」
「俺はもう好きな奴なんていらない!ゆっ雪男がいれば良いんだっ!!」
「・・・じゃあなんでそんな悲しそうな顔をする?」
「あ?」
雪男は燐の顔を確認するように見直すとゆっくりと口を開いた。
「兄さんは悪魔に覚醒した時も、僕の心配なんか余所にいつもと変わらず笑ってた。僕にはそれが考えられなかったけど。安心して接すれたよ。」
「・・・・」
「この仕事を始めてからは兄さんはずっと悲しそうな顔をしてる・・・僕が悪かったんだ。大切な事だったのに考えが浅かった。ごめん・・・」
燐の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。次々と。
「今更遅いけど。」
雪男はその涙を親指で拭うが、溢れる涙は雪男の指も濡らしていった。
「・・・・」
「ちゃんと好きな人と出来るように。兄さんには幸せになって貰いたいんだ。」

「しっ幸せなんかいい!俺は一生不幸でいい!雪男でいいんだっ!!」
「バカっ!?なんでそんな事言うんだっ!」
「っう・・・!うぇ、うわああぁぁ!ああっ!」
止まらない涙が更に溢れた。まるで子供の様に顔をつぐんで大きく泣いた。
自分がどんな姿でいるかなどの羞恥心は燐の中から飛んでいた。
ただ、泣くしか出来なかった。



終わりだ・・・
もう終わりなんだ。
昨日はあんなに楽しかったのに何でこんな!

雪男が・・・
雪男が・・・

雪男がぁ・・・


「兄さん!」
雪男は燐を抱き締めた。強く。
「うぇぇっ!・・うう、うあっ!」
されるがままに燐は雪男の胸で涙を流した。
「どうしたらいい?僕は兄さんを泣かせてばかりいる。ずっと笑ってて欲しいのに・・・」
「ゆ・・雪男ぉ・・・俺を捨てるのか・・」
「!捨てるんじゃないよ。幸せになれって言ってるんだ。僕は・・・」
「うあっ!ああっ、っ!」
「僕は子供の頃から兄さんの幸せをずっと考えてた。神父さんにだって負けないくらいだ。」
雪男の両目から涙が湧き上がる。腕の力が強まる。
「っ!・・・あ・・・ゆきお!」
その涙を燐の泣いた両目が驚いた。
「大好きだよ兄さん。一番大事だ。だから、兄さんに泣かれたら、堪らなくつらい・・・いられない。ごめん。ごめん・・・本当にごめん、ごめんね・・・」
「っあ・・・は・・・」
燐は雪男の目尻に溜まる涙を見つめた。
決して流しはしない涙だった。
男の涙だ。無意識の心が表現の無い感情を燐にいだかせた。
そして、思うままに泣いて喚いた自分がとても情けなくなった。

「・・・・」
「兄さん・・・」
言葉を失った燐を雪男も無言で腕の力を緩めた。
「わっ、わかった・・・」
燐は両手で雪男の胸板を押し、そっと互いの身体に空間を入れた。顔は下を向いたままで上げはしない。
「え?」
「雪男の言ってる事は分かったよ。っと・・あり・・がと・・」
「・・・・」
「でも、今すぐなんて教えられねぇ。」
「あ・・・そうだね。大事なことだし。」
「ちょっと一人で考えてみる。お前、先帰っててくれ。」
「えっ?でも・・・兄さん一人で帰れないだろう?」
「いいからっ!」
強い発言に気圧された雪男は思わず腕を放して燐から離れる。
「・・・分かったよ。もし迷ったら直ぐ電話してくれ。」
「ああ・・・」
雪男は躊躇いながらも上着を掴むと部屋を出て行った。
セキュリティの強いドアは厚く、閉まる音がやたらと部屋に響いた。
一人きりになった部屋は音もなく、圧迫感と、寂しさだけが燐を突き刺した。

「っう・・・・!」
燐の両頬を新しい涙が伝う。
納得出来たとしても、悲しい気持ちが消える訳でもない。
燐は立っていられずその場に崩れ落ち手を着いた。


好きな人は雪男だ。
最初から・・・
俺は最初から好きな人としかやってない!

雪男が好きだ。
凄く・・・

嫌だけど、今言われた事でもっと好きになった。
なんでもっと早く言ってくれなかったんだろう。
もっと早く言ってくれたら、俺、もっと雪男を好きでいられたのに。

もっと・・・
好きな気持ちで抱いてもらえたのに・・・
せめて、昨日!



「うぁ・・・あ、あああ・・・」
その時、燐の頭上で空間が歪んだ。

「ええ、大丈夫です。奥村君は私が責任をもってお送り致します。そう心配なさらず。・・・・ええ、分かりました。ではお気よつけて。」
メフィストが燐の真上で宙に浮いていた。背中のマントが大きく揺れてうつ向いていた燐の目に飛び込む。
メフィストは携帯を閉じるとそのまま燐を見下ろし。
「奥村先生から連絡をいただきましてね。貴方を迎えに来ました。」
「っ・・・・」
ゆっくりと顔を上げる。
「おやまあ。何か悲しい事があったのですね。」
「・・・・」
メフィストはゆっくり部屋を見渡し、もう一度燐を見下ろすと
「奥村君。私は今回のこの仕事での目的は貴方の恋の成就ではありません。」
ゆっくりと話し始める。
「!」
「勿論。成就するならばして欲しかったですが、15才という未熟な状態で悪魔に覚醒してしまった貴方に経験を積んで成長して頂きたかった。」
「・・・・」
「恋は人を大きくするとね。貴方は悪魔でありながら人の心がある。貴方が彼を一生の一人と決めたならば、彼が貴方の傍にいるうちに、そして貴方の心がまだ若く柔軟なうちに事を起こさなくてはならなかったのです。」
「っう・・・」
燐は絨毯を見つめメフィストの言葉を聞き続けた。
「こんな事をした私が憎いですか?」
「・・・・」
「貴方を愛そうとしない弟さんを恨みますか?」
微動だにしなかった燐が首を振った。
「・・・雪男、俺の事大好きだってよ。俺の方が兄貴なのに俺に幸せになれ・・・って・・・」
メフィストはゆっくりと絨毯に着地すると
「よろしい。では参りましょう。寮まで直通で送ってあげますよ。顔を合わせづらいのならば暫く別室を用意して差し上げます。」
片膝をついて、燐の目の前に手を差し出した。
「っう、いいよ。平気だ。それより、頼みがあるんだ。」
燐はそっと顔を上げるとその手を取った。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日の月曜早朝。祓魔塾廊下を駆け上がる音がけたたましく校舎に響いた。
朝から勤勉な学生や他教師を縫うように越えて走り続ける。
雪男は目的の部屋に辿り着くとドアを突き開けた。
「フェレス卿っ!!」
「・・・ああ、早かったですね。塾は午後からなのに奥村先生は早朝に授業の準備をされるから、新聞をご覧になったのでしょう?」
メフィストは奥のデスクに座り、紅茶を注いだばかりのカップに砂糖を2つ3つと入れていた。
雪男の突然の乱入にも落ち着いている。
「はあっ・・・はぁ・・・っ!はい。職員室で読ませて頂きました。」
息を乱した雪男はそのまま部屋の奥へと進む。

「私も昨日友人から報告頂きましてね。海外の遊園地起業が合併してくださるそうです。大規模な改装も決定だそうです。」
「・・・これも兄の力になるのですか?」
雪男はデスクの前まで来るとメフィストを見下ろす。
「ええ、それについてですが。奥村君の力は私の予測を反して巨大になっている。今後この依頼を受けるのは辞めようと思います。」
「えっ、あ・・・」
「危険性も無い良い仕事だと思ったのですが・・・奥村君にもそう伝えておいてください。」
「ほっ本当ですか・・・?!」
「あなた方にとっても良いでしょう。兄弟仲を拗らせる事も無い。」
「・・・ええ。まあ・・・。では兄にもそう伝えます。有難うございます。」
雪男は一礼をし、部屋を出て行った。

メフィストはその後ろ姿を横目で見送りながら紅茶を口に入れ。
「・・・・実際、常軌を逸した力はむやみに使うものではありませんが、上手く使えば正十字騎士団にとって莫大な資金力になる。これを使わない事は無いですよね。」
視線を上げると天井に向かって言った。

するとその先から燐が飛び降りてきた。軽く着地すると押し黙ったまま雪男が出て行った扉を見つめる。
「本当にこれで良かったのですか?先生の代役を用意してしまいますよ。」
「ああ、雪男は俺の好きな奴探そうとするし、終わった事にすればもう言ってこねぇだろ。俺、男だしどうって事ねぇよ。」
「・・・・本当の事を伝えてみてはどうですか?貴方の本当の事を。」
燐は首を振り。
「雪男は俺の事、大事な兄貴だと思ってるんだし、これ以上気まずくなりたくない。」
「そうですか。まあ、これからは私も依頼者を調査してから受けようと思いますので、そうそう頻繁にはありません。暫くゆっくりしていてください。」
「ああ、」
「フフ。何事も過ぎてみれば皆思い出になる。今は辛くともきっとこれで良かったと思える時が来ますよ。」
「そんなの、もう・・・」
「もう?それはそれは。貴方はきっと良いエクソシストに成りますよ。」
「・・・・」
燐はそれには答えずメフィストを越えた窓の景色に視線を反らした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そうか。わかった。」
その日の夜。雪男は久しぶりに早く帰って来た。食堂で二人向かい合って夕食を食べはじめた時、早くも仕事の説明をする。
「え、分かったの?」
「俺の力が強すぎるから依頼は受けないんだろ。もう何もしなくていいんだろ?」
「そうだけど。」
「じゃあもういいじゃねぇか、」
「その、兄さんの好きな人は・・・」
「・・・俺は元々どうこうする気はねぇし、任務も無いならもういいだろう。今度はちゃんといい女探すからさ。」
燐はあっけらかんとご飯を口に放り込む。
「それはないだろう?悪魔である兄さんがそう簡単に好きな人を変えられる訳がない。ましてや女性だなんて。」
「っ!・・じゃあお前、そいつの事考えた事あるのか?俺の為って、俺の好きな奴は男なんだ!誰にも言えないし、何処にも行けないし、俺に好かれて幸せになれると思うのかよ!!」
燐は箸を止めると一直線に雪男に向かって言った。
「・・・そんな事考えていたのか?」
「雪男は結局、適当に言ってるだけなんだ。俺の事もどうだっていいんだろ・・・」
「!ごめん・・・確かに僕は良く解ってない。恋愛もした事無いしね。」
「・・・・」
「だけど、兄さんに好かれた人は幸せだよ。これは本当だ。僕はその人が羨ましい。色んな意味でね。」
雪男は言った言葉を照れ隠しに軽く笑った。
「あ・・・本当にそう思うのか?」
その表情に噛みつく様な顔をしていた燐の力が抜ける。
「うん。思うよ。」
雪男は優しい笑顔を燐に向けていた。
「っ・・・」



夕食を済ませ、交代で風呂に入った。部屋で落ち着けば雪男は久しぶりに燐の勉強を見てくれた。
椅子を寄せて丁寧に説明する。
シャーペンを持つ指が、ページを捲る動きが燐の視界を支配する。
耳元での会話に背筋が痺れた。


あの手が俺の身体を撫で回して・・・
あの指が、この声が・・・


くそ・・・

もう・・・
これから雪男が傍にいるたんびにこんななっちまうのか?
最悪、俺、変態だ。


燐がノートから顔を上げずにいると、そのぎこちない様子に雪男が気づいた。
「兄さんちゃんと聞いてるのか?」
「きっ聞いてるけど、お前の説明難しいんだよ。とりあえず暗記すりゃいいんだろ。」
「暗記って、その暗記が出来てないから説明してるんじゃないか。」
「うっ・・・とにかく!今日はもういい、お前、自分の勉強しろよ。」
燐は言うと雪男の肩を押そうと手を突っぱねた。
「!」
その手に気づいた雪男はするりと体をひねって避けてしまう。
「え?、わっ!」
対象物が無くなった力はそのまま燐の身体を傾ける。
「!」
バランスが崩れ、ひっくり返りそうになった燐の胴を雪男は咄嗟に両手で支えた。
「っあぶね、避けるなよな。」
「ごめん。」
燐は身体を戻そうと雪男の両肩を掴んだ。自然と二人の視線がぶつかりあう。

「っ・・・・」
「・・・・」
燐は視線を外す事が出来なくなってしまった。
雪男が外さないから・・・
「あ・・・」
「兄さん・・・・」
ふいに雪男は燐の腰を撫で下ろした。
「あっ!」
その簡単な手つきだけで燐の全身に電流が走る。腰をくねらせながらも淫らな顔はすまいと耐えた。
「っぅ・・・・」
瞳を上げれば雪男が自分を見ているのが分かる。恥ずかしさで顔が熱くなると同時に雪男の熱い眼差しにも気付いた。
「ゆきお・・・」
「うん。ごめん。」
「・・・・ゆ・・きお・・・」
燐はふらふらと椅子から立ち上がり流れるように雪男の首にしがみ付いた。
雪男もまた、燐の両太腿を割って広げ自身の膝を跨いで座らせる。
「雪男っ」
「うん。ごめん兄さん。ごめんね。」
雪男も答えるように燐の身体に腕を回す。
「もっとギュウってしてくれ。」
「こう?」
「ふぁ・・・」
雪男が腕に力を込めるとそれだけで身体中が喜びに溢れた。体重全てを雪男に任せてしまいたい欲求が湧いてくる。
燐はそれでも食いしばって正気を正した。

「!」
その時、股の間で熱く固く、存在を主張する物を感じた。それが何なのか一瞬にして理解すると燐の顔は薔薇色に染まる。
「あ・・・・っ、きょっ、今日はもう終わりにしよう。」
雪男は燐の身体を放そうと燐の両脇を掴んで持ち上げた。
「あっ、やだ!雪男っ!」
その動作に燐は咄嗟に雪男の首にしがみつき直す。
「にっ兄さん!」
「っ雪男、しよ!これで最後にするから!明日はちゃんと勉強するからっ!」
「なっ!・・・どくんだ兄さん。僕は兄さん相手にこんな・・・放れてくれ。」
「それならっ」
燐は雪男の手を掴み自身の尻元に導く。
「俺のここもずっとそうだよっ!」
とんでもなく恥ずかしい事を言っている事に自覚がない燐は必死で雪男に促した。
中に触れろと・・・
「っ・・・・」
雪男の指が誘われるままに燐のスエットに忍び込む。
燐は探りやすいようにと腰を浮かせた。
「あ・・・」
尻の割れ目に指を這わせばしっとりと蜜が溢れていた。指が蕾をかすめるとクチュリと鳴った水音に二人の脳幹が刺激される。
「あ・・・あっ!あっ・・・」
雪男は指を撫でるように動かし続け、燐の火照った頬を目の前に見つめた。

うっすらと目を開ければ雪男が自分を見つめている。燐はその眼差しに全身が熱くなる。胸が焼かれる程に痛んだ。
「雪男、しよっ!なあ・・・あんっ・・・」
「はあ・・兄さん・・・」
「これで終わりだから、俺、もう誰も好きにならないっ!だからこれが最後なんだ。」
「何言って・・・」
「もう一生、誰も好きにならないっ!だから、こんな事雪男にしか頼めないんだよぉ・・・なあ雪男っ・・だい・・・て・・・」
「!!っ、兄さんっ!」

雪男は燐を抱えて立ち上がった。額には冷や汗が走る。
中一級エクソシストである雪男は悪魔の生態に熟知している。燐の言う一生がどんなものか燐以上に全てを理解した。
歯を食い縛った。歪んだ表情を燐に見せる訳にかいかないと、息を呑んで平静を保つ。
布団に辿り着くとそっと降ろして。横たわらせる。
燐は雪男の行動に喜んで笑顔を見せた。
その笑顔が更に雪男の胸を痛めつける。泣いて喚いて天に叫びたかった。何故・・・兄なんだ!!と・・・

「僕でいいんだね。」
「雪男しかいねぇだろ・・・」
雪男は燐の頬を撫でてくれた。それが嬉しくて、燐はその手に擦り寄った。
「なあ・・・」
「ん?」
「恋人だと思ってしてくれねぇか?」
「えっ・・・」
雪男の手つきが止まる。言葉の続きをと燐をまじまじと見やった。
その視線に焦りつつも燐は見返して続けた。
「こっ恋人になったらどうするのか知りたい。雪男の感じでいいから、俺の事恋人だと思ってしてくれねぇ?・・・フリでいいからさ。」
「・・・・」
「だっダメか?やっぱ?じゃあ、いいや。してくれるだけで。」
すると雪男は頬にあてていた手のうちの親指を燐の唇に当てた。
「キスは?してもいいのか?僕は恋人とはキスしながらしたい。」
その指が燐の柔らかい唇を捏ねる。
「うっ・・・うん!・・いいっ・・・」
「良かった。」
言うと雪男は上体を屈めて横たわる燐に口づけた。

!!
ただ、身体のほんの小さな一部が重なっただけなのに。
燐は目の前が真っ白に光ったのを見た。
言葉が出ない。
涙が溢れた。

『泣かないで』『泣かれるとつらい』言われた記憶が脳裏をかすめる。
だが、止める術など無く涙は次々と横へと流れる。
「・・・・」
唇を放した雪男と目が合った。雪男もまた目尻に溢れんばかりの涙を溜めていて。
「泣けてくるな・・・」
「っ!雪男ぉ・・・」
燐は顔をくしゃりと歪めて雪男の背に両腕を回した。直ぐにも再度口づけられた。唇を合わせるだけのおぼつかないキス。
それだけでとてつもなく幸せで、嬉しくて、とてつもなく悲しかった。
「雪男、雪男・・・」
「兄さん・・・」
雪男は頬に瞼にとキスを降らせ、流れる涙を吸ってくれた。
「あっ・・・はあ・・・」
「・・・っ」
「雪男っ!好きだっ!」
燐は抱えた想いに耐え切れずに吐き出した。
「えっ・・・」
驚いた雪男が顔を上げた為、燐は慌てて答える。
「あ・・・ふっフリだよ!フリっ!」
燐は背中の服を掴む力を強める。
「そうか・・・じゃあ僕も・・・好きだよ。」
「・・・あっ・・・もっ、もっと・・・言ってくれ・・・」
「好きだよ兄さん。愛してる。」
「あっ、あっ、」
震える燐の手が緩んで落ちた。雪男は優しい笑顔を見せてまた口づける。
燐は次々と新しい涙を零して口づけを受け止めた。

雪男の手が服の中に入ってくる。それに気付いた燐は自分からスエットの上着を持ち上げた。雪男の手が燐からそれを受け取りそっと脱がす。雪男は続けて自分のシャツのボタンを外し始める。燐も下側から手伝った。逸る気持ちが二人を追い立てて。
バサリと雪男がシャツを落とすと二人縺れ合って布団に身を沈める。雪男は更に燐のズボンにも下着ごと掴んで引き降ろした。
「はあっ・・・んうっ・・・」
雪男と裸で身体を合わせている。足から胸へと身体中を撫で回る手にめまいがした。酔いそうだった。
「うえっ・・・うああっ・・・ヒアッ!、ハッ!」
堪えきれずに涙と一緒に悲痛な声が漏れる。
「あ・・兄さん・・・」
燐の大きな涙に雪男の動きが止まってしまう。
「・・ごめ・・・ハッ、・・・やめな・・・くれ・・・!・・・ねが・・い・・・」
「うん・・・」
雪男は顔を屈めるとそのまま燐の赤く実る胸の飾を口に含んだ。舐めて転がすと燐の身体はそこから一気に甘い痺れが全身に渡った。
「あっ!ああっ・・・ふあ・・・」
空いている片手が腹を下って可愛らしく震える中心を包む。
「ああっ!!ひうっ!・・・ん・・・んはあぁぁああ・・・」
緩くあつけば燐の中心は直ぐにも弾けた。ガクガクと震える太腿にビクつく身体が快感の強さを表している。
雪男の手は弾けた後もやわやわと指の動きを止めずに続けた。
「あうぅ・・・あーあああ、も・・・やめ・・・」
ピュクピュクと搾り取られて、燐はあまりの快楽に流石に首を振る。腰を捻って雪男の指から逃れようとした。
「止めたいの?・・・」
「やだっ、やめな・・・い!・・・で・・・」
「じゃあ、僕の好きにさせて。」
「うっ・・・んう・・・ふう・・・」
雪男は手を放さずにじっと喘ぐ燐の顔を見つめていた。流石に指の動きは弱めながら。
燐はあまりの快感に感情までも飛ばされた。流す涙はいつのまにか快楽を逃す涙に変わっていた。
頃合を見計らって指が燐の蕾へとつたう。
「あ・・・雪男の・・・雪男の・・・」
「うん。今日は兄さんがどんなにイっても止めてあげられそうもない。入れるよ。」
「んんっ!!・・・ふうっ!ふうっんっ!」
ちゅぷりと雪男の太く骨ばった指が一本燐の奥へと埋め込まれる。
2、3回ゆるくその中を掻き混ぜて燐の反応と奥の様子を探った。
燐の中はとろける様に柔らかく熟れて、それでいて雪男の指を吸い付くように包み込んだ。愛の滴が止め処なく溢れて雪男の指を伝って流れる。
「ヒゥ!!はぁあああ・・・!ああっ、あ!・・・アッ!」
燐の声音が一層高くなると雪男は指を引き抜き、自身の前をくつろげる。両の膝裏を掴んで広げた。
燐はもう恥じらいも忘れ、されるがままに雪男を待った。うつろな表情は喜びを写している。

「あっ、ああっあ、・・・・・あ・・・・っ、ぁ!」
雪男は自身を押し当てるとそのままゆっくりと身を進めた。少し埋まれば進入を止めて燐の呼吸を待つ。
「---ッ、は・・・!はあ・・・」
雪男の息遣いも荒くなった。雪男は自身の若いエネルギーを抑えつけ燐の快楽だけを探した。
少し進んだ所で止めては燐の呼吸を待つ、そして進めた。
「ヒイッ!!、アッ!アーーーー!」
全てを収めきった雪男は、もっと入れと腰をぐりぐりと押し付ける。堪えきれない燐が悲鳴を上げた。
張り詰めたつま先がガクガクに震えている。精を吐き出す事も無く、乾いた絶頂が燐を襲う。
「っはっ!はあっ!・・・はあっ・・・兄さん・・・」
雪男は雄の滾りをそのままに快感に震える燐を見つめ続け、足の突っ張りが治まったところで動きを再開した。
優しくゆっくりと・・・ 燐の気が壊れず狂えるように・・・
「ひうっ!ゆき・・・!!んあっ!・・・あっ!!ああっ、あ!」
「今日はたくさんイかせてあげる。好きなだけイきなよ・・・」
雪男は体を屈めて燐の額にキスをした。
「あっ、あっ、・・・・・はあ、ハッ!・・・ん・・・」
互いの正面に情欲に彩れた顔が浮かび上がる。どちらともなく瞳を閉じて口づけを交わした。
「はあ・・・」
呼吸が苦しくてすぐにも放れてしまう唇を互いに求めて何度も交わす。知らぬ間に舌を絡めていた。


あ・・・
雪男・・・

好き・・・好きだ・・・
俺、男なのに・・・兄貴なのに・・・こんな抱いてくれて・・・
ごめん、ごめん、大好きだ・・・!

俺、もう一生忘れない。
俺は幸せなんだと思う。

幸せだよ・・・
幸せ・・・・


そうだろ・・・



幾度と絶頂を越え、燐の瞳はもう雪男を捕らえる力を失っていた。
喘ぐ声も寝言を呟くかのように小さい。
「ふああ・・・あっ・・・はあん・・・」

「っ!」
燐の内側が震える。かすかに雪男に吸い付く力が強まった。
「あ・・・ああ・・・、・・・・・・・ふあ・・・!」
最後の絶頂は短かった。無意識に痙攣を起こす身体を撫でさすって雪男も燐の中で弾けた。
「ぁ・・・・・・」
言葉にならない声を出し燐は朦朧とした意識のまま深い眠りに入っていく。
雪男は繋げた体そのままに燐を強く抱き寄せた。
「兄さん、ごめんね・・・こんな事なら我慢なんかせずにもっと抱かせてもらえば良かった・・・ごめん。本当に僕は何も解かっていなかった・・・・・ごめん・・・。・・・・ごめん・・・・」
雪男は頬を寄せて顎を揺らして燐を撫でた。意識の無い瞳に無数のキスを降らせる。
しばらくすると体を放して、軽く互いの体を拭くと燐に自分の着ていたシャツを着せて倒れるように布団に落ちた。
目を覚ました燐が不安にならぬよう腕を広げ抱えるように眠る。

せめて明日は。明後日は。これからは。
僕だけでも兄さんに優しい場所でありたい。
ずっと安心して眠れるように・・・

愛してる・・・






正十字学園旧男子寮。一般の生徒は入らない燐と雪男の眠り舎。
その上空を白いマントに身を包む道化の悪魔が見下ろしていた。
二人が深い眠りに入るのを見届けると、
「これで全ての準備が整いました・・・さあ、奥村君。そろそろ最後の試練に入りましょうか・・・・」

メフィストは恐ろしい程に妖しく優しい微笑みを浮かべていた。




















つづく
  • Posted by 蜜星ルネ
  • 21:52 | Edit
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