2007年10月31日

学力検査の『品質』を高めるために(2)3

23c33d49.JPG わたしが地域の学力検査実施について、その責任を負う立場にいたある日、教育委員会から電話が入った。

「今、市民の方から電話がありました。学力検査についての質問でしたので、toshi校長先生から、その方へご説明していただけますか。

 電話を受けたのはわたしではなくて、事務吏員なのですが、質問の趣旨は、

 『我が市の学力検査は、一体、何の役に立つのか。』ということのようです。『生活実感を大切にしていることは分かるが、受験向きの問題にはなっていない。
 本屋へ行っても、この学力検査のような問題集は見たことがない。そんな検査で、一体何をはかろうというのか。』そうおっしゃるのです。

 電話番号を聞いておりますので、よろしくお願いします。」
とのことだった。


 それ以前に、やはり一市民の方から、

「問題は式が立てられ、答えが出せればそれでいいではないか。何で面倒くさい、『こんな考え方もある。あんな考え方もある。』といったような文章をつくって、問題をややっこしくするのだ。

 おかげで、うちの子は答えを出せるのに、変な問題のために、×になってしまった。」
という抗議とも言えるような電話をいただいたことがあった。


 それに対しては、

 通信票の観点を見てもらえれば分かるように、算数の学力には、

○算数への関心・意欲・態度
○数学的な考え方
○数量や図形についての表現・処理
○数量や図形についての知識・理解

の4つがあること。

 ご指摘の問題については、『数学的な考え方』にかかわる学力を問う問題であること、
などを説明した。ご納得いただけたかな。

 ところで、蛇足だが、小学校でも、『数学的な考え方』と言うのだよね。けっして、『算数的な考え方』とは言わない。


 そのようなことがあったから、緊張感をもって電話をかけた。


 そうしたら、なんと、

「わたしは、一昨年引っ越してきたものなのですが、前の学校では、このような学力検査はありませんでした。

 それで、子どもが持ち帰った検査を見ると、『あっ。いいなあ。』と思ってしまいました。

『算数の問題なのですが、何気ない子どもの生活の場面をとり上げて、その中で抱く算数的な問題意識を大切にしているな。』
『ちょっとこれまで見かけたこともないようないい問題だな。』と思いました。

 そして、そういう問題集があれば、我が子のために買ってやりたいなと思いましたし、
 また、日常の何気ない生活のなかで、算数的な話題を親子でとり上げられたらすてきだなと思い、
 その参考になる本でもあったらと思い、一年間、本屋に行くことがあると、探しておりました。

 しかし、とうとう、見つけることはできませんでした。みんなドリルのようなものや受験用といった感じのものばかりですね。

 それで、そういう問題集でも、本でもいいのですが、ご紹介いただければと思い、教育委員会へ電話をしたのです。」


 なんだ。ぜんぜん違うではないか。大変な評価のお言葉をいただいた。

 感謝の思いをお伝えするとともに、自分は算数が専門ではないので、算数の作問の世話をしている校長に聞いてお答えします。そう答えた。


 それにしても、教育委員会は、何だろう。市民からの電話というと、苦情、抗議のたぐいと決め付けてしまっているのではないか。とんでもない聞き間違いをしたものだ。おかしくなった。


 算数の作問のお世話をしている校長にうかがうと、そういう問題集は、心当たりがないとのことだった。そして、『ご満足いただけるかは分からないが、』と言って、本については、2冊紹介してくれた。

 だが、残念なことに、今、検索にかけてみたが、双方とも見つからなかった。


 でも、ホームページについては、それと似たものが見つかった。今、それにリンクしよう。

   ピラミッドの算数

 ただし、算数とあるものの、後半はむずかしかった。確認すると、中学生以上が対象とのこと。
 だから、あくまで、参考資料として、ご覧いただければと思う。


 また、以前から、拙ブログにリンクしてくださっている、こだま先生のブログ、

    道草学習のすすめ

に連載されている、絵解き「お話」文章題は、おすすめである。親子で楽しく解けるのではないか。

 ただし、親子で解く場合、親はよけいなことを言ってはだめですよ。あくまで、子どもが楽しく解けるような声かけをお願いします。

 そうですよね。こだま先生。



 すみません。ここでは、学力検査の『品質』を高める工夫を書くのだった。

 るる述べてきたように、作問にあたっては、市民の声も大切にする。

 それも、品質をよくするための工夫だ。

 それだけではない。

 教員の声、それから、これは、各教員に聞いてもらうのだが、子どもの声も大切にする。

 たとえば、

「たくさん考えてとても疲れたが、資料をよく見れば分かるから、解くのが楽しかった。」
「知らないことが分かって、頭がよくなったような気がした。」
「問題がお話のようだった。」
「ドリルや問題集とは違った問題がたくさんあって、よかった。」
「解くのが、めんどうくさかった。」

などという声だ。

 子どもたちも、市販のドリル、問題集とは異なっていることが、よく分かっていたようだ。


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 今日は、本論が、最後の、ほんのわずかになってしまいました。どうも、すみません。

 次回ですが、KGさんのコメントでリンクしてくださった、OECD・PISA調査責任者のアンドレア・シュライシャー氏の講演録をとり上げます。
 PISA調査については、大きな誤解があるようです。わたしも誤解していました。その辺のことを記事にしたいと思います。

 それでは、今日も、皆様の清き1クリックを、どうぞ、よろしくお願いします。

  PISA調査がねらうもの(1)へ続く。

  本シリーズの(1)へ戻る。


rve83253 at 17:50│Comments(6)TrackBack(0)評価観 | 算数科指導

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この記事へのコメント

1. Posted by KG   2007年11月01日 09:29
toshi先生のお話しをうかがっていると、作問の品質を高める作業というのは、実に対話にあふれた作業なんだなぁと感じます。
佐藤学先生は、学びを次のように定義しています。
自己との対話、他者との対話、対象世界との対話。
良問を創り出す、問題の品質を高める作業というのは、実に対話にあふれた創造的な世界なのだと痛感しました。
教育委員会の誤解は笑っていいのか笑えない事なのかはさしおいて、そのような親の気づきまで促進するようなテストはかなりすごいですよね。結果を公表して学校のランキング付けを行う為のテストもあれば、子供を真摯に評価した上で親の気づきも促進するようなテストもある。
後者のようなテストがますます増える事を祈ります。
2. Posted by こだま   2007年11月02日 09:34
拙ブログを紹介していただきまして、ありがとうございます!

全国学力調査は個人的には無駄だとは思わないのですが、問題内容はまだまだ真の学力を問う内容になっていないということで失敗に終わっていると考えます。あれなら、来年以降ずっと続けることは無意味です。1回きりでいいと思います。

一方、御地域の学力調査は興味深いです。こうした取り組みが広がれば、状況はかなりちがってくるのではと思いますが、そもそも学力の捉え方そのものが、ちがっていれば魅力的なものにうつらないかもしれないですね。
3. Posted by せきちゃん   2007年11月02日 19:42
なんだか心あたりがあるなぁという気持ちで読みました。


放課後、保護者から、電話があると、ドキッとします。


PISA型……のお話、楽しみにしています。
4. Posted by toshi   2007年11月03日 01:01
KGさん
 ああ。またまた視野を広げさせていただきました。
 『対話にあふれた創造的な作業』
 ほんとうにそうだなったなと思います。
 そう言えば、単に、知識・理解を問う作業だとすれば、それは密室における作業でも、できるのでしょうね。
 今、地域単位の学力検査実施は、ふえていることでしょう。それが、どの目的で実施されるものなのか、子ども一人ひとりを伸ばすための検査であるのか、見守れるといいのですが、
 もう一つ。今後ますます一般市民への説明、啓発が必要になることでしょう。皆さんの理解を得る努力も大切と思います。
5. Posted by toshi   2007年11月03日 01:08
こだまさん
 おっしゃる通りと思います。
 わたし、以前の国の問題にくらべれば評価できるとしましたが、やはりね。
 最近も新聞に載っていましたが、『平行四辺形の底辺と高さだけを載せて』面積を出しなさいと言っても、それでほんとうに、面積にかかわる知識・理解をはかるテストになっているのでしょうかね。単なる計算問題に過ぎないとも言えるように思います。
 今後も、調査の目的を注視していきたいと思います。
6. Posted by toshi   2007年11月03日 01:18
せきちゃんさん
 そうでしたか。ドキッとさせてしまったかな。すみませんでした。
 PISA調査については、市民だけでなく、教員の多くも誤解しているのではないかと思います。国別ランキングにばかり目を奪われているのではないでしょうか。

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