先日、ラッセルの社会思想や平和活動に関心を持っている友人たちといろいろと話をした。
今後、この社会を少しでもましにするために、定期的に会合や講演会などを企画していこうということになった。
その第一弾として、全員で今回の参議院選挙に向けて、以下のメッセージを取りまとめた。主語が「私たち」と複数なのはそのためである。 

 「2011年3月11日の東日本大震災とその後の原発事故は、現在の日本人の生活を支えているはずの、政治や経済、教育や報道に関わる近代的制度や規範が有効に機能していないことを明らかにした。国会議員は民意ではなく特定の団体の利益を優先的に配慮し、あるいは沖縄の米軍基地の問題のように、日本の問題でありながら日本に決定権がない事柄も多数存在する。本来ならばこうした状況を国民に明らかにし、批判的に論じるべきアカデミズムやジャーナリズムは、現状を国民の目から隠蔽する作業に積極的に参加している。

 最近の選挙での投票率の低さは、多くの人が以上のような問題を意識しながらも、その解決を現在の日本の政治に託せないと感じているからではないだろうか。それは、ごくごくまともな感受性だと思われる。私たちも、これほど数多くの、しかも質的に多様な問題のすべてについて特定の政党に解決を委ねろと言われても困る。しかし、私たちはやはり選挙に出かけようとおもうし、また皆さんにも投票していただきたいと思う。

  それは、私たち自身が以上のような現状の成立に部分的には加担し、それなりの利益を引き出してきたからである。そして、もし「私は加担していない」と言える人がいたとしても、やはりこの現状を改め、少しはましな社会を次の世代に手渡すことは、やはりその人の責任でもあるからである。一人の人間としてこうした社会的責任を果たすとき、私たちに求められるのは、問題があるとされた制度やシステムを捨て去ることではない。現実に存在する民主主義という政治制度には多くの問題があるが、しかしそれは国家を運営する方法としては今のところ「一番まし」なやり方だと思われる。私たちがなすべきは、制度の限界を確定し、それが有効に機能する領域と失調せざるを得ない領域を区別すること。そして有効な範囲ではそれをしかるべく機能させ、その範囲外では様々な可能性を考慮し、構想を作り出していくことである。

 こうした社会的責任をはたす一つの方途として、私たちは今回の選挙に関する一つの提案をしたい。それはバートランド・ラッセルとアルバート・アインシュタインによる「ラッセル‐アインシュタイン宣言」の精神に従って、現在の日本の状況、そして世界の状況を眺め、あるべき社会の方針を考えて投票することである。「ラッセル-アインシュタイン宣言」は核兵器開発競争に反対することを呼びかけた宣言でしょう、それが今回の選挙に何の関係が、的外れじゃないのと言われるかもしれない。私たちは、そうは考えない。原子力発電の問題はエネルギーの問題でも経済の問題でもない。いま日本が世界中に売り歩こうとしているのは単なる発電の手段ではないし、それがもたらすのは経済発展ではない。それらの事実を、日本人は2011年3月11日に学んだはずである。それをもう一度思い出そう。政治的に解決すべき問題を経済的問題に還元して、解決策の成否を判断するのはやめよう。そして現在の日本のあり方、現在の日本がやろうとしていることを、日本という国や現在世代という特定の立場だけからではなく、将来の世代も含めた人類という普遍的な観点に立って考え、投票先を決めようではありませんか。
                                                小林将輝
                                                高村夏輝
                                                                                                              角田善彦 ほか1名」

ラッセル-アインシュタイン宣言はこちらにあります。ぜひご一読を!
http://russell-j.com/RUSSELL-EINSTEIN.HTM