雪燐置き場(R系)

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誘惑4

週末の土曜夜。電車を乗り継ぎ2度目の仕事に燐と雪男は来ていた。
『都内のホテル』メフィストからの口頭の説明はそれだけだった。
燐は綺麗な異国の服装をした男性従業員に案内されて部屋に入り、経営者との打ち合わせをしている雪男を一人待つ。
部屋は広くスタイリッシュなインテリアに囲まれ。大きなテレビに大きなベッド、大きなソファが次々と並んでいた。
世間知らずな燐にでも解かる。
ここは前の寂れた観光ホテルとは違う。本物の高級ホテルだ。


メフィストの考えが解からない。
これは本当に仕事なのか?
俺達二人騙されてるのか?

・・・だけど
たとえ騙されていたとしても俺はもう辞めるなんて言えない・・・
こうでもしないと、雪男・・・


燐はあの夜を最後に今日まで雪男に抱かれてはいなかった。
結局雪男の優しさに怖気づいて、したいなどとは言えなかった。
雪男は雪男で全くそんな素振りは見えない。もともと中学からそんな会話はした事が無い。
性欲が雪男の中に存在するのかも疑わしい程に潔癖な男だった。
「はあ~」
燐が一人溜め息をつくと。ドアのロック解除の音が聞こえた。


「この仕事は必要ない!」

社長との打ち合わせを終えて、部屋へと戻って来た雪男は顔を歪めてドアを開けるとそう言い放った。
「・・・何かあったのか?」
ベッドに座っていた燐は雪男の勢いに顔を上げる。
「むしろ何も無い。見た目通りに金持ちに人気の高級ホテルだ。特に経営難って訳でもないし、ただの流行り好きの社長の気まぐれみたいだ。占いや風水の類いと思っているんだろう。」
「・・・・」
雪男は燐の座るベッドの横に来て自分も腰を降ろした。
「これなら何もせず、さも立派な呪術をしたかの様に振る舞えば済むんじゃないか?」
「でも・・・一応、依頼ならちゃんと仕事した方がいいんじゃねぇのか?」
雪男はネクタイを外し、ワイシャツのボタンを緩めた。
「はあ、疲れた。兄さん先にシャワー使いなよ僕は塾の仕事もあるし、後でいい。」
「ああ・・・」
雪男は持ってきたノートパソコンを取り出すと窓際にあるテーブルにそれを並べる。
燐は立ち上がると部屋に備わっていた寝間着を掴んでシャワールームへ向かった。
立ち上がって飲み物を探す雪男の姿に言えない不安が過ぎる。


「えっ!」
シャワーから出た燐は雪男の提案に身を固める事になる。
「今日はもうこのまま寝よう。今確認したけど、ここの悪魔にこれ以上の魔力は必要ないよ。経営破綻なんてない。明日適当に話をするからさ。」
「でも、メフィストは金もらってんだろ?」
「フェレス卿は信用出来ないが、僕達がここで仕事を放棄した所で咎めはないだろう。」
「なんで解んだよ。」
「それなりに常識人だからね。」
「?」
「とにかく、兄さんはもう寝て良いよ。僕も切りがついたら寝るから。」
「まさかお前、ソファで寝る気か?」

燐は既にソファに予備の枕と毛布が移動してあるのに気がついた。
「ベッドが1つしか無いしね。気にしなくていいから寝るんだ。明日は朝には此処を出たいから。」
「そうじゃなくて、そんなに俺と寝るのは嫌なのか?」
燐は雪男の目に向かってうったえた。今までの思いをその一言に込めたつもりだ。
「そうじゃないよ。ただ、兄さんが横にいると気になるんだ。解るだろ?」
「おっ俺が気持ち悪いとか・・・?」
「何でそうなるのさ、違うよ。兄さんが横にいたら我慢出来るか自信が無いんだ。情けないけど。」
「あっ・・・だったらすればいいんじゃんか!」
「だから、話聞いてなかったのか?そんな事する必要は無いんだって。」
「っ!・・・じゃあっ俺がソファで寝る!雪男がベッドで寝ろよ!」
燐は言うと勢い良くソファに寝っころがる。
「ちょっと、そんな事させられる訳無いだろう!」
雪男は転がる燐に手を伸ばした。
「何だよ!俺だって男なんだ!気にする事ねぇだろっ!」
燐はその手を勢い良く振り払う。
「いい加減にしてくれっ!いいから兄さんはベッドに行けって、・・っ!え?」
燐は払った手をそのままに、瞼に涙を溜めて雪男を睨み付けていた。
「どうしたんだ?兄さん。」
「・・・・・」
言葉が返ってこない。

「わかった・・・わかったから。今夜は一緒に寝よう。それで良いね?」
燐は無言ながら首を縦に振る。すると瞼の涙が頬に零れ落ちた。
「兄さん・・・」
雪男が再度手を伸ばすと燐はその手を、腕を越えて雪男の首にすがり付いた。
そのまま雪男は燐を抱き上げてベッドに寄った。
「どうしたんだ?フェレス卿が気になるのか?」
ベッドに腰かける。首から放れない燐を抱えたまま横たわった。
「フェレス卿に何か言われているのか?」
「・・・・・」
雪男の胸に顔を埋めたまま燐は答えない。
「ごめん・・・僕のせいだな。こんな仕事、命令であっても拒否しなきゃいけなかったんだ。」
雪男は燐の髪を撫でながらそっと呟く。
「っ・・・」
雪男の指を大人しく受け止めていた身体が軽く震える。



違う・・・
今はもう・・・この日がこの仕事が待ち遠しかった・・・
次の仕事が本当にあるのか分からないのが怖い。

どうすればいい?
どう言えばいい?
俺には性欲は無いって言ったって、こんなに近くにいて思わない訳が無い。

抱いて欲しい・・・

雪男・・・



翌週の月曜朝。燐は担任の指示のまま、ホームルーム後に教室を出て理事長室に向かう。
途中の廊下で雪男がいた。
「フェレス卿か?」
「ああ。すぐ行けって言われた。」
二人並んで歩く。雪男は燐の顔を伺うように見ると顔を上げ、
「そうか。話は僕がするから兄さんは余計な事は言うんじゃないよ。」
「ああ、」

理事長室に着くと雪男はノックを鳴らす。
「・・・・・」返事が無い。
雪男は構わずドアを引いた。
「失礼します。フェレス卿?」
「いないのか?」
雪男に続いて燐も部屋に入った。
「留守か。しょうがない授業もあるし出直そう。」
「待て!絶対どっかにいる筈だ!」
引き返そうとする雪男を燐は両手を広げて止める。

「その通~り!お疲れ様ですな!お二方!」
突然、天井から声が上がる。二人が首を上げるとメフィストが降って来た。
背中のマントが全身を覆う妖しい着地。
「なっ・・・!」
「ほらな。」
拍子抜けた雪男は言葉も出ない。
「お二人の働きに私はいたく感銘を受けました!ありがとうございます!ご苦労様でした!」
メフィストは構わず両手を上げて回転しながら話始める。身を隠していたマントが美しく広がり靡いた。
「あの、そんな大した働きはしていないのですが・・・・」
「またまたご謙遜を。今朝先の依頼主から電話を頂きましてね。あなた方が帰られた後、早速海外ビップのご予約があったそうですよ。」
「何だよ?どういう事だよそれ!」
燐が思わず口を開けた。
「おや?どういう事とは一体どういう事でしょうねえ?奥村先生?」
メフィストは綺麗に止まると雪男を眺めるように見て問う。
「そんなっ・・・そんな事は・・・」

「あるはずが無い。そうでしょう?奥村先生の取られる行動なら想像出来ます。私も同意見です。」
「なら、何故?!その状況は理解出来ません。」
「それについては、奥村君に聞いてみましょうか?」
「えっ?・・・兄にですか?」
メフィストは歩き寄ると燐の背にそっと手を添えて
「奥村君?最近何かありましたか?」
「は?何もねぇよ。何だよ・・・」
「そうでしょうか?何か心境の変化でもあったのでは無いですか?」
「どう言う事ですか?フェレス卿。」
メフィストの話が見えてこない雪男は同じ様に横から燐を見下ろす。
「欲が出てきたという事ですよ。サタンの子である奥村君が一人で勝手に欲望のエネルギーを放出してくだされば、性行為は必要ありません。」
「えっ・・・」
自分より背の高い二人に挟まれた燐は身を縮めて会話を聞いていたが、言われた内容に思わずメフィストに顔を向ける。

「ふふ、疎い奥村君でもこんな事を繰り返せばいずれは目覚める。成長したと言う事です。」
メフィストは妖しい笑みを浮かべて燐の肩を抱いた。
「・・・兄に欲望ですか?それはどういう・・・」
「貴方も案外鈍いのですね。その後お二人はどの頻度で致されたのですか?こんな行為を繰り返せば人は愛情が欲しくなるものでしょう。貴方の頭は鉄で出来ているのですか?」
「愛情って・・・」
再度燐を見下ろす雪男。
「奥村君。この鉄頭の弟さんに教えてあげたらどうですか?もっと・・・愛が欲しいと・・・」
「ッア!!やめろよっ!勝手なこと言うなぁ!?」
燐はメフィストの言葉に背筋が凍った。身体が大きくビクつく。
「兄さん!」
雪男は腕を伸ばし燐の肩を掴むとメフィストから引き剥がし自身に抱き寄せた。
「雪男!」
燐も雪男に寄り二人メフィストと対面する。
「・・・・」

メフィストは軽く両手を上げてふざけた真似を見せた。
「ふむ。そうですね。この仕事は未成年のお二人には精神的に過酷な仕事ですし、一度気晴らしでもすると良いですよ。」
「今度は一体何ですか?」
雪男の問に笑顔を向けるとメフィストは奥のデスクへ歩き出した。
「そう身構えずに。私の友人が自営の遊園地を今月閉園するそうです。最後のセレモニーはどうしても成功させたいと言っておられました。」
「遊園地ですか?」
「依頼は受けてはおりませんが、今の奥村君なら一日過ごしてくださるだけで大きなエネルギーになる。あなた方も気晴らしには丁度良いでしょう?」
デスクに腰を下ろすと引き出しを開け、小さな紙を二枚上げた。
「どうぞ。フリーパスポート券ですよ。園内での食事からその他申請して下されば出張経費と致します。」
「・・・・」
雪男は少し間をあけると口を開いた。
「それは僕以外の者に行ってもらっても構わないですか?」
「貴方以外と言うと?」
「兄の友人の誰かに。僕等兄弟で行ったとして兄が楽しめるとは思えない。」
「あはっ!貴方、面白いですね。本当にそう思っているのですか?それともそれは演技ですか?」
「何ですか?・・・・」
メフィストは雪男の横で黙ったままの燐を見やると口角を上げたまま話を続ける。
「・・・そもそも奥村君の外出は簡単には許可出来ません。貴方の同行を原則としています。ここへはお二人で楽しんで来てください。」



次の週末燐と雪男はメフィストの指示どおりに電車を乗り継ぎ遊園地にやって来た。
二人共今日は私服のラフな格好。雪男の私服姿が久しぶりに感じて燐は朝の着替えにドギマギしたのだ。
目的地が近づくにつれて人が増える。入園口付近には長蛇の列が出来ていた。
「これに並ぶのかよ。」
「パスポート券があるから大丈夫だよ。」
雪男は構わず入園ゲートへ向かった。
「なあ?こんだけ混んでれば潰れるなんて事無いんじゃないのか?」
「一応調べたけど。ここは今月末で本当に閉めるらしい。この1ヶ月間に入園者が増えたところで抱えた負債を埋める事はないよ。」
「そうなのか?」
「人というのは勝手なものさ、今まで見向きもしなかった事にも終わるとなると惜しみの言葉を並べ立てる。その時には手遅れなのに。」
「!、そうだな・・・」

入園ゲートでプラスチック製の腕輪を通して園内に入った。
「うわぁ!スゲー人だな。」
「今月はもういつ来てもこの位の人になるだろう。」
園内はまた人の多さに燐は驚く。
入ってすぐの広場では噴水を中心に童話のお伽の国のような建物が並ぶ。
その周辺を猫や犬、兎らをベースにした可愛らしい衣装を来たキャラクター達が子供達に写真をせがまれていた。
「あ、雪男携帯で写真撮ろうぜ。」
「いいよ。そんなの。今更僕と撮っても。」
「・・・・」
「撮りたいのか?じゃあ兄さんあれ着けてみてよ。」
雪男は広場の端にある小さな移動型売店を指差す。そこでは子供達が動物の耳の形のカチューシャを買い求めていた。
「兄さんなら黒猫がいいかな。あはは!」
「わっわかったよ。」
燐はそのまま売店に向かう。
「えっ本当に!」
燐の後を雪男が追いかける。
「お前も着けろよ!」
「嫌だね。」
「ぅ~;」

それから猫耳を着けた燐は雪男と二人出来る限りのアトラクションを回り、二人並んで写真を撮った。
どこも人で待ち時間が長かったが大勢の人や賑やかな空間がその苦痛を紛らわせてくれた。
「あっ!雪男見ろよ!あれっ!」
洞穴の中を列に沿って歩く。途中の可愛らしい動物の人形達が面白可笑しく生活を表してた。
「なあっ!雪男!」
「ああ・・・ 兄さんってさ、可愛いよね。」
「は?!」
「この猫耳のせいかな?笑ってると凄く可愛い。」
言うと雪男は燐の猫耳に手を添えた。
「なっ!お前何変な事言ってんだよっ」
その手を燐は照れ隠しに振り払った。

その時。洞窟内をこのアトラクションとは違うリズミカルな音楽が流れてきた。
「何だ?」
「パレードだよ。パレード開始30分前のお知らせみたいな音楽だ。これが終わったら観に行こう。」
「ぱれーど?・・・うん!観に行こっ!」

洞窟から出ると入った時には明るかった日も落ち、すっかり夜になっていた。
目に写る殆どの人が小走りに園の中央へと向かって行く。子供を抱える親も必死そうだった。
「なっ何ダァ?!」
「パレードは目玉だからね。席取りに必死になるらしい。」
「関取ぃ・・・??」
「ほら、行くよ!」
「わっ!」
雪男は強引に燐の手を掴んで歩き出した。
「人が多いからね。放れるなよ。」
「・・・うん!・・・」
燐は雪男の手を握りしめた。雪男も握り返してくれた。
次々と人を周りの景色を越えて歩く雪男。



いつもそうだ・・・
雪男はいつも俺の前を歩いてた・・・
子供の頃からずっと・・・
ずっと、
それが当たり前に続くんだと思ってた。

どうしたらいい?
どうしたら俺は手遅れじゃなくなる?

放したくない・・・!
放さないで欲しい・・・!

燐の頭の中をすがりの言葉が無数に並び回る。
時が止まればいいとさえ思った。



煌びやかなパレードが終わる。最後のダンサーを見送ると周りの客達がそれぞれに立ち上った。
「あれ・・・?雪男・・・」
雪男がいない!さっきまで横にいたはずなのに・・・!
燐の目の前を代わる代わる人々が交差していく。
「雪男・・・ゆきおっ!」

「兄さんっ!」
燐の耳を聞きなれた声が飛び込んでくる。振り向くと雪男がいた。
「ごめん。終わる前に戻ってくるつもりだったんだ。」
「あっ・・・どこ行って、」
「はい。これ。パレード中はお土産屋さんがガラ空きなんだよ。」
雪男が差し出したのは燐が朝から着けていた猫耳キャラのぬいぐるみだった。
「兄さん猫好きだろ?」
「でも俺・・・人形なんて・・・」
「いいんだ。記念になる。これがあればいつでも思い出すだろ?今日二人でここに来た事を。」
「え?・・・・・」
「思い出だよ・・・こういうのはそういう物だ。」
「!・・・うん。分かった・・・俺、これ一生大事にするな。」
渡されたぬいぐるみを抱えて燐は俯いた。
「兄さん?」
目から涙が零れ落ちる。真新しいぬいぐるみを無数に濡らしていた。
「あ・・・わりぃ・・・俺、雪男から何かもらうの初めてだから嬉しくて・・・」
「!・・・・そうか・・僕達誕生日も一緒だから・・・こんなに喜んでくれるなら、もっと沢山あげてれば良かった。」
雪男は塗れたぬいぐるみごと燐を抱きしめた。
「ゆっ雪男!」
驚いた燐が声を上げる。
「大丈夫だ。ちょっと盛り上がってるカップルにしか見えない。誰も僕等が男同士で兄弟で双子だなんて気付かないよ。」
「う・・ん・・・・」
涙を零しながら笑う燐。その姿は強く雪男の胸を叩いていた。


「フェレス卿は隣の系列ホテルの予約を取ってあるらしいけど、どうする?寮まで電車ギリギリだけど帰るかい?」
抱きしめた腕を緩めると雪男は燐の顔を覘きながら問うた。
「俺は・・・」
「うん。」
燐は俯きながら。
「まだ帰りたくない・・・」
「じゃあ、行こうか。」
雪男は歩き出した。遅れて歩き出した燐の手を掴んで引いた。
ぬいぐるみを片腕に抱きしめ、燐は又も目尻が熱くなるのを胸の鼓動と同時に感じていた。

二人はそこから15分程歩いてホテルに辿り着いた。園と系列している為、お伽の国の様な建物のホテルだった。
夕食をホテルのレストランで済ませると部屋に入った。
燐はドアを開けて第一声。
「あっ・・・またデカいベッド一つだ。」
「フロントの妙な視線はこれか・・・。フェレス卿もまた余計な事を・・・」
「いいじゃねぇか。誰も俺等の事なんて知らねぇんだし。」
燐はぬいぐるみを膝に乗せてベッドに腰掛ける。
「兄さん風呂に行きなよ。ゆっくりするのはそれからにしよう。」
その横にある椅子に腰掛た雪男が燐に促す。
「すっするのか?」
「えっ?」
「わっわかった!すぐ行ってくる!」
燐は飛び上がるように立ち上がるとベッドの上に置いてあったパジャマを掴んでバスルームに入る。
その姿を見送りながら雪男は自分の頬が急激に熱くなるのを感じた。
「えっと・・・」
思わず口元を手で押さえる。

数分後。パジャマを着た燐がバスルームから顔を出す。
「でっ出た。」
「あっああ、じゃあ僕も。」
雪男は飲んでいたカップをテーブルに置くと立ち上がった。雪男も同じ様にパジャマを掴んで燐と交代する。
燐は雪男の居なくなった部屋をウロウロと歩き回る。
「うわぁ・・緊張するな。」


どう待ってたら自然なんだ?
今まで俺、どうしてたっけ?
・・・・
だけど雪男やっとする気になったんだ・・・
嬉しい・・・!
凄い・・・!
やばい!顔が笑っちまう!


数分後。タオルを頭に被り、パジャマのズボンだけ履いた雪男がバスルームから顔を出す。
「兄さん。」
「出たか?、あっ!・・・」
上半身を晒した姿に燐の笑顔が固まった。
「ちょっと兄さん!男性用を着てっただろ?!僕に女性用はどうやったって着られないよ。」
下を見れば丈の合わないズボンから雪男の脛が見えて燐は吹き出す。
「兄さん。笑ってないで早く脱いでよ。ほら!」
雪男は燐に近づくとパジャマの上を差し出した。
「ええッ!」
燐は途端に両手を胸の前で交差した。
「えっ、えっと・・そう言う意味じゃ・・・」
「あ・・・」
二人の間に気まずい雰囲気が漂う。ほんの数秒の刹那が燐に不安を過らせた。
「もう、いいや。後にしよう。」
雪男は手にしていたパジャマを椅子の背もたれに掛けた。
「あ・・・雪男?・・・」

そのまま広いベッドに上がる。頭からタオルを下げると振り向いた顔が真っ赤だった。
「しても、いいんだろう?」
「!・・・うん!」
燐もベッドに上がると四つん這いで雪男に寄った。
雪男は燐の腰を掴むとひっくり返して、枕を背もたれに座る自身の上に股がらせるように座らせた。
燐の膝の上に掛け布団を乗せて。
「雪男?」
「ちょっと・・・まともに顔が見れないかも。」
後ろから燐の腰に腕を回して抱きしめる。燐の首筋に顔を埋めた。
「えっ?」
「仕事って訳じゃないんだ。こんな事簡単に出来るか。」
「そうなのか?!」
雪男の発言に驚いた燐は雪男の顔を見ようと首をひねった。
「僕を何だと思ってるんだ兄さんは。」
顔を上げた雪男は不貞腐れた表情にも頬が赤い。
「だって、お前・・・あっ!」
燐のパジャマの中に雪男の両手が入って来た。軽く腹に触れられる。それだけでも声を上げた自分に恥ずかしさで口を片手で覆った。
「触ってもいいかな?嫌な所とかある?」
「なっ無い!無いからっ!いい!・・あっ・・触ってくれ、全部っ!」
燐の台詞を合図に雪男の両手がパジャマの中を這い回った。
「ふあっ!はっああぁ・・・」
久しぶりの感触に二人共息を詰める。
「・・・凄いな。」
「あっ、はっ!・・・ふぅん!」
雪男の手の平から身体が溶けていく。無意識に背がのけ反る。燐は頭を雪男の肩に押し付けて声を上げた。
雪男が自分の身体に触れている!その事実を身体中が喜んだ。
もっと触られたい!もっと!
ふいに雪男の手が燐から離れる。
「あ・・・」
パジャマから出てきた雪男の両手に燐の目が凍った。
「脱がせてもいい?もっと兄さんに触りたい。」
「あっ!ぬっ脱ぐよ!!」
パジャマの端を摘む指を越えて燐は慌ててボタンを外し始める。雪男もまた片腕で燐の腰を軽く持ち上げ、ズボンを脱がした。
ボタンを外し終え胸元を開くと雪男の手がそれを受け取った。
剥き出しになった燐の肩に雪男の喉が軽く響く。身に纏う物全て剥ぎ取られ、代わりに掛け布団が胸まで掛けられた。
「寒い?」
雪男の問いに首を振る。
「もっと寄っかかっていいよ。」
雪男の胸に引き寄せられる。
「ふあ・・・」
雪男の胸板の熱さを背中に感じて声が上る。
身体の奥が濡れている。雪男の腕に胸に包まれて燐の奥からは喜びの雫がじっとりと湧き上がる。纏う物を無くした身体はゆっくりと滑り落ちるそれを止める術が無い。雪男のズボンに小さな染みを作っていく。
「あ・・・っ・・・」
恥ずかしさから腰を捻る燐に雪男が気づいた。
「うん。もうちょっと待ってて。」
雪男の両手が燐の両胸に触れる。両胸を同時に撫で擦られると燐は崩れ落ちるように雪男の胸に身体を乗せた。
「ふあぁぁ・・ゆき・・お・・・ああ・・・」
「気持ちいい?これだけでこんなに感じてくれて・・兄さんは抱きがいがあるよ。」
両胸の飾にかすめるように触れられて、燐の腰が踊り上る。
そのままクニクニと苛められた。
「あっ!あ!やあっ・・・!んっ!」
胸の先を捏ねられる度に身体の中心にズクズクと快感が届く。更なる雫が溢れ出すの感じて恐怖になった。
「やっやめっ!雪男っ!!もう・・もういい!・・・はぁん!」
身体に少しも力が入らない。縫いとめられた身体は雪男の指をただ受け止めるしかなかった。
「やあっ!も、やだぁ!ああっ・・・」

「ハア・・・」
雪男の熱い吐息が耳元で聞こえた。それすらも背筋を震わす快感になってしまう。
ふいに雪男の舌が燐の耳を舐め上げた。両手は変わらず柔らかく強く胸の先を可愛がってる。
突如加わった新しい感触に驚きを止められない。
「やだ・・!もうっやめっ!ふあっ、あん!・・あっ!あ!」

イキそう・・・!
そんな・・・
嫌だ!乳首だけで!
やだぁ!

燐が身体を起こそうと力を入れた時、耳を舐めていた舌が放れ、耳たぶを銜えられた。
「ヒァ!やぁ!・・・あっ、ああ!あぁぁああ・・・」
強引に吸い上げられて、燐の身体は金縛りにあったかのように硬直した。
燐の反応を眺めていた雪男はぐったりとした身体を支え耳たぶを解放した。
「あぅ・・・」
「うん。今楽にしてあげるよ。」
雪男の片手が燐の身体を降りていく。中心に添えられた時、その身体は暴れ出した。
「やあっ!だめっだ!・・触るなぁ!・・・ああっ!」
そっと包むように触れるとその可愛らしい果実はすぐにも雪男の手の平にはぜた。
「えっ・・・」
「ふうぅっ・・・くぅん!・・・んっ!・・・」
ビクつく身体を片腕で抱きとめ雪男は少し腰をずらす。燐の顔を横から覗き込んでくる。
燐は目尻に涙を溜めて、顔一面を真っ赤に染め上げていた。
「ううっ・・・っう・・・・」
「疲れてるんだよ。今日は沢山歩いたしね。大丈夫だって。」
雪男は手に掛かった滴をそのままに燐の奥に指を触れた。
「あっ・・・」
「うん。解かさないと。」
雪男の指が一本入って来た。燐の中は滴がヌルつき、雪男の指を熱く、さらに溶ける程に柔らかく包む。
「っ!・・・すご・・兄さん、もしかして物凄く気持ちいい?」
「ひぐっ!んんぅ!・・・ぁ!っはあ・・・ひあ・・・はあん・・・」
そっと動かせば悲鳴のような声で喘ぐ。身体が小刻みに震え上る。
「そうか・・・分かった。」
雪男は一本の指を二本に変えるとゆっくりと撫でるように燐の中をかき回した。
「あうっ、ああっ!あっ、ひぃぃん!!・・・」
そう時間を掛ける間もなく燐の身体は上り詰める。
ガクガクに崩れた身体を横たわらせて、雪男は持ち込んだタオルで燐の身体を拭った。
燐は止まらない呼吸の中で朦朧と雪男を見上げる。
「疲れただろう?今日はもういいから寝ておいで。良く眠れるはずだ。」
「はあっはあっ・・・あっ・・ん・・・・」
言われた言葉をすぐには理解出来なかった。
「僕はいいよ。・・慣れてる。」
「!や・・・や・・・」
真横を見ればズボンを押し上げる雪男の逞しい存在が映る。


あっ・・・
嫌だ・・・まだ雪男としてない!
雪男優しくて・・・
気持ち良すぎて、俺・・・

あっ、ああっ・・・


雪男を見上げたままの瞳から涙が溢れ出した。
「ああ、泣かないで・・・余計苦しくなるよ。」
「ヒアっハアっ・・・」
「・・兄さん・・・」
雪男は上から包むように燐を抱きしめた。強張っていた燐の力がほどける。
「ゆき・・お・・・ごめ・・・」
「気にしてくれるの?あは・・」
雪男は笑って見せるとゆっくりと燐の額に口づけた。
「・・・・・」
「お休み。兄さん。」
顔を覗けば燐はもう静かな眠りに入っていた。無防備に呼吸を繰り返す小さな顔に雪男の胸には愛しさが募る。
「兄さん・・・こんな姿他の誰にも見せちゃ駄目だよ。男は皆狂ってしまう。」
「・・・・・」
「兄さんの好きな奴も・・・」
「・・・・・」
そっと頬を撫でる。
「僕にしておきなよ・・・こんな仕事をしているのにそいつは一向に姿を見せない。縁が無かったんだ。」
「・・・・・」
「・・・・・」

雪男の顔が歪んだ。
「どうしてっ、男なんか好きになるんだ。女の子と出向いてくれれば僕は気にもならなかったはずなのにっ・・・」
「・・・・・」




朝の日がだいぶ高くなった頃にようやく燐は目覚めた。
顔を上げると雪男はもう自身の服を身に付け日曜のニュース番組を見ていた。
「ゆきお・・・」
燐が小さく声を掛けると雪男が振り向いた。
「起きた?身体は?大丈夫か?」
「うん・・・。ごめん、俺・・昨日・・・・」
「いいって言っただろう。」
雪男は立ち上がると掛けてあった燐の服を持ってベッド横に来る。そのまま燐に着替えを促した。
燐は順々に服を受け取り、ベッドの上で立ち上がると着替え始める。雪男はそれをじっと見ていた。

最後のパーカーを被った。
「兄さん。僕、考えたんだ。やっぱりこんな事を続けるのは良くない。」
「え?何が?」
着替え終わった燐を雪男は腕を伸ばして両脇を掴み、床に降ろす。

「兄さんの好きな人を教えてくれ。兄弟でこんな行為は不健全だ。男同士だっていい、好きな人とするべきだよ。」
「えっ・・・・」

日が真上に登り詰めた時、燐の目の前が真っ暗に落ちた。


















つづく
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