2009年02月08日

娘へ。よかったね。4

81811073.JPG 先日、長女から、驚愕の知らせが入った。

「一月ほど前から、下腹部に鈍痛があったの。それで心配になり、病院に行ってみてもらったら、卵巣に5センチ大の腫瘍があるのだって。良性か悪性か、検査の結果がでるまで一週間ほどかかるのだって。ああ。そんなに待てないよう。

 心配だなあ。だって、お医者さんが、『充実性腫瘍』って打ち込んだのを見ちゃったの。それに、A叔母さんが2年前ガンで亡くなったでしょう。B叔母さんも早期発見でよかったのだけれど、ガンになっているでしょう。わたしの場合もきっと悪性だよ。

 どうしよう。」


 『どうしよう。』と言われても、ただただ、

『充実性腫瘍』と打ち込んだのを見たって言ったって、検査結果が出るのはまだ一週間先なのだろう。今、検査を受けたところで分かるわけがないではないか。それはたぶん、『可能性』という意味で打っただけだろう。

 結果はまだ分からないのだから、心を強くもたないとな。C(孫・長男)はもうすぐ卒園し、小学校入学という大切な時期なのだから、めげていてはダメだよ。」

と言うしかなかった。


 電話の声は暗かった。

 確かに、わたしの妹2人はガンをやっている。わたしも妻も、落ち着いてはいられなくなった。抗ガン剤に苦しむ長女の姿がちらついたりした。


 長い長い一週間がたち、検査結果が出る日。ご夫君へは、『こんな正社員でも解雇されかねない大変な時代なのだから、会社へ行きなさい。』と言って、わたしが病院へ行くことにした。



 よかった。ほんとうにホッとした。


 検査の結果は良性。

 『ぱあっ』と、景色が明るく見えた。

 長女の話す調子も急に変わった。明るく、はずんだ声になった。


 心のつっかえが取れ、それまで、長女の幼いときから現代に至るまで、いろいろなことを思い浮かべてきたことが、なんだかすごくおかしくなってきた。



 さて、

 おかしくなってきたが、今日は、ホッとしたついでに、長女の7年ほど前のことにふれさせていただこう。


 
 そこまで読者の皆さんにお付き合いいただくのは、いささか申し訳ない思いにもなりますが、よろしければ、ごらんください。



 わたしは、現職のとき、まったくの私事であっても、それを学校だよりに掲載させていただくことが、折々にあった。


 そんなしょっちゅう掲載するようなことではない。だいたい保護者や地域の皆さんには関係ない話なのだからね。

 それは確かだが、でも、ある程度、信頼関係を築くことができ、親しみの情がわくようになると、そこに一つの話題ができるので、それらをさらに増大させることができる。

 以下、書かせていただくたよりも、少なからず、反響を呼んだ。保護者の皆さんは全員経験のあることだし、また、ご自分のお子さんの未来に思いをはせる方もいらした。


 それでは、そんなたよりですが、よろしければどうぞ。



   花嫁の父として            校長  toshi


 今回は私事で申し訳ありません。お読みいただけたら幸いです。

 半年以上も前だったでしょうか。それまで、「わたし、結婚なんかしないもん。」と言っていた娘が、唐突に話しかけてきました。

 「お父さん。近いうちに会ってほしい男の人がいるのだけれど、うちへ来てもらってもいいかなあ。」

遠慮がちな物言いに、わたしは初め、その意味が理解できませんでした。話しているなかで、『おお。これは、・・・。なんと、そういうことか。』となり、平常心ではいられなくなりました。


 その日のわたし、来訪を身構えるようにして待っていました。しかし、娘が出先から携帯で、
「お父さん。彼ね。さっきからすっごく緊張しているの。だから、あまりこわい顔をして迎えないでね。」
とのこと。

 『何を言うか。緊張って言ったら、こっちだっておんなじだ。』と言いたかったわたし。玄関先でもう、ぎごちなくなってしまいました。言いたいことはいっぱいあるはずでしたが、何より彼と一緒のときの、娘の満ち足りたような幸せそうな、それまで見せたこともないような表情を見せつけられると、もう何も言えず、ただただ、「娘をよろしくお願いします。」と言うしかありませんでした。


 それから足しげく拙宅を訪れる彼に、息子のいないわたしたちは、新鮮な興奮を感じるようになりました。『よくぞ。こんな好青年を見つけてきたものだ。』そんな思いが日増しにつのっていったのです。

 
 でも、でも、それだけに、思いは複雑さをましていきました。


 挙式の日が近づくと、心の変調をきたしていることを感じざるを得なくなりました。

 会話がギクシャクしてしまうのです。変に間があいたり、話が途中でつっとったりしました。


 挙式前夜、しんみり話していました。娘がまた唐突に、
「お父さん、お母さん、長い間育ててくれて、ありがとうございました。お世話になりました。明日はよろしくお願いします。」

 胸に迫るものがありました。すぐ言葉が出ませんでした。
「・・・。なあに。D(学校だよりには実名を記載してしまいました。)たちが生まれてきたおかげで、わたしたちも、とても楽しく充実した日々を送ることができた。こちらこそありがとう。幸せにな。」

 また、娘はこんなことも言いました。
「お父さん。わたしたちの結婚式で泣かないでね。」
「いや。その点は安心していい。・・・。なにしろ、自分の学校の卒業式でも、感動して目がうるんでくるわたしだ。まず、泣かないということはないだろう。」


 式、披露宴とも、夢の世界でした。娘の満面の笑み、慶びを感じ取りながら、巣立つ娘と、なかなか子離れできそうもない自分自身とをダブらせていました。『理屈では分かっていても、心がそれを受け付けない。』そんな自分を発見し、なさけないなあと思いました。



 式後3日目。

 1・2年生の遠足があり、わたしも引率しました。E公園で、子どもたちとともに遊んだり食事したりしました。その無邪気な様子、純真な姿に、『ああ。この子たちも、将来、すてきな花嫁、花婿さんになるに違いない。』と思ったり、逆に、娘の小学生時代を思い出したりしていました。

 引率でこんなことを思うなんて、やはり変ですね。

 『花嫁の父』の述懐です。



 学校たよりは以上です。



 今、長女、次女夫婦、それに孫たちが、我が家に来ている。先ほどから、孫たちの元気な声が聞こえてくる。

 昨日、長女に言った。

「どうだ。良性って結果が出てホッとしたときから、C(孫・長男)、F(同じく次男)を見る目が違ってきているのではないか。」
「そうね。なんだか、いとおしく感じるようになって・・・。やっぱり違っているわね。・・・。でも、いつまでこの思いが続くかなあ。」
「それは、いつまでももち続けるように、努力しなくちゃ。子どもっていうのは、Dの言うように、いとおしいものだ。」


 そして、今日、言おう。長女、次女夫婦ともに。

 結婚したときの、あの感動、慶び。それもまた思い出し、永遠にもち続けようねと。


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 長女の結果が出る前から、次女には、検査を受けるように言いました。遺伝的な意味では、まったく条件は同じなのですからね。

 こちらは、『異常なし』。まずはよかったです。そして、ご夫君ご両名にも、『受けてね。』と言いました。


 そうだ。遠いフランスにいるG(亡妹の次女)ちゃん。このブログ記事を読んでいるかな。そんなわけだから、できるだけ早く、検査に行ってね。

 そして、読者の皆さんにも、検診をおすすめします。

 かく言うわたしも、できるだけ早期に再度受けることにしましょう。   

rve83253 at 08:32│Comments(7)TrackBack(0)エッセイ | 学校だより

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この記事へのコメント

1. Posted by yoko   2009年02月08日 09:18
お嬢さんの結果が良性で本当に良かったですね。
検査結果を待っている間、とてもお辛かったでしょう。素敵な学校だよりですね。きっと、保護者も昔の自分を振り返ったり、これから先の我が子を思ったりしたでしょうね。
toshi先生もお身体に気をつけて、ブログ続けてくださいね(*^_^*)
2. Posted by kawa   2009年02月08日 18:02
結果が良性で本当によかったですね。
いろいろと想像してしまい、長い1週間だったと思います。私自身も、改めて自分のこと、学生のことを考えてしまいました。
そして、toshi先生も本当にお体に気をつけて、このブログを続けてください。
3. Posted by イノッチ1000世   2009年02月08日 19:46
5 この記事、心にズンと響きました。涙を浮かべながら読ませていただきました。

子を思う親の気持ち、多くの教師に伝えたいと思いました。記事内容を私の職場で紹介させていただくことをお許し下さい。



教師はこうした親の無上の愛情を、我が事として受け止めることが大事だと思いました。
どんな偉そうな教育論議も親の愛情と比べることはできません。理屈や論理ではない。すべてを超える親の愛情。我が子を愛して愛して愛し抜く親。日本の親御様全員がそうあってほしいと強く願っています。


先生もどうぞお体に十分気をつけられて、これからも私たち現役教師の心を豊かに育んで下さい。
4. Posted by toshi   2009年02月08日 21:59
yokoさん、kawaさん
 温かなコメントをいただき、ありがとうございました。
 ほんとうに過ぎ去ってみれば、夢をみていたような気分です。
 でも、世の中には、治療に専念している方もいらっしゃるわけで、そういう方々のご快癒を祈らずにはいられない気持ちです。
 わたしも、せいぜい、気をつけていきたいと思います。
5. Posted by toshi   2009年02月08日 22:08
イノッチ1000世さん
 ありがとうございます。
《子を思う親の気持ち、多くの教師に伝えたいと思いました。記事内容を私の職場で紹介させていただくことをお許し下さい。》
 このようにおっしゃっていただき、まことに恐縮の極みです。よろしくお願いします。
《教師はこうした親の無上の愛情を、我が事として受け止めることが大事だと思いました。》
 わたし、学級担任時代、子育て以前と以後で、やはり、子どもを見る目が変わったように思います。
 どの子も、親の無上の愛によって育まれてきた。そういう子たちをおあずかりしているのだという思いになったものでした。
 今回の件は、あらためて、そのことに気づかせてもらった思いです。
6. Posted by みっきーまま   2009年02月13日 14:34
娘さんの検査結果、本当によかったですね。
こちらも読みながら、ホッとしました。
私達も結婚10周年を迎え、
TOSHIさんの気持ちに父の気持ちを重ねて、娘への思いを見せていただいた気がしています。
家族で、お互いを思いやり、生きてゆく・・・
『愛』ですね・・・
すべての根源のような気がします。
いいお話をありがとうございました。
7. Posted by toshi   2009年02月13日 16:12
みっきーままさん
 ご心配をおかけしました。申し訳ありません。
 『親の無上の愛』。これはやはり、子育てさせてもらいながら、そのなかで自然に育まれる心情なのでしょうね。
 学級経営も同じだなと思います。
 若いときは、ただがむしゃらなのですね。むきになることもありましたし、子どもと張り合うようなこともありました。
 だんだん年を重ねるに従い、身体は動かなくなる代わりに、『無上の愛』的な言葉かけがふえていったように思います。
 我が子は日々成長します。ずっと小学生ということはありません。でも、娘がどんな年頃のときも、『今が一番いい時期。』と思う気持ちが、自然にわいてきたように思います。
 そして、その気持ちは、娘2人が結婚した後も、消えてしまうことはありません。

 ああ。なんか、これをテーマに記事が書けそうだ。

 みっきーままさんのおっしゃる、『すべての根源は愛』に、ヒントをいただきました。ありがとうございます。

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