2008年12月14日

テレビ報道番組から、(4) 公教育の改革は現場の力で!

7dd4d702.JPG すみません。前記事で予告させていただいた、『生活単元学習』については、次回以降に譲らせていただきます。

 本記事では、『真相報道バンキシャ』で報道された、『問題校が模範校に・・・公立中の自力改革』をとり上げさせていただきます。

 また、本シリーズでは、毎回、同番組のブログにリンクさせていただいています。そこには、テレビで報道された映像が入っていて、それを毎回紹介させていただきながら、記事を書いています。その点、同番組に対しては、深く感謝しております。

 ほんとうにありがとうございます。

  ACTION 真相報道バンキシャ 子どものための「教師再生」を


 なお、『バンキシャ』で報道された映像は、同ブログの左サイドバー『過去の放送』欄にあります。それをご覧いただきながら、本記事をお読みいただければ幸いです。なにしろ、生きた映像ほど、説得力をもち、分かりやすいものはないでしょうから。




 とにかく感動した。

 すごい校長がいたものだ。

 かつては札つきの問題校だったという。学力(学力調査に現れる結果という意味での学力だと思うが、)も低迷した。

 それが、今、学校は落ち着き、心の教育という面では、文科省の表彰を受けるまでになった。学力も地域でトップクラスだという。


 なお、『心の教育』というと、上からの道徳的価値の押しつけというイメージをもたれる方もいらっしゃると思うので、特にふれておきたいが、

 この映像全体を通し、上からの押しつけ的なイメージを感じることは、まったくなかった。同番組は、特にそのことに言及してはいないが、子どもの自主的、主体的な活動により、子どもみずからが心を耕しているのだということは、強く感じることができた。



 この校長の言葉が印象的だ。

「(国や教育委員会が、)いくら制度いじりをしても、その制度を運用するのは教師なのだ。学校を変えるのは学校の力ですよね。」

 ほんとうにその通り。


 わたしもこれまで、教育再生会議だとか、全国学力調査だとか、いろいろなことを話題としてきたが、やはり、教育をよみがえらせる一番の力は、『学校の力』なのである。

 そういう意味で、国や教育委員会のなすべきことは、学校や教員に対し、強圧的、権力的に臨むのではなく、学校や教員を支援する、そして、信頼する、そうした方向性をもった教育行政でなければならない。

 それを実感させてもらえる映像だった。

 
 

 この校長は、7年前に、A中学校に着任された。

 そのころは、札つきの問題校。しかし、いろいろな手を打つなかで、着実に成果を上げ、学校を盛り上げてきた。



〇再び、この校長の言葉を紹介しよう。

『(7年前、着任したとき、)これはやりがいのある学校に来たな。』
と思ったという。

 ここに、この校長の偉大さを感じる。ふつうは悲観的な見方しかしないものね。

 まずは、物事を前向きに、意欲的に、楽観的にとらえる。それこそが、学校改革の出発点だったのではないか。



 番組は、冒頭、A中学校の現状を紹介する。


〇朝の読書タイムがとり上げられる。学校は、生徒がいるとは思えないくらいの静けさだ。毎朝の日課だという。

 目的は、落ち着いて授業に取り組めるようにするための心の準備だ。したがって、読む本は自由。マンガでもよい。

 この辺は、『中学生が学校でマンガか。』などと目くじらをたてる必要はないだろう。あくまで、『目的は何か。』が大切なのだ。


〇次に、ノーチャイムデーの取組が紹介される。子どもたちが自主的に時間を管理しようとする姿勢が見えて、好感がもてた。

 

 次にどうやって、学校改革を進めてきたかが語られる。



 校長の指導。


〇生徒を呼び捨てにしない。頭ごなしに叱らない。生徒との信頼関係を大切にする。

 すると、子どもの言動が穏やかになる。心が変化していく。

 画面では、これだけのことだったが、子どもの心を耕すための取組は、いろいろあったに違いない。


・まず、校長一人でいくらがんばったって、それだけでは、なかなか教職員にはひびかない。校長がいくら率先垂範しても、教職員があいも変わらず子どもに強圧的、権力的に臨んでいたのでは、むなしさを感じてしまうだろう。

 ここには、教職員をも巻き込み、納得させるという意味での、強いリーダーシップがあったに違いない。


・教員の言葉で、思わず、『そうだよなあ。』と思うものがあった。

「(教職員が一致しておだやかな言動を心がけても、荒れた生徒の)行動自体は、すぐには変わらなかった。しかし、会話が成立するようになった。それまではにらみ合いだったのが、話し合いができるようになった。」


 どうだろう。

 こういう場合、荒れた子どもの言動のみにとらわれ、心の変化を見逃していることはないだろうか。

 会話が成立する以前だって、柔和な表情になったとか、口調がやわらかくなったとか、そうした変化はあったと思われる。そういう変化を見逃さない姿勢。それが大切だし、A中学校の教員には、そうしたきめの細かな目があったに違いない。


 また、子どもは荒れた言動。そうしたなかで、教員はおだやかな言動。

 その姿をはたから見れば、子どもを甘やかしているように見えることもあっただろう。そうした批判に対しても、いささかも揺るがない信念のようなものがあったと思われる。

 
 なかなか行動自体は変わらない。いくら努力してもむなしさばかりが残る。裏切られたことも数々あったに違いない。

 しかし、それを乗り越えるくらいの強い校長のリーダーシップ。それなくしては、こういう変化はなかったと思われる。



・テレビでも言っていたが、荒れる生徒を前にすれば、指導がきつくなるのも当然。

 何をかくそう。このわたしにしても、小学校でありながら、対応がまずく、反省したことはしばしばだ。そういうことを痛いほど経験している。あまりえらそうなことは言えないのだが、それだけに、この校長の取組には頭の下がる思いだ。



・テレビの画像によれば、遅刻の常習者に対しても、ジョークをとばし、校長室に招き入れる。『いつでも人生相談にのるよ。』と声をかける。

「こういう子どもの家庭環境は、実にきびしいのですよ。こういう子に対して、大きな力にはなれないが、杖くらいにはなりたい。」


 ああ。いいなあ。

 そう言えば、こういう校長は、わたしの身近にもいたなあ。

 かつて記事にしたこともある。それとあまりにも似ていると感じ、ジーンとしてしまった。


 今、過去記事にリンクさせていただこう。

    中学校長から学ぶ(1)



〇子どもの心に明らかな変化がみられるようになる。

 しかし、ここで安心し、立ち止まってしまってはダメなのだよね。

 この校長は、いや、学校はと言った方がいいのかな。

 次なる手を打つ。

 それは、農業体験だった。畑を耕し心を耕す。総合学習の一環だ。

 だんだんサボる子がいなくなる。収穫した作物をみんなで食べる。その感動が、子どもの心をさらにきたえることになる。

 子どもの言葉がおもしろい。

「自分たちでつくり、それを食べると、すごく感動する。その感動がヤバイ。」



〇そして、さらに、学力向上策へとつながっていく。

・どこかのような、『夜スペ』ではない。

 なんと、管理職も含め、その学校の全教員が、交代で指導に当たる。『パワーアップ教室』という。

 休日に実施。国語、数学、英語の3教科だ。学習レベルの違う3つのコースが用意され、子どもたちは、自由にコースを選ぶ。

 これはすごいことだ。


 小学校と違い、部活がある。そんななかでの指導だ。

 おまけに、3教科なのに、全教員が指導に当たるから、当然、免許外教科を教えることになる教員もいる。その一致団結ぶりには、ほんとうに頭の下がる思いがした。


 映像に表れていたが、社会科の教員が英語の指導に当たる。教え切れなくて、参考書にたよる。また、地域の高校に通う高校生もくわわり、無償で指導に当たるようになる。

 これでは、塾教員の『夜スペ』と違い、決して能率は上がらないだろう。しかし、成果は十分上がったようだ。


 子どもが言う。

「先生方が違う教科でもがんばって教えてくれるから、自分たちもがんばらなければと思う。」

 こうして、非能率を、子どもたちの自らがんばる力がカバーする。学力は地域でトップクラスになったのだそうだ。


・わたしは、ここで、かつて同番組で放送された、ある教育長の言葉を思い出す。

「教師に、責任と権限を与えて、自由にやっていいと言ったとき、教師は燃える。教師が自発的にやる仕事に多忙感はないはずだ。」

    壮大な実験!?

 この学校の教員に多忙感はないのかな。『ない。』と言いたいが、やっぱりあるだろうなあ。でも、それ以上の何かがあるのではないかな。


 映像には表れていなかったが、校長と教職員とのあいだに、強い信頼関係が構築されているに違いない。



〇こうした変化は、保護者をも動かす。保護者がさまざまなかたちで、自主的に学校を支援するようになる。

 これも、上記、信頼関係の輪が広がっていったあかしではないか。




 教育評論家の尾木直樹氏が言う。

「ここには、公立校の本来あるべき姿がみられる。日本の学校がもっていた教育の原風景的な、不易な部分をいっぱいもっているのではないかと感じる。」

 

 上記とは別な教育長は言った。

「成果を出す。結果を出す。これは当たり前のことなのです。」

 そうだ。その通り。

 しかし、その成果とは何か。結果とは何か。

 テストの点数ではあるまい。このA中学校が、見事にその答えを出しているように思った。



 子どもたちが、『校長先生!!』と叫ぶ、親しみに満ちた声。それが耳からはなれない。


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ninki



 この放送で、特に、『意義があるなあ。』と思ったのは、

 このA中学校が、とかく、マスコミ等では、強圧的、権力的な教育行政が目立つとされる東京都内にあることです。

 一口に東京都と言っても、多様なのですね。

 こんなにすばらしい実践を紹介してくださった、『バンキシャ』の皆さんにも感謝するとともに、マスコミ等は、もっともっとこうした取組を、宣伝してほしいと思いました。

 ちなみに、これは、本実践と関係あるかどうか断言はできませんが、東京では数少ない、学校選択制を採用していない地域での実践でした。 

rve83253 at 21:56│Comments(10)TrackBack(1)学校経営 | 学校管理職

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1. 私の目を開かせてくれるtoshi先生  [ 一歩いっぽ・・・前に前に!(マインドマップ教育フェロー・辰巳ジャンプ監督) ]   2008年12月15日 00:08
皆さんに読んでくださいとは言いません。 しかし、ブザン教育協会の公認フェローの皆さんは、ぜひぜひ読んでください。 私のブログにもリンクしてあるのですが、お気づきでしょうか? 「教室の窓・ある退職校長の想い」 というブログがあります。 マインドマップも良いで...

この記事へのコメント

1. Posted by toshi   2008年12月16日 06:34
辰巳ジャンプ監督さん
 TBをいただき、ありがとうございました。
 貴ブログにて、大変なおほめの言葉をいただき、恐縮しております。皆さんにお読みいただければ、うれしく存じます。
 今後とも、どうぞ、よろしくお願いします。
2. Posted by クリス   2008年12月18日 12:12
5 はじめまして。クリスと申します。教育ブログを徘徊し立ち寄らせていただきました。まだ拝見し始めたばかりですが、質の高さに驚くばかりです。時間をかけ勉強させていただきます。またTBをさせていただきました。なにとぞご容赦くださいませ。
3. Posted by toshi   2008年12月19日 04:50
クリスさん
 こちらこそ、ありがとうございます。
 クリスさんは、ブログを始められたところでしょうか。教育について真剣に考え合う仲間として、末永くよろしくお願いします。
 TBは、うまくいかなかったのでしょうか。申し訳ありません。

 
4. Posted by クリス   2008年12月19日 06:30
toshi先生

ご丁寧なコメントありがとうございます。こちらこそなにとぞよろしくお願い申し上げます。

TBですがなぜかうまくいかないようです。私も教育で思うことを書き綴るようになりましたので、お時間ございますおり、ご一読くだされば幸甚です。
5. Posted by Fumi in Bahrain   2008年12月22日 18:46
5 お久しぶりです。
このブログを読ませていただいて、僕も動画を見てみました。一言で感動!です。
国は違えど、あの校長先生のような「勢い」と「熱意」でがんばろう、と思わされました。一教師の出来ることは限られていますが、教育の根底にあるのは、どこでも同じですね。
他の動画なども、近々見ようと思います。(それにしても、インターネットってすごいですね。)
6. Posted by toshi   2008年12月23日 06:51
Fumi in Bahrainさん
 すごい。今は、アメリカから移って、バーレーンの学校でがんばっていらっしゃるのですね。
 大変なつかしいです。現地の子どもたちとの温かな交流と、成果を上げられることを願ってやみません。
 そのうえ、日本の教育事情にも、関心をもっていらっしゃる。頭の下がる思いです。
 この映像に見られる校長先生の姿は、世界中に通用する教育実践でしょうね。
 やはり、心を育んでこその、学力向上策のように思います。
 わたしも学ばせていただきました。
 バーレーンでのご活躍を祈念しています。
 
7. Posted by しょう   2009年04月05日 21:33
 すばらしい実践をご紹介いただきありがとうございます。ブログ記事にも番組にも感動しました。
(本日も応援です)

>「(国や教育委員会が、)いくら制度いじりをしても、その制度を運用するのは教師なのだ。学校を変えるのは学校の力ですよね。」

 まさにそのとおりですね。この学校の実践も拙ブログ(「学校の力を高める」)で特集したU高校のそれとかなりの共通点があると思います。

 学校を変えるのは間違いなく「学校の力」ですね! それをいかにして高めていくかが問題です。
8. Posted by toshi   2009年04月06日 01:44
しょうさん
 テレビを見たときの感動がよみがえってきました。
 『学校の力』。
 それは、目の前にいる子どもを大切にするところから出発するのだと思います。少なくとも、制度がそれをじゃますることのないようにしてほしいですよね。
9. Posted by しょう   2009年04月12日 11:23
 上記記事で紹介された ACTION 真相報道バンキシャ 子どものための「教師再生」を 「教育再生」総集編(2008.12.23 O.A) で愛知県犬山市の教育長は現場の力を高めるためにも教育行政機関の指導性が重要、ということを述べておられました。

 私も何回か教育行政の問題について記事を書きましたが、考えるべきポイントは具体的な政策が「学校の力」を高めていくことにつながるかどうか、ということですね。

 さて、上記ブログ記事(「現場発」の改革)に関連する記事を書きましたのでよろしければご一読ください。

http://plaza.rakuten.co.jp/shchan3/diary/200904120000/
10. Posted by toshi   2009年04月13日 14:17
しょうさん
 URLのご紹介、ありがとうございました。
 TBができないようで、ほんとうに申し訳ありません。
 話は違いますが、犬山市は、今回、全国学力調査に参加することになりましたが、それでも、全児童の答案をコピーの上自己採点し、すぐ指導の反省に生かすということをするようです。
 『ああ。転んでもただでは起きないのだな。』と、感心してしまいました。現場の力はしっかりしたものがあるなと思いました。
 しょうさんがおっしゃるように、教育委員会の役割は、現場を大切にするなかで、現場の力を高めるためのお手伝いをすることですものね。

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