滋賀県知事で元日本未来の党の代表であった嘉田由紀子氏が、苦しんでいる。
おそらくである。
苦しんでいるという報道はないが、本人は相当悔しい思いをしているのではないか。

メディアの言葉を借りれば、永田町の妖怪たちに取り込まれ、捨てられた。

経歴を見ると非常におもしろい人である。
京都大学農学部の出身で、探検部に所属していた。
さらには、探検部時代にタンザニアに半年間生活したという。

私が、彼女に注目したのは新幹線の新駅建設の可否をめぐる当時の自民党とのやりとりを見た時である。新幹線駅の新設は、首都圏在住者にとって想像もできないほど地方にとって非常に大きな問題である。短期的経済効果と長期的経済効果の双方への期待。幻想と現実が入り交じっている。
そのようななか滋賀県議会は、新幹線新駅新設に反対する意思決定を行った。
その際に自民党の幹事長であった中川秀直氏が、直接知事を訪問したことは、ちょっとしたコメディであるが、最終的に政府としても新駅建設の凍結を決定した。

その際、森喜朗元首相が
「『駅をつくるのはもったいない』と言って当選した知事がいる」
「ああ女の人だな。やはり狭いなあ」
と女性の視野がせまいことを揶揄した発言をおこなった。
これに対しての嘉田知事の切り返しが、僕のツボだった。
「発言の文脈がわからないので、(女性蔑視かどうか)コメントできない。新駅問題の本質は、動き出した公共事業を有権者の1票に込めた思いが止めたという、民主主義や地方自治の在り方にある、と述べさせていただきました」
森さんは、森さんで古き良き日本!?を代表する発言を行ったが(笑)
それに対して、一つの理想論と新しい地方自治のトップの姿を見せた知事を新鮮な思いで見た。

いわば、反骨の人。硬骨の人である。

といって、昨今主流である道州制導入論には、慎重である。
単に時流にのっているわけではない。
そこのところが、保守層にも受け入れられている理由だろう。

その嘉田知事が、昨年末以来の大博打に負けた。
無論、負けたと断ずるには早いが、大きな後退を余儀なくされている。

小沢一郎氏と組んで仕掛けた「新党日本未来の党」が、先の総選挙で惨敗。
選挙戦の過程においても、小沢氏との意見の齟齬や選挙戦略のズレが透けて見えてしまう状態であった。更には、根回し不足であろうかお膝元の滋賀県議会からも突き上げを食らってしまい党首として十分に選挙に取り組んだとは言いにくい。

そして選挙後に党役員人事をめぐってすったもんだがあり、結局未来の党を離党。党首が離党である。無論小沢さんたちの政党助成金がらみの云々は、ここで議論するつもりはない。が、まさに永田町の妖怪たちにしてやられてしまった。

さて、ここからである。
ちなみに断っておきますが、私は嘉田由紀子氏の政治信条や政策に対しての賛同の可否をここで申し上げるつもりはありません。
私が、考えているのは彼女が政治的に復活するのか否か。現職の知事であるので、この表現が、適当かどうか微妙であるが。
経歴や知事としての実績は、十分にある。人物としてもなかなかな方だと思っている。
このまま国政の目がなくなることにちょっと惜しいなと思う。

常々考えるのですが、敗者に厳しく死者に優しいわが国の風土。どうにも民主的政治家が育ちにくい風土にあるなあと。
今回、安倍晋三氏が復活し再チャレンジの切符を手に入れた。
自民党独特の論理と民主党に対する厳しい審判という2つの要素が理由とはいえ、再チャレンジが可能となったことを素直に喜びたい。
であれば、あれほどのリスクを取った挑戦をした嘉田由紀子氏にも再びたちががることができるのか?というか、有権者は、その切符を与えるのか?


僕は、嘉田由紀子氏の一連のチャレンジを高く評価したい。
「決断とは、偏狭な視点をもつ意思決定である。」

私などは、この数年決断を放棄する決断をしてきた。モノは言いようだが要は、流れに身を任せているのである。
そのような身からみても、今回の早期の撤退は戦略的とも言える。傷は浅いのではないか。

いずれにせよ、負けても負けてもチャレンジできる社会であって欲しい。
そんなことをニュースを見ながら考えた。