2008年03月21日

卒業式の式辞5

f051a15b.JPG 卒業式のシーズンとなった。

 今日は式辞にまつわる思い出と、一番印象に残っている式辞とを、掲載させていただきたいと思う。


 教頭一年目の卒業式前日、わたしは校長から、式辞の原稿をわたされた。わたされれば、読まないわけにはいかないから、読み始めると、校長に言われた。

「今は読まなくていいよ。式準備が行き届いているか点検したり、式の進行について教務主任と打ち合わせしたりするなど、忙しいだろう。ただ、よく分かる所に置いておきなさい。」

 そう言われて、動き回っているうちに、式辞の原稿のことは忘れてしまった。


 式終了後、言われたことは、

「なぜ、原稿をわたしたか分かっていないのではないかな。」

「あっ。はい。・・・。ここにありますけれど。」

「それはな。わたしが、前日、あるいは当日の朝までに、通勤途中事故にあったり、発作が起きて入院したりしたら、教頭はこまるだろう。式全体に気を配ることで精一杯だろうから、とても式辞の内容まで考える余裕はない。

 でもな。ふだんの朝会とは違って、卒業生に対しては、長く心に留める話をしなければいけないし・・・、
 それに、保護者や来賓の方々が大勢いらっしゃるのだから、なまはんかな調子で済ますわけにはいかない。

 だからな。そういうときの代読のためにわたしたのだよ。
 これは、校長としてのマナーだ。」


 そう言われて、痛く感動した。感謝した。

 そうか。校長たるもの、そこまで、用意周到を目指すのか。すばらしいことを教わった。

 それで、自分が校長になってからも、必ず、原稿を前日にわたすようにした。自分がかつて教わったことを言いながら・・・。


 ところが、おもしろいものだ。教頭に言われたことがある。

「実際の校長先生のお話は、原稿とずいぶん違っていましたね。でも、卒業生に心が通う感じがしましたから、違った方がよかったです。」
「そうだよ。あれはあくまで代読用なのだから、自分が話す場合は、あの通りしゃべる必要はない。」




 さて、それでは、9回の式辞のなかで、一番印象に残っているものを書いてみよう。もちろん、実際に話した内容だ。原稿ではない。


 なお、この記事は、すでに書いた『記念の授業(4)道徳 卒業のときに』と、一部記事の内容が重なります。ご了承ください。

 また、本式辞で引用している道徳の教材文は、『記念の授業(1)』に記載しています。よろしければご覧ください。


 それでは、どうぞ。




 急に春めいてきましたね。今日は、朝からとても暖かな陽気です。

 いつものように、朝、校門に立っていたら、2年生が声をかけてくれました。
「校長先生。今日は卒業式があるのだね。わたしね。6年生にプレゼント作って来たの。わたすのが楽しみなんだ。お別れ式もがんばるからね。」
それを聞いて、とてもうれしかったです。いい卒業式になるなって思いました。

 〇〇名の卒業生の皆さん。卒業おめでとうございます。今、一人ひとりに、卒業証書をおわたししましたけれど、みんなどの子も、『やったあ。』『うれしいな。』『中学生になってもがんばるぞ。』そういう表情がうかがえて、ほんとうにうれしく思いました。

 わたしは、〇年間、みんなとともに過ごしてきましたけれど、みんなの学校における生活のすばらしさ、見事だったこと。

 朝会などでね。何回も、下級生にやさしい6年生とか、みんなが協力し合って、助け合って、すばらしい学級を創り上げてきたこと。朝会などで何回も、そういう話をしてきました。今日はその最後だと思っております。


 皆さんのね。そういうすばらしい生活が、このA小学校のよい伝統となって、よい校風となって、見事に下級生に引き継がれていると思います。

 昨日、5年生は、この卒業式の式場づくりをしてくれましたけれども、誰一人として遊んでいる子はいない。みんな一生懸命仕事をやってくれている。
 4年生もついこの前、2分の1成人式がありましたけれども、ほんとうに立派な見事な発表でした。

 そして、ここに、1年生、2年生、3年生はいないのですけれども、先ほども言いましたように、みんな、6年生を慕っている。
 お別れするのはいやだけれども、いつまでも一緒にいたいけれども、中学生になるのだから、甘えてはいられない。
 お兄さん、お姉さん、元気で立派な中学生になってくださいという、そういう下級生はいっぱいいます。

 わたしは、それらを見ていて、『ああ。これは、6年生のおかげだな。6年生が下級生によい影響を与えてくれたのだな。』と思って、ほんとうにうれしく思いました。
 高いところからではありますけれども、今、この席から、6年生の皆さんに、心からお礼を申し上げたいと思います。ほんとうにありがとうございました。



 ついこの前ですけれども、わたしは6年生と卒業を記念しての道徳の授業を行いました。どの子の発言もすばらしくてね。わたしは感激のしっぱなしでした。今、その授業を振り返りながら、皆さんのすばらしかった小学校生活を確かめ合っていきたいと思います。


 初め、わたしは皆さんにこう質問したのでしたね。『中学生になろうとしている今、もっとも大切にしているものは何ですか。また、その理由は何ですか。』

 そうしたらねえ、もうわたしが思ってもいないようなすばらしい発言が続きました。

『努力です。努力すれば、夢がかなうと思うから。』
それから、
『涙です。涙を大切にすれば、うれしいとき、喜びのとき、感動の涙を流せるから。』
それから、
『命です。命はそれぞれに一つしかないから。』
そういうことでしたね。それから、
『友達』というのもありましたね。『みんなと協力し合って助け合ってきたからです。』

 そして、その発言を受けて、ほんとうに感激したのは、『友達の個性です。』そういう発言がありましたね。すごいと思いました。


 それで、その、すごいと思った理由ですけれども、『これは口先だけのことではない。わたしは、みんなと〇年間一緒に過ごしてきた。その生活を振り返ってみると、皆さんの実践が、これらの発言がほんとうであることを裏付けている。』そう思いました。

 もう一つ。『発言した子は、それぞれ一人ずつですけれども、これらはみんなの心だな。』そう心から思えたこと。それが感動した大きな理由だったと思います。

 『お友達の個性を大事にしてきた。』その言葉について、わたしはみんなのいろいろな生活を思い浮かべました。
 とかくね。元気な子、積極的な子、こういう子は、慎重に、ゆっくりやる子をいやがることがあります。タイプの違う子を避けたり、いやがったり、ひどければいじめたり、そういうことが案外あります。
 ところがみなさんは、違うタイプのお友達であっても、違うタイプの姿、それを認めたまま、ほんとうに仲良くしてきた。お友達と。

 そして、お友達の喜びを自分の喜びとした。うれしいことがあるお友達に対し、『それは、よかったね。』と心から喜んであげることができました。また、悲しんでいるお友達に対しては、心から同情し、そのお友達の悲しみを和らげて上げることができました。』



 あの授業では、60年ぶりに母校を訪ねたおばあさんの話をとり上げました。あのおばあさんは、小学校時代のなつかしい思い出が忘れられなくて、苦しいときは思い出を生きるバネとして60年間生活してきたのですよね。そして、60年ぶりに母校を訪ねた。

 そういうおばあさんのお話をとり上げながら、わたしは先ほどから言っているように、皆さんのすばらしい生活、これはまさに、おばあさんの思い出に匹敵する。あるいは、それ以上の価値ある思い出を創ったのではないかな。そう思いました。
 あの授業のなかで、『わたしも、60年たったら、このA小学校を訪ねてみたい。』そう思った子はいっぱいいたのではないかな。そう思いました。



 わたしは、今、ここでね。皆さんにそのことを、ぜひ、お話したいと思います。

 人生80年。・・・。長いですよね。その間、うれしいこと、楽しいこと、幸せなこと、そればっかりだったら、人生はどんなにいいか分からない。

 ね。そうなることを願うけれど、そうなってほしいと思うけれど、なかなかそうはいかないのも人生です。やっぱりどうしても、つらいこと、苦しいこと、さけて通ることはできないと思います。

 そういうときにね。あのお話のおばあさんのように、小学校時代の、この6年間のすばらしい思い出を生きるバネにして、がんばって、生き抜いてほしいと思います。


 それとともにね。『小学校時代がなつかしい。』そういうことだってかまわない。また、苦しかったり、つらかったりするときは、なおのこと、『よし。あのなつかしいA小学校を訪ねてみよう。』そう思ってくれたら、A小学校の先生方、教職員、わたしも含めて、うれしいと思います。

 50年、60年たち、このA小学校は、まだ、〇〇年の歴史しかないけれど、50年後も60年後も、このAの地に、学校は間違いなく建っていることでしょう。そのとき、校舎は建て替えられているかもしれない。教職員は全部変わってしまっているでしょう。

 しかしね。そのときの、A小学校の校舎が、それから、そのときの教職員が、皆さんをあたたかく迎えてくれると思います。勇気を与えてくれると思います。
 
 そうしたら、『よし。また、あしたっからがんばろう。』そういう気持ちになってくれたら、ほんとうにうれしく思います。

 そのことを、ぜひ忘れないでほしいな。そう思います。



 最後に、一つ。

 あの授業のなかで、『家族を大切にしたい。』『家族に感謝したい。』そういう発言がありましたね。

 今、皆さんの後ろに、おうちの方が大勢お見えです。皆さんの成長をね。ほんとうに喜んでいらっしゃると思います。

 12年前は何もできなかったはずですよね。一人では。
 全部おうちの人の助けを借りていた。
 12年たって、今は何でもできる。一人でやれないことはない。たぶんそう思っていると思います。

 皆さんにとっては長い12年間だったかもしれないけれど、おうちの人にとっては、あっという間の12年間だったのではないかなと思います。

 今、皆さんの晴れの姿を見て、おうちの方々のお喜び、感慨は、ひとしおのものがあるでしょう。

 おうちへ帰ったらぜひね。『ありがとうございました。』感謝の気持ちを伝えてほしいと思います。いえ。伝えるものと確信しています。


 それから、この席には、教育委員会のB先生を始め、町内会の皆様、地域の皆様、PTAの皆様、卒業生のお祝いのために、お越しいただいています。

 こういう方たちにもね。感謝の気持ちを忘れないでほしいと思います。

 特にね。皆さんの見えないところで、皆さんのために力になってくださっている方々が、このまちには、大勢いらっしゃいます。

 楽しい子ども会の行事、地域のお祭りなどは、皆さんの目に見えますけれども、みんなが住みやすいように、まちの施設を改善してくれたりとか、いろいろな行事の計画を立てたり準備をしたりしてくれたりする、そういう方々の努力は、皆さんの目には見えないと思います。
 しかし、そういうところにも、皆さんの幸せのために、がんばってくださっている方々がいらっしゃるのですから、ぜひそういう方々も含め、感謝の気持ちをもってほしいな。そう思います。

 とともに、この席には、皆さんの進学する中学校を代表して、C中学校の校長先生もお見えです。

 『よろしくお願いします。』そういう気持ちをもっていることでしょう。

 中学校に上がって、今度は、より大人に近づくわけだよね。皆さんもね。中学校のためにがんばる。まちのためにがんばる。そういう面で、大きな位置を占めるに違いない。そう思います。


 いよいよ、お別れのときが来ました。立派な中学生になることと、確信しています。元気でね。

 これで終わります。


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ninki



 かなり長いですね。
kodomo118
 すみません。ふだんは短いことを心がけているのですが、卒業式だけは、こんなにもしゃべってしまいました。

 ですから、予行のときを使い、子どもたちには、あらかじめ、長くなることを伝えていました。

 子どもたちは、自分たちのことをいっぱい言われるものだからでしょう。真剣に、顔をこちらに向けて、聞いてくれました。

 
 それでは、今日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。感謝の気持ちはもちつつも、なお、1クリックも、よろしくお願いします。

rve83253 at 02:27│Comments(2)TrackBack(0)学校経営 | 学校行事

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この記事へのコメント

1. Posted by せい   2008年03月22日 20:10
以前、数度コメントさせて頂いたことのある「せい」です。
Toshi先生、ごぶさたしております。
初任者だった私も、3年目を終えようとしています。
折に触れ、こちらのブログをのぞかせていただいておりました。

先日、うちの学校の卒業式が終わりました。
在校生まで感極まって泣いていました…
我が校の校長先生は新任の方で、初めての卒業式ということもあってか
とても緊張されて、何度も何度も練習されていました。
校長先生にとっても、卒業式の式辞って
やっぱり大切なものなのだなあと改めて感じました。

いよいよ私も初任校から異動になりそうです。
ここでの最後の卒業式なんだと思うと、
まるで自分も卒業するような気持ちになりました。
卒業式って、誰にとっても本当に大きな行事ですね。
2. Posted by toshi   2008年03月23日 08:19
せいさん
 ああ。なつかしい。マイルストーンのせいさんですね。
 お元気そうで何よりです。
 そうですか。もう、3年目を終えようとしているとのこと。ほんとうになつかしいです。

 すばらしい卒業式だったのですね。在校生まで泣くなんて、やはり固い絆で結ばれていたのだなと思いました。
 校長先生のお話は、なんかほほえましく思いました。わたしは新任校長のとき、自校昇任だったからかなあ。その辺は度胸がすわっていたように思います。

 異動になりそうとのこと。早めにいろいろな学校を経験することはいいことです。地域等によって学校の雰囲気もずいぶん変わりますから、初任のときに、あまり一つの学校に長くいて、その雰囲気に固まってしまうのはよくないと思うのです。
 新天地でもがんばってくださいね。そして、ときどきは、コメントでもメールでもくださればうれしいです。

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