2009年07月14日

小学校の特活はどこへ? 学習指導要領の変遷から3

0050ae94.JPG 特活と言っても、もしかしたら市民の皆さんには、ご理解いただけないかもしれない。しかし、学級会、係活動、クラブ活動、委員会活動と言ったら、『ああ。知っている。なつかしい。』と、思われる方も多いのではないか。

 ついでに言わせていただくと、先日記事にさせていただいた、代表委員会も、特活のなかの児童会活動に位置づく。


 特活は、新学習指導要領によれば、次のようなねらいをもつ。

 望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り,集団の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的,実践的な態度を育てるとともに,自己の生き方についての考えを深め,自己を生かす能力を養う。


 どうだろう。

 人としての生き方に、もろにかかわる領域(教科ではない。)であることがご理解いただけるだろう。

 もっと言わせていただければ、

・多数決による決定とか、
・少数意見の尊重とか、
・できるだけ、合意を目指すとか、

 そうした意味では、民主主義社会を守り、より確かなものにしていく上でも、大切な学びと言えるのではないかと思う。


 ところが、おもしろい。

 最近、お世話になっている、しょうさんのブログ、“しょう”のブログによれば、学力世界一でいろいろとり沙汰されるフィンランドには、特別活動なるものはないようだ。すべて、学校教育は教科でなされているようだ。

 日本の教育者が、

「市民(公民)を育てていく教育をどのように創っていくのか。」
と質問したところ、
「すべて教科の教育によって行う。」
という答えが返ってきたという。


 確かに、この点に関しては、日本の方がいいようだ。

 だって、『教科による教育』ということでは、なまの生活の場における学びというわけには、なかなかいかないのではないか。

 上記“しょう”のブログによれば、

 日本においては、1950年代、文部省で、

 教育基本法で定められた目標(「人格の完成」、「平和的な国家および社会の形成者」の育成)を実現していくためには、「教科教育」だけでは不充分だとし、

 その結果、「特別教育活動(当時の呼称)」の領域を設けたという。 

 
 わたしは、これでよかったと思う。

 だって、学級生活、学校生活における諸問題については・・・、
 
 たとえば、

・子どもが計画し、準備し、運営するお楽しみ会
・学級生活を円滑に営む上で必要な学級生活のルールや、めあての設定
・係、当番活動などの組織づくりや運営上起こりうる諸問題の解決

など、教科ではとても扱いきれない学習があるはずだ。


 と、まあ、理屈の上ではそうなるのだが、はたして、実践においては、その理念を生かす方向にいっているだろうか。

 これが形骸化しているという心配はないか。

 

〇まず、現状において、特活における学びは、ほんとうに、上記のねらいを達成できる学習になっているだろうか。

 形式にとらわれたり、長年の慣習にながされたり、子どもの活動に見せかけてはいるが、実質は教員の一方的な指示によって動かしていたり、

 特に近年の学力競争の中では、『特活の命』が失わされてはいないか、心配になる。

 
 有無も言わさず、子どもを枠にはめるような教育があると、拙ブログにも、折々コメントが寄せられる。

 いつだったか。拙ブログで話題になった、全校あげての挨拶運動にしても、およそ、『子どもの自主的,実践的な態度を育てる』とは、正反対の取組だった。


〇学習指導要領の変遷に伴い、授業時間の保障が失われつつある。これは、あんがい知られていない。

 これに関係するコメントも、つい最近いただいた。

 それは、『小1プロブレムの心配は?(続・番外編)』の記事に対し、中さんからいただいたコメントの1番である。

 中さんのお子さんが通われている小学校では、むかしは毎週あったクラブ活動が、今は年間10回とれればいい方だとある。

 それに対し、わたしは、コメントの4番で、『(我が地域では、)だいたい15回から20回くらいはとれていると思います。』とお返事させていただいた。


 どうしてこういうことが起きるかというと、学習指導要領に時数の計上がなされなくなったからである。


 平成4年度施行の学習指導要領までは、特活は、年間70時間計上されていた。そして、リンク先の学習指導要領の別表第1の下備考の2をごらんいただければ分かるように、この70時間は学級活動及び、クラブ活動にあてられた。

 それが、次の平成14年度施行の学習指導要領では、特活の時間数は35時間と半減され、同じく備考の2では、学級活動にのみあてられることになった。


 これは、もうすでにご理解いただいていると思うが、学校5日制の影響である。

 このように、クラブ活動の時間は、指導要領の上ではなくなったのに、同指導要領の一番下、第4章 特別活動をクリックしていただければ分かるのだが、第2 内容の、Cには、ちゃんとクラブ活動が位置づけられている。

 つまり、クラブ活動は学校裁量となったのだ。学校ごとに授業時間数はばらついていいことになった。


 さらに、

 引き続き、特別活動の第2 内容欄をご覧いただきたい。

 年間35時間で行うA学級活動の内容がご覧いただけるだろう。

 時間数の裏づけのないものは、クラブ活動だけではない。B児童活動 D学校行事も同様であることが分かるだろう。(ただし、学校行事については、特にふれておかなければいけないことがあり、それは後述します。)


 つまり、学校5日制のしわ寄せが、特別活動全体に及ぶようになった。


〇おそらく、この時間数減と関係があると思うのだが、

 わたしは、初任者指導に携わるようになって5年目を迎えている。

 それで気づくのだが、むかしよくやっていた学級会が、今はおそろしく低調なのである。

 先日、初任者のクラスで、めずらしく学級会のような授業がみられた。

 あまりにめずらしかったので、ある種、感動を覚えるくらいだった。

 しかし、驚いた。

 話し合いの進行をしている子に、
「議長さん。〜して。」
とたのんだら、
「議長さんてなんですか。」

と言われてしまったのである。


 時間に限りのある学級活動だが、学級会、係活動など、バランスのとれた学習が望まれる。

 
 もっとも、今、学習指導要領から、『学級会』なる言葉は消えている。

 それとともに、議題などという言葉も消えていく運命にあるのだろうか。まさか、そのようなことはないよね。


 以上、理念は立派だが、学校5日制と学力狂騒のはざまで、先行きが心配な特活ではある。

 もしもこれが全国的に言えることなら、民主主義の危機のように思えてならない。

 理念だけでなく、教科偏重でもなく、人としての生き方を学ぶのであるから、大事にしたいものだ。

 特活の研究をしている教員がいった。

 『特活は、子どもの哲学です。』と。


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 学校行事については、むかしから、指導要領上、時数の裏付けはありませんでした。これは、何をやるかも含めて、学校の自由裁量だからです。

 入学式、卒業式、運動会などは、やらない学校はないわけですが、つい先日記事にさせていただいた、3校合同の音楽会などは、これはやるほうがめずらしいのですものね。


 今は、『学活』と、時間表に書かれるようです。学級活動のことですね。

 しかし、最初、わたしにはすごく違和感がありました。むかしは、時間表に書くのは、『学級会』だったからです。

 『まるで中学校のようだ。』 

 そう思いました。今は、違和感がなくなりましたけれど。

rve83253 at 00:54│Comments(9)TrackBack(0)教育制度・政策 | 特別活動指導

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この記事へのコメント

1. Posted by 中   2009年07月14日 13:42
こういうことだったのですね…。
クラブや委員会といった活動の時間数が、本校の裁量で、
実際どの程度、別の授業などに振り分けられているかは把握できないのですが、
縦割りで、またクラス以外の子供達と、
時間を共有して何かをする機会を、
昔のように、もっとあったら良いのになあと残念に思います。

そもそも、少子化で子供が少ないので、
掃除も手が回らないようですし、
動物の飼育も、ビオトープ以外はなくなってしまったとのこと。
(アヒル、ヤギなども10数年前までは委員会がお世話の中心になって飼育していたそうです)

昔は委員会や係りなど、
子供達が中心となってやってきたことが、
今は親のボランティアになっているものも多々あります。
手が足りない…なら、なぜ子供達に声をかけないのか?と疑問でした。

でも、こういう実情を知ると、
週5日制で、授業をこなすだけでも、
大変なのがわかります。

学力低下を底入れしたい国の思いもわからなくはないですが、
何か…違っているような気がします。
2. Posted by toshi   2009年07月15日 16:51
中さん
《本校の裁量で、実際どの程度、別の授業などに振り分けられているかは把握できないのですが、〜》
 ちょっと誤解を招いてしまったかなと思うので、記事の至らなかったところは、お詫び申し上げます。
 (クラブ、委員会活動等が)別の授業に振り分けるということが、『教科等の時間をつぶして、』という意味なら、それは違うのです。
 たとえば、新指導要領では、総授業時数は高学年で980時間となっています。1年は35週として計算しますので、週28時間となります。
 しかし、実際は、年間35週(35×5=175日)以上授業日は設定します(我が勤務校の場合今年は206日)し、今は各学校とも、授業時数をできる限りふやそうとして(我が勤務校の場合、高学年は週29時間)いますので、指導要領に定めた以上に授業はやっております。(我が勤務校の今年の高学年総授業時数は1,216時間)
 
3. Posted by toshi   2009年07月15日 16:52
その(1,216−980=236)時間で、学校行事やクラブ活動等をしたり、教科等を指導要領に定められた時間以上にやったりしているのです。
 この、本校236時間にあたる分が、時間数も内容も、学校裁量によるという意味です。
《学力低下を底入れしたい国の思いもわからなくはないですが、何か…違っているような気がします。》
  この時数をどういうかたちでもつかというところに、学校の特色が示されると思います。教科等を増やす方向に行くか、特活など、子どもの生活を豊かにする方向に行くか、はたまた、子どもの生活のゆとりのために週28時間を堅持するか。
 そう書くと単刀直入すぎ、実際はそうしたなかでいろいろなパターンがあると思いますが、
 いたずらに学力狂騒に巻き込まれ、反復訓練学習に偏るのではなく、子どもの実態、地域・保護者の要望、教職員の願いなどを正しく受け止め、学校運営を行っていきたいものだと思います。
4. Posted by 中   2009年07月15日 20:35
すいません!私の文章がつたないので、
誤解を生んでしまいました…。
同じ公立小学校でも、
残りの236時間を、どう子供達のために使うのか、様々あるというわけですね。

クラブ活動や委員会活動が、
このうち20時間に満たないとすると、
残りの時間は、一体何に当てられているのかしら…と思いました。
一応、クラブ活動、委員会活動は、
毎週6時間目にあるのですが、
大抵は、算数や国語など、
授業に変わると、上の学年の保護者の方からお聞きしました。

5. Posted by toshi   2009年07月15日 22:53
中さん 
《クラブ活動、委員会活動は、毎週6時間目にあるのですが、大抵は、算数や国語など、授業に変わる》
 コメント1番でいただいた内容は、こういうことだったのですね。よく分かりました。
 しかしこれはやはり不可解ですね。コメントの2・3番でご説明したように、クラブ活動、委員会活動は、学校裁量により、何時間にでもできるものです。
 特活をやっているように見せかける必要もないのですが、そうしながら、実際は特活を軽視しているようですね。
 我が地域では、縦割りの活動も多くの学校が活発にやっていますし、特活も子どもの活動となっています。
 
6. Posted by しょう   2009年07月18日 22:17
5  お久しぶりです。貴重な問題提起をありがとうございます。

 私なりに受け止めていきたいと考え、記事をアップいたしました。

http://plaza.rakuten.co.jp/shchan3/diary/200907180000/

 そこでも述べたように、まず大切なことは

1、特別活動の現状はどうなのか、きちんと点検すること(話題として共有していくこと)
2、本物の実践(特別活動本来の目標を達成している実践)に注目し、それを広げていくこと

 であると考えています。特別活動本来の意味や実践の価値が広く共有されていけば、「困った現状」を克服していく展望も見えてくるのではないでしょうか。

(コメントなしの「訪問」「応援」だけはさせていただいていましたが、本日も応援です。)
7. Posted by toshi   2009年07月19日 19:15
しょうさん
 貴ブログにて、ご紹介いただいただけでなく、今後、様々な研究会で、とり上げてくださるとのこと。心より感謝申し上げます。
 学力低下論が渦巻き、教科の時数のみが大幅に増加している今、『特活の命』を育んでいけるよう、微力を尽くしていきたいと思います。
 しょうさんの地域での各研究会での論議の様子など、また、教えてくださいね。
 今後ともどうぞ、よろしくお願いします。 
8. Posted by しょう   2009年09月03日 18:35
 ご無沙汰しています。
 toshiさんの上記ブロ具記事と合わせて「学校だよりへの想い(16) 代表委員会をめぐって」などを2箇所で紹介させていただきました。

 1回目は8月の最初に行った「学年担任会(7名)」、2回目は組合主催の教育研究集会「自治的諸活動と生活指導」の分科会です。

 集まったメンバーにはあなたの記事と合わせて、私のブログ記事
http://plaza.rakuten.co.jp/shchan3/diary/200801140000/
http://plaza.rakuten.co.jp/shchan3/diary/200801150000/
なども紹介しておきました。

 特別活動の意義と課題、実践の現状と問題点などいい論議ができたと思っています。貴重な提起どうもありがとうございました。
9. Posted by toshi   2009年09月04日 06:27
しょうさん
 
 うわあ。貴研究会に紹介してくださったのですか。光栄です。ほんとうにありがとうございます。
 特活の記事が途中で止まってしまっているのは、大変申し訳なく思っています。

 ただ、今回の記事、『民主党マニフェスト教育編(2) 学習指導要領の大綱化』では、貴ブログの『フィンランドの教育』にリンクさせていただきました。
 民主党の目指す教育政策が、フィンランドのそれとよく似ているのではないかとの印象をもっています。
 

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