2007年11月08日

PISA調査がねらうもの(1)4

4be67e5d.JPG 先日の、拙ブログ記事、『全国学力検査の結果公表で、』に対し、KGさんからコメントをいただいた。
 そのなかで、OECD・PISA調査責任者のアンドレア・シュライシャー氏の講演録をご紹介いただいたが、これは、大変貴重なものだった。

 もちろん、貴重なのはすべてなのだが、PISA調査に対し、多くの国民が、表面的な部分しか見ていないのではないか。いや、実は、このわたしもその一人なのだが、そういう意味で、貴重だと思ったのである。

 数々の誤解を生み出すマスコミ。
 そう承知していながらも、日ごろは、マスコミ情報しかたよりにせず、いろいろ判断してしまう自分。
 その危険性を、このたびもまた感じた。反省しきりである。
 そういう意味で、KGさんには、多大な感謝の念をもっている。

 この講演のなかで、シュライシャー氏自身も語る。

『各国の全体的な習熟度やその国のランク順位に新聞は大変な興味を示しますが、これらからは、たいしたことは分かりません。』(P13)

 そう。まさに、日本もその術中にはまった感がある。今の学力低下論の源には、まさに、この、PISA調査への曲解があったのではなかろうか。
(もっとも、その主要な部分は、次回以降に書かせていただきます。)

 KGさんもおっしゃる。

『日本もPISAの結果の分析は行われてはいるのですが、PISAについては国際的な順位だけが報道などで先行しているようで、その中身についてtoshi先生のような教育現場の人に詳細に伝わっていないところが問題だなぁと感じます。』

 確かにおっしゃる通りだが、わたしに限っては、わたし自身も誤解していた一人として、わたしの怠慢であったとしか、言いようがない。すみません。


 恥ずかしながら申し上げるが、

 わたしは、いつのことだったかなあ。Hidekiさんからいただいたコメントに、PISAなる言葉があったとき、その言葉を知らなかったのだもの。それからは、検索などでいろいろ調べましたけれどね。



 さて、この講演だが、あまりにも膨大である。そこで、講演そのものは、リンクさせていただくとともに、本記事では、要約させていただく。
 さらに、それでも、一回で語るのは無理である。そこで、3回に分けて掲載させていただきたい。
 なお、講演内容は◎で、記述する。
 また、わたしの考察は※で、随時、加えさせていただく。



 それでは、まず、PISA調査結果報告にリンクする。

   PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査 文部科学省

 次に、シュライシャー氏の講演にリンクする。KGさんからご紹介いただいたものである。

   OECD・PISA調査責任者のアンドレア・シュライシャー氏の講演録

 この講演は、2003年1月に行われた。したがって、講演の根拠としている調査は、2000年実施のものであろう。




 さあ、それでは、講演に入ります。



◎日本は、世界最高レベルなので、結果について、(日本で)話すのは気が楽だ。

※冒頭の挨拶のなかの言葉。そこからして、この言葉である。
 なんだい。日本は学力が低下したのではなかったのか。百歩譲って、低下したとしても、それは最高レベルのなかでの低下であるに違いない。

※シュライシャー氏は、ドイツ出身。そのドイツは成績があまり芳しくなかったので、どうも、ドイツで説明する際には、苦慮される点があるのではないかと思われた。



◎PISAは、ただ単に学力を見るのではなく、学校教育の成果が、その後の人生にどう生きるのか、あるいは生きないのか。そういうことに踏み込んで調査をしている。

※そう。だから、日本特有の受験用学力を測るものとは、ちょっと問題の質が違うのだろう。



◎日本は、調査結果を総合すると、世界第1位である。分野ごとに見ると、数学と科学は、1位と2位だった。しかし、読解(評価したり、熟考したり、推論したりといった能力)には、課題が残る。

※しつこいようだが、これは、2000年実施のものを言っている。



◎問題解決能力、たとえば、パターンを認識して、そこから類似性を見い出したり、発展させたり、問題を認識して解決の戦略を展開したり、その戦略を評価したりする力を問うのは、まさに、始まろうとしているところ。

※2003年には実施されている。詳細は、上記リンクの、国のHPでどうぞ。表10。下から2つ目の表の右側です。

※もっとも、次回以降にふれるが、
 同氏講演の後半部に、問題解決能力を測る問題が例示されている。それを見ると、わたしが、思っている問題解決能力とは、かなり次元を異にする内容のようである。
 


◎対人関係力を診る問題は、今、まさに開発中。コミュニケーション、グループに参加する能力、グループで何らかの機能を果たす能力、一緒に作業する能力、他人の役割も果たしてもらうための能力、これらは、今後開発に向かうだろう。

◎やる気や自己評価力など、学習への取り組み方、学習方法や自己への配慮や関与の仕方。これらはもうすでに調査に入っている。
 以上述べたように、評価できていない未開発分野にも取り組んでいる。

◎それは評価しやすい部分だけに限定してしまえば、人々はその分野にのみ関心を集中させてしまい、各国の教育システムの成否を論ずるようになってしまうし、それを恐れるからである。

※ PISAが目ざしているのは、

 学校教育が、一人ひとりの子どもの将来の人生において、どれだけ有効となる学びを保障しているか。それを測ることである。
 それにしても、PISA調査が目ざすところの、壮大な試みには、心うたれるものがある。調査できない能力はないと考えているかのようだ。従来わたしたちは、『そのようなものは、ペーパーテストでは測れない。』と平気で言ってきた。その壮大な試みに拍手を贈るとともに、どのような調査内容になるのか見守りたい思いだ。
                   (続く)


にほんブログ村 教育ブログへ

ninki


 先の、『全国学力検査の結果公表で、』の記事で、わたしは、『学力低下を裏付ける資料はある。』と書きました。そのとき、このPISA調査が頭にあったことは否定できません。
 しかし、この調査ですら、目的はまったく異なるのです。

 マスコミがいかに目的をねじ曲げ、それに、国民をのせてしまったか。そして、政府までそれに動揺したというのが、今の日本の現状でしょう。

 日本の学校はもっと自信をもってよさそうです。

 もっとも、そうした点の中心は、(2)と(3)でふれることになります。すみません。

    (2)へ続く。

rve83253 at 16:15│Comments(2)TrackBack(2)評価観 | PISA

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. PISAと「学力テスト」の問題  [ よたよたあひる’S HOMEPAGE ]   2007年11月11日 21:49
やらなくてはならないアンケート集計と分析からちょっと逃避。まったく「封印」できていません(爆)とりあえず、このところ「学力」「学力テスト」について、私が勉強しているサイトのご紹介をします。↓「学力」についての興味深い考察、「教育の窓・ある退職校長の...
2. PISA  [ Googleニュース検索キーワード ]   2007年12月07日 05:13
日本「ゆとり教育で学力低下」…pisa調査結果中央日報日本が2000年以後、3年ごとに実施される国際学習到達度調査(pisa)発表結果に大きな衝撃を受けている。日本の高校生たちが数学と科学部門の応用力、読解力など3部門の ...(続きを読む) pisa 現場教師ら、理数離れに危機...

この記事へのコメント

1. Posted by よたよたあひる   2007年11月11日 22:00
はじめまして。楽天ブログのよたよたあひると申します。中学生の娘が一人いる母親です。とっても参考になる記事をありがとうございました。

こちらのブログからリンク先のアンドレア・シュライシャー先生の講演を拝読してとても得るものがありました。

自分の日記にこちらの記事、(1)(2)ともに、リンクをいただきましたので、トラックバックをお送りいたします。もしもご迷惑だったら削除していただいてかまいません。

このところ、全国共通学力テストの問題を見ていろいろ考えておりましたが、PISAの問題と比べてみて、現行学習指導要領の問題、というより、その実施にあたっての日本社会の問題がいろいろとあるなぁとあらためて考えた次第です。
2. Posted by toshi   2007年11月12日 08:46
よたよたあひるさん
 コメントとTBありがとうございました。
 ご迷惑などと、とんでもありません。
 PISAの問題までご紹介いただきましたので、考察をさらに深めることができるのではないかと思っています。
 やはり、日本の伝統的な問題とは、かなり趣を異にしているようですね。
 そして、日本の教育が変わろうとしている点、日本の教育を評価している点、逆に、問題点などが浮き彫りになっている感じがします。
 教育政策は、国による全国調査等とも勘案し、かなり具体的に、打ち立てることが可能になったと思います。
 さあ。問題は、そうした成果をふまえた改革が行われるか否かですね。
 どうも、KGさんが拙ブログ、『学力検査問題の『品質』を高めるために(1)』にくださったコメント5番でおっしゃっていたような問題があるように思います。

コメントする

名前
URL
 
  絵文字