草花の名前を知ることは野の花と親しくなる早道であり、かつ避けては通れない道である。とはいえ、例えば、山渓の「野に咲く花」図鑑には600種を超える植物が網羅されている。たしかに名前の由来を紐解くことは、その花の特徴をつかむ一助となり、同時に、花と人間のくらしの歴史的なつながりさえみえてくる。

 名前の由来は、花・実・タネの色・形・サイズなどの外観からつけられるケースが多いが、においや味、効能・用途、季節などもネーミングの根拠となる。中には難解だったり、こじつけだったりするネーミングが少なくないが、大半のものはその特徴を的確にとらえていて大変役立つヒントとなる。ここでは、この時期身近にみられる「気の毒な名前をつけられた野の花」を4点紹介したい

1,ヘクソカズラ(屁糞蔓)              2012/7/21
これ以上かわいそうな名前はほかにない。可憐な花の姿から想像できないが、花や葉や実をもんだり、つぶしたときの臭気は耐え難い。このとき初めてネーミングはもっともだと頷ける。別名をヤイトバナ(灸花)あるいはサオトメカズラ(早乙女蔓)と呼ぶ。
ヘクソカズラ

2,オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢)       2012/4/20
これも命名者の美的センスを疑う。たしかに朔果の形をみると犬の陰嚢に似てはいるが、花の可憐さから到底想像できるものではない。それに対して、英語名のキャッツ・アイ、学名のベロニカがなんと素晴らしいことか。命名者には永遠に責任がついて回ることを自覚してほしい。 

オオイヌフグリ

3,ハエドクソウ(蝿毒草)     2012/6/23
別名をハエトリソウと呼ぶ。根の煮汁でハエ取り紙をつくったことからつけられたもの。これはその根の利用法から名前が付けられた一例であるが、“毒草“はかわいい花には似つかわしくない。

 ハエドクソウ

4,ワルナスビ(悪茄子)                2012/7/21
北アメリカ原産。鋭い刺が多くて、繁殖力が強いことから害草として悪者扱いされている。通常、アメリカ原産の植物は「アメリカ某」と呼ばれているが、これはなぜかアメリカナスビではなく、ワル(悪)が付けられた。初めて出会ったとき、教材として花を摘んだが、鋭い刺にさされて悲鳴をあげたことを思い出す。役にも立たずに、刺で武装して我が物顔に侵略する姿が悪者仕立てされた理由ではないかと勝手に推測している。

ワルナスビ

参考文献:「野に咲く花」(山と渓谷社)ほか
写真の撮影場所は印西市内       (文・写真  K.M.