September 03, 2004

アイアン・シーク Iron Sheik

ある日ラジオから聞こえてきたアラブ風のひびきの不思議なラップ。センチでもの悲しいトーンにピーヒャラピーヒャラという飄々とした笛の音、もったりした口調のとぼけた歌声が混ざって漂うぺーソス──なななんだろうこれは?ラッパーの口から出てきたパレスチナという言葉に耳がピンと立ってしまいました。かろうじて聞き取ったアイアン・シークという名前から一生懸命ウェッブを探して見つけ出したのが、このパレスチナ人の血をひく若いアメリカのラッパーでした。気前よくmp3を並べたシークのサイトを見てまたびっくり。Conversation with Edward Saidって、それはバーサミアンによるサイードのインタヴュー『ペンと剣』のもじりでしょう。ダウンロードして聞いてみると、サイードのバークレー講演からのサンプリングで確かに「対話」してましたが・・・ つうわけで、この夏はしっかりシークにはまってしまいました。

とても才能のある歌い手なのに、サイトを見ると、お金儲けよりもパレスチナの正義を訴えることに関心があるらしく、お若いのにずいぶん立派な根性です。せめてCDでも買ってあげようと思ってアマゾンを見ると、なんと日本ショップでは取り扱っていない!amazonの品揃えについてはつねづね疑惑を持っているのですが、また一つ疑惑がつみあがりました。そこで、ささやかながらパレスチナ・ラップの普及に貢献しようと思います。素晴らしくよい曲なので、知らずにおくのはもったいない話です。

アイアン・シークことウィル・ユーマンスは親の代からのアクティヴィスト。根っから政治的な人物で、ヒップホップは彼にとって政治表現の手段です。「アイアン・シーク」という芸名そのものがすでに一つのステイトメントです。もともとは1970年代にアメリカで活躍したイラン人プロレスラーの名前で、アラブ風の髪飾りをつけ、豪奢なローブをまとった彼は「中東の悪玉」というカリカチュアを演じていました。あえてこの名を取り上げてみずから名乗るということは、みずからの文化に勝手に押し付けられたイメージを取り戻し、みずから規定しなおすことによって、意味を規定する力を獲得するという宣言らしい。


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