2009年11月07日

ふつうの人の自然な感情で、3

b1300406.JPG 先に、『国語の授業がおかしくなっている・・・かな!?』シリーズを掲載し、現在の国語教育についての疑義を書かせてもらったが、

 その折、いつもお世話になっている、『日本の教育は、これでよいのかな』ブログの今日さんが、ご自分のブログに、拙ブログ記事を引用しての記事をお書きくださった。

 題して、『教育者の良心・真の平和教育(田村 利樹)』。   

 『教育者の良心』などとおっしゃっていただいて、大変恐縮したのであるが、そのなかに、本記事標題の、『ふつうの人の自然な感情を大切に』なる言葉があり、大変心うたれた。


 そうなのだ。

 『ふつうの人の自然な感情』。それこそが大切だ。


 でも、おかしくなる。

 こんな言葉。

 ほんとうなら、ありふれていて、そんな印象深くはならないはず。

 それなのに、なぜ、こんなにも感動し、しかも、わざわざ『良心』とまで言わなければならないのだろう。


 純粋に子どもの幸せを考えれば分かることだ。

 自立心、自尊感情、他者理解、問題解決力など、など。

 高度に複雑化した社会の中で、必要とされる資質を上げてみたが、これらに、さほど異存のある方はいないはずだ。

 これらが養われれば、自然と日本はよくなるはずであり、そうした心情を養う教育を模索すればいいのに、

 今、一部地域の教育施策は、一にぎりの者による、小手先で、独善的な教育行政になってしまっている。


 今、問題にしなければならないのは、国ではない。

 各人が、自分の居住する地域の教育行政を点検することだ。

 真に、子どもの成長、発達を考えているか。

 『自然な感情』をもたない権力者が、子どもたちを、自分のこだわり、主義・主張を通すための手段としてしまっていないか。


 今日さんから、上記の『ふつうの人の自然な感情』なる言葉をいただいたのは、世田谷区の教科『日本語』をとり上げて、記事を書かせていただいたときだった。

 ここでは、小学校低学年から、大人でも理解できないような漢詩を音読させるという、およそ、『ふつうでない人』の教育施策を問題にさせていただいた。


 したがって、今、これについては、くわしくふれない。

 まだお読みでない方は、そちらをご覧いただければと思う。

    国語の授業がおかしくなっている・・・かな!?(7) 

 
 今回は、大阪府の事例をとり上げさせていただきたい。

 大阪と言えば、これまでも、全国学力調査の結果をめぐって、橋下大阪府知事らの狂騒をとり上げさせていただいた。

 今、そのうちの一つにリンクさせていただこう。

    ああ。どうなってしまうのだろう。(3)

 
 そうしたら、今回、同教委のホームページの一つをみる機会があった。

 題して、『「確かな学力」を育むための学習ツールの開発・実践(H20〜22年度)』とある。


 読ませていただいて、これ、また、びっくりしてしまった。

 そこで、本記事では、このホームページを仔細に検討していきたいと思う。


〇それでは、『ふつうの人の自然な感情』で、これをみてみよう。

・まず、『目的』に目をやる。

 ここは別に問題ないようにみえる。

 ただ、一箇所。

 『学校・市町村・大阪府が一体となった学力向上の推進』とあるが、

 これは、かつて、府知事が、ある市教委に対し、『関東軍』のごとく振舞ったことがあるので、『一体』というのは、府主導の、有無も言わせぬ『一体』であることをうかがわせる。

・その下の、『「学校改善のためのガイドライン」の具現化』からあやしくなる。

 学力の課題の2番目に、『大阪の子どもたちの学力の課題(「活用する力」「無答率の高さ」等)を解決する授業を実践する。』とある。

 ここでの「活用する力」は、全国学力調査の調査B『活用』を指していることは明らかだ。

・その下に、『学習ツールの開発・実践』にかかわって、4つの内容が示される。これが驚くべきものだ。『単元テスト用問題』『ワークブック開発』『学力テスト(到達度評価)』とくる。

 4つあるうちの3つが、何と、テスト、テスト、ワークブックではないか。

 1つだけ、モデル授業とあるが、これも、『(調査問題のための)「活用する力」を育てる。』


 ああ。ほんとうに、学力調査の点数アップ一辺倒の学習ツールだね。


〇それでは、よく吟味しよう。

・もう、拙ブログにおいて、何度も書かせていただいたが、学力調査に見られる学力とは、学力全体のなかのごく一部(『リンク先コメントの1番・Hidekiさんより』をご参照ください。)である。

 学習指導要領にも見られるように、また、多くの市民の方は、お子さんの通信票をご覧になればご理解いただけるように、「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」と、これらはすべて学力である。

 全国学力調査がはかれるのは、そのなかの、「技能・表現」「知識・理解」のごく一部に過ぎない。

 「思考・判断」もはかれるとおっしゃるかもしれないが、

 真の思考力、判断力は、生活経験を重視した、子どもたちにとって必然性、切実性のある学習問題をとり上げてこそ育まれるもので、テスト用に学習させたって、そのようなものは、『ごまかしの学力』でしかない。
 (これは、過去記事の『PISA調査と中学受験問題と』をご覧ください。記事中ほどの、『しかし、思いは複雑だ。』からが、本記事にかかわります。)

 まして、「関心・意欲・態度」などは、テストによって、はかれるものではない。それとも、自己申告の、「全国学習状況調査」で分かるとおっしゃいますか。

 このようなものを、『確かな学力』などと言ったら、『確かな学力』に笑われてしまう。


・ただ一つ、『モデル授業』とあり、そこには、『学習意欲を喚起し〜』と書かれているので、一見、『あらっ。テスト一辺倒ではないのかな。』と思わせるが、これも、中身を読むと、「活用する力」等を育てるとあるので、やはり、テストの点数アップをねらっての授業であるとなろう。

 なお、この、『学習意欲を喚起し〜』だが、上下の他項目とは何の脈絡もないので、付け焼刃的にここだけ挿入したということだろう。

 こんなにテストづけにして、どう意欲を喚起するというのか、その具体策を示してもらいたいものだ。


・学習塾でも、このようなテストづけの計画はたてないのではないか。

 そんな計画が、公立学校の計画として位置づけられるとは・・・、


〇このホームページを作成したのは、おそらく指導主事の皆さんであろう。教員のプロである。


 わたしには想像がつく。

 上から言われて、むなしい思いで書き上げたのではないか。

 知事の命令下、屈服せざるを得なかった教育現場の苦衷を察することができる。


〇それでは、実際の学校現場はどうか。

 これも何度も書かせていただいているが、拙ブログの読者には、大阪府の保護者の方が、少なからずいらっしゃる。その方々からのメールを読ませていただくと、

 内情はいろいろなようだ。

 『ふつうの人の自然な感情』よろしく、まったくそのような圧力に屈せず、例年通り、ふつうの実践を積んでいる学校もあれば、上記、『学習ツール』に従い、テスト対策に明け暮れる学校もある。

 ああ。願わくば、子どものために、前者が圧倒的に多いことを願う。



 同ホームページについては、以上で、終わりとさせていただくが、

 それでは、どうして、このような状況になってしまったのか。

学力低下の実態把握があやふやなまま、マスコミ等で、センセーショナルにこれが叫ばれ、

各地教育委員会の形骸化が叫ばれ、

 その結果、民間や役所の他部局などから、人材が多く登用されるようになった。いわば、『教育のしろうとが教育行政をにぎる。』ようになったのである。


 わたしは、教育のしろうとが、教育行政をつかさどること、そのこと自体は賛成である。いわば、シビリアンコントロールの教育版だ。


・しかし、それは、教育委員公選制など、直接的に民意を反映した教育行政でなければならないし、

・また、少なくとも、教育行政は、教育現場の環境整備に意を尽くすべきで、

・さらには、独善的、独断的、恣意的に、学習内容まで踏み込んでくるのは、異常としか言いようがない。 


 実は、この点に関しては、ご多聞にもれず、我が地域も同様である。

 我が地域は、戦後一貫して、自主自立の教育行政を行ってきた。生活科を先取りしたり、十数年も前から、全学年、外国人講師による英語教育を実施したりしてきた。

 また、全国的には反対が多かった学力検査にしても、我が地域は、『子どもの学力の実態把握と教員の指導力アップに資する』というように目的を明確化し、60年近くずっと実施してきた。

 そんな我が地域だが、わたしの退職後聞こえてくるのは、学習内容まで踏み込むことはないものの、『教育のしろうと』による独善的な教育行政の話である。

 それは、一にぎりの者に過ぎないのだが、権力をにぎり、上意下達のシステム作りに励むという、おかしなことになってしまった。

 
 そのような折に、民主党を中心とした連立政権が発足した。

 民主党の、『教育現場重視の』教育政策に期待するところは大なのだが、今のところは、どうも、音なしの構え。

 やきもきしている状態である。

 はやく、ふつうの人の自然な感情を取り戻したいものだ。


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 本日とり上げた学習ツールなるものは、どう考えても、学習指導要領軽視です。

 学習指導要領では、多様な学習活動を保障しています。体験、遊び、実験、調査など、など。

 また、教育現場における創意工夫も大切なこととしています。

 しかし、ここからは、創意工夫の片鱗さえ、みることができません。


 ああ。わたしは、民主党がマニフェストでうたう、教育現場重視の政策に賛意を表明していますが、こんな、子ども軽視のツールを作成する地域に対しては、学習指導要領の拘束性を強めてほしいもの。


 同要領の弾力化を訴えるわたしとしては、大いなる矛盾です。


 民主党が政権をにぎったことにより、この矛盾した思いが、早く解消されることを望んでいるのですが・・・、

    関連記事『子育てや教育は、社会全体でも支えるもの!?』に続く。  

rve83253 at 02:31│Comments(5)TrackBack(0)教育制度・政策 | 教育風土

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この記事へのコメント

1. Posted by とおりすがる   2009年11月08日 07:22
1 橋下府知事は、いままで停滞していた大阪の教育に目を向けた人です。物言いには問題がありますが、やろうとしている事には賛成です。特に全国学力調査では、目に見える形で結果を出せたことが大変喜ばしい。

>民主党がマニフェストでうたう、教育現場重視の政策に賛意を表明していますが

やっとまともになり始めたのに、日教組の影響をうけた今後の教育行政には不安が一杯です。

2. Posted by ・・・・   2009年11月08日 07:25
1 見えない学力と見える学力があるのは、百も承知。大阪は学力も体力もダメダメだったのが、やっと光が見え始めたところなのに、横からチャチャを入れないで欲しい。
3. Posted by toshi   2009年11月09日 05:44
とおりすがるさん
 大阪の教育が停滞していたとすれば、子どもたちのためにそれを是正することは大切ですね。
 しかし、府知事のされていることは、傾き過ぎた振子が今度は逆に傾き過ぎる結果になるだけのように思います。
 以前の傾き具合に憤りを感じていらっしゃる方々は、府知事の言動に快哉を叫ぶのだと思いますし、そのお気持ちはよく分かるのですが、
 大阪の子どもたちのためには、やはり、ふつうの人の自然な感情をもって、子どもたちにとっての最良の方策を考えていただきたいもの。
 子どもたちをつらい学びに追いやるのではなく、真にやる気を抱き、意欲的に学ぶ方策をとり入れないと、
 それはそのまま、教員の指導力アップ策とつながっているのですが、『目的のためには手段を選ぶな。』などというやり方では、指導力下降策にもつながりかねず、憂慮しています。
4. Posted by 大阪の保護者   2009年11月09日 15:22
大阪の保護者です。toshi先生の記事、いつも楽しみにさせて頂いています。有難うございます。
うちの子の学校では、今年から希望者に、週1で放課後学習の時間を設けています。せっかく企画して頂いたので参加させることにしました。
ふたを開けてみると、放課後学習は、宿題を学校に残ってやっているだけなのです。特にプリントが用意されているわけでもないし、友達同士の教えあいも禁止。ただ黙々と1人で宿題をするだけです。それなら家でやっても同じ事だから参加したくないと子供に言われました。担任の先生とお話しをする機会があった時に聞いてみると、先生は苦笑して「そう言って来なくなる子が増えているんです。でも、私達も色々考えなくもないのですが、やりたいようにはできなくて…現状は宿題をさせているだけなんです。家でできるのでしたら不参加でも問題ありません。申し訳ありません。」とおっしゃっておられました。
『上から言われて』不本意ながら、とまどいながら従っている先生の苦労が見えるようでこちらも恐縮してしまいました。こういったことは、放課後学習だけならいいのですが…。どうなのでしょうね。
5. Posted by toshi   2009年11月09日 22:45
大阪の保護者様
《ふたを開けてみると、放課後学習は、宿題を学校に残ってやっているだけなのです。特にプリントが用意されているわけでもないし、友達同士の教えあいも禁止。ただ黙々と1人で宿題をするだけです。》
 おっしゃる通り、わたしも、たいして意味のないことのように思います。同じような趣旨のメールはいくつかいただいており、こうしたやり方が、今、大阪ではけっこうあるのかなと想像しておりますが、よく理解できないのが実情です。
 わたしは、拙ブログにおいて、子どもを真に育む授業のあり方を、実践的に繰り返し書いておりますが、授業さえ充実し、子どもがいきいきと学習に取り組んでいれば、放課後残す必要などないと思っています。そういう意味での指導力アップ策を、上の人には考え、的確な施策を講じていただきたいと思っています。
 もっとも、これは、全国的な課題ですね。
 

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