2007年07月09日

子どもの安全を守る(3) 通学路(地下道編)5

ed5348b0.JPG  教頭として2校目の着任だった。その始業式・着任式で、『あらっ。』と思うことがあった。

 包帯の足で、松葉杖をついている子がいたのだ。その子のためにいすが用意され、最前列ですわらせてもらっていた。
 気になってそばにいた教員に聞くと、一か月くらい前、通学中に、通学路となっている地下道で自転車にぶつけられ、大けがをしたとのことだった。

 国道の交差点には横断歩道がなく、歩行者は、どこへ行くにも地下道を通るようになっている。
 はじめ、防犯の観点から、地下道が通学路と聞いて驚いたが、これも地域の交通事情が分かるにつれ、仕方ないかなと思うようになった。

 しかし、通勤途上でも、ものすごいスピードでスロープ状のところを走り降りる自転車は、何度も見かけた。
『そうか。こういう大人に、子どもがはねられたのだな。』
危機感でいっぱいになった。

 降りきったところは、左右にも地下道がある。そこは壁だから、見通しはまったくきかない。
 
 なんであんなところを、あんなスピードで走り抜けるのか。あまりにも無謀だ。『未必の故意』そんな言葉が頭をよぎった。

 着任したばかりのわたしは、そんな状況を校長に報告した。事故があったくらいだから、校長はもちろん分かっていて、
「ええ。あの3月の事故で、警察には取り締まり、パトロール強化をお願いしたのです。やっていませんかね。」

 教員の話だと、3月はときどき、警官の姿を見かけたという。しかし、4月になって、入学児童もいるという、一番大切な時期なのに、わたしは見かけたことがなかった。

 わたしは毎日とはいかなかったが、この地下道を巡回することにした。また、校長の指示を仰ぎながらも、PTA校外委員さんにも、見回りをお願いした。

 と同時に、校長には、再度、警察へ申し入れをしてもらった。


 この地下道の出入口は、真ん中がスロープ状で、その左右は緩やかな階段となっている。(写真を参照してください。ただし、当時は、ただのスロープで、そこには何もなかったのです。)
 それを見て、『何でスロープがあるのだろう。全部階段にしてしまえば、自転車は降りて押していかざるを得ないのに。』はじめはそう思った。
 地下道の入口には、『自転車は、降りてください。』というカンバンが設置されている。しかし、その通り降りる人はまれで、ほとんどは乗ったまま降りていく。


 我が地域では、スクールゾーン対策協議会は、6月末に開催する学校が多いと思う。
 4月にPTAの新組織がスタートすると、校外委員会は、スクールゾーンにおける児童の登下校の安全を守るために、さまざまな改善要望をまとめていく。
 わたしはそれまでこの地下道に関し、どのような改善要望が出されているのか見せてもらうことにした。

 やはり、パトロールの強化をお願いする項目があり、それへの警察の回答は、『できる限り要望に沿うようにします。』とあった。わたしは、警官のパトロールなど見たこともなかったから、笑ってしまった。

 この程度の要望ではダメだ。わたしは思った。
○ スロープの上と下にポールを立てたらどうだろう。少なくとも自転車は、一回は降りなければならなくなるのではないか。
○ お金がかかるかもしれないが、スロープは撤去してもらいたい。全部階段にしてしまえばよいのだ。

 
 そうした腹案をもって、校外さんと話し合った。

「ええ。わたしたちもそう思って、去年の校外さんに聞いたのです。そうしたら、あれは車椅子の方のためにあるのだから、スロープを撤去することはできないとのことでした。」

 『なるほど。そういうことか。』自分で自分の考えを却下した。


 それなら、スロープを、通路の真ん中でなく、壁にくっつけるかたちではじにしてもらったらどうか。自転車はスピードを落としてくれるのではないか。そう思い、校長にも相談した上で、再度、校外さんに話してみた。

 直前に子どもの大けががあっただけに、真剣に検討してくれた。『それはいいと思います。』賛同してくれる意見と、『どうかしら。効果あるかしら。』という意見とあった。でも、とにかく提案はしてみようということになった。


 それに対する、スクールゾーン対策協議会での行政、警察、土木事務所の判断は、

○ 大きな工事となってしまう。地域には他にも危険で早急に改善しなければならないところもあるので、予算面で困難が伴うのではないか。
○ 大きな工事の割りに、効果は期待できないと思う。自転車がさほどスピードを落とすとは思えない。

 それを聞いて、わたしは、衝動的に口走ってしまった。

「警察はパトロールをしてくださっているのでしょうか。ものすごいスピードで走り降りる自転車が現実にあるのです。
 昨年度末は、ぶつけられて大けがをした児童もいます。このままでは、死亡事故だって起きるかもしれません。どうか、よろしくお願いしたいと思います。」
「はい。わたしどもも、できるだけやりたいのですがね。なかなか人的な部分で、うまくいきません。まあ、努力はしますけれども、・・・。」

 ああ。学校に限らず、どこも人手不足なのだね。(警察の名誉のために、付け足すが、パトロールできる状況であれば、してくれているところもある。一般的には、4月、入学児童のために、交差点など、要所要所に立ってくださっている例は多い。)

 それからも自転車がスピードを出せない方法はないか、いろいろ考えたが、名案は思い浮かばず、そのうち、あきらめかけてしまった。



 そんなときだった。土木事務所から電話が入った。

「教頭先生のご心配の件ですが、スロープの中央に、ラバーの突起物をつけたらどうかという案が、うちの事務所で出ましてね。
 車椅子の通行には、支障がない高さにしますし、ラバーが邪魔して、自転車はスピードを出せなくなるのではないか、降りて押していく人がふえるのではないかという結論になりました。
 学校でもご検討いただけないでしょうか。」

 すごい。これは、名案だ。うれしくなってしまった。感謝の気持ちを最大限お伝えした。校長にも、校外さんにも報告し、喜んでもらった。

 正式にお願いすることにした。



 それからは早かった。

 設置された喜びは、子どもにも伝えたかった。校長先生が、全校朝会で話してくださった。

「PTAの方々や、お役所の方々が、みんなの交通安全のことをいろいろ考えてくださいました。
 ほんとうは、あそこは、自転車は降りて押していくことになっているのですよね。

 でも、約束を守らない自転車がたくさんあって、なかにはすごいスピードで走り降りる自転車もありました。あそこを通って学校へ来る子たちはこわい思いをしたと思います。

 でも、このたび、道路工事の人たちが、〜。これからは安心して通れるよね。よかったね。
 みなさんも、交通のルールを守って、けがや事故のないように、気をつけてください。」



 この件は、これで一件落着した。だが、地下道にかかわる要望は、その次の年もあった。どれも、校外さんからの要望だった。

○ 地下道のなかが暗い。照明をふやして明るくしてほしい。
○ 入学したばかりの子どもは、地下道で迷ってしまい、出口を間違えることもある。北口とか南口とか書いてはあるが、全部漢字なので読めないのだ。かなをふっていただけたらありがたい。

 これも、快く了解して、改善してくださった。

 前者は、わたしが着任する前年に、明るくしたばかりだったそうだ。それでも、この要望を受け、さらに明るくしてくださった。これは、子どもの通学以上に、防犯上の効果も大きかったはずだ。

 後者は、もう、数日後にはやってくださった。




 このたび、この記事をまとめるために、久しぶりにこの地下道へ行ってみた。

 感激することがあった。

 スロープは、ただラバーの突起物があるだけではなかった。それに加え、何と、二段になっているではないか。ラバーを含めれば三段だ。(写真を参照してください。)

 ああ。これなら、自転車に乗ったまま降りる者はいないだろう。現に、15分ほど見ていたが、皆さん、自転車を降り、押して歩いていた。
 そのたびに、自転車の方に、心のなかで、『ありがとう。ありがとう。』と繰り返していた。

 わたしが転勤した後もなお、スクールゾーン対策協議会で、改善要望が出されたのではないか。それで段差をさらにふやしてくれたのではないか。そんな想像をした。


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 たまたま、ここを通る方や、通勤のために毎日通る方は、このようなことに、いちいち感激しないでしょう。わたしもよそだったら、そうなるに違いありません。
 
 今、あらためて写真を見て、思います。

『なんて簡単なことか。こんな簡単なことで、あんなに、ない頭を悩ませていたのか。』と。

 そう思うと、一人、おかしくなってしまいました。今となってはなつかしい思い出です。

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rve83253 at 05:23│Comments(0)TrackBack(0)子どもの安全を | 学校経営

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